ゲーム小説の書き方講座

坂井とーが

5限目 受賞からWEB連載までの流れ(脚本)

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〇講義室
  ※今回のお話はあくまで一般論です。実在の小説サイトとは一切関係ありません。
蕾太「ああ、楽しみだなぁ」
小雪「どうしたのだね?」
蕾太「もうすぐ応募した新人賞の発表があるんだ! オレの小説は受賞してるかな?」
小雪「あー・・・」
蕾太「おっ、ちょうど時間になった! オレの作品は──」
蕾太「えっ!?」
蕾太「・・・・・・ない。 落ちてる」
小雪「今回は残念だったな。また次でがんばればいいさ」
蕾太「ん? 大賞受賞者のコメントが載ってる。 これって、事前に書いてるんだよな?」
小雪「そうだな。 ちょうどいい。今日の授業では、受賞からWEB連載までの流れを説明しよう」

〇講義室
小雪「賞によっては、結果発表ページに受賞者のコメントが乗る。つまり、受賞者は結果発表よりも前に賞の結果を知ることとなる」
小雪「あるいは、最終選考に残った時点で電話連絡が来る賞もある」
蕾太「じゃあ、結果発表を楽しみに待っている時点で落選確定ってこと!?」
小雪「いや、すべての賞で事前連絡があるとは限らない。発表まで希望を持ち続けることだ」
蕾太「ほっ」
小雪「ここでは、受賞連絡が来て、WEB連載が決定したとしよう。ひとつ、絶対に気をつけなければならないことがある」
蕾太「なに?」
小雪「SNSでやらかすな!」
小雪「WEB小説でデビューした作家の中に、SNSでトラブルを起こす人間がまれにいる」
小雪「自分のところに受賞連絡があったからと言って、『今日とてもうれしいことがありました。後日報告できると思います』などと、」
小雪「間違っても呟くなよ!」
小雪「発表後に炎上するぞ」
蕾太「うわ、怖い・・・」
小雪「それだけではない。 会社への不満をSNSで暴露したり、ネット上に内部事情を書き込んだりなど」
小雪「絶対にやるなよ!」
小雪「メリットが何もないどころか、使っているペンネームの汚点になるだけだからな」
蕾太「わ、わかった」

〇講義室
蕾太「で、受賞発表の後はどうなるの?」
小雪「賞の規模にもよるが、授賞式に呼ばれる。 ここで気をつけることだが──」
小雪「私服だぞ。家にこもってばかりいたら、授賞式に来ていく服がなくて困ることになる」
蕾太「いや、それはならないかも」
小雪「しかも、慣れない東京で道に迷う。駅が広すぎるのだ。電車の乗り換えは本当に難しい。受賞者が遅刻などしたら大変だ!」
蕾太「・・・オレ、東京に住んでる」
小雪「あと、大勢の前に出るから、とてつもなく緊張する。 しかも──」
小雪「『受賞者から一言お願いします』 などと言われた日には・・・・・・」
蕾太「話せばよくない?」
小雪「それからオフィスで契約書にサインするのだが、編集者と話すのはとても緊張するぞ」
小雪「だが、人見知りを発動してばかりではならない。コミュニケーション能力は大事だ」
蕾太「・・・なんか今の流れで人柄わかるなぁ」
小雪「そして、いよいよWEB連載決定だ」
蕾太「さっそく原稿を書くんだな?」
小雪「いや、その前にやることがある。 作品全体のプロットとキャラ設定を提出し、編集部のOKをもらわなければならない」
小雪「さらに、表紙絵や挿絵がある小説の場合、イラストレーターにイラストを依頼する必要がある。そのイラスト依頼書も作家が書くのだ」
蕾太「えっ、イラスト依頼書!?」
小雪「そうだ。表紙や挿絵に、どんなキャラをどんな構図で描くか。それを決めて伝わりやすいようにまとめるのだ」
蕾太「そんなのやったことがないぞ」
小雪「だろうな。投稿でイラストを使わなかった作家にとっては、初めての作業になる」
小雪「せっかくいい作品を書いて賞をもらったのに、イラスト依頼書が初心者レベルでは悲しいな」
小雪「WEB小説作家を目指して小説を書くなら、どんなイラストがほしいか考える練習をしておくといいだろう」
小雪「キャラクターをデザインしてもらう場合、文字で『黒髪、ショートカット、活発そうな幼馴染の女の子』と表現しても、」

〇講義室
小雪「なかなかイメージは伝わらない」
小雪「依頼書の書き方については指示があるだろうが、イメージ画像は添付した方がよさそうだ」
蕾太「イメージ画像なんてどこで見つければいいの?」
小雪「表に出ないものだから、著作権を気にする必要はない。似た雰囲気のアニメキャラや芸能人でもいいし、似顔絵アプリを使ってもいい」
蕾太「わかった。ネットで似た見た目のキャラを探してみよう」
蕾太「それにしても、連載か。今は短編しか書いてないから、想像がつかないな」
小雪「それが連載の怖いところだ。短編や冒頭のみの賞を取って作家になった場合、連載が初めての長編になる可能性がある」
小雪「数千字の短編なら、無計画でもなんとか書き上げることが可能だ。だが、長編でそれをやると途中で破綻する可能性があるぞ」
蕾太「ごくり」
小雪「作家になっていざ長編の連載を始めたものの、ストーリーを思いつかなくなって『やっぱり書けません!』」
小雪「そんな悪夢を見たくないのなら、長編を完結させる練習をしておくのだ」
小雪「短編しか書かない人間にとって、初めての長編連載は本当に難しい」
小雪「本当に、難しいからな!」
蕾太「そ、そんなにか・・・」
小雪「毎週数千字ずつ、休まず書き続けるのだ。 君にその執筆スピードはあるか?」
蕾太「うーん。調子のいいときなら」
小雪「調子のいいときだけではダメだ。 スランプに陥っているときでも、毎週締め切りがやってくる」
小雪「気分の波によらず、毎週数千字をコンスタントに必ず書き続ける力は必要だ」
蕾太「締め切りに追われ続けるのか。いよいよ作家らしくなってきたな」
小雪「いつも追われるとは限らない。締め切りに余裕を持って原稿を用意することも可能だ。 連載には、準備期間があるのだから」
小雪「連載決定からすぐに連載開始となるわけではない。出版社とやり取りしたり、イラストを待ったりと、最初のうちだけは猶予がある」
小雪「その間に構想を練り、原稿を書き溜めろ。 間違っても、連載に浮かれて執筆をサボるようなことがないようにな」
蕾太「もし、締め切りを守れなかったら?」
小雪「契約違反になる。 関わった大勢の人に迷惑をかけ、作家の信頼も地に落ちる」
蕾太「恐ろしいな」
小雪「だから、締め切りだけは死守しなければならない。それはまさしくデッドラインだ」
蕾太「オレにできるのかな。ちょっと不安になってきた」
小雪「こればかりは、やってみないとわからないな。理論上はできるつもりの人間でも、プレッシャーで潰されそうになることはある」
蕾太「メンタル面も大変なの?」
小雪「人によるがな。小説を書いていて、『これは本当におもしろいのだろうか』と不安になることは、誰にでもあるだろう」
小雪「商業連載をしていると、その不安に金の重みが乗ってくる」
小雪「投稿のときには見逃されていた作品の矛盾やわかりにくさも、編集者からたくさん指摘されて直すことになる」
小雪「読者数も、投稿のときとはケタ違いだ。 ときにはリアルタイムで否定的なコメントがつくこともある」
小雪「君はそのプレッシャーに耐えていけるか?」
蕾太「う・・・」
蕾太「でも、やるしかないよな。 オレは小説家になりたいんだから!」
小雪「よく言った。その通りだ」
蕾太「なんだか創作意欲が湧いてきたぞ! これから、次の作品を執筆だ!」

次のエピソード:6限目 深いテーマの伝え方

コメント

  • 読むだけで、ワクワクしますね〜!
    私のような地方出身者には。ありがたい。
    しかしまず、コンテスト通過への挑戦の段階の私にとっては、宝くじが当選した後の心構え(笑)に等しく、もっととーが先生の指南書を読み込む必要を感じました。
    ありがとうございます。

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