サブリミナル・リアリティ

jloo(ジロー)

【第一話】イコライザー(脚本)

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〇渋谷駅前
  この世界は、平等だ。
  どんな性格や容姿をしていたとしても、この社会は『彼ら』を受け入れる。
街の人「もう、たっくん。ここ、街中だよ? 恥ずかしいよ」
異形「アフゥエガギィ・・・・・・イイイゲベダゥ」
街の人「そんなこと、無いよ! 私も、たっくんのことを、愛しているから」
  目の前を歩く、カップルの会話を聞き流す。
  最近、ああいった釣り合わないカップルの存在も増えてきた。
志田聖「異常、だよな」
  自身に、言い聞かせるように呟いた。
  この社会では、誰もこの異常を異常とは認識しない。
志田聖「俺、おかしくなっちまったのかな」
  事の初めは、過去の総理大臣の発言にまで遡る。
  平等の権利。彼が掲げたその理念は、≪イコライザー≫と呼ばれる先端技術企業の後押しによって早々に実現することになる。
  どんな方法を使ったのかは、分からない。だけど、今では国民の殆どは洗脳されてしまったのだろう。
  異を唱える者は、誰も居ない。同時に現れた異形の存在すらも、誰も気にも留めていないようだった。
  あれらは、元は人間だったのだ。今では肉は腐り落ち、本来の姿を想像できない程に変異してしまってはいるが。
  第一話『イコライザー』
久景千里「聖君、おはよう」
  突然背中を叩かれ、落としていた肩がびくりと跳ね上がる。
志田聖「千里先輩・・・・・・今日は、随分遅い登校ですね」
久景千里「聖君が電話で起こしてくれないから、ゆっくり寝ていられたわ」
  千里先輩。俺の幼馴染で、才色兼備なお嬢様だ。
  高校に入学してからは、何かと先輩風を吹かしてくるようになった彼女。
  だが事あるごとに俺を頼って来るのは、昔から変わらないようだ。
久景千里「せっかくだし、一緒に登校しましょうか。話したいことも、たくさんあるし」
志田聖「そうですね、それじゃあ駅に向かいましょうか」

〇教室
  二人で話している間は、何もかも嫌なことを忘れられた。
  教室に溢れる異形も、その異常に気付かないクラスメイト達のことも。
  彼女さえ居れば、この日常が続いても良いとさえ思った。
  それなのに──
久景千里「あ、慎二君。おはよう」
志田聖「あの・・・・・・彼は、誰なんだ」
久景千里「私の、彼氏よ」
異形「キギィヤァスゥ・・・・・・ウウバデラァ」
  現実に、引き戻された。
  これまで、自身の感覚が麻痺していたことに気づく。俺も、他の皆と変わらない。
  洗脳され、この狂気に身を預けていたのだ。
久景千里「どうしたの、聖君。何か、様子がおかしいよ」
  だけど、今ようやく目が覚めた。このままじゃ、駄目だ。
志田聖「そいつは、人間じゃない! 早く、ここから離れるんだ」
  一瞬、静電気が奔ったような痛みが脳に流れる。
久景千里「あれ、どういうこと? 私、一体何をしていたの」
志田聖「千里先輩! 早く、その異形から離れるんだ」
異形「ガギィヤァアアアアアアアッ」
  腕を掴み、こちらへ引き寄せる。
  それに反応した異形は、大口を開けたままこちらに突進してきた。
久景千里「きゃぁっ」
志田聖「とにかく、走るんだ! 異形の居ないところへ」
  自分で言っておいて、疑問が浮かぶ。
  異形が居ないところなんて、本当にあるのだろうか。
  それでも、俺たちは走り続けるしか無かった。
  糸のように細い、希望だけを抱えて。

〇ビルの裏通り
?????「・・・・・・聞こえるか、応答しろ」
?????「何、こちとら暇すぎて忙しいんだけど」
?????「先ほど、近くの学校で電波の乱れを観測した」
?????「原因は」
?????「それを確かめるのが、お前の仕事だ。私も、後で合流する」
?????「了解。ようやく、まともそうな仕事が来たか」
?????「腕が鈍っていないか心配だから、何匹か異形共を狩っていいか」
?????「余計なことは、するな」
?????「はいはい、忠告ご苦労さん」
?????「くれぐれも、油断するなよ」
?????「・・・・・・ち、分かっているよ」

〇高架下
久景千里「ちょっと、どういうことなのか説明して」
久景千里「どうして、人間が異形に変わってしまったの・・・・・・この世界は、どうなってしまったのよ」
志田聖「俺も、分からない。気づいた時には、こうなっていたんだ」
久景千里「こんなの、絶対おかしい! もしかして、夢なのかも」
志田聖「夢だとしたら、決して覚めない夢だ」
志田聖「何処に行っても、異形だらけ。こんな中で生活していたのが、信じられないよ」
志田聖「俺も、ついさっきまで洗脳を受けていたんだ。突然こんな世界に放り出されて、頭がおかしくなりそうだ」
久景千里「どうして、私たちだけ洗脳が解けたのかしら」
志田聖「それは・・・・・・」
  目の前に架かっていた高架橋が、崩れ落ちる。
  俺は間一髪避けることが出来たが、千里先輩は瓦礫に脚が挟まってしまったようだ。
久景千里「聖君だけでも、逃げて! 私のことは、良いから」
志田聖「そんな訳に、いくかよ! 千里先輩のことは、俺が絶対に守ってやる」
志田聖「あれは、さっきの奴か。まだ、追いかけて来てたのか」
志田聖「くそ。護身術の一つでも、習っておけば良かったぜ」
  瓦礫の中から覗いていた、金属の棒を掴む。
  先端が捩じ切れており、鋭く尖っている。もしかしたら、槍の様にも使えるかもしれない。
志田聖「行くぞ、異形野郎」
  異形が千里先輩に近づく前に、こちらから仕掛けなければならない。
  無理を承知で、俺は金属の棒を振り回す。
異形「ギャハガグォオオオオオッ」
  異形の腕が、武器を払おうと突き出される。
  こんな武器でも、俺にとっては生命線だ。身体を捩り、その攻撃を躱す。
志田聖「何て硬さだ・・・・・・武器が、跳ね返される」
  闇雲に振り回すだけでは、駄目だ。初めは警戒していた様子の異形も、武器が意味を成さないと分かれば構わず突撃してくる。
志田聖(突きなら、通るかもしれない。その一撃に賭けるしか無い)
  体力は、明らかに相手の方が上だ。持久戦になれば、こちらの方が根負けする。
志田聖(何か、手は無いのか)
ロバート・A・ジャクソン「ひゃっはー! ジャクソン様の、到着だぜ」
ロバート・A・ジャクソン「おら、おらおら」
  突然現れた謎の男は、異形に向かって銃を乱射し始めた。
  こちらに、攻撃を仕掛けてくる様子は無い。どうやら、敵では無いようだ。
ロバート・A・ジャクソン「ふん、三下がまるで強者ぶるんじゃねぇよ」
ロバート・A・ジャクソン「もう少し、楽しませてくれるもんだと思っていたのになぁ」
  既に異形はその動きを止めているが、男が撃つのを止める気配は無い。
ロバート・A・ジャクソン「あん? もう弾切れか」
ロバート・A・ジャクソン「仕方ない、まあ敵は片付いたしこれで・・・・・・」
ロバート・A・ジャクソン「っ・・・・・・」
  いつの間にか、男の背後には別の異形が迫っていた。
ロバート・A・ジャクソン「装填が間に合わねぇっ、くそ・・・・・・」
  ぎりぎり、間に合った。金属の棒は、異形の腹に深々と突き刺さっていた。
異形「ギギヤァアアアアアア」
  だが、それだけでは無かった。身体の中を奔るように流れた電流が、一瞬で異形を焼き焦がしたのだ。
  異形は、その場に力なく倒れ落ちた。
ロバート・A・ジャクソン「お前、その力は・・・・・・まさか、変異種か」
ドロシー・R・ランドール「ジャクソン、見ていましたよ! 何ですか、今の戦いぶりは」
ロバート・A・ジャクソン「いや、だってよ・・・・・・二体もいるなんて、聞いてないじゃんかよ」
ドロシー・R・ランドール「まあ、良いです。まずは、目の前の彼に感謝をしなさい」
ロバート・A・ジャクソン「ぐ・・・・・・気が進まねぇな」
ドロシー・R・ランドール「ジャクソン」
ロバート・A・ジャクソン「わーったよ。あんたは命の恩人だ、ありがとうよ」
志田聖「それより、貴方たちは何者なんですか」
ドロシー・R・ランドール「その答えを知りたいのならば、まずは私たちに協力して貰いましょうか」
志田聖「協力・・・・・・?」
ドロシー・R・ランドール「我々の目的は、イコライザーの機能を停止させることよ」
ドロシー・R・ランドール「今や、日本だけにとどまらず奴らの支配は世界中に広がりつつある」
ドロシー・R・ランドール「私たちと共に、平和な日常を取り戻しましょう」
志田聖「取り戻せるのか・・・・・・本当に」
ドロシー・R・ランドール「ええ」
志田聖「もう、元の生活には戻れないんだ」
志田聖「選択肢は無い。あんたたちに協力するよ」
志田聖「俺に、何が出来るかは分からないがな」
ラナ・D・ヘルナンデス「本当でーすか? Yeah! 仲間が増えますね」
ロバート・A・ジャクソン「な、ヘルナンデス・・・・・・いきなり、出てくんな」
ラナ・D・ヘルナンデス「歓迎しますよ? 連邦特殊作戦部隊DRAWへ、ようこそ」
ラナ・D・ヘルナンデス「共に、世界を救いましょーう」

次のエピソード:【第二話】DRAW

コメント

  • 第一話からグッと心を掴まれました!異形の正体、イコライザーの目的、そして聖くんのとるべき行動は。興味をそそられる要素たっぷりです!

  • しっかりとした SF 設定で楽しみですね!
    異形を社会に蔓延させた連中の狙いが何なのか!
    洗脳の秘密は何か、後を引く SF 設定です😀

  • 公開日にあらすじを読んで難しそうで今まで読んでなかったんですが、とても面白かったです。

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