〇学校の部室
犬飼 レン子「ねぇ、今度の日曜日、幹太の歓迎会をしない？」
犬飼 レン子「どこかにピクニックでも行って」
石橋 仁「レン子が自分から部室の外に出たがるなんて!?」
ギャル子「しかも日曜日を潰してまでっスか!?」
乾 幹太（ありがたいけどふたりがめっちゃ驚いてる!?）
乾 幹太（・・・でも確かに、考えてみればレン子先輩っていつも部室にいるなぁ）
乾 幹太（部室の外にいるのを見たのは、それこそ勧誘されたときくらいだ）
乾 幹太（そんな相手に、わざわざ部室から出てもらうなんて、やっぱりちょっと申しわけない・・・）
乾 幹太「き、気持ちはありがたいですが、わざわざ休みの日にやるのは申しわけないので・・・」
石橋 仁「そうだぜ、やるなら今やればいいじゃん」
石橋 仁「俺、なにか食いもの買ってくるけど？」
ギャル子「じゃあ、あたしは飲みものを調達してくるっス～」
犬飼 レン子「ダメよ」
犬飼 レン子「日曜日じゃないと、ダメ」
犬飼 レン子「天気もちょうどいいし」
乾 幹太「ま、まあ、レン子先輩がどうしてもっていうなら・・・」
乾 幹太（僕は歓迎される側だから参加せざるをえないけど・・・）
石橋 仁「・・・わかった」
石橋 仁「まあせっかくの新入部員だしな」
石橋 仁「すぐ辞められても困るし、いっちょ接待しておくか！」
ギャル子「休みを４人で過ごすのも、楽しいかもしれないっスね～」

〇公園のベンチ
　　─日曜日─
乾 幹太「・・・思ったんですけど、普通歓迎会って、飲み屋とか飲食店でやるものじゃないんですかね・・・？」
乾 幹太（４人でベンチに座って、お菓子とか食べるだけっていうのはさすがに・・・）
石橋 仁「俺もそう思うけどさ、おまえ、想像できるか？」
石橋 仁「このメンバーで普通の歓迎会とか」
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太（・・・うん、普通に怖いな）
乾 幹太（メンバー的に普通にはなりえないことが、よくわかる）
乾 幹太（レン子先輩もきっとそれがわかっているから、公園でピクニックなんて提案したんだろう）
ギャル子「おっ、このお菓子、なかなかイケるっスよ」
石橋 仁「どれどれ？　お、ほんとだ」
石橋 仁「ほら幹太」
乾 幹太「あ、ありがとうございます」
乾 幹太（話題らしい話題はないけど、「うぇーい」みたいなノリにはついていけそうにないから、こっちのほうがいいな・・・）
乾 幹太（なんだかんだで、毎回ふたりからは褒めてもらえてるし・・・）
乾 幹太（いや、ふたりがレン子先輩の話をまともに聞いてないせいかもしれないけど！）
犬飼 レン子「――幹太」
犬飼 レン子「また口に出さないで、いろいろ考えてるでしょ」
乾 幹太「えっ？　いやそんなことは・・・」

〇公園のベンチ
乾 幹太「あれ・・・？」
石橋 仁「チッ、雨降ってきやがった」
ギャル子「どうするっス？」
犬飼 レン子「とりあえず、屋根のあるところに避難しましょ」

〇養護施設の庭
石橋 仁「おいレン子、おまえ『日曜は晴れだ』って言ってなかったかっ？」
犬飼 レン子「言ってない」
乾 幹太「・・・レン子先輩が言ったのは、確か、『天気もちょうどいい』って」
犬飼 レン子「正解」
ギャル子「え？」
ギャル子「でも、ちょうどいいって言ったら普通、晴れのことじゃないんスか？」
乾 幹太（そりゃ普通はそうだけど、レン子先輩は普通じゃないから、きっと・・・）
乾 幹太「レン子先輩、今日雨が降るって、知ってましたね・・・？」
　　確信を持って尋ねても、レン子先輩はどこ吹く風。
犬飼 レン子「雨が降るなんて、最悪」
犬飼 レン子「やっぱり外なんかやめたらよかった」
石橋 仁「ハァ!?」
石橋 仁「おまえが！」
石橋 仁「日曜日に外で歓迎会やるっつーから、こっちは他の約束を断って来てんだよっ」
石橋 仁「軽々しくそういうこと言うな・・・！」
犬飼 レン子「その約束って、私の母とでしょ」
石橋 仁「お？　おう、聞いてたのか？」
犬飼 レン子「それ、私が飼い主に頼んでって、母に頼んだから」
石橋 仁「・・・は？」
犬飼 レン子「ついでにギャル子」
ギャル子「なんスか？」
犬飼 レン子「あなたも本当は、予定があったんでしょ？」
ギャル子「予定っていうか・・・」
ギャル子「日曜日は部室でレンちゃんとふたりきりになれるチャンスだから、いっぱい盗撮しまくろうと思ってただけっス！」
犬飼 レン子「最後に、幹太」
乾 幹太「は、はい」
犬飼 レン子「あなたは今日、ずっと家にいるつもりだったんでしょ？」
乾 幹太「ええまあ、撮りためた録画をまとめて消化しようとは思ってましたけど・・・」
犬飼 レン子「アニメね？」
乾 幹太「いいじゃないですか、なんでもっ」
犬飼 レン子「どうやら『実験』は成功したようね」
乾 幹太「へ？」