六章(脚本)
〇草原
竹芝「早う故郷に帰りたい~♪」
竹芝「七つ三つある酒壺に~さした直柄の瓢箪が~♪」
竹芝「西から風吹きゃ東へひらり~♪北から風吹きゃ南へひらり~♪」
姫「・・・」
竹芝(・・・聴いてない)
竹芝(コイツ今、絶対に聴いてない)
竹芝(あれだけ歌えと言ったくせに)
竹芝(これだからお偉い人は・・・)
姫「見よ竹芝」
竹芝「何です?」
姫「・・・」
竹芝「葬列ですか」
姫「随分と小さな棺であったな」
竹芝「珍しい眺めではありませんよ」
姫「私のせいじゃ」
竹芝「埒もない」
姫「国々を伝う噂は届いておる」
姫「女子が帝になる故、これよりも災いが止まぬであろうと」
姫「誰もが影でそう申しておると」
姫「許しておくれ」
姫「尼となるゆえ、どうか許しておくれ・・・」
竹芝「・・・」
竹芝「・・・ああ、辛気臭い」
姫「・・・」
竹芝「ああああああああ!抹香くさい!」
竹芝「というか重い!いい加減自分の足で歩かれませ!」
姫「いたた・・・なにをするか」
竹芝「さあ、一緒に歩きますよ」
姫「分かっておる。苦労をかける」
竹芝「そういう意味で言っているんじゃない」
姫「・・・?」
竹芝「気ままに生きて宜しいと申しておるんです」
姫「しかし、左様な身勝手を御仏が・・・」
竹芝「俺が許す!」
姫「え?」
竹芝「仏が許さずとも俺が許します」
竹芝「人が許します。それでもなお不安ですか」
竹芝「目の前にいる人よりも目に見えぬ仏の方を信じまするか」
竹芝「おぶって歩いた俺よりも手も足も出さない大仏を信じまするか!」
竹芝「腰、痛いし!」
姫「・・・」
竹芝「もうなにひとつ背負わずともいい」
竹芝「己が身ひとつ、己が足で歩けばいい」
竹芝「一緒に歩いてやる」
姫「・・・そなた」
竹芝「いつかどこかで恋をすればいい」
竹芝「母になればいい」
竹芝「その時まで、俺が一緒に歩いてやる」
竹芝「俺が守ってやる」
竹芝「だから前みたいに笑え」
竹芝「笑え!阿倍子!」
姫「・・・」
姫「うう・・・」
姫「うああああああああああッ!」
竹芝「・・・」
〇空
「阿倍子はやめて・・・」
「す、すいません」
続く