Paleorium~古生物水族館の飼育員~

芝原三恵子

第8話 キラキラの化石(脚本)

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芝原三恵子

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〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
小鳥遊遥「生島サン、 ミロクンミンギアのエサやり終わったー?」
生島宗吾「ああ、いまやったところだ。 ノートにメモしたら終わる」
小鳥遊遥「午前中の業務はそこで終わりだよね。 ゲノムエディタのモニター見てくれる?」
生島宗吾「ああ。そういえば、次に再生する生き物の相談をする予定だったか」
小鳥遊遥「そうそう」
  小鳥遊はゲノムエディタを起動させ、
  いくつかの生き物のモデルを見せてきた。
小鳥遊遥「もうすでに、実験体候補の遺伝情報分析は進んでるんだよねー」
小鳥遊遥「こっちのグリーンのマークがついてるのが、再生可能。 赤のマークが情報不足で再生不可能」
生島宗吾「この黄色のマークはなんだ?」
小鳥遊遥「再生できなくはないけど、 ちょっと問題ありの種かな」
生島宗吾「思ったより、グリーンの生き物が多いな」
小鳥遊遥「水槽の用意とか、プランクトンの養殖とかで、実験できない日が続いたからね。 先に分析だけ進めておいたの」
生島宗吾「それで、次は何を再生するんだ?」
小鳥遊遥「ディクラヌルスとかいいと思うんだよね」
生島宗吾「なんだそれは」
小鳥遊遥「すっごいトゲトゲの三葉虫! ほら、こっちの復元予想図見て! かっこいいでしょ」
生島宗吾「・・・・・・」
小鳥遊遥「アサフス・コワレフスキーもいいなあ」
生島宗吾「ロシア語?」
小鳥遊遥「正解! ロシアで化石が発見された三葉虫だよ」
小鳥遊遥「目が上に飛び出してて、 すっごくキュートなの!」
生島宗吾「お前のキュートの基準はよくわからん」
生島宗吾「それから、ふざけ半分で実験対象を決めるな。もう少し学術的な観点で選べ」
小鳥遊遥「ちゃんと考えてるよー。 複数の三葉虫を飼育して比較するのは・・・」
斎川理央「こ、こんにちはっ!」
生島宗吾「斎川さん」
小鳥遊遥「どうしたの、まだ実験準備中だよー」
斎川理央「それがですね・・・」
堺ひろこ「ふうん・・・思ったよりきちんと整理されてるじゃないの」
小鳥遊遥「ゲ・・・ひろこ・・・サン・・・」

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
  斎川のあとから入ってきたのは、
  ひとりの老婦人だった。
  おそらく、年齢は俺よりもずっと上。
  小鳥遊の祖母だと自己紹介されたら納得するくらいの年代だろう。
  だが、派手なスーツをスタイリッシュに着こなし、背筋をぴんと伸ばして颯爽と歩く姿は、ただの「老婦人」とは言い難い。
堺ひろこ「生島さんには、初めて会うわね。 私は堺ひろこ、この水族館のスポンサーよ」
生島宗吾「初めまして、生島宗吾です」
堺ひろこ「・・・・・・ふうん」
生島宗吾「あの、何か?」
堺ひろこ「ココをまともな研究室にしてくれたのはあなたね。ふふ、思ったよりいい男じゃない」
堺ひろこ「斎川、いい仕事をしたわね。 あとでご褒美をあげる」
斎川理央「ありがとうございます!」
小鳥遊遥「あのー・・・ ひろこサン、どうしてここに?」
堺ひろこ「愚問ね。出資者として、研究の進捗を確認しにきたに決まってるじゃない」
堺ひろこ「斎川の報告だけじゃ伝わらないことも多いもの」
小鳥遊遥「・・・はい」
  小鳥遊は、借りてきた猫のようにおとなしく、堺に対応している。
  傍若無人の権化のような人間だと思っていたが、恐れを感じる相手もいるようだ。
堺ひろこ「細かい報告はいいわ。早速、飼育に成功した子たちを見せてちょうだい」
小鳥遊遥「わかりました」
  小鳥遊が一歩前に出ると同時に、
  俺は一歩下がる。
  飼育に関しては俺が主導権を握っているが、実験の責任者は小鳥遊だ。
  報告は彼にまかせるべきだろう。

〇古生物の研究室(3Dプリンタあり)
小鳥遊遥「こちらが、再生実験成功例第一号の、 三葉虫です」
堺ひろこ「そう」
小鳥遊遥「それから、 こちらが第二号のミロクンミンギア」
小鳥遊遥「群れで生活することを好んでいるので、 十一匹をまとめて飼育しています」
堺ひろこ「・・・そう」
小鳥遊遥「これらが、現在の研究結果です」
斎川理央「報告通り順調に進んでいますので・・・」
堺ひろこ「地味ね」
  スポンサーは、成功の報告を『地味』の
  一言で切って捨てた。
堺ひろこ「ねえ、私のかわいい子犬(パピィ)ちゃん」
堺ひろこ「この建物を作ったときに、 私が出した条件、覚えてるかしら?」
小鳥遊遥「・・・一年以内に古生物を5種飼育すること、です」
堺ひろこ「こうも言ったはずよ。ココを水族館としてオープンさせなさい、って」
小鳥遊遥「う」
堺ひろこ「お馬鹿さんね。 こんな地味な生き物ばかり並べても、 エンターテイメントとして成立しないわよ」
堺ひろこ「研究の進め方は自由だけど、最終的なアウトプットを考えて行動しないとダメよ」
小鳥遊遥「・・・ハイ」
堺ひろこ「もっとインパクトのある生き物はいないの?」
小鳥遊遥「インパクトというと・・・ こちらの生物はいかがでしょう」
  小鳥遊はさっき俺にやったように、
  ゲノムエディタのモニタを堺に見せた。

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