第16話 『残された時間』(脚本)
〇花火大会の観覧席
角谷ナナ「!?」
七蔵「ん? どうしたよ、ナナ」
角谷ナナ(今のは、見間違い・・・?)
角谷ナナ「・・・ううん、なんでも、ない」
「お、いたいた! ナ~ナちゃん!」
角谷ナナ「・・・え?」
ショウ「探したっすよ~、あ、これ食うっすか?」
角谷ナナ「え・・・!」
鉄「花火、出来たんだってな」
ショウ「よく間に合ったっすよね」
ショウ「こっちはナナちゃんの就職先まで準備して待ってたのに」
七蔵「お前ら、んなこと言いに来たのかよ!」
ショウ「おっ、怖い顔~。冗談っすよ」
ショウ「俺たち、花火見に来ただけっすから!」
鉄「まあ、また金が必要になったら声かけてくれや」
角谷ナナ「もう頼りません!」
鉄とはナナに向かってニッと笑ったあと、手を上げて去って行く。
ショウも鉄に続いて去って行った。
角谷ナナ「私が店に戻ったら、もう無茶な経営、させないんだから・・・!」
七蔵「へえ・・・店に戻る、か」
角谷ナナ「・・・何?」
七蔵「いや、それ聞いたら、あのじいさんが泣いて喜びそうだと思ってよ」
角谷ナナ「おじいちゃんが? そんなわけないでしょ」
七蔵「そうかねえ」
角谷ナナ「そうだよ。私がなにしたって怒るんだから」
これより、一尺玉の花火を打ち上げます
角谷ナナ「あ! 七さん、尺玉が打ち上がるって!」
七蔵「おう! だな!」
角谷ナナ「これでやっと七さんが、どんな花火作ったかわか──」
角谷ナナ「・・・うそ」
七蔵「ん? どうした」
角谷ナナ「うそうそ、うそ・・・」
七蔵「急にどうした・・・?」
ナナが七蔵の手を取る。
七蔵もナナにつられるように繋いだ手に視線を落として、言葉を失った。
七蔵「・・・な、やっぱり、俺の言ったとおりだっ ただろ」
角谷ナナ「・・・・・・」
七蔵「四十九日目だからな。 消えちまうのも仕方ねえ」
角谷ナナ「・・・やだ」
七蔵「俺の尺玉、いつ上がりやがんだ? このままだと見られるかどうか──」
角谷ナナ「や・・・やだ!」
七蔵「おい、ナナ」
角谷ナナ「いなくなるなんて・・・そんなの絶対、許さない」
角谷ナナ「なんで? どうして七さんがいなくならなくちゃいけないの?」
七蔵「どうしてって、死んじまったもんを、生き返らせるわけにも──」
角谷ナナ「花火の日にいなくなっちゃうなんて、まるで・・・」
七蔵「おい、ナナ、泣くな・・・」
ゴロゴロゴロ・・・ピシャーン!
角谷ナナ「きゃあ!」
七蔵「! 今のはでかかったな」
会場内の照明が、ビカビカと点滅してから再び点灯する。
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