カイブツの国(脚本)
〇芸術
付喪神(つくもがみ)とは日本に伝わる、長い年月を経た道具などに精霊(霊魂)がやどったものである。
現代では九十九神と表記される事もある。
みんなだいすきWikipediaより。
寄付、してますか?
まあ、それはさておき。
ところでここは日本ではない。
よってその怪異もまた万人が知るところの付喪神ではない。
〇黒
禍異物(カイブツ)
そう呼称されている。
〇渋谷の雑踏
かの敗戦から10年。
『富国改造計画』により未曽有の経済成長を遂げ、総合製造企業ヤオヨロズが社会の表裏共に実質支配を行使するニッポン国。
大量生産大量消費社会の裏で維新より形を潜めていた怪異が復活。『モノ』に取り憑き『禍異物』となり人々を襲い始める。
ヤオヨロズは、禍異物を物質的に破壊する清掃夫『警備違士』と霊的に浄化する呪師『対魔士』を創設しその対処に当たらせていた。
女「だからなに?」
〇レトロ喫茶
男「い、いや。だから」
女「大変ねーって同情してほしかった?」
女「それとも尊敬してほしかった?」
女「悪いけど、どっちも無理」
男「・・・ごめん」
女「謝んないでよ」
女「てか、元々こっちが謝ってたのに。なんで今ちょっと私の方がムカついてるの?」
男「それはその・・・僕が怒らせてばかりで」
女「怒っていいのよ!ガッツリ怒ってもらわないと益々面倒くさいのよ!」
女「適当に遊んでゴミの様に捨てやがって!」
女「そう怒って殴りかかってくればちょっとは私も被害者面できるんだけど!」
男「そ、そんな真似・・・」
女「そうよ無茶苦茶言ってるわよ!だから思いっきり最悪な別れ方しようよ!」
男「・・・」
男「無理だよ」
女「・・・」
男「楽しかったから」
男「君との思い出は、全部楽しい思い出ばかりだったから」
女「・・・」
女「まだそんな言葉かけてくれるんだ」
男「・・・」
女「ありがとう」
女「とでも言うと思った?」
男「・・・」
女「それじゃあ。さよなら」
男「ご・・・」
男「ご結婚おめでとうございます!」
女「・・・」
女「やっと本気でぶん殴ってくれたね」
女「ありがとう」
男「・・・」
マブい店員「あの~こちら~お下げしても~」
男「俺がまだ飲んでる途中でしょうが~っ!」
男「びえええええええん!」
マブい店員(ご、号泣・・・)
マブい店員(くすぐられるわね、母性本能)
『緊急出動!緊急出動!』
『ミナト区5963地点に禍異物発生!』
『ミナト区5963地点に禍異物発生!』
『青龍部隊、疾く出動せよ!』
『青龍部隊、疾く出動せよ!』
男「出動か・・・」
男「よし!」
男「気持ちを切り替えろ!警備違士、和泉成!」
男「ふえええええええん!」
マブい店員(くすぐられちゃうわ!)
〇高速道路
和泉「うおおおおおおお!」
善良なる市民「おい邪魔なんだよタコ!」
和泉「すいませえええん!」
和泉「むおおおおおおっ!」
善良なる市民「チンタラ走ってんじゃねえボケ!」
和泉「申し訳ありません!道の横、失礼します!」
和泉「すみません車道通ります!緊急事態です!」
和泉「緊急事態です!すみません!失礼します!」
24時間戦えますか~♪
アンタは出来ても俺は無理~♪
和泉「・・・?」
和泉「なんだこの歌?」
善良なる市民「ひき殺すぞこのクソチャリが!」
和泉「申し訳ございませーん!」
和泉「・・・空耳か。疲れてるな」
〇コンテナヤード
菅原「あらら~降ってきちゃいましたね」
藤原「ってことは、そろそろアイツの到着だな」
和泉「お疲れ~」
藤原「ほら、な」
和泉「聞こえてたぞ。悪かったな雨男で」
菅原「もう。面倒くさいな~」
菅原「いっそ欠勤してくれりゃ、雨の中戦わずに済むのに。アメフラシ先輩」
和泉「誰が腹足綱後鰓類無楯類に属する軟体動物の総称だ!」
菅原「スイマセン。ツッコミが難しすぎて読めないっす」
藤原「童顔ゴリラがお呼びだぜ」
和泉「はいはい指導指導っと」
「和泉成!ただいま到着致しました!」
「和泉い!此度はうぬが一番最後かあ!」
「歯ァを食いしばれえい!」
和泉「畜生、戦う前から負傷させやがって。これだから戦争世代は意味分かんないんだ」
和泉「人事にチクってやろうか」
藤原「そんな素敵な会社かよ。所詮、集団就職組なんざ使い捨ての道具なんだよ」
「嗚呼ニッポンを担う~我らヤオヨロズ~♪」
(アホらし・・・)
『青龍部隊総員25名揃いました!』
杜屋副隊長「坂上隊長に敬礼い!」
杜屋副隊長「なおれい!」
坂上隊長「諸君、早速だが良い知らせと悪い知らせがある」
坂上隊長「まず良き知らせだ。本件の禍異物は一体」
〇古い倉庫の中
『タチの悪い海運業者が不法投棄するはずだった事業ゴミが集合変身した物だ』
『故に怨念は薄く妖力も低い小型。よって総員で乗り込む程の敵でないと思われる』
『此度は同士討ち回避の為スリーマンセルで対処する。メンバーは・・・』
「だと思った・・・」
『ではここから悪しき知らせだ』
『本日付で配属されるはずの対魔士殿が、まだ到着しておらぬ』
『連絡も繋がらん。これ以上は待てぬ』
『我々の物理的対処のみで清掃する』
『されば検討を祈る。祓い給え清め給え』
「祓い給え清め給え!」
和泉「来るぞ!」
〇黒
〇古い倉庫の中
禍異物・丁「ギョギョギョ~ッ!」
菅原「出たな魚君!」
菅原「先輩!お先でーす!」
禍異物・丁「ギョイットナ!」
菅原「水で跳ね返した?そんなんアリかよ!」
禍異物・丁「アリアリアリ~!」
菅原「早い!」
禍異物・丁「シャァッ!」
菅原「そして凶暴!」
藤原「じゃあ物理で殴るぜ、魚チャン!」
禍異物・丁「プピューッ!」
藤原「ぐあっ、辛っ!目、痛っ!」
藤原「わりと頭脳派!」
和泉「大丈夫かハラハラコンビ!」
「おのれ・・・」
「お前が遅れて来たばっかりに・・・」
和泉「言うじゃないか」
禍異物・丁「ギョギョギョ~ッ!」
和泉「銃も駄目、物理も駄目、だとしたら」
和泉「残る方法はこれか!」
『せっとくする』
『あんしんさせる』
『ものをあげる』
禍異物・丁「・・・?」
和泉「マッ○がいい?それともマグネ○イト?」
禍異物・丁「ギョラァッ!」
和泉「辛い辛い辛い!」
和泉「痛い痛い痛い!」
禍異物・丁「ギョ」
「ギョ×2」
「ギョ×3」
菅原「分裂した」
和泉「いいだろう。これで1対1だ」
和泉「さあ、ニッポン男子として正々堂々戦おうじゃないか!」
菅原「そういうの勝ってる側が言う台詞っすよ」
ブワッハッハッハッハ!
ニッポンの労働者諸君!
本日も御苦労さ~~ん!
「誰だ!」
〇キラキラ
24時間戦えますか~♪
アンタは出来ても俺は無理~♪
慕われたい奴お疲れさん~♪
褒められたいヤツご苦労さん~♪
どうせ100年後は誰もいねえ~♪
今を生きましょ今だけを~♪
九十九「お待たせ!」
〇古い倉庫の中
『聞こえるか?対魔士殿が到着した!』
『これより除霊に移れ!』
九十九「待たせたね諸君!」
九十九「僕だよ!」
九十九「僕が新しく赴任した対魔士だよ!」
九十九「対魔士の九十九昭でございます!」
「・・・」
九十九「・・・」
九十九「僕だよ!」
九十九「僕が新しく赴任した・・・」
和泉「聞こえてますよ」
九十九「24時間戦えますか~♪アンタは出来ても」
「俺は無理~♪」
和泉「じゃねーよ」
和泉「こっちは負傷してるんです。とっととあの魚野郎を除霊して下さい」
九十九「そう急がなくても。丁級禍異物は無暗に手を出さなけりゃそうそう襲ってこないもの」
禍異物・丁「シャアッ!」
和泉「頭、かじられてますけど」
九十九「フッ、想定内だ」
和泉「顔、真っ青ですけど」
九十九「僕が大丈夫って言うんだから大丈夫だよ!もう、失敬だな君は!」
九十九「魚クションも、とっとと離れなさいよ!」
禍異物・丁「ギャン!」
「ブルブルブル・・・」
藤原「ほう、禍異物どもが怯えてるな」
九十九「当然じゃないか。前任者がどれほどの術士だったか知らないけどね。僕に比べれば、大したことないよ」
九十九「僕はあれだよ。対魔部のトップ土御門部長直々の推薦で青龍部隊に配置されたんだよ」
九十九「つまりエリートなんだよエリート」
九十九「君達もその辺りを慮って、もう少し僕に対するワッショイ感を出してだね・・・」
和泉「いいから早く除霊して下さいよ」
和泉「前任の吉備さんなら、丁級くらいとっくに片付けてるんですけどね」
九十九「なん・・・だと?」
〇炎
九十九「ああ分かりましたよやりゃいいんでしょ!ロボットみたいにサッササッサ仕事すりゃいいんでしょ!面白味のない職場だな!」
〇魔物の巣窟
九十九「こんなんとかこんなんとかこんなんとか、すぐやっつけてやりますよ!」
〇古い倉庫の中
九十九「臨!」
九十九「兵!」
九十九「闘!」
九十九「者!」
九十九「皆!」
九十九「陣!」
九十九「烈!」
九十九「在!」
九十九「・・・」
菅原「どうしました?」
九十九「5時だ」
菅原「だから?」
和泉「まさかあんた」
九十九「帰!」
九十九「ハ――――――ッ!」
九十九「終業時刻です。お疲れ様でした」
九十九「私、ドロンさせて頂きますので」
九十九「急急如律令!ドロンッ!」
九十九「・・・」
「・・・」
「・・・」
『お、おいどうした?対魔士殿が一人出て来て駈け去ってしまわれたぞ!』
和泉「問題ありません。戦闘を続けます」
和泉「じゃあ。やるか」
和泉「なんすか?」
九十九「いや~ひとつ安心させたげようと思ってね」
九十九「アイツらは所詮妖怪ではない。君達だけで十分倒せるはずだ」
和泉「怪異じゃない?どういう意味ですか?」
九十九「つまり禍異物じゃなくて」
〇芸術
禍異物(マガイモノ)だ
九十九「では、お先で~す!」
つづく。
こんにちは!
九十九のキャラがかなり強烈で笑いました!ああゆうきゃらはなんだか敬語とか落ち着いてるイメージ強いのでギャップが良かったです!あとあの歌も自己主張めちゃめちゃ激しいのも好きでした!
日本ではなくてニッポン国なのに、○の国からとか○ゲインとかドロンとか、ちょいちょい昭和の香りが漂ってくる作風、嫌いじゃないです。怪物と禍異物と禍異者の言葉遊びも、ラストでスコーンとオチて気持ち良かったです。