逢いたくて770

山本律磨

九章(脚本)

逢いたくて770

山本律磨

今すぐ読む

逢いたくて770
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇先住民の村
村人「何とご無体な!竹芝も姫も、すでにここを発ち去ってございまする!」
仲麻呂「おるかおらぬかは私が決める」
仲麻呂「大罪人を炙り出せ」
  『やめよ!』
姫「何をしておる!すぐに火を消せ!」
竹芝「・・・」
仲麻呂「ようやく現れたか、大罪人」
仲麻呂「殿下も、まずは御無事でなにより」
衛士「大人しくせよ!」
衛士「動くでないぞ!悪逆下賤の田舎衛士めが!」
姫「やめよ!竹芝に手を出すでない!」
仲麻呂「仮初にも次のミカドとなられるお方が未だ色香に迷われまするか?」
仲麻呂「真備ごときに任せてはおれぬ。これよりはこの藤原一族が、しっかりと教育して差し上げねば」
仲麻呂「『我らのミカド』として・・・」
姫「私が愚かであった・・・」
仲麻呂「左様」
仲麻呂「王には王としての責務がある」
仲麻呂「生き方があるのだ」
姫「故に、どんな叱責でも受けよう」
姫「どんな教育でも受けよう」
姫「だがこの村の者達に罪はない!竹芝に罪はない!」
姫「疾く助けよ!そして詫びよ!それが貴族の責務!生き方ではないか!」
仲麻呂「・・・ふむ。しばし世俗に塗れる暇を与えたというに」
仲麻呂「何ひとつ分かっておらぬ小娘のままか」
仲麻呂「よろしいか?阿倍内親王殿下」
仲麻呂「貴族とは選ばれた者。従える者。導く者」
仲麻呂「我らの行いは全てこの国のため」
仲麻呂「民は国家のためにひたすら堪え忍ぶべし!」
姫「竹芝を惑わしたは私だ!村人を斯様な目にあわせたは私だ!この者達を堪え忍ばせておるはこの我である!」
仲麻呂「いかにも。不徳の女帝となろうな」
仲麻呂「まあ、そなたの意思などどうでもよい」
姫「何じゃと?」
仲麻呂「その男が私に刃を向けたが罪なのだ」
竹芝「・・・」
仲麻呂「村の者が私に口応えしたが罪なのだ」
姫「・・・」
仲麻呂「私は世界の中心大唐帝国の学問を、この世を導く仏の教えを知り尽くした太師」
仲麻呂「私に逆らう事こそ、この国の未来を滅ぼす大逆である!」
竹芝「・・・」
竹芝「・・・聞こえる」
姫「・・・え?」

〇黒
竹芝「聞こえる・・・」
竹芝「鈴の音が聞こえる」

〇先住民の村
竹芝「ようやく俺にも見えました」
竹芝「あなたが見ていたものが」
竹芝「あなたの苦しみが」
姫「竹芝・・・」
竹芝「だから殿下・・・お願いがございます」
竹芝「これより、俺と同じものを見て下さい」
姫「・・・え?」
竹芝「どうか私と同じものを」
竹芝「うおおおおおッ!」
衛士「き、貴様・・・」
衛士「血迷ったか竹芝アアアッ!」
竹芝「うおおおおッ!」
衛士「ぐはっ!」
衛士「ひ、ひいっ!」
仲麻呂「たかが衛士ひとり!何を怯んでおるか!」
仲麻呂「退けば我が首を刎ねるぞ!」
衛士「うう・・・うああああッ!」
衛士「・・・!」
衛士「おのれ!」
衛士「怯むな!こちらは多勢ぞ!」
仲麻呂「此度は逃げられると思うなよ」
仲麻呂「坂東の鬼めが!」
竹芝「いかにも」
竹芝「武蔵竹芝は今、鬼となった」
姫「・・・え?」
姫「竹芝・・・何故、私に剣を向けておる?」
仲麻呂「ククク・・・」
仲麻呂「遂に外道に堕ちたか」
仲麻呂「これが仏を信じぬ者の成れの果てだ」
竹芝「動くな都人よ」
竹芝「鬼を逃がさねば、次のミカドを殺すぞ」
姫「鬼だと・・・?」
姫「竹芝・・・」
  続く

次のエピソード:終章

ページTOPへ