パラドックスをぶった斬れ!

咲村まひる

9.漠然とした囚人:前編(脚本)

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〇学校の部室
犬飼 レン子「・・・・・・」
乾 幹太「こ、こんにちは~」
乾 幹太(あれ? レン子先輩しかいない・・・)
乾 幹太「あの・・・石橋先輩とギャル子は・・・?」
犬飼 レン子「まだ来ていないわ」
乾 幹太「そ、そうですか」
乾 幹太(ロッカーに入れられてるとかでないなら、別にいいんだけど・・・)
乾 幹太(でもふたりきりだと、やっぱりなんか気まずいな)
乾 幹太(なにか話題を振ったほうがいいのか?)
乾 幹太(でも、僕に振れるようなパラドックスの話題はないし・・・)
石橋 仁「わりぃ、野暮用で遅くなった」
ギャル子「あたしはキョージュに監禁されてたっス~」
乾 幹太(ふたりがすぐ来てくれてよかった・・・)
  と僕が安堵した、その瞬間だった。
犬飼 レン子「有罪」
犬飼 レン子「新人より遅く来るなんて、罪よ罪」
犬飼 レン子「ひとりずつ、そこにあるパイプ椅子に座りなさい」
乾 幹太「な、なにを言ってるんですか・・・?」
ギャル子「この椅子っスね?」
石橋 仁「で、なにが始まるんだ?」
乾 幹太(全然動じてないさすが!)
乾 幹太(僕なら「有罪」なんて言われた時点で、なにも言えなくなっちゃうよ・・・)
犬飼 レン子「幹太」
乾 幹太「えっ?」
犬飼 レン子「ぼんやりしてないで、あなたは取調官の役よ」
乾 幹太「あ、は、はい・・・?」
犬飼 レン子「いい?」
犬飼 レン子「これから『囚人のジレンマ』を実演して、その穴をはっきりさせるわよ」
乾 幹太「囚人のジレンマ?」
犬飼 レン子「知っている?」
乾 幹太「えっと・・・確かふたりの囚人に『黙秘』か『自白』かを選ばせるやつですよね」
犬飼 レン子「具体的な条件はわかる?」
乾 幹太「わかりません・・・」
犬飼 レン子「そう、なら細かく説明するわね」
乾 幹太「す、すみません」
石橋 仁「謝る必要ねぇよ」
石橋 仁「新人なんだから、知らなくても当然だろ」
ギャル子「そうっス」
ギャル子「知ろうという気持ちがあるだけ、あたしたちよりはマシっス!」
乾 幹太「は、はぁ・・・」
犬飼 レン子「じゃあ、前提条件から行くわよ」
犬飼 レン子「まず、飼い主とギャル子は共謀して遅刻した」
犬飼 レン子「遅刻の理由にはとある犯罪が関係しているものの、その証拠は掴み切れていない」
犬飼 レン子「つまり、今のところは遅刻の罪だけで捕まっているわけね」
乾 幹太「遅刻の罪・・・」
犬飼 レン子「そこで、取調官である幹太は、ふたりをそれぞれ別の部屋──」
犬飼 レン子「今の場合は椅子に連れていき、容疑者たちに選択を迫るの」
犬飼 レン子「まだバレていない犯罪について、このままどちらも黙秘を続けるなら、刑期は遅刻分の1年」
犬飼 レン子「逆に、ふたりとも自白するなら、刑期は5年に延びる」
乾 幹太「それだと、どちらも喋らないんじゃないですか?」
犬飼 レン子「そうね」
犬飼 レン子「だから、もうひとつ条件をつけるわ」
犬飼 レン子「どちらか片方だけ自白したら、その容疑者は釈放」
犬飼 レン子「残った容疑者の刑期は10年になる」
乾 幹太「うわぁ・・・」
乾 幹太「自白を選んだ場合は、刑期は5年か釈放」
乾 幹太「黙秘を選んだ場合は、刑期は1年か10年・・・」
乾 幹太「それだけで考えると、自白のほうが若干有利な感じがします」
石橋 仁「最高でも刑期5年だからな」
ギャル子「もしかしたら、釈放の可能性もあるかもしれないっスもんね~」
犬飼 レン子「お互いに黙っていれば、1年で済むかもしれないのに?」
乾 幹太(そうなんだよなぁ・・・)
乾 幹太(ふたりの刑期が最も短くなるのは、両方とも黙秘を選んだ場合だけど)
乾 幹太(自分が自白を選んでしまったら、その可能性は100パーセントないことになってしまう・・・)
乾 幹太「自分だけの利を取るか、ふたりの利を取るか、そういう問題になってくるんですね」
犬飼 レン子「ちょっと待って」
犬飼 レン子「そもそもこの場合の『利』ってなに?」
乾 幹太「え?」
乾 幹太「それはもちろん、なるべく刑期が短く済むこと・・・なんじゃ?」
ギャル子「あわよくば釈放っス!」
石橋 仁「それだよな」
犬飼 レン子「そうとは限らないでしょ」
犬飼 レン子「なかには、長い刑期を望んだり、死刑を望んだりする人もいるかもしれない」
犬飼 レン子「この話には、対象となる囚人がどんな人物であるのかの定義がないの」
乾 幹太「まあ普通はそんなこと考えませんからね・・・」
石橋 仁「っていうか、今の場合は俺たちの話なんだろ?」
石橋 仁「少なくとも俺は、刑期は短いほうがいいや」
ギャル子「あたしもっス!」
犬飼 レン子「・・・そうね、あなたたちの場合は、ジレンマでもなんでもないわね」
犬飼 レン子「関係がはっきりしすぎているもの」
乾 幹太「関係が?」
犬飼 レン子「『囚人のジレンマ』とひと口に言っても、どんな囚人にも当てはまるというわけではない、ということよ」
犬飼 レン子「このジレンマが成立するには、もうひとつの前提条件が必要なの」

次のエピソード:10.漠然とした囚人:後編

コメント

  • みんな大好き「囚人のジレンマ」、それに対して定義や前提条件にツッコミを入れるレン子さん、流石です!
    それにしても、不在=ロッカー、というヤバイ発想をするようになった幹太くん、完全に毒されてますねw

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