エピソード1・水の中(脚本)
〇黒背景
誰か。
誰かに会いに行こうとしていた。
そんな気がする。
それが誰だったのかは思い出せないけれど。
きっとそれは、とても大切な誰かだったんだろう。
自分の心配より、顔も知らないその人のことを気にかけてしまうくらいには。
〇殺風景な部屋
「お兄さん、起きて。 起きてってば」
峯岸輪廻「ん、んん・・・・・・?」
峯岸輪廻「あ、あれ?俺は・・・? ここは、一体・・・」
須藤蒼「良かった、起きてくれた!ずっと目覚めないから心配してたんだ!」
峯岸輪廻「俺は、寝てた、のか? というか、なんだこの部屋。君は・・・?」
須藤蒼「僕、あおい・・・須藤蒼っていいます。小学生です。 その、学校帰りに変な人に襲われて。気づいたらここに」
須藤蒼「この部屋、僕達以外誰もいないみたいなんです。 ドアらしいものもなくて」
峯岸輪廻「誘拐されてきた、のか?俺も?」
峯岸輪廻「・・・!? お、俺は・・・誰だ?」
須藤蒼「え!?」
峯岸輪廻「思い出せない・・・自分の名前も、何も。 これ、制服か?ってことは俺は、中学生か高校生、なのか?」
須藤蒼「記憶喪失ってことですか? じゃあ誘拐された時のことも?」
峯岸輪廻「ああ、何も思い出せない」
須藤蒼「そ、そうだ。制服着てるなら・・・生徒手帳とか、名札とか持ってませんか? それで何かわかるかも」
峯岸輪廻「なるほど、冴えてるな」
峯岸輪廻「あった、生徒手帳!・・・みねぎしりんね、十六歳。 写真もある。これが俺の顔で、名前か。変わった名前だな」
峯岸輪廻「だが、何で記憶がない?それに、こんな部屋に閉じ込めて何をさせようっていうんだ?」
須藤蒼「さあ・・・。でも、凄く嫌な予感がする・・・」
峯岸輪廻「ん?チャイム?」
『皆さん、皆さん。おはようございます。
全員起きたようですので、ゲームの説明をさせて頂きます』
峯岸輪廻「アナウンス・・・?」
『ここに集めさせて頂いたのは、我々が選んだ“勇者”の資格を持つ方々です』
『今から皆さんには、全力でゲームに挑み、生き残っていただきます。まずは、最初の試練をクリアしてください』
『今皆さんがいる部屋にはある仕掛けがしてあります。一定時間が過ぎると皆さんは溺れ死んでしまうでしょう』
『生き延びる方法は用意されています。皆さんはぜひそれを見つけ、試練をクリアしてください。それではご健闘をお祈り致します』
須藤蒼「え、え?死ぬって・・・僕達が?」
峯岸輪廻「ふざけた事言いやがって・・・!何が目的なんだ!?」
須藤蒼「み、峯岸さん。本当に、誘拐犯たちは僕達を殺すつもり、なのかな?」
峯岸輪廻「輪廻でいい。なんとなく、下の名前で呼ばれた方がしっくりくる気がするし」
峯岸輪廻「腹立たしいが、本気だと思っておくべきだ。今のアナウンス通りとするなら、誘拐されたのは俺達だけじゃない」
峯岸輪廻「最低でもあと二人。もしくはそれ以上。それだけの人間を拉致して、これだけの設備を整えるのにどれほど金と手間がかかると思う?」
峯岸輪廻「これだけの事をしておいて、ドッキリでしたじゃ採算が合わない。人を殺してでも成し遂げたい目的がある、そう考えておくべきだ」
須藤蒼「す、すごい。落ち着いてるね・・・・・・」
峯岸輪廻「一人じゃないからな。・・・俺が諦めたら、お前も死ぬんだろ? 子供を見捨てるほど落ちぶれちゃいないさ」
須藤蒼「僕のため?今初めて会ったのに?」
峯岸輪廻「大人が子供を助けるのは当然だ。まあ、俺もまだ未成年ぽいけど、年上には違いないからな。 とにかく、出来ることを全力でしよう」
峯岸輪廻「諦めるなよ。諦めるのは、死んでからでも遅くはない」
須藤蒼「は、はい!と、とりあえず僕は何をすれば?」
峯岸輪廻「二人で部屋中をくまなく調べよう。幸い、さっきのアナウンスは俺達が“溺れ死ぬ”と言った」
峯岸輪廻「ということは、いつの間にかガスが充満していて死ぬ、というパターンじゃない。仕掛けが作動すれば目に見えて変化が現れる」
須藤蒼「なるほど、それまでが勝負!」
峯岸輪廻「ああ、落ち着いていこうぜ。こういう状況は、焦った奴から負けていくもんだ」
〇黒背景
自分が誰なのかなんてわからない。
でも、俺はこれだけは強く思ったんだ。
守るものがある限り、きっと俺は俺でいられる、と。
〇殺風景な部屋
峯岸輪廻「・・・何も見つからないな」
峯岸輪廻「ドアみたいなものがあるから、てっきりそこが開くのかと思ったら。 これ、本当にドアなのか?四角い切れ込みがあるだけのような」
須藤蒼「うーん、地面も壁も、手の届くところは全部探したけど、本当に何もない・・・」
須藤蒼「脱出できる仕掛けなんて、本当にあるのかな」
峯岸輪廻「出入口があるのは確かだな」
須藤蒼「何でそう言い切れるの?」
峯岸輪廻「出入口がないなら、どうやって犯人は俺たちをこの部屋に突っ込んだ? 人間は壁を通り抜けたりできないんだぜ?」
須藤蒼「い、言われてみれば・・・」
峯岸輪廻(文字のようなヒントがあるわけでもない。床も壁も、押せるところやでっぱりはない。 まだ探していないところは・・・)
峯岸輪廻(もし、俺の予想が正しいとすると、方法は・・・)
峯岸輪廻「警報・・・!」
〇殺風景な部屋
峯岸輪廻「くそ、やっぱり上から水が降ってくるパターンか!」
須藤蒼「あ、あああ・・・!こ、このままじゃ溺れちゃう・・・!」
須藤蒼「どどどどどどうすればっ・・・!」
峯岸輪廻「落ち着け!この広さの部屋だ。完全に水没するまで時間はある!」
須藤蒼「で、でもこのままじゃ、あのドアみたいなところが水に浸かって開かなくなるんじゃ!」
峯岸輪廻「それこそが罠だ。二人で念入りに調べた。あれはドアじゃなくてただの四角い切れ込みだ」
峯岸輪廻「それでもドアの形をしていれば、あそこが出口だと思い込んで執着したくなる。 それが人間心理というものだ」
峯岸輪廻(そうだ、恐らく犯人は俺達を試している!水没しつつある部屋で、どこまで冷静さを保てるかどうか!)
峯岸輪廻(この部屋から脱出する方法は必ずある!何故ならアナウンスは、“最初の試練”と俺達に言った)
峯岸輪廻(次の試練をやらせる気があるのに、ここで全員ぶっ殺すのは本末転倒だ。 ならば、あと調べていない場所はただ一つ!)
峯岸輪廻「いいか、蒼。水が溜まってきたら、俺達の体は浮力で浮く。そして、いずれは天井に手が届くようになる」
峯岸輪廻「そうしたら、急いで二人で天井を調べる!恐らく、出口は天井のどこかにある!」
須藤蒼「て、天井!?わ、わかった。やってみる!」
峯岸輪廻「足がつかなくなっても溺れるなよ。悪いが、そこまで面倒見てやれないぜ」
須藤蒼「だ、大丈夫!水泳は一級持ってるから!」
峯岸輪廻「よし、やるぞ!」
〇黒背景
〇薄暗い廊下
峯岸輪廻「ふう。・・・なんとか助かったな」
須藤蒼「し、死ぬかと思った・・・」
峯岸輪廻「はは、お互いびしょ濡れだ」
峯岸輪廻「見ろ、着替えとタオルが用意されてるぞ。 シャワー室なんて書いてある部屋もある。 変なところで親切な誘拐犯だな」
峯岸輪廻「・・・ありがとう。お前が天井の出口を見つけてくれたおかげで、助かった」
須藤蒼「い、いや、それは輪廻さんが天井に出口があるって気づいてくれたからで!」
須藤蒼「ほ、本当にありがとうざいます!」
峯岸輪廻「俺は自分が助かりたかっただけだ、気にするな」
峯岸輪廻「まあ、安心しろよ。さっき言った通り、子供見捨てるほど落ちぶれちゃいない。 最後まで、お前のことはちゃんと守ってやる」
峯岸輪廻「まあ、記憶がない高校生なんざたよりにならないかもしれないが」
須藤蒼「う、ううん!そんなことない、です!」
須藤蒼「まだどうなるかわからないけど、でも・・・これからよろしくお願いします。 一緒に、生き残るために」
峯岸輪廻「ああ。・・・こんなクソゲームを考えた奴らになんか負けてやらない。 絶対生き残ってやろうぜ」
とても惹きつけられます😊
危機的状況からのスタートと、散りばめられた謎、見入ってしまいました✨
そしてフルボイスも聴き入ってしまいました!素敵なお声ですね🥰
こんにちは!生き残り脱出ゲーム大好きなのでとてもわくわくしました!
主人公が子供に優しくて魅力的です🙌
これから謎がじわじわ明かされていくのでしょうか、楽しみです!
凛としたお声でストーリーが更に楽しめました🌼
やはりボイスがあると臨場感や迫力が違いますね。やたらに輪廻が「年下だから守る」と連呼しているのが気になる。子供と油断させての蒼が黒幕なんてことはないですよね。はー、続きが楽しみすぎる。