【第七話】リセット(脚本)
〇渋谷駅前
第七話『リセット』
この世界は、平等じゃない。
志田聖「はぁー、何だよあの美男美女のカップル」
容姿性格、その他諸々・・・・・・世界は、不条理だ。
俺だって、やる気さえ出せば幸せな人生が送れるって考えていた時期もあるさ。
志田聖「自分が、情けない」
この年齢になっても、恋愛経験ゼロ。学歴も冴えない、性格も容姿も微妙。
志田聖「あー、何かむかついてきた」
思いっきり、石を蹴り飛ばす。
その石は、高級そうな黒塗りの車にぶつかってへこみを付けた。
車から、怖そうなお兄さんたちが出て来るのが見える。
捕まったら、何をされるか分からない。俺は、一目散にその場を逃げ出した。
〇駅のホーム
志田聖「はぁーっ、自分が情けない」
こんなんじゃ、駄目だ。何度、そう思ったか分からない。
でも、人間っていうものはそう簡単に変われるものじゃない。
〇電車の中
心と意識は、全く別のものだ。どれだけそうあるべきだと思っても、心が動かなければ行動は出来ない。
それを、甘えだと一蹴する者もいる。そんなこと、本人が一番感じているのだ。
だけど、出来ない。そんな自分に、日々罪悪感が募るばかりだ。
志田聖「本当、やってられねーよな」
志田聖「って・・・・・・俺、誰に話しかけてるんだろう。気でも、狂ったか」
変わらない、日常。それを彩るには、相応しい男では無いか。
俺は、普通の男であることを誇るべきだろう。何かの賞を、受賞しても良いくらいだ。
〇教室
何かが、おかしい。俺の心が、そう囁いていた。
潜在意識の、奥の奥の方がうずくような感覚。
圧倒的な違和感が、胸の内をざわつかせる。
志田聖「そうだ。千里先輩は、学校に来ているのかな」
ふと、湧き出た疑問。
志田聖「いや、千里先輩って誰だっけ・・・・・・」
それは、瞬時に消し去られる。
だけど、言葉にした瞬間言い知れぬ感情が湧き上がってくる。
理由は、分からない。
これから授業が始まるというのに、俺の足はふらりと学外へと歩み出していた。
〇高架下
誰かを、探している。そんな、感覚があった。
でも、絶対に見つからない。そんな確信も、同時に持ち合わせていた。
むしろ、俺はその人物と出会うことを恐れていたのかもしれない。
ただ足を動かして、時間が過ぎるのを待っていた。
志田聖「え・・・・・・」
一瞬、見えた人影。何故だか、それが探している人物に思えて仕方が無かった。
どうせ、人違いだ。それでも俺がその路地裏に向かったのは、強迫観念のようなものが働いたからなのかもしれない。
不安、恐怖。何より人を動かすのは、それらの感情だ。
だからこそ、人は惹きつけられるのだ。その先が、危険な道だと分かっていても。
〇ビルの裏
志田聖「何で、千里先輩がここにいるんだ」
志田聖「だって、俺は・・・・・・」
そうだ、俺は千里先輩の存在を無かったことにしたはずだ。
彼女が、ここに居ていいはずが無いのだ。
でも、再会の嬉しさの方が勝る。
二度と、会えないと思っていた。
徐々に、彼女に向かって歩み寄る。
志田聖「千里先輩」
久景千里「聖君、下がって」
志田聖「千里先輩が・・・・・・二人いる」
激しい戦闘が、始まる。俺は、呆然とその場に立ち尽くしていた。
ラナ・D・ヘルナンデス「You! そんなところで突っ立ってないで、私に付いてきて」
志田聖「君は、ヘルナンデスか」
ラナ・D・ヘルナンデス「どうして、私のことを知って・・・・・・」
ラナ・D・ヘルナンデス「そう、やっぱりあなたが・・・・・・」
ラナ・D・ヘルナンデス「今は、GO! とにかく、逃げるんです」
〇組織のアジト
アジトには、顔馴染みのメンバーが揃っていた。
志田聖「おい、ジャクソン! 何で、お前が居るんだよ」
ロバート・A・ジャクソン「あ? いきなり態度でけぇな・・・・・・何様の、つもりだよ」
クリストファー・W・ジーク「まあ、二人とも落ち着いてくれ。事情は、私が話そう」
クリストファー・W・ジーク「まず、君について教えて貰おうか。どこから、来たんだ」
志田聖「いや、言っている意味が分からないけど」
クリストファー・W・ジーク「世界は、無数の可能性に分かれている。君が来た世界が、どうなっていたかを知りたいんだ」
志田聖「俺の、居た世界・・・・・・説明すると、長くなるが」
志田聖「それより、さっきのは何だったんだよ! 説明、してくれよ」
クリストファー・W・ジーク「私たちも、君を襲った存在の情報は持ち合わせていない。だが、もう一人については話すことが出来る」
久景千里「それは、私から話すわ」
志田聖「千里・・・・・・先輩」
久景千里「久しぶりね、聖君。あなたが、私と異なる時間を生きていたことは知っているけど」
久景千里「会えて、良かった・・・・・・」
志田聖「君は・・・・・・本当に、千里なのか」
久景千里「私が、DRAWに入隊した経緯を話すわね」
久景千里「ある日、私の元に彼が・・・・・・ジークがやって来たわ」
久景千里「私が、特別な能力を持っていることを危険視して殺すように命令されたらしいの」
久景千里「でも、彼は殺さなかった」
クリストファー・W・ジーク「私たちは、むしろ彼女を部隊に招待することを選んだんだ」
クリストファー・W・ジーク「殺すのは、惜しい。そう、判断した」
志田聖「ここは、俺の望んだ世界とはまた違うようだな」
クリストファー・W・ジーク「君は、何を望んだんだい」
志田聖「千里先輩の、居ない世界だ。彼女が、全ての元凶だと思ったから」
クリストファー・W・ジーク「成るほど、理解した」
クリストファー・W・ジーク「どうやら、先程の存在も君がやって来た世界から紛れ込んできたらしい」
クリストファー・W・ジーク「私たちは、それを排除したい。どうだい、手を組むっていうのは」
志田聖「俺に、力を貸せって言うのか。彼女は、千里なんだぞ」
クリストファー・W・ジーク「こちらに害を加えてくる以上、何かしらの対策はしなければならない」
クリストファー・W・ジーク「情報を提供してくれるだけでも、構わない。あの存在については、君の方が詳しいんだろう」
志田聖「分かった。まずは、その話をしよう」
志田聖「この事態を招いたのは、久景隼人の研究なんだ」
久景千里「お父さんの?」
志田聖「ああ。彼が目指した『真の平等』とやらのために千里が利用されたんだ」
志田聖「そうして作り出されたのが、さっき戦ったニューロヴァイパーだ」
クリストファー・W・ジーク「この世界ではイコライザーは、既に倒産している」
志田聖「そう、なのか」
クリストファー・W・ジーク「社長である、久景隼人の行方も不明。一応捜索はしているが、見つかる気配は無い」
志田聖「千里先輩・・・・・・そんなことが」
久景千里「私は、大丈夫よ。聖君が、いるもの」
クリストファー・W・ジーク「目下の目標は、ニューロヴァイパーによる脅威の排除だ」
クリストファー・W・ジーク「このまま、放置している訳にもいくまい」
志田聖「分かった、俺も協力するよ」
クリストファー・W・ジーク「ありがとう、感謝する」
ラナ・D・ヘルナンデス「Yeah! 仲間が、増えますね」
ドロシー・R・ランドール「歓迎するよ、聖」
ロバート・A・ジャクソン「ふん、足引っ張るんじゃねぇぞ」
志田聖「余計な、お世話だ」
クリストファー・W・ジーク「明日から、行動を開始する。それまでは、積もる話をじっくり聞かせて貰おうじゃないか」
志田聖「はい、分かりました。知っていることは、全て話します」
クリストファー・W・ジーク「助かるよ」
久景千里「聖君、これからよろしくね」
志田聖「ん、ああ・・・・・・俺なりに、頑張らせて貰うよ」
志田聖「俺たちの、日常を取り戻すために」
これは、平行世界!?
そして、聖くんが行き来できる理由とは!?
この物語世界の深みが面白く、何度も読み返したくなりますね