エピソード18(脚本)
〇寂れた雑居ビル
菜々美と紫苑は、北澤を訪ねて事務所の前に来ていた。
柱の陰からそっと窺(うかが)うと、ちょうど北澤が玄関掃除をしているところだ。
大野菜々美「きたざ・・・」
菜々美が北澤に話しかけようと踏み出すと、蛇淵(へびぶち)が玄関から出てきた。
二人は柱にそっと隠れる。
蛇淵はおもむろに煙草を取り出し、吸い始めた。
蛇淵雅子「プハー」
北澤瑛士「あ、社長、お疲れ様です」
北澤瑛士「明日のころりんずのライブですが、あまり大きい箱では無いので僕一人で大丈夫ですかね?」
蛇淵雅子「ダメよ。私も行く」
蛇淵雅子「私と貴女は一心同体でしょう? 一緒に事務所を盛り上げましょう」
北澤瑛士「・・・で、でも、ぺぇる☆ぃえろーの路上ライブは一人で行かれてましたね?」
蛇淵雅子「あら、よく知っているのね。ふふふふ」
ジュゥゥゥゥ
ぺぇる☆ぃえろーの話が気に食わなかったのか、煙草の火を北澤の腕に押し付ける。
北澤瑛士「うわ、あちっ! すす、すいません!」
蛇淵雅子「ずいぶんあの子達に肩入れてるじゃないか」
北澤瑛士「いや、だって自分がスカウトしたから」
蛇淵雅子「貴方、変なこと考えてるんじゃないでしょうね?」
北澤瑛士「い、いえ。 もう自分の手を離れた今、何も出来ることはないですし」
蛇淵雅子「本当かしら?」
北澤瑛士「本当ですよ!」
蛇淵雅子「ふふふふ、嘘が下手ね」
ジュッ
蛇淵が未だ火がついている煙草を素手で握りつぶすと、その場に黒い煙が上がる
彼女は怒りが抑えられないのか、その拳は固く、強く震えていた。
北澤は蛇淵をなだめつつ、2人は事務所へと入っていった。
〇寂れた雑居ビル
大野菜々美「北澤っち、うちらのこと気にしてくれてるんだぁ」
松山紫苑「でもやっぱり社長がベッタリついてる。 ずっと一緒に居て、わざと私達に会わせないようにしてるみたい」
大野菜々美「くうううう! もうこうなったら自分たちで証拠見つけてやろう! 」
大野菜々美「火災報知器とか鳴らして外におびきよせてさ」
松山紫苑「いや、それは出来ないよ。 事務所追い出されたうちらが入れば、住居侵入罪になる」
大野菜々美「あんな悪いやつなのに私が捕まるの!?」
松山紫苑「どうにか社長だけを外におびき寄せて、北澤さんと証拠資料探せればいいんだけど」
大野菜々美「社長だけをねぇ・・・。 あーあ、本当はこんな泥臭い作戦練ってる未来じゃなかったのになぁ」
大野菜々美「あーーー! ライブしたーーーい!! 歌いたーーーーーーい!!」
松山紫苑「そうだ、ライブをやろう!」
〇名門の学校
〇テニス部の部室
埃っぽい室内にはテニスラケットやボールが散乱している。
布団代わりに敷かれたマットの上で、紫苑はパソコンに向かっていた。
松山紫苑「よし出来た!」
大野菜々美「え? ていうか何してんの?」
松山紫苑「だから、盛大にライブをするの」
大野菜々美「何? 頭おかしくなった?」
大野菜々美「やりたくても出来ないんでしょうが! それにそんなことしてる場合じゃないって」
松山紫苑「クラウドファンディングのページ作った。 これでお金を集めよう」
大野菜々美「クラウドファイティング? 何それ、戦うの?」
松山紫苑「お金必要な人が、支援してくれる人を探すサイトのこと」
松山紫苑「ほら、新しい事業とか、ボランティアとか研究とか、アイドルも載ってるでしょ?」
松山紫苑「ここで、ライブ資金を集めるの」
大野菜々美「ふーん」
松山紫苑「菜々美はブログとかSNSで宣伝して、ここのURLを貼りつけて」
松山紫苑「『OH! TUBE』で一芸披露するのとか絶対イイから!」
大野菜々美「あのさ・・・ライブやりたいって言ったのは菜々美だけどさ」
大野菜々美「・・・やっぱり今はそういう気にはなれないというか」
大野菜々美「ライブよりも社長の悪事を暴いて、バイショウキンをどうにかするのが先じゃない?」
松山紫苑「違う違う! 事務所に隠してある証拠を探す為にライブするの!」
大野菜々美「・・・ん? えっ?」
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