メタリアルストーリー

相賀マコト

エピソード5(脚本)

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〇西洋の城
アイリ「ちょ、ちょっと待ちなさいよアンタ!」
ニル「え・・・」
  少女の正体はアイリだった。
  焦ったように、小走りでニルへと近づく。
アイリ「普通もっと反応ってものがあるでしょ!」
ニル「あっ、どうも・・・」
アイリ「はあ・・・」
アイリ「まあいいわ」
アイリ「改めて、アイリ・バラーシュよ。 ひとまず合格おめでとう」
アイリ「えっと・・・名前は・・・」
  アイリは一瞬ニルから目を逸(そ)らし、宙(ちゅう)を見つめながら思い出す素振(そぶ)りを見せる。
ニル「ニルです」
アイリ「あっ、ニルね。 そうニル、ニル」
ニル「あの・・・もういいですか?」
アイリ「ちょ、ちょっと待って」
アイリ「パーティはもう組んだの?」
ニル「いえ、組んでませんが・・・」
アイリ「そ、そう・・・」
ニル「・・・・・・」
ニル「じゃ・・・」
アイリ「待った!」
アイリ「その・・・」
アイリ「私がアンタと組んであげてもいいわよ」
  腕組みして、尊大な態度でアイリが言った。
  彼女は同じ調子で言葉を続ける。
アイリ「この私から誘いを受けるなんて、なかなかあることじゃ・・・」
ニル「いえ、大丈夫です」
  そんな彼女の申し出を、ニルは至極(しごく)あっさりと断った。
アイリ「・・・え?」
  目を白黒させるアイリ。
  自分の頼みが断られたことが信じられず、困惑している。
ニル「それじゃ」
アイリ「・・・・・・」
  アイリは、立ち去るニルの背中を見つめることしかできなかった。

〇西洋の市場
  アイリの誘いを断ったあと、ニルは街の中心部に広がる商店街を歩いていた。
  世界最高の人口というだけあって、メルザムの街は常に人で賑わっている。
  ここは、その中でも随一だ。
  全方位から聞こえる人々の快活(かいかつ)な声は、メルザムの繁栄を示す証でもある。
  関心しながら歩いていると、前から走ってきた男にぶつかった。
ニル「あ、すみません」
男「・・・・・・」
  謝るニルには目もくれず、そのまま男は小走りで去ってしまう。
  ニルは特に何も思わず再び探索を開始する。
ニル(それにしても、本当に広いところだな)
ニル(とりあえず宿を・・・)
  と、そのとき、
  ぐるるるる〜
  ニルの腹の虫が鳴った。
ニル(よし、なにか食べてからにしよう)

〇西洋の市場
  そばにあった食堂に入ると、食欲をそそるにおいが鼻をくすぐる。
  店内は混雑しており、客の中には昼間から飲んでいる者も見受けられた。
  壁に貼られたメニューに目を通す。
  その中でも、ひときわ大きく書かれている文字に目が止まった。
  メルザム名物! ムザル麺
ニル(へぇ・・・これにしようかな)
  注文してしばらく経つと、ニルのもとにどんぶりが運ばれてくる。
  どんぶりからは湯気が立ち上り、独特な、それでいて食欲を刺激するにおいがした。
  白濁(はくだく)したスープの上には、麺が隠れてしまうほどにどっさりと薬味がのっている。
  おそるおそるニルは麺を口へと運ぶ。
ニル(こ・・・これは・・・!!)
  スープに絡んだ極細麺はコシがありつつももっちりとした食感。
  スープは濃厚でいて、後に引かないあっさりさを兼ね揃えている。
  店員に勧められ、卓上に備えられたトッピングを追加すると、これまた印象が変わり飽きが来ない。
ニル(こんなに美味しいもの食べたことないな)
ニル(もしかして、ギルって料理下手くそだったのかも・・・)
  瞬(またた)く間に食べ終わったニルはすっかりムザル麺の虜(とりこ)になっていた。
ニル「すみませーん、お会計お願いします」
  店員を呼び、代金を支払おうとすると、ニルはある違和感に気づく。
  ポケットに入れていたはずの財布が、見当たらない。
ニル(あれ? え? なんで・・・!?)
  頭を抱えながら記憶を辿(たど)ると、ついさっきぶつかってきた男を思い出した。
ニル(まさか・・・あのとき・・・)
  顔を青くするニルを、店員が怪訝(けげん)な顔つきで見る。
  ニルは気まずそうに言葉を切り出す。
ニル「あの・・・その・・・お金が・・・」
「これで足りるかしら」
  唐突に脇から差し出された手には、1メル銀貨が2枚握られていた。
  呆然(ぼうぜん)とするニルを差し置いて、アイリは手早く会計を済ませてしまう。
アイリ「さ、いくわよ」
ニル「は、はい」

〇黒
  店を出て商店街を歩きながら、ニルとアイリは言葉を交わす。

〇西洋の市場
ニル「ありがとうございました。助かりました」
アイリ「は・・・アンタって本当どこか抜けてるわね」
ニル「はは・・・」
ニル「アイリさんもあそこで食事してたんですか?」
アイリ「・・・まあ、そんなところね」
アイリ(まさか、ずっと尾(つ)けてたとは言えないし・・・)
アイリ「それにしても、やっぱりアンタがネームドを倒したなんて信じられないわ」
ニル「ネームド?」
アイリ「え? もしかして知らないで倒したの?」
  不思議そうに頷(うなず)くニルに、アイリは開いた口が塞(ふさ)がらない。
アイリ「抜けてるを通り越して呆(あき)れね・・・」
アイリ「あのねぇ、ネームドっていうのは太古からこの世界に君臨する72体の固有種のギアーズのことよ」
アイリ「その中でも特に強い8体のネームドは『八王』って呼ばれているわ」
アイリ「アンタが倒したネームドは序列18位『黒焔(こくえん)のヴェラグニル』」
アイリ「特に強い竜型のギアーズの中でも相当上位よ」
アイリ「ネームドをコレクターが狩った記録なんて数える程度しかないの」
アイリ「それを新人が狩るなんて、前代未聞でギルドは大騒ぎなんだから」
ニル「へえ・・・」
ニル「あいつらはネームドって呼ばれてるんですね」
アイリ「あいつ“ら”?」
アイリ「・・・まさか」
ニル「はい、何体か倒したことがあると思います」
ニル「正確にはあいつらがネームドなのかは分からないですけど・・・同じくらいのエネルギーを持っていたので、おそらく」
アイリ「・・・・・・」
ニル「じゃあそろそろ。 本当にありがとうございました」
ニル「お金は必ず返しますから」

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