3、咲哉(脚本)
〇洋館の一室
女性「もしも悲しい事があっても、ニコニコしてればどっかに飛んでいっちゃうんだから」
「飛んでいっちゃう?」
女性「そう。だから、いつもニコニコしてるんだよ」
女性「そうしたら、悪い事は飛んで逃げて、良いことがきっと起こるから」
〇城の廊下
咲哉「えっと、次は水不足の所に水を降らせて・・・」
咲哉「その帰りに教材を取りに行って・・・」
咲哉「念の為、ミズ達の様子を見に行って・・・」
咲哉「その次は食料調達の手配を・・・」
湊斗「っと、間に合った!」
咲哉「あ、ミト。どうした?」
湊斗「コウ兄さんから、今日はサク兄さんの補佐に回れって」
咲哉「俺の?」
湊斗「今後、俺にもっと外の事を任せるからってさ」
咲哉「って言う名目で俺が一人で変な事をしない様に見張りに来た、って事か」
湊斗「あ、はは・・・」
湊斗((バレてます!コウ兄さん!))
咲哉「確か、昨日巡回だったな?」
湊斗「え、あ、はい」
咲哉「それなら、あんまり詰め込むとキツいか・・・」
湊斗((詰め込むって、どんなハードな予定組んでたの!?))
咲哉「取りあえず、今日は優先事項に留めておくか・・・ミト?どうした?」
湊斗「あ、いや、何でもないです」
咲哉「そうか?じゃあ、行くぞ」
湊斗「はい!」
湊斗「・・・・・・・・・」
〇洋館の一室
湊斗「え、俺がサク兄さんに同行!?」
光輝「そう。家族がいれば、アイツも無茶しないだろうし」
湊斗「そうかもしれないし・・・サク兄さんと行動出来んのは嬉しいかも」
光輝「なら良かった」
光輝「それで悪いんだけど、サクの視線を追ってくれるか?」
湊斗「視線・・・?」
光輝「アイツが何を考えているのか知りたいんだ」
〇城の廊下
湊斗「俺には荷が重くねぇか・・・?」
咲哉「ミト?」
湊斗「あ、はい!行きます!」
〇中東の街
咲哉「大丈夫か?ミト」
湊斗「っす・・・」
湊斗「(スゲェハード!水降らせて荷物取り入って、瑞希達の様子を見て、アチコチの点検行って・・・)」
湊斗「(止まったの、俺の為に休憩した程度じゃん!)」
湊斗「サク兄さんって無敵ですか」
咲哉「それはないなぁ・・・」
咲哉「ん?」
湊斗「どうかしたんですか?」
咲哉「あっち」
湊斗「!」
〇中世の街並み
文弥「異常無し、と」
有彩「異能者達・・・一体どこに隠れてるのかしら」
文弥「全くだ。こんなに探しても見つからんとはな・・・」
〇中東の街
湊斗「番犬・・・こんな所まで」
咲哉「放っておいていい。見付かりっこ無いんだからな」
湊斗「っす」
咲哉「ミトの気持ちも分かる。だけど、無駄に絡む必要はない」
湊斗「・・・はい」
〇中世の街並み
有彩「それにしても、あの話・・・本当なのかしら」
文弥「あの話?」
有彩「カーサの一人と隊長が兄弟って話」
〇中東の街
湊斗「っ!」
湊斗((そう言えば、コウ兄さんもそんな事言ってたな))
湊斗((言われてみれば、番犬の隊長とサク兄さん似てんだよな・・・))
〇中世の街並み
文弥「ああ、その話なら本当だ」
有彩「え?」
文弥「あの咲哉は隊長の血縁上の兄。犯罪者を身内に持った末路・・・知ってるだろ。しかも、双子」
有彩「・・・詳しくない?」
文弥「隊長から聞いたからな」
静哉「巡視にいつまで時間をかけている」
有彩「隊長!?」
文弥「す、すみません」
静哉「・・・・・・それと、いつまで覗いている」
「え?」
〇中東の街
咲哉「おっと、バレた」
咲哉「番犬らしく、鼻が利くな」
湊斗「ど、どうします」
咲哉「逃げる」
湊斗「了解!」
〇中世の街並み
静哉「追え、逃がすな」
「はっ!」
静哉「・・・・・・咲哉」
〇荒廃した市街地
咲哉「ミト、こっち」
湊斗「はい!」
文弥「くそっ、どこに行った!」
有彩「ちょこまかとぉ・・・!」
静哉「逃がしたか」
文弥「すみません、隊長」
静哉「いや・・・奴相手では仕方ない」
静哉「・・・帰還する」
「はっ!」
咲哉「行ったな」
湊斗「はぁ、助かった」
咲哉「念の為、今日は遠回りして帰ろうか」
湊斗「はい」
湊斗「こんな道、よく知ってるな・・・」
〇廃倉庫
湊斗「周辺に人の気配なし」
咲哉「よし、行こう」
湊斗((本当、自由自在な異能だな))
《異能認証》
光輝「おっ、と。帰ってきたのか」
光輝「遅いから迎えに行こうと思ってたんだ」
咲哉「悪い悪い。ただいま」
光輝「おかえり」
湊斗「ただいまっす」
〇地下に続く階段
光輝「で?何があった」
湊斗「番犬に遭遇しました」
光輝「!大丈夫だったのか」
咲哉「ああ、今回は遊ばずに逃げた」
光輝「ならいいけど」
光輝「サクは直ぐに遊びたがるんだからな」
咲哉「悪い悪い」
光輝「本当に思ってんのか?」
湊斗((遊びたがる・・・か。俺が居たから逃げるのを選んだんだろうな・・・))
咲哉「ミト?疲れたのか?」
湊斗「いえ、大丈夫です!」
〇地下道
光輝「そういえば、最近番犬が活発化してた理由。分かったぞ」
咲哉「そうなのか?」
光輝「リベレだ」
湊斗「リベレって・・・確か、うちと逆で反抗してる異能者集団」
咲哉「非異能者を恨み、異能者だけで結成された反抗組織。それで?」
光輝「先日、リベレと番犬が衝突した」
「!」
光輝「番犬が拠点を襲撃したそうだ。そこで何人かは捕縛されたらしい」
湊斗「何人か?」
光輝「多くは逃走。ただ、バラバラになった上に、重要拠点を失った」
咲哉「番犬側が拠点を潰したのか」
咲哉「となると、接触する可能性があるな」
光輝「ああ。うちには非異能者も多い」
湊斗「気を付けないとっすね」
〇非常階段
咲哉「コウ、後でリベレの情報をくれ」
光輝「おう、分かってる」
湊斗「巡回増やします?」
咲哉「いや、大丈夫。下手に動くより」
光輝「今はリベレの様子を見よう」
湊斗「了解っす」
〇立派な洋館
咲哉「すっかり遅くなったな。悪い」
湊斗「いえ、全然」
光輝「サク、この後ちょっといいか?」
咲哉「ああ」
湊斗「じゃあ、お先」
咲哉「・・・で?」
光輝「リベレの話が出た時、カズとレン先生が動揺していた」
咲哉「仕方ない。あの二人は・・・リベレから逃げてきたのだから」
光輝「それでも、二人はもし駆け込んで来たら受け入れてくれと」
咲哉「まぁ、二人ならそう言うだろうね」
光輝「みんなにフォローは頼んである」
光輝「ただ、サクの方でも声をかけてくれ」
光輝「多分、お前の言葉が一番安心できる」
咲哉「りょーかい。顔を出しておくよ」
光輝「疲れてるのに悪い」
咲哉「気にするな、コウはこれからアンの所か?」
光輝「そ。帰ってこないって気にしてたから」
咲哉「アンにも心配かけてごめんって言っといてくれ」
光輝「了解」
咲哉「リベレ・・・余計な事をしてくれるなよ」
〇おしゃれな食堂
「・・・・・・・・・」
咲哉「どうした?カズ、レン先生」
「!」
咲哉「ここ、座るぞ」
緋蓮「サク兄さん・・・」
咲哉「大丈夫」
和人「え?」
咲哉「何があっても、俺がお前達を守る。この場所を戦いに巻き込ませはしない」
「・・・・・・・・・」
和人「ありがとな、サク兄さん」
緋蓮「ここに逃げ込めて、本当に良かった・・・」
和人「異能者、非異能者関係なく受け入れてくれたから・・・俺達は俺達でいれた」
緋蓮「私達を受け入れてくれて、心から感謝しているよ」
咲哉「俺は手を伸ばしただけ。その手を取ったのはお前達だし、コウとアンが居場所を作ったんだ」
咲哉「・・・・・・お前達はもう俺の家族。何があっても、それは変わらない」
「・・・・・・・・・」
咲哉「さて、暗い話は終わり」
咲哉「まだ花音の歓迎会をしてなかったよな?」
和人「ああ」
咲哉「近々やろう。飛びっきりの料理を頼むぞ」
和人「任せろ!」
咲哉「レン先生も。飾り付け頼んだ」
緋蓮「ふふ、了解」
和人「その時はサク兄さんも沢山食べてくれよ」
咲哉「そうだな」
咲哉「じゃあ、おやすみ。あまり夜更かししない様に」
和人「言われちまったし、あと一杯飲んだら解散にするか」
緋蓮「賛成」
〇建物の裏手
咲哉「お兄さん達、どうしたの?」
緋蓮「え?」
和人「子供・・・?」
咲哉「こんな所にいたら、風邪ひくよ」
緋蓮「だけど・・・」
和人「行き先なんて・・・」
咲哉「ないなら、うちに来る?」
「え?」
咲哉「異能者だろうと非異能者だろう受け入れるよ」
咲哉「さ、一緒に行こう」
〇城の廊下
咲哉「みんなが笑っていれば、悪い事なんて飛んで逃げてるんだよな?」
咲哉「俺のしている事は間違いじゃない」
咲哉「これでいいんだよな、───」
〇黒
終