第一話 『推し』の死(脚本)
〇溶岩池のある洞窟
ガブリエル騎士団長「くっ・・・」
ガブリエル騎士団長(全身にヤツの放った毒が・・・ しかしこんな所で負けてはいられぬ!)
ガブリエル騎士団長「うぉぉぉぉお!」
モンスター「なにっ!」
モンスター「まさか・・・!?」
「うわぁぁぁぁ!」
〇貴族の応接間
アルル姫(っていうガブ様の勇ましい姿を 考えればいいのね!)
お見合相手「──が、」
アルル姫(これで、このお見合い相手の どーでもいい話も乗り切れるわ!)
お見合相手「──で──を、」
アルル姫(はぁ〜 ガブ様、ガブ様、ガブ様〜♡)
お見合相手「・・・」
アルル姫(あの白くたなびく長い髪は 後ろから首を狙われても 少しでも無事であるようにだと聞いたわ)
お見合相手「アルル姫?」
アルル姫(そういうガブ様の騎士らしさ ほんっとうに素敵・・・♡)
お見合相手「アルル姫!」
お見合相手「私との婚姻について 前向きに考えていただけましたか?」
アルル姫「あなた、ガブさ──ガブリエル様に ついてはどうお思いで?」
お見合相手「ガブリエル? ブレーヴ王国騎士団長の、ですか?」
アルル姫「ちょっとまって あなた今、ガブ様を呼び捨てにした!」
お見合相手「は、はぁ・・・」
アルル姫「そんな方との縁談──」
アルル姫「お断りよ!」
〇華やかな広場
アレク(庭師)「で、また縁談ダメにしちまったのか?」
アルル姫「ダメにしたんじゃない ガブ様の良さが分からない人なんて こっちから願い下げよ!」
アレク(庭師)「あのなあ そんなんじゃ、いくらプリンセスでも 嫁に行けなくなるぞ?」
アルル姫「別にいいわっ! 私はガブ様を推し、愛で、永遠に応援し 生きられればそれでいいの!」
アレク(庭師)「・・・つーか、 そんなにガブ様ガブ様言うなら ガブ様に結婚申し込んだらいいじゃねーか」
アルル姫「が、が、ガブ様と・・・ 私が結婚!?」
アルル姫「何馬鹿なことを言っているの!? ガブ様はガブ様よ! 私みたいな人が隣に立っていい方では──」
アレク(庭師)「お前の方が身分高えだろ・・・」
アルル姫「ガブ様を共に愛し 共に愛で共に彼へエールを送る 私はそんな殿方と結婚したいの!」
アルル姫「そもそも私は──」
アルル姫「ガブ様の生きるこの大地で ガブ様と同じ空気を吸って生きる それだけで幸せなの!」
アルル姫「もしも恋に落ちるなら ・・・そうね」
アルル姫「石ころと結ばれて山となり ガブ様が歩む大地になれればそれで──」
アレク(庭師)「はいはい・・・」
アレク(庭師)「そんなに自然と同化してーなら なりゃいいじゃねーか」
アルル姫「え?」
アレク(庭師)「ブレーヴ王国の騎士団様は 最近よく辺境の森にいるって話だぜ? あの辺り、よく魔物が出るんだってよ」
アレク(庭師)「木のフリでもすりゃ ガブ様も拝めるんじゃねーの?」
アレク(庭師)「ま、お前が城を抜け出して 辺境の森に一人で行くなんて 無理だろうけどな!」
アルル姫「それだわ!」
アレク(庭師)「はぁ!? まさか、お前本当に──」
アルル姫「あなた言い出しっぺでしょ ついてきてよね 今夜12時ぴったりにこの庭で!」
アルル姫「じゃあ、ごきげんよう〜」
アレク(庭師)「おっ、おいっ!」
アレク(庭師)「マジかよ・・・」
〇空
〇森の中
アレク(庭師)「ちょっと見たらすぐ帰るからな?」
アルル姫「もう、それ何回目!?」
アレク(庭師)「だ、だって・・・ プリンセスを城から連れ出したって 知れたら、俺、立場ないぜ?」
アルル姫「言い出しっぺのくせに!」
アレク(庭師)「な・・・っ!」
アルル姫「それに、 あなたがクビにならないように 私が働きかけるから大丈夫よ!」
アレク(庭師)「危ね!」
アルル姫「ちょっとぶつからないでよ! そんなことより──」
アレク(庭師)「うっ・・・」
アルル姫「早くガブ様を拝みたいわ!」
アルル姫「きっと勇敢に戦うのよ! 『はぁぁ!』って攻撃して 『はぁ〜っ!』て消滅させて──」
アルル姫「あぁ、考えただけでかっこよすぎ 尊すぎるまるで天に輝く星のよう・・・」
アルル姫「・・・って、あれ?」
アルル姫「もうアレク! 怒られるのが怖くて逃げ帰ったのね! こうなったら私一人で・・・」
「やぁ! はぁ!」
アルル姫(あっちからだわ!)
〇森の中
アルル姫「わぁ・・・」
アルル姫「すごい!」
ヤコブ隊長「貴様など相手にもならん」
「隊長! こちらほぼ壊滅させました!」
ヤコブ隊長「まあいいだろう このくらいで手間取っていては困る」
アルル姫(あの人、凄く強い!)
アルル姫(・・・気がする)
アルル姫(仕方ないわ 私には魔物は見えないもの──)
アルル姫(何このヤな感じ・・・)
アルル姫(なんか寒い・・・ どうしよ、私・・・)
アルル姫(ん・・・)
〇森の中
ヤコブ隊長(何だ・・・?)
ヤコブ隊長「・・・死んでる?」
ヤコブ隊長(消滅ではなく『死』だと?)
「隊長! どうしま──」
フール副隊長「わ、なんじゃこりゃ!?」
ヤコブ隊長「魔物が死んでいる・・・らしい 私も初めて見た」
フール副隊長「っつーか、隊長 その可愛らしいお嬢さんは?」
ヤコブ隊長(彼女がやったのか?)
フール副隊長「どーします?」
ヤコブ隊長「魔物は検体として一体持ち帰る 二体は消滅させろ」
フール副隊長「女の子は・・・」
ヤコブ隊長「連れ帰るしかないだろう」
ヤコブ隊長「お前、面倒見ろ」
フール副隊長「りょーかい! へへ、役得〜♡」
〇戦線のテント
フール副隊長「おっ!」
フール副隊長「おめざっすね〜お嬢さん どーしてあんな森の中にいたんすか? 夜中に一人は危ないっすよ〜」
アルル姫「えっと・・・ここは?」
フール副隊長「あ、悪いっす! 自己紹介が先っすね〜」
フール副隊長「ここはブレーヴ王国の騎士団本部」
フール副隊長「お嬢さん、森の中で一人で 倒れてたんで──」
アルル姫「ブレーヴ王国騎士団本部!?」
フール副隊長「ええ、そうっすけど」
アルル姫「な、なら! あの! えーっと、その〜・・・」
アルル姫「騎士団長様に 会わせてくれませんか?」
フール副隊長「あー騎士団長って今不在なんすわ ここを取り仕切ってるのはあそこにいる 隊長──」
フール副隊長「お、お嬢さんっ!」
アルル姫「あなたが隊長さん?」
ヤコブ隊長「ああ」
アルル姫「私はボヌール王国王女の アルル・ド・ルロワ 助けて頂いたこと、感謝いたします」
アルル姫「ところで、私を騎士団長様に 会わせてくださらない?」
ヤコブ隊長「・・・貴様、知らぬのか?」
アルル姫「ちょ、貴様って 一国の姫に向かって何──」
ヤコブ隊長「騎士団長はいない 今、騎士団を取り仕切っているのは この私だ」
アルル姫「ガブさ── ガブリエル騎士団長様は どちらにいらっしゃるの!?」
ヤコブ隊長「・・・ヤツは死んだ」
アルル姫「し、死んだ・・・?」
ヤコブ隊長「ああ、”火山の戦い”でな」
アルル姫(そんな、嘘・・・ ってことは、つまり──)
〇溶岩池のある洞窟
ガブリエル騎士団長「くっ・・・」
ガブリエル騎士団長「はぁぁぁあ!」
モンスター「だからそれ、意味ねーから」
モンスター「やっちまうか?」
モンスター「ああ」
「せーの」
「・・・・・・」
モンスター「よっわ」
モンスター「ざっこ」
(許せない)
(そんなの、絶対に──)
〇空
「許せなーーーーいっ!」
〇外国の田舎町
アルル姫「ああ、酷すぎる! ガブ様に対する不敬よ!」
アルル姫「魔物だからってどんな悪いことしてもいい わけじゃないんだからね!」
アルル姫「私の愛するガブ様になんてことを・・・」
アルル姫「ってか あなたも知ってたんでしょ!?」
アルル姫「ガブ様が お亡くなりになってるって・・・」
ボヌール王国・騎士「ええ、まあ・・・」
アルル姫「何で教えてくれないのよ! 私、私・・・」
ボヌール王国・騎士「申し訳ございません ガブリエル様の件に関しましては ユーゴより口止めをされておりまして」
アルル姫「ユーゴに!?」
ボヌール王国・騎士「ええ・・・」
アルル姫(あのガミガミ教育係め・・・)
〇英国風の図書館
ユーゴ(教育係)「はぁ・・・ 騎士団同士でやり取りがあったから 良かったものの──」
ユーゴ(教育係)「全く、とんだじゃじゃ馬だな 城を抜け出して隣国の騎士団本部に 突撃するなど本当に手に負えん」
ユーゴ(教育係)「淑女とはどうあるべきか もう一度基礎から教育して差し上げ──」
アルル姫「ユーゴ!」
ユーゴ(教育係)「姫君、図書塔ではお静かにと 何度も言っているでしょう」
ユーゴ(教育係)「それに今度は城を抜け出したそうですね 庭師を無理に連れ出し辺境の森に行くなど どれほど危険な行為か貴女は分かって──」
アルル姫「どうして黙ってたのよ!」
ユーゴ(教育係)「はぁ?」
アルル姫「ガブ様が亡くなってるだなんて!」
アルル姫「ガブ様が私の全て! ガブ様が心の支えなの!」
アルル姫「あなたはそれを分かってて ガブ様の死を黙ってた」
ユーゴ(教育係)「だからこそですよ、姫君」
アルル姫「え・・・?」
ユーゴ(教育係)「考えてみてください ガブリエル様の死を姫にお伝えしたら──」
ユーゴ(教育係)「敵討ちをするなど言って 聞かないでしょう?」
アルル姫(敵討ち・・・それだわ!)
ユーゴ(教育係)「けれど、貴女には魔物は“見えない”」
ユーゴ(教育係)「姫もご存知のはずです この世界には“見える者”と“見えざる者” がいて──」
アルル姫「“見えざる者”には魔物は可視化されない だから魔物討伐は“見える者”の 仕事になった」
アルル姫「何度も言われなくとも分ってるわ!」
ユーゴ(教育係)「ならばお分かりでしょう?」
ユーゴ(教育係)「ガブリエルほどの強者が敵わなかった、 ましてや“見えざる者”である貴女が 敵討ちなど、できっこないのですよ」
アルル姫「見える者の協力があれば──」
ユーゴ(教育係)「はぁ?」
アルル姫「皆が恐れるほど強い“見える者”の 協力があれば敵討ちできるじゃない!」
ユーゴ(教育係)「ひ、姫・・・?」
〇黒
ガブ様の敵は、私が討つ!
あいつらは──
※姫の妄想内のモンスターです
私が倒す!
そのために、私は──
〇後宮の一室
フール副隊長「隊長っ! 隊長にお客様が──」
ヤコブ隊長「断れ 私は事前連絡のない相手とは会わない 時間を無駄にしている暇など──」
「ここにいるのね!」
アルル姫「改めまして、ごきげんよう 私はボヌール王国の姫 アルル・ド・ルロワ」
アルル姫「ヤコブ・マーティン隊長! あなた、私と婚約しなさいっ!」
読みやすさ&テンポの良さがすごい!😆 さすがですね✨
アルル姫の推しへのブレない姿勢が素晴らしいですね✨ ガブ様のために石ころとでも結婚するという言葉どおり、敵討ちのために犬猿の仲っぽい隊長と婚約……続きが気になる展開ですね~😂
妄想の中の『火山の戦い』がヒドすぎて吹きました😂 笑
まさかガブ様がお亡くなりになるとは…!!アルル姫のガブ様が負ける想像シーンに爆笑してしまいました😂 ラストの婚約も完全に予想外で、驚きが盛り沢山の1話でした🙌 推し愛、無敵ですね✨
天真爛漫な主人公が魅力的ですね!
推しへの勢い余る想いからの行動力が楽しく、所々に置かれている伏線もあって、続きが気になる第一話でした👍