【第二話】DRAW(脚本)
〇組織のアジト
第二話『DRAW』
ドロシー・R・ランドール「何故、この世界で狂気がまかり通ってしまうのか」
ドロシー・R・ランドール「不意打ちとはいえ、腕を上げたなジャクソン。私から、ナイフを奪い取るとは」
ロバート・A・ジャクソン「へっへへ、油断していなければこんなもんよ」
ドロシー・R・ランドール「一度の油断が命取りになると、普段から言っているだろう」
ドロシー・R・ランドール「たまたま、上手くいったのでは駄目なんだ。常に、警戒を怠ってはならない」
ロバート・A・ジャクソン「あぁ、いちいちうるせぇんだよ! お前だって、油断する時ぐらいあるだろう」
ロバート・A・ジャクソン「ほら、今だって首ががら空きだぜ」
ラナ・D・ヘルナンデス「No! ジャクソン、遊ぶなら私と・・・・・・ね?」
ロバート・A・ジャクソン「ち、お前といると調子が狂うんだよ」
ドロシー・R・ランドール「狂気を支えているのは、裏に居る正気の人間だ」
ドロシー・R・ランドール「具体的には、日本政府。その暗い霧の奥に、黒幕が居るはず・・・・・・我々は、その正体を探りたい」
ラナ・D・ヘルナンデス「この、Crazy! な状況を、何とか打開しなければいけません」
ラナ・D・ヘルナンデス「鉄砲水の様に、むやみやたらに突撃するだけでは駄目なんでーす」
ラナ・D・ヘルナンデス「You! 分かりましたか」
ロバート・A・ジャクソン「俺は、関係ねぇだろ」
志田聖「どうして、日本政府を疑っているんだ? 根拠は、あるんだろうな」
ドロシー・R・ランドール「少し前から、日本政府が不穏な動きを見せていてね」
ドロシー・R・ランドール「イコライザーと呼ばれる企業に、多額の投資を行っていた。通常では、あり得ない金額だよ」
ドロシー・R・ランドール「その資金は、とある生物兵器の開発に充てられたと考えている」
久景千里「ニューロヴァイパー、ですね」
ドロシー・R・ランドール「どうして、それを? 国家機密レベルに、保護された情報のはずだが」
久景千里「それが科学者である、私の父親の夢だったからです」
ドロシー・R・ランドール「久景隼人・・・・・・イコライザーの、社長だな」
久景千里「父は、幼い頃に私に語ってくれました。『真の平等』こそが、平和に繋がる鍵だって」
久景千里「そうして開発されたのが、ニューロヴァイパー。でも私には、それが何なのか未だに分かりません」
志田聖「真の平等か。それが、もし今の状況を言っているんだとしたら・・・・・・」
ドロシー・R・ランドール「黒幕は、久景隼人ということになるな」
ラナ・D・ヘルナンデス「Good job! 事態解決に、一歩近づきましたね」
志田聖「まだ、千里の父親が犯人だと決まったわけじゃ無いだろう」
ドロシー・R・ランドール「いや、先程の話が真実なのだとしたら我々の情報とも合致する」
ラナ・D・ヘルナンデス「とにかく、調べる必要があるってことですねー」
ラナ・D・ヘルナンデス「とは言え、イコライザーは難攻不落の城の様なもの。そう簡単には、いきませんよね」
ロバート・A・ジャクソン「証拠を隠す暇も無く、突撃すれば良い。考えるだけ、無駄だぜ」
ドロシー・R・ランドール「いろいろ意見があるだろうが、私から一つ提案がある」
ドロシー・R・ランドール「この作戦には、聖君の力が不可欠になる」
志田聖「俺が? どうして・・・・・・」
ドロシー・R・ランドール「それは、追々説明しよう。今はまず、私を信じて従ってくれ」
ロバート・A・ジャクソン「さっき会ったばかりの奴を、信用できるかよ」
ロバート・A・ジャクソン「って声が、聞こえてくるようだぜ」
ドロシー・R・ランドール「無理は、重々承知の上だ」
ドロシー・R・ランドール「今朝の騒ぎを政府が嗅ぎつけない内に、作戦を決行したいんだ」
ロバート・A・ジャクソン「はいはい、勝手に発砲してすいませんでしたよ」
ドロシー・R・ランドール「今回の任務は、私と聖君・・・・・・そして、ヘルナンデスの三人で行う」
ロバート・A・ジャクソン「俺は、何をすれば良いんだ」
ドロシー・R・ランドール「ジャクソンは、このアジトの警備をしてくれ。これは、千里の護衛も兼ねている」
ロバート・A・ジャクソン「了解」
ドロシー・R・ランドール「聖君も作戦に参加する以上、その格好ではまずい。更衣室で、戦闘服に着替えてきてくれ」
志田聖「分かりました。聞きたいことは山ほどありますが、今は貴女に従います」
ドロシー・R・ランドール「それで良い、助かるよ」
〇宮殿の門
時刻──2215。内閣総理大臣公邸
志田聖「黒幕は、イコライザーの社長である隼人じゃ無かったのか? ここは、内閣総理大臣の公邸だぞ」
ラナ・D・ヘルナンデス「Oh! ランドール。彼から情報を聞き出すつもりなんですね」
ドロシー・R・ランドール「ああ、その通りだ。彼が隼人と関りを持っていたのは、確実だからな」
志田聖「いや、でも流石に警備が厳しいんじゃ・・・・・・」
ドロシー・R・ランドール「それについては、問題ない。既に、本国とは連携が取れている。今まさに、日本国との話し合いがこの中で行われているはずだ」
ドロシー・R・ランドール「私たちの役割は、無事に会合が終わるのを見届ける事。そして、万が一の時には・・・・・・」
ラナ・D・ヘルナンデス「Bang! 私たちの、出番という訳ですね」
ドロシー・R・ランドール「この異常事態に対する対策について、直接意見を聴取する算段が取れているという訳だ」
志田聖「それじゃあ、俺は何のために来たんだよ」
ラナ・D・ヘルナンデス「それは、もう一つのIrregularが発生した時の保険ですよね」
ドロシー・R・ランドール「ああ、君には他の人間には無い特別な能力がある。それは・・・・・・」
志田聖「何だ? 爆発か」
ラナ・D・ヘルナンデス「Sorry! 説明は、また後で。今は、現場に向かいましょう」
〇炎
俺たちを出迎えたのは、立ち上る炎と死肉を喰らう異形の群像。
その中心に立つ男には、見覚えがあった。
志田聖「内閣総理大臣、明田正十郎・・・・・・」
明田正十郎「けっけっけ、そんなことだろうとは思っていたけどさ」
明田正十郎「僕に隠し事は出来ないって、なーんで分からないかな」
ドロシー・R・ランドール「貴方が、大使たちを殺したんですか」
明田正十郎「そうだよ。何か、悪いことでもしちゃった?」
ドロシー・R・ランドール「貴方がイコライザーと関係を持っていることは、知っている! 事情を、話しなさい」
明田正十郎「そーね、ちょっとだけなら話しちゃおうかな」
明田正十郎「これから死にゆく君たちの為の、僕なりの誠意ってところさ」
明田正十郎「僕の周りにいる彼らニューロヴァイパーは、元々人間を殺すために作られた兵器なんかじゃない」
明田正十郎「今回は、仕方なくと言ったところだ。あまりに、大使たちの無礼が過ぎたからね」
ラナ・D・ヘルナンデス「Why? それでは何のために、ニューロヴァイパーを開発したのですか」
明田正十郎「世界平和のためさ」
明田正十郎「人間はこれまで、世界平和の為とか言いながら大勢の人間を殺してきた」
明田正十郎「正直、呆れてしまうよ。一個人の生きる権利すら守れないで、何が平和だ」
明田正十郎「この世界は、多数の犠牲の上で少数の人間が幸福に生きられるように出来ている」
明田正十郎「私と同じ、日本人の君ならよく分かっているんじゃないか? 競争社会の、現実を」
明田正十郎「強者が、弱者を食い物にする。そんな光景を、何度も目の当たりにしてきた」
志田聖「あんたは、内閣総理大臣だろう? それが問題と思うなら、何とでも出来たはずだ」
明田正十郎「だから、やったのさ。平等の権利の宣誓は、君も覚えているだろう」
志田聖「このいかれた世界を作ったのは、やっぱりあんただったって言うことか」
明田正十郎「ふふふ、さて・・・・・・どうかな。これ以上喋ると、怒られてしまいそうだ」
志田聖「裏に、誰かいるのか」
明田正十郎「知る必要は無いさ。そもそも、何で君はイコライザーの影響を受けていないんだ」
明田正十郎「どういう仕掛けなのか、しっかり分析した方が良さそうだ。君を、八つ裂きにしてからね」
明田正十郎「その方が、解剖の手間が省けるだろう」
周囲を、異形が取り囲む。
それを合図に、DRAWの二人は銃を構える。
一方で、俺の武器はナイフ一本だ。護身用にと持たされたが、正直非武装に近い。
銃撃が、始まる。だが次々と現れる異形の群れは壁の様に立ち塞がり、向こう側に居る正十郎の元へは届かない。
銃の、射線上に出る訳にはいかない。俺は、しばらくの間背後の警戒に当たる。
そこで、気づく。天井に据え付けられた柱が、軋み音を立てている。今にも、落ちてきそうだ。
志田聖「二人とも、天井が落ちて来るぞ! 避けろ」
咄嗟の、判断だった。
二人とも、回避することに成功した様だった。だが違うのは、俺が避けた方向が部屋の内側だったということだ。
一人、孤立してしまった。
気づけば二人は、殆どの異形を掃討していたらしい。今ここに居るのは、俺と目の前にいる男だけだ。
明田正十郎「ちぇっ、全員まとめてやれるかと思ったんだけどな」
明田正十郎「まあ、良い。俺が、止めを刺してやるよ」
正十郎が取り出した銃が、こちらに向けられる。
反応する間も無く、その引き金が引かれ始めた。
感情が昂り、死への高揚感が心臓の鼓動を徐々に高めていく。
そして、心臓が弾け飛びそうになった時・・・・・・
脳に、吹き矢で突かれたような感覚が奔る。
〇炎
鋭い痛みに、視界が眩む。
薄れゆく視界の中で、最後に見えたのは・・・・・・
俺は、その少女を知っている気がする。
それは遠い過去に消し去った、忌々しい記憶の枷だった。
鬼気迫るシーンにドキドキするばかりです!
主人公にまだ明かされぬ過去があるようで、その点も含めた続きもすごく気になります!