境界なき記憶調査団から

きせき

Ep.1 前世なき者へ(脚本)

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〇地図
  フォリアとカルマという2つの地方からなるリコルド大陸。
  これは殆どの者が前世の記憶を持つ世界で、
  前世の記憶を持たない青年の説話である。

〇英国風の図書館
  ーリコルド職業紹介所ー
受付嬢「あの、アナスタージ様。こちらの箇所が空白のようですが・・・・・・」
ロジオ「ああ、その箇所はですね・・・・・・ちょっと書きたくても書けないというか」
受付嬢「いや、でも、この箇所が空白だと私も書類を受け取ることができないんですよ」
受付嬢「書きにくくても書いていないと最悪、偽り申告罪になりますし」
ロジオ「・・・・・・書きたくても書けないんだよ」
受付嬢「えっ?」
ロジオ「分かりました。書類の受理は結構です。お世話をかけました」
受付嬢「あ、アナスタージ様?」
謎の女「・・・・・・」

〇ファンタジーの学園
  ーリコルド職業紹介所前ー
ロジオ「はぁ・・・・・・」
ロジオ「リコルドの職紹所なら書類が通らないかと思って来たけど、無駄だったな・・・・・・」
  氏名:アンブロージョ・アナスタージ。
  年齢:22。性別:男。
謎の女「ふむふむ、住所はフォリア地方のブレッザね。良いとこだよね、長閑でさ」
ロジオ「え・・・・・・!!」
謎の女「あ、ごめんね。つい、見覚えのある地名が見えちゃって・・・・・・」
ロジオ「(見えたって・・・・・・どんな視力してんだ? この人)」
謎の女「って・・・・・・やっぱ、こういう遠回しなの、向かないなぁ。あたし」
謎の女「ねぇ、君は仕事を探しているんだよね?」
ロジオ「え! えぇ・・・・・・まぁ・・・・・・」
ロジオ「(というか、職紹所から出てきて、探してないっていう方が無理あるよな)」
謎の女「だったら、少し話を聞いてもらえないかな?」
謎の女「君にとって悪い話なら全然断ってくれて良いからさ」
ロジオ「はぁ・・・・・・まぁ、良いですけど」
ロジオ「(まぁ、良いか。臓器売れまでは言われないだろう・・・・・・)」
謎の女「じゃあ、決まり。じゃあ、ちょっと歩くけどついてきて」

〇草原の道
  リコルド職業紹介所は一応、フォリア地方にあるが、数歩歩けば、カルマ地方に入る。
  カルマ地方・・・・・・
  フォリア地方が森林や山で囲まれているのなら、カルマは砂地や海で囲まれていた。
ロジオ「(まだカルマに入ったばかりなのに、もう波の音が聞こえる)」
謎の女「そう言えば、あたし、まだ名乗っていなかったね」
エミリア「あたしはエミリア・シルベストリ」
エミリア「団のみんなはミリアって呼んでるけど、好きに呼んでね」
ロジオ「あ、どうも。俺は・・・・・・アンブロージョ・アナスタージです」
エミリア「アンブロージョ君ね・・・・・・あたしはなんて呼べば良いかな?」
ロジオ「そうですね。長くて呼びにくいようならロジオはどうでしょう」
エミリア「ロジオ君かぁ。確かに、言いやすいのは嬉しいわ」
エミリア「もしかしたら、長いつきあいになるかも知れないし」
ロジオ「長いつきあい・・・・・・」
ロジオ「(団・・・・・・って言ってたなぁ)」
ロジオ「(もしかして、俺にサーカス団員になれって言うんじゃ)」

〇コンサート会場

〇コンサート会場

〇コンサート会場
ロジオ「はぁ!!」

〇草原の道
ロジオ「(って、簡単な魔法ぐらいは使えるけど、流石にそんな訳ないか・・・・・・)」
エミリア「どうしたの? ロジオ君」
ロジオ「あ、いや・・・・・・俺、殆どカルマの方には来たことがなくて」
エミリア「成程ね。あ、あれが目的地のフラゴレだよ」
エミリア「コンキリアとかオセアーノとかに比べるとこじんまりしてるけど、」
エミリア「フラゴレはカルマの玄関とも言われてるわ」
ロジオ「(カルマの玄関・・・・・・)」

〇西洋の住宅街
  ーフラゴレー
エミリア「さて、フラゴレに到着」
ロジオ「(フラゴレ・・・・・・確か、海鳴りを意味する町だったかな)」
エミリア「じゃあ、まずは食事でもしながら話しましょうかな」
エミリア「ロジオ君は嫌いなものとかある?」
ロジオ「嫌いなもの・・・・・・食べられないもの以外ならないですかね」
エミリア「オッケー! 嫌いなものはないようで安心したよ」
エミリア「じゃあ、こっちね」

〇大衆居酒屋(物無し)
  ーフラゴレ亭ー
エミリア「マスター、いる?」
謎の男「ああ、ミリアか?」
エミリア「ただいま戻りました。ロジオ君、こちらはマスターね」
謎の男「どうも、マスターです。ようこそ、フラゴレ亭へ」
ロジオ「あ、アンブロージョ・アナスタージです」
エミリア「マスター。ロジオ君、食べられないもの以外は食べられるらしいので」
エミリア「美味しいもの、お願いします」
謎の男「ハハハ、分かった。了解。じゃあ、ちょっと待ってな」
ロジオ「(美味しいものって・・・・・・ハードル高すぎるだろ)」
ロジオ「(まぁ、俺が作る訳じゃないから良いんだけど・・・・・・)」
エミリア「じゃあ、マスターの料理ができるまでの間、少しお話しするということで」

〇入り組んだ路地裏
謎の男「♪〜」

〇大衆居酒屋(物無し)
エミリア「どこから話すのが正解かは分からないけど、」
エミリア「君がさっき、書類を受け取ってもらえなかったのは「前世欄」が空欄だったからだよね?」
ロジオ「え・・・・・・」

〇地図
  「前世欄」。
  それは文字通り、前世を書く欄で、この世界で定職に就く時に必要されている。
エミリア「例えば、前世がきのこ研究家だった人間が現世ではその知識を生かして料理人になるとか」
エミリア「前世、刑事だった人間が元々前世で志望していたファッションモデルになるとか」
エミリア「前世欄を記入して初めて希望する職業に就ける可能性が出てくる」
エミリア「勿論、「前世欄」が偽りだった場合は厳しい処罰を受けることになるし」
エミリア「空欄で書類を出すのは禁止されている・・・・・・でも、例外がある」

〇大衆居酒屋(物無し)
エミリア「それは前世の記憶を持たなかった場合」
ロジオ「・・・・・・」
エミリア「まぁ、持たなかった・・・・・・なんて言い方すると、大層だけど、」
エミリア「要は現状では忘れてしまっていて、思い出せないだけ。貴方も、そして、私も」
ロジオ「貴方も・・・・・・前世を覚えていないんですか?」
エミリア「そう・・・・・・あたしも君と同じで「前世欄」が書けない人間の1人ってわけ」
エミリア「はぁ・・・・・・「前世欄」が書けないから何だ、この野郎って感じだよねー」
エミリア「しかも、君、瞬間移動魔法やら瞬間修繕魔法やら魔法も使えるでしょ」
ロジオ「いやいや、瞬間移動や修繕魔法なんて使えませんよ」
ロジオ「精々、半径1メートル以内のものをすり替えられるとかそんくらいです」
エミリア「あれ? そうなの?」
エミリア「まぁ、それだって貴方が苦労して手に入れた力でしょ」
ロジオ「(苦労・・・・・・か)」
ロジオ「確かに前世なしでもどこか雇ってもらえないかと勉強しましたけど」
エミリア「それそれ。やっぱり、前世や能力があっても、頑張らない人と」
エミリア「前世がなくて能力が乏しくても頑張ってもらえそうな人だったら、」
エミリア「後者の人と仕事したいって思うじゃない?」
ロジオ「ハハハ・・・・・・」
ロジオ「分かりました。それで、仕事というのは?」
エミリア「ロジオ君は聞いたことないかな? 境界なき記憶調査団の存在を・・・・・・」
ロジオ「境界なき記憶調査団・・・・・・」

〇王妃謁見の間
  境界なき記憶調査団。
  支部数不明。
  団員数不明。
  いや、そもそも、実在しているかも不明な調査団。

〇大衆居酒屋(物無し)
エミリア「支部数は全部4つ。フォリア第1支部。第2支部。カルマ第1支部。第2支部」
エミリア「構成団員は団長と副団長を除くと、19名。正団員は団長と副団長を除くと、4名」
ロジオ「(・・・・・・何か、随分、あっさり教えてくれるなぁ)」
エミリア「あ、もし、ロジオ君が入ってくれるなら団員数は20名になるかな?」
ロジオ「ハハハ・・・・・・正団員というのは?」
エミリア「あ、簡単に言うと、ナンバーを与えられたメンバーね」
ロジオ「ナンバーを与えられたメンバー?」
エミリア「そう、Numberを与えられたMember」
ロジオ「(かなり良い声で言われてしまった・・・・・・)」
エミリア「あ、でも、別に凄く待遇が違う訳じゃないんだよ」
エミリア「正団員でも準団員でも残業は禁止だし、過度な収入や待遇格差は禁止」
エミリア「まぁ、詳しくはあたしが説明するよりも書類を見てもらった方が良いかな?」
エミリア「分からなければ、あたしとか別の団員が説明するから聞いてみてね」
ロジオ「あ、どうも・・・・・・」
エミリア「で、肝心の仕事内容ね。もう団名でおおよそ検討がついていると思うんだけど」
エミリア「記憶なき者の失われている過去を調査し、過去を明らかにすることなんだ」

〇黒
  次回

〇大衆居酒屋(物無し)
ロジオ「凄い良い話だと思うんですけど、俺なんかに務まりますかね」
  やや魔法も使えるが、前世の記憶を持たない青年・ロジオ。
エミリア「大丈夫・・・・・・まぁ、もし、ダメなら辞めれば良いよ」
  ロジオの前に現れた前世の記憶がない女性・エミリア。
謎の男「はい、お待ちどう様」
  エミリアを知るフラゴレ亭の店主?

〇黒
  Ep.2 さらに前世なき者達へ

次のエピソード:Ep.2 さらに前世なき者達へ

コメント

  • タイトルだけ見ると「国境なき医師団」を連想させますが、不思議な世界観ですね。この地球上のどこかにありそうで絶対に存在しない感じのリコルド大陸の雰囲気も好みです。着流し姿のマスターが渋い。次回の予告も凝っていて作者さんの意気込みが感じられます。なにはともあれ、前世の記憶を取り戻す方法が早く知りたいです!

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