第1話「千年の時を越えて」(脚本)
〇美しい草原
勇者ユウト「──封印完了」
やっと、終わったわね
勇者ユウト「魔王の封印が解けるのは、千年後か・・・」
その時、あなたのような勇者は現れるかな?
勇者ユウト「・・・どうだろうね」
勇者のあなたでも、未来のことは分からないか──
〇公園の入り口
990年後
いじめっ子「ば、化け物!」
〇広い公園
いじめっ子「たった一人で、この人数を相手するなんて!」
我浜ユウト「僕は『勇者』だ!」
我浜ユウト「このケンカ──友達のために、負けるわけにはいかない!」
いじめっ子「友達? そんな奴、どこにいるんだ?」
我浜ユウト「どこって、後ろに──」
我浜ユウト「誰も・・・いない」
いじめっ子「あはは! 見捨てられたようだな!」
我浜ユウト「フフッ」
いじめっ子「何笑ってんだ・・・コイツ」
我浜ユウト「君の言う通りだ」
我浜ユウト「僕には──」
「守るべき者はいない」
〇渋谷のスクランブル交差点
10年後──
魔法封印から千年
不良「ば、化け物!」
〇ビルの裏通り
我浜ユウト 「化け物じゃない──俺は『勇者』だ」
クラスメイト「さすが『勇者』様! 相変わらず最強だな」
我浜ユウト 「怖くて隠れていたくせに、調子いい奴だな」
クラスメイト「お邪魔にならないようにと思ってな」
我浜ユウト 「取って付けたような言葉より、ケンカの代行料をもらおうか」
クラスメイト「ちっ、覚えてたか」
我浜ユウト 「どーも、毎度あり」
〇ビルの裏通り
結城イツカ「我浜(わがはま)ユウト君」
結城イツカ「あだ名は『勇者』」
結城イツカ「由来は、千年前の勇者と同じ名と、人間離れした力を持つこと──か」
我浜ユウト 「・・・お姉さん、俺のストーカー?」
結城イツカ「違うわよ、年下はタイプじゃないの!」
結城イツカ「人助けでなく、お金のために力を振うなんて──」
結城イツカ「勇者という名に、ふさわしくないわね」
我浜ユウト 「いきなり失礼な人だな」
我浜ユウト 「自分の力は、自分のためだけに使わないと損でしょ」
結城イツカ「ずいぶん歪んだ性格ね・・・」
結城イツカ「ちょっと、分からせてあげないと」
我浜ユウト 「へえ、どうやって?」
結城イツカ「こうやってね」
結城イツカ「あなたの強さの秘密は、魔法」
結城イツカ「ただ魔法を使えるのは、君一人じゃない」
〇ビルの裏通り
結城イツカ「・・・っ!」
我浜ユウト 「弱っ・・・何が「分からせてあげないと」だ」
結城イツカ「いやいや、君が強すぎるのよ!」
結城イツカ「スカウトに来て正解だったわ」
我浜ユウト 「スカウト?」
結城イツカ「そ。これ、名刺」
WASO所属
結城(ゆうき)イツカ
我浜ユウト 「WASO・・・?」
結城イツカ「World Anti-Satan Organization。魔王対策を目的とした、国際組織よ」
我浜ユウト 「ああ、ネットで見たことあります」
我浜ユウト 「よく「税金の無駄遣い」と叩かれてる組織でしょ?」
結城イツカ「無駄じゃないわ」
我浜ユウト 「無駄ですよ」
我浜ユウト 「俺たちが生きてる間に、魔王が復活するわけ──」
結城イツカ「復活したのよ」
我浜ユウト 「え」
結城イツカ「いつ魔王がやって来ても、おかしくはない」
〇地球
〇雲の上
???「──千年ぶりか」
???「近くの人間からは、弱い魔力しか感じられん・・・」
???「平和が続き──人間は脆弱になってしまったようだな」
〇ビルの裏通り
我浜ユウト 「魔王が復活したなんて、信じるわけ──」
〇渋谷のスクランブル交差点
緊急放送「渋谷上空に、正体不明の物体が出現しました」
緊急放送「付近の方は、ただちに地下に避難してください──」
女の子「ママ、お空に何かいるよ!」
女の子の母親「何かしら・・・あれ?」
我浜ユウト 「人が浮いてる・・・!?」
結城イツカ「いえ、人じゃない・・・!」
我浜ユウト 「あれが魔王だって? 馬鹿げてる・・・」
結城イツカ「お願い、君も一緒に戦って!」
我浜ユウト 「なんで俺が?」
我浜ユウト 「本当に魔王だとして、報酬もなしに戦うわけないでしょ」
結城イツカ「こんな非常時に何言って──」
結城イツカ「いけない! みんな、逃げてっ!!」
〇空
???「人間共め。数だけは、ずいぶん増えたようだな」
???「少し──間引いておくか」
〇渋谷のスクランブル交差点
〇渋谷のスクランブル交差点
結城イツカ「だ、大丈夫!?」
我浜ユウト 「な、何とか・・・」
結城イツカ「この魔力、予想を遥かに超えてる・・・!」
我浜ユウト 「こんな化け物相手──どんな報酬でも割に合わない」
我浜ユウト 「俺は逃げますからね!」
女の子「うう・・・ママー!」
女の子「どこにいるのー!」
結城イツカ「──そうね、君は逃げた方がいい」
結城イツカ「ただし、あの子を連れてね」
我浜ユウト 「あなたは戦う気ですか!?」
我浜ユウト 「俺にすら勝てないのに、あんな化け物相手・・・負けイベントですよ」
結城イツカ「誰かが、ここで食い止めないと」
我浜ユウト 「そんなのは、国の偉い奴らに任せればいい」
我浜ユウト 「人生は一度きり」
我浜ユウト 「何が一番大切か、考えるまでもないでしょ」
結城イツカ「たしかに・・・人生は一度きりね」
我浜ユウト 「だから、早く逃げ──」
結城イツカ「人生は一度きり。だから──」
結城イツカ「誰かのために生きるのよ」
我浜ユウト 「・・・!」
結城イツカ「安心して。君たちが逃げる時間ぐらいは、稼いでみせる」
結城イツカ「勇者召喚!」
我浜ユウト 「ロボット──いや、鎧!?」
結城イツカ「これは、対魔王決戦用強化外骨格──ロール・プレイング・ギア」
結城イツカ「千年前の勇者の装備から造った、人類最強の武器よ」
〇仮想空間
ロール・プレイング・ギアを
そうび しますか?
▶はい
いいえ
〇渋谷のスクランブル交差点
結城イツカ「自分勝手な勇者さん──」
結城イツカ「あの女の子のこと、頼んだわよ!」
〇空
???「やれやれ、人間共はただ逃げ惑うだけ」
???「魔力だけでなく、反撃する気力すら無くしたのか・・・?」
結城イツカ「──無くしてなんかいないわ」
結城イツカ「ここからは、私が相手よ!」
???「この時代の魔導兵器か・・・面白い」
???「だが貴様程度の魔力では、我の相手はつとまらんぞ?」
結城イツカ「やってみなきゃ分からないわよ」
???「人間は千年を経ても──口だけは達者だな」
???「──ほう、ずいぶん良い盾だな」
結城イツカ「盾だけじゃないわ」
???「いいぞ、我をもっと楽しませてくれ!」
〇地下街
我浜ユウト 「地下は、まだ火の手が回ってないようだな」
我浜ユウト 「あっちに人が集まってる──行ってみよう」
女の子「あっ! ママ!」
女の子の母親「よかった! 無事だったのね!!」
女の子「うん!」
女の子の母親「助けて頂き、本当にありがとうございます!」
我浜ユウト 「いえ、俺は・・・」
女の子「お兄ちゃんとお姉ちゃんが、助けてくれたんだよ!」
女の子の母親「え、お姉ちゃん?」
我浜ユウト 「・・・」
女の子「あのお姉ちゃん、カッコよかったな」
女の子「あんな強そうな相手に、立ち向かうんだもん」
女の子「まるで、おとぎ話の勇者みたい」
我浜ユウト 「フフッ・・・『勇者』か」
女の子「お兄ちゃん、どうしたの?」
我浜ユウト「いや、なんでもない」
みんな考えてるのは、自分のことだけ
誰かのために戦う勇者なんて、ただの幻想だ
我浜ユウト(戦いの音はもう聞こえない・・・)
我浜ユウト(きっと、あの女も逃げ出したに違いな──)
女の子「ママ、怖いよ・・・!」
女の子の母親「大丈夫、今度はママが守るからね!」
〇渋谷のスクランブル交差点
結城イツカ「人生は一度きり」
結城イツカ「だから──」
〇地下街
女の子「お、お兄ちゃん・・・?」
〇空
???「扱う者が脆弱では、その兵器を活かしきれないようだな」
結城イツカ「くっ・・・まだよ・・・!」
???「力の差は歴然、なぜ戦い続ける?」
結城イツカ「私が戦っている限り、みんなが逃げる時間を稼げる」
結城イツカ「だから、最後まであがき続けるわ!」
???「心の強さだけは認めてやろう」
???「だが、心で我を傷つけることはできん」
???「──沈め」
〇渋谷のスクランブル交差点
結城イツカ「魔力はつきた・・・」
結城イツカ「でも、私にやれることはまだ──」
我浜ユウト 「イツカさん!」
結城イツカ「君、なんでこんな所に!?」
我浜ユウト 「あの女の子は、無事母親に届けました」
結城イツカ「君も一緒に逃げろと、言ったじゃない!」
我浜ユウト 「言い忘れたことがあって」
我浜ユウト 「あなたみたいな綺麗事を言う人──イラつくんです」
我浜ユウト 「さっさと、自分勝手に逃げ出してくださいよ!」
結城イツカ「私が逃げたら、他に誰が戦うと──」
我浜ユウト 「だから、俺にそれを貸してください」
結城イツカ「え」
〇美しい草原
千年前
勇者のあなたでも、未来のことは分からないか
勇者ユウト「だから、残しておかないか?」
勇者ユウト「魔王と戦うための武器を」
カナタ 「武器を残すって──あなたの装備を?」
勇者ユウト「違うよ、もっと大事なものさ」
カナタ 「装備より大事なもの・・・なんだろう」
勇者ユウト「僕は魔法の才能を、自分のためだけに使ってきた」
勇者ユウト「けど、君に出会って変われたんだ」
勇者ユウト「君の──誰かを想う、強く優しい心のおかげでね」
カナタ 「ユウト・・・」
勇者ユウト「だから、僕はその心を残したい」
カナタ 「心を残す・・・?」
〇英国風の部屋
千年の時を越えて・・・
この心が受け継がれますように・・・
〇渋谷のスクランブル交差点
結城イツカ「──どんな報酬を要求する気?」
我浜ユウト 「一生遊んで暮らせるお金・・・いや」
我浜ユウト 「もし世界を救ったら──」
我浜ユウト 「俺と付き合うなんて、どうですか?」
結城イツカ「・・・」
結城イツカ「言ったでしょ」
結城イツカ「年下はタイプじゃないの」
我浜ユウト 「それは大変だ」
〇渋谷のスクランブル交差点
???「さっきの奴は、逃げたか──」
???「次は、貴様が楽しませてくれるのか?」
我浜ユウト 「ああ、よろしく」
???「我には遠く及ばないが、その魔力──」
???「この時代の勇者か?」
我浜ユウト 「違う。俺は『勇者』じゃない」
〇仮想空間
ロール・プレイング・ギアを
そうび しますか?
▶はい
いいえ
〇渋谷のスクランブル交差点
我浜ユウト「俺は勇者の──」
我浜ユウト「『剣』だ」
内容も分かりやすく、文の書き方も私好みで良い作品だと思いました。正直、何故入賞しなかったのか不思議なぐらい、絵やストーリー、キャラ設定がよく練られていると感じました。
立ち絵とエフェクトの組み合わせで、迫力がすごかったです! まるでアニメみたいでした✨
人生を、自分のために生きるか他人のために生きるか真逆のユウトたちですが、二人の仲がどう進展していくか楽しみです😊
うおぉ~~!✨これは凄い!ロボかっけーー!😂 いつもながらお見事はエフェクトバトルに自作巨大ロボが加わり、さらにメインキャラも自作でまさに篠也さん作品の集大成ですね!✨ RPGの剣・盾差分と、最後の装備シーンのヘッドライトとの組み合わせが特に最高でした😭
主人公も僕の好きなひねくれ系で、勇者じゃなくて勇者の『剣』だって所がもうグッときました👍
しかも次回から声もつくそうで、楽しみです!😂