ステージで歌う

タヌキ山

第1話 忘れられない夢(脚本)

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タヌキ山

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〇綺麗なリビング
  小さい頃、私は歌うことが大好きだった。
神埼 咲「私、アイドルになりたい!!」
活発そうな男の子「はぁ!?なに言ってるんだよ!!」
静かな男の子「咲には無理じゃないかな・・・?」
神埼 咲「どうして二人共、そんなこと言うの!?」
神埼 咲「私、アイドルになりたい!!」
静かな男の子「・・・向いてないよ」
静かな男の子「だって咲は・・・」

〇黒
「人の前に出ることが苦手じゃないか」

〇女の子の部屋
神埼 咲「はっ!!」
神埼 咲「ゆ、夢か・・・」
  ため息をつき、目覚まし時計に手を伸ばす。
神埼 咲「7時か・・・、起きないと」
  私の名前は、神埼咲。
  高校1年生。
  どこにでもいる女子高生だ。
  自分で言うのもなんだが、引っ込み思案な性格だ。

〇明るいリビング
神埼 咲「篠さん、八重さん。おはようございます」
長里 篠「あら、咲ちゃん。おはよう。 朝御飯できてるから食べちゃって」
長里 八重「おはよう、咲」
  この二人は長里夫妻。
  篠さんは父の妹であり、父と母が亡くなり一人になった私を快く引き取ってくれた。
  そして、篠さんの夫である八重さんも私を本当の娘のように育ててくれた。
  いつも明るく接してくれる篠さん。
  優しく見守ってくれる八重さん。
  私はそんな二人が大好きだ。
長里 篠「飲み物何にする? 牛乳?コーヒー?」
神埼 咲「牛乳でお願いします」
  私は焼きたてのトーストを取り、ジャムの蓋を開けた。
テレビ「今週のシングル売上トップは『sunrise(サンライズ)』!」
逆井 拓「♪~」
逆井 雪「♪~」
神埼 咲(やっぱり拓君も雪君も上手だな)
  逆井拓。
  今、大人気のアイドル『sunrise』のメンバーの一人。
  そして、逆井雪の双子の弟。
  明るい笑顔と切れのあるダンスで周囲からの人気が高い。
  逆井雪。
  もう一人の『sunrise』のメンバーであり、逆井拓の双子の兄。
  クールな性格になんでもそつなくこなす。
  時々見せる笑顔はファンからの歓声は止まらないと言われている。
「『ありがとうございました!!』」
長里 篠「あら、二人とも頑張ってるわね」
長里 八重「拓君も雪君も大きくなったな」
神埼 咲「・・・・・・うん」
  そう、私達は彼らと面識がある。
  二人は──
  私の幼馴染みだ。

〇教室
斉藤 叶「咲~! おっはよー」
神埼 咲「あ、叶 おはよう!」
斉藤 叶「今朝もさ、『sunrise』! かっこよかったぁ~ もう朝から拓君見られて元気出ちゃった!」
神埼 咲「叶は、拓君大好きだよね」
斉藤 叶「あったり前じゃん! あの笑顔にあのかわいさ! 更にはダンスの時の鋭い眼差し・・・」
斉藤 叶「ギャップまじヤバい!!」
神埼 咲「そ、そうなのね・・・ 二人ともかっこいいと思うわ」
  キーンコーン──
斉藤 叶「え~、いいところだったのに・・・ またあとでね」
神埼 咲「また授業の後に話そう」
  やっぱりあの二人は人気ね。
  私も──
  二人みたいに人前で歌う勇気があれば・・・。

〇まっすぐの廊下
神埼 咲(はぁ、やっと放課後になったな。 最後の古文の授業、眠たかったわ・・・)
斉藤 叶「それじゃあ、私は部活に行ってくるね!」
神埼 咲「うん、怪我しないように気をつけてね」
斉藤 叶「任せて! また明日ね、バイバイー」
神埼 咲(叶も部活に行ったから一人になっちゃったわ。 どうしようかしら、まっすぐ帰る気分でもないし・・・)
神埼 咲(よし!今日はあそこに行こう)

〇黒
  ガラッ
  私は少し錆びた扉を横に開けた。

〇音楽室
神埼 咲(誰もいないわね?)
  ここは旧音楽室。
  放課後はだいたい誰もいない。
  そしてここは──
  私の小さなステージだ。
  一段高くなった教壇に立ち、深呼吸をする。
神埼 咲「すぅ──」
神埼 咲「♪~」
  今朝聞いた、拓君達の歌を真似して歌ってみる。
  ♪~
  やっぱり歌って、楽しい!
  もっともっと歌いたい!

〇まっすぐの廊下
四宮 夏樹(はぁ、どうしたもんかな・・・)
  ♪~
四宮 夏樹(!? この歌声・・・誰だ?)
  澄み切ったどこまでも届くような歌声。
四宮 夏樹(どこから聞こえる? この先か?)
四宮 夏樹(この歌声こそ、俺の探していたものだ!)
  声を辿ると使われなくなった旧音楽室にたどり着いた。

〇黒
  ガラッ

〇音楽室
神埼 咲「♪~」
  この物語は・・・
  私と──
  彼が──
四宮 夏樹「俺と一緒にユニット組まないか?」
  それぞれの目標に向かって走っていく物語。

〇学校の校舎
  『ええぇぇ──!!』

次のエピソード:第2話 ほんの少しの後悔

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