ステージで歌う

タヌキ山

第3話 ようこそ、オレンジ芸能プロダクションへ(脚本)

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〇渋谷のスクランブル交差点
  ガヤガヤ
  学校を出て10分。
  会話もほとんど無く、街中に連れてこられた。
神埼 咲「そろそろどこに向かってるか、教えてもらってもいいですか?」
四宮 夏樹「そう焦らないでよ。 もうすぐ着くから」
  明確な回答が得られないまま、さらに数分歩き続けた。

〇商業ビル
  そして、一つのビルの前で足を止めた。
  看板には『オレンジ芸能プロダクション』と書かれていた。
神埼 咲「ここって、『オレプロ』?」
  『オレンジ芸能プロダクション』、通称『オレプロ』。
  数々の有名芸能人が活躍している人気芸能プロダクションの一つだ。
四宮 夏樹「そう。 ここに君を連れてきたかったんだ」
  にこりと笑うと私の前に立ち、メガネを奪い取った。
四宮 夏樹「とりあえず中に入る前にこのメガネは取ろうか?」
神埼 咲「か、返してください!!」
四宮 夏樹「それはできないな。 だって、神埼さんメガネが無い方がかわいいもん」
神埼 咲「なっ!?」
四宮 夏樹「それとも、そんなにメガネが無いと見えにくい?」
  四宮君は、メガネを軽く自分の目に近づけた。
  そして、少し驚いた声を上げた
四宮 夏樹「!? これ、伊達メガネじゃないか!?」
神埼 咲「ええ、私目が悪いわけじゃないから。 むしろ、視力は2.0あるぐらいだし」
四宮 夏樹「そんなに視力がいいのにどうしてメガネなんか・・・」
神埼 咲「人に貰ったの。 どうしても掛けておいてくれって」
四宮 夏樹「そいつなに考えてんだよ」
  呆れたような溜め息をつくと中に入っていった。

〇おしゃれな受付
  中に入ると彼はキョロキョロと辺りを見渡し、誰かを探し始めた。
四宮 夏樹「新さん、こっちです」
  その声に一人の男性が反応した。
  そして、私達のいる方へ歩み寄ってきた。
飯坂 新「いたいた。 遅かったな、もう来ないかと思ったぞ?」
四宮 夏樹「まあ、来る前にいろいろありまして」
  チラリと私を見たが、直ぐに目をそらした。
飯坂 新「この子が夏樹の言っていた子かい?」
四宮 夏樹「そうですよ。 歌声聴いたらビックリしますよ」
  男性は私と目が合うとにこりと笑いかけた。
飯坂 新「とりあえず中に入ってから話をしようか。 二人共、着いておいで」

〇稽古場
  エレベーターに乗り、私達はテレビでしか見たことがないようなレッスン場に連れてこられた。
四宮 夏樹「新さん、俺着替えてきますね」
飯坂 新「ああ行ってこい」
  私に軽く手を振ると部屋から出ていった。
神埼 咲(いきなり知らない人と二人にされてしまった。 き、気まずいよ・・・)
  そんな私の心情を読み取ったのか、男性は優しく笑って話をし出した。
飯坂 新「夏樹に連れてこられてビックリしただろ? 俺は飯坂新だ」
神埼 咲「神埼咲です。 あの、なんで私はここに連れてこられたんでしょうか・・・」
飯坂 新「もしかして、夏樹から何も聞いてないのか!?」
神埼 咲「は、はあ。 急に着いてきて欲しい所があるって言われて・・・」
飯坂 新「と言うことは、あの話を受けた訳じゃないのか・・・」
神埼 咲「あの話?」
神埼 咲(無性に嫌な予感がするのだが・・・)
飯坂 新「いや、聞いてないならいいんだ。 気にしないでくれ」
飯坂 新「えっと、俺の事を詳しく話してなかったな!」
神埼 咲(今、絶対に話を反らそうとしたな)
  軽く咳払いをすると再び話し始めた。
飯坂 新「俺はオレンジ芸能プロダクション所属のマネージャーをしている」
神埼 咲(マネージャーさんだったんだ。 でも、なんで四宮君と知り合いなんだろう?)
飯坂 新「今は別のタレントのマネージャーだが、昔は夏樹のマネージャーだったんだ」
神埼 咲「え、四宮君って芸能人だったんですか!?」
飯坂 新「その話も聞いてなかったのか。 あいつ、何も話してないんだな・・・」
  そこへ話題の中心人物が戻ってきた。
四宮 夏樹「何年前の話をしてるんですか」
  そこにはガラリと雰囲気が変わった四宮君がいた。
神埼 咲「し、四宮君であってるよね?」
四宮 夏樹「俺以外に誰がいるんだよ。 学校ではカツラ被ってるんだ。 流石に目立つからな・・・」
神埼 咲「そ、そうだったんだ。 じゃなくて!!」
神埼 咲「四宮君って芸能人だったの!?」
四宮 夏樹「さっきも言ったけど昔の話だよ。 昔は子役俳優をしていたんだ」
  静かに呼吸を整えると、彼を纏う雰囲気が突如変わった。
四宮 夏樹「『お願い、僕を捨てないでよ!! いい子でいるから・・・』」
  その台詞は昔放送されていた『帰る場所が無い』というドラマの主人公である小さな男の子の台詞だった。
四宮 夏樹「その顔を見ると分かってくれたみたいだね?」
神埼 咲「ええ。 当時の放送は私も小さかったから見てなかったけど再放送で見たわ」
  驚きのあまり、これ以上は言葉が出なかった。
飯坂 新「あのな、夏樹。 連れてくる前に説明ぐらいしてあげろよ。 この子何も知らずに来たらしいじゃないか」
四宮 夏樹「だって、話したら絶対に来てくれないから」
飯坂 新「はぁ・・・」
四宮 夏樹「それよりもさ、あの準備できてる?」
  飯坂さんは、深い溜め息をつきながらポケットからスマホを取り出した。
  本日二度目の嫌な予感がした

次のエピソード:第4話 私の思い

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