屋敷に住まう悪魔〜エピソード1〜(脚本)
〇事務所
ミドリ「コンニチワ」
それは、ある日の事。
突然、事務所に女のコが現れた。
タクヤ「こんにちは、 ココは柳瀬(やなせ)探偵事務所です。 私は所長の、柳瀬タクヤです」
タクヤ「なにかご用事で? まぁ相談は無料なので、 お話をお伺いします? どうぞ、おかけください」
ミドリ「お願いがあります! 私、金城グループの社長の娘なので、 お金なら、あります!」
タクヤ「あぁ、あの有名な! そんなお嬢様が、うちみたいな弱小探偵事務所に良くいらっしゃいましたね〜」
アカリ「だって、私が連れてきたんだもーん!」
ヤスヒロ「俺もいるよ!」
タクヤ「アカリ!ヤスヒロ! お前たちが連れてきたのか?」
アカリ「そっ。ミドリちゃんは、 私達の同級生だもんね〜」
ヤスヒロ「一応さ、叔父さんに、 話を通しておこうと思って。 彼女の誕生日パーティに誘われててさ・・・」
ミドリ「そうなんです。 父が私の誕生日パーティを盛大に開くって、聞かないもので・・・ そこで心配なことがありまして」
タクヤ「心配?」
ミドリ「ええ。 詳しく話すと長くなるのですが、私や父が命を狙われているのです。脅迫文も届きました」
ミドリ「パーティを開いたら命がないぞ・・・と」
アカリ「困ってる友達を見捨てるわけには、いかないんだよ!叔父さん!」
タクヤ「わかった、わかった。 君達なら大丈夫だろう? ここのエリート部員だからな!」
タクヤ「後のことは、ボクがなんとかしておくから、二人とも行っておいで!」
タクヤ「ほら、プレゼントや服も買うんだろう? 経費として渡しておくよ」
ヤスヒロ「さっすが! 叔父さんわかってるぅ〜 ありがとう!」
アカリ「じゃね〜!」
ミドリ「すみません、よろしくお願いします・・・」
パタン
バタバタバタバタバタ・・・
タクヤ「やれやれ。 私も支度をしますか・・・」
〇洋館の廊下
その日は、もうあっという間に
やってきた。
私達は万全の準備をして、
ミドリの屋敷に向かった。
ヤスヒロ「しっかし、凄い豪邸だな〜」
ミドリ「昔、酷い火事がありまして・・・ このお屋敷は、 今の建物に建て替えられたんです」
アカリ「へーそうなんだ。 それにしても凄いわよねぇ・・・」
ミドリ「もうすぐ大広間です。 怖い・・・」
ヤスヒロ「大丈夫、俺らがついてる!」
アカリ「そうそう!」
ミドリ「ありがとう・・・」
〇貴族の応接間
ギィィィィィィ
大広間の扉が開いた。
バタン。
コウゾウ「やぁ!君たち! よく来てくれたねぇ〜」
ミドリ「お父様・・・ 学校のお友達で、 アカリさんとヤスヒロさんです。」
アカリ「アカリでーす!」
ヤスヒロ「ヤスヒロです、よろしく・・・」
ヨウコ「ハジメマシテ。 私は妻のヨウコ。 隣りにいるのは、私の弟のマサタカよ。 会社の重役をしているわ」
マサタカ「よろしく。」
ヨウコ「ハナエさん、お茶を皆さんにお配りして。 アレは使用人のハナエさん」
ハナエ「ハイ、ハナエです。 お見知り置きを・・・」
カチャカチャッ
ハナエ「あっ」
バシャッ
ハナエ「すみません、 手が滑ってしまって こぼしてしまいました。 すぐ、新しいのをお持ちします・・・」
ヨウコ「もう、全くグズなんだから。 下がってなさい!」
アカリ(なんか、いや〜なカンジ〜)
シホ「ワタシは会長秘書のシホですわ。 もう会長の秘書を始めて 20年になるかしら・・・」
ヨウコ「フン、秘書風情が出しゃばって。 少しは立場を、わきまえなさい!」
シホ「奥様がいらしたのは、 5年前でしたっけ・・・」
ヨウコ「アナタ!生意気な この秘書を今すぐ追い出して!」
コウゾウ「まぁまぁ。 今日は娘のハレの日だ。 大目に見て欲しいな。 また好きな服とバッグを買っていいから」
ヨウコ「指輪とネックレスとイヤリングもですわ!」
コウゾウ「わかったから、 キミの好きにしたらいい。 ミドリ、こっちにおいで」
ミドリ「はい・・・お父様。」
コウゾウ「シホくん。 例のアレを」
シホ「ハイ」
コウゾウ「誕生日、おめでとう!ミドリ! 開けてみなさい。」
ミドリ「これは・・・ 私の欲しかったウササンの ぬいぐるみ。」
ミドリ「お父様・・・ ありがとうございます。 とても嬉しいです。」
コウゾウ「そうか。 演奏を頼む、マサシくん」
マサシ「ハイ」
♫〜♪〜♬〜♬〜
アカリ「素敵なピアノの演奏ね・・・」
コウゾウ「喜んでもらえたようで、よかった。 では、みんなで乾杯しよう!」
ハナエ「皆様、お茶をどうぞ。」
コウゾウ「ウチではね、お茶で乾杯するのがシキタリなんだ。 では、みんな!乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
「乾杯!」
コウゾウ「うっ! ぐぅっ・・・うぅ・・・」
ミドリ「お父様!」
コウゾウ「うぅ・・・」
バタッ
ミドリ「お父様ーーー!」
ヨウコ「あなた!」
バーン
ピアノの音が鳴り響く
あなたーーー!
〇貴族の応接間
ピーポーピーポーピーポー
ギィィィィィィ
バタン
カシマ刑事「皆さん、そのまま動かないで!」
カシマ刑事「ワタシは山ノ上署のカシマ巡査長です。 隣りにいるヤナセ氏と共に お話を伺いにきました!」
タクヤ「こちらのご主人は、山ノ上総合病院へ、 救急搬送されました お話を伺いの後に解散しますので お手間を取らせてすみません」
アカリ(叔父さん!いつの間に・・・)
タクヤ「突然、すみません。 ワタクシこういうものでして・・・」
ヨウコ「弁護士探偵?」
タクヤ「ええ、探偵業もしてまして ご主人に以前から依頼され 「周りの誰かに命を狙われている、 万が一の場合、対処してほしい」と」
「なんですって!」
タクヤ「ワタシはそう聞いております。 詳しくは調べてみないと、わかりませんが・・・」
ヨウコ「いきなり来て、 なんて失礼なヒトなの! 第一、本当に主人がアナタに頼んだかもわからないわ!早く出ていってよ!」
タクヤ「奥様、こちらを・・・ ご主人直筆のお手紙がありまして。 万が一の際の、こちらの財産管理を任されております!」
マサタカ「どういうこと・・・ですか?」
タクヤ「先程も申し上げましたが、 ワタクシの本業は弁護士でしてね。 こちらの顧問弁護士をしております」
タクヤ「もしもの際の書類も、 事前にお預かりしていたのです」
タクヤ「証拠として今回は、お見せしましたが、普段こちらは金庫に大事にお預かりしてますので・・・」
ヨウコ「なんてこと・・・ シホさんは 知っておりましたの?」
シホ「ええ、先代からのお付き合いですからね・・・」
ジュウザブロウ「それは私からもご説明いたしましょう。 屋敷に通したのも、ご主人からの依頼で私の判断でございますから・・・」
シホ「ジュウザブロウ! 帰っていらしたのね!?」
ジュウザブロウ「はい。 ワタクシは、この屋敷の執事 ジュウザブロウでございます。 先代はもとより、主人が幼少期よりお使えしてまいりました」
ジュウザブロウ「ワタクシ体調不良で 長らくお休みをいただいておりました。 まだ本調子ではございませんが、 心配でございましたので・・・」
ジュウザブロウ「アナタ方は、新しい使用人ですか? あなた達がついていながら なんてことを、してくれたのですか!」
ハナエ「すみません・・・」
タクヤ「確かに、お茶を入れて配っていたのは、 ハナエさんです。 一番犯行がしやすかったといえるでしょう!」
タクヤ「毒の内容については詳しくは言えませんが、細胞膜が損傷を受ける類いのもので。 調べましたら、執事さんの体調不良もその類です」
ジュウザブロウ「ということは、ワタクシも狙われていた、ということでしょうか?」
タクヤ「そうですね。 同じ犯人の仕業かもしれません。 そして、その犯人は、この中にいるようです・・・」
ヨウコ「なんですって! では、ワタシたちの中の どなたかが、 犯人だとでも、おっしゃるの?」
ヨウコ「勝手なことを・・・」
ミドリ「・・・」
ハナエ「・・・」
タクヤ「ですから外出禁止にします。 この場で待機していてください」
タクヤ「刑事さんと私とで、個別にお話を伺いましょうか」
〇豪華な部屋
我々は大広間の隣の応接室で、
話を聞くことにした。
タクヤと旧知の友であるのは、
カシマ刑事は警察学校の同期だったからだ。
カシマ刑事「全く、人使いの荒い探偵だな・・・」
タクヤ「急に呼び出して、すみません。 どうしても必要でしたから・・・」
カシマ刑事「冗談だよ。さ、始めようか」
タクヤ「では最初の方から、どうぞ。」
ハナエ「あの・・・ハナエです。 私は、毒なんか入れてません。 やってません」
カシマ刑事「まぁ、お座りください。 パーティの間は何をしていましたか?」
ハナエ「私は、みなさんのお茶を入れたり配ったりしていました。 あと、奥様のお茶をこぼしてしまって、片付けをしておりました」
カシマ刑事「では、パーティが、始まる前は何をしていましたか?」
ハナエ「もちろん、みなさんのお食事やお茶の用意をキッチンで、してました。 その時は、マサシさんも一緒に手伝ってくれていました」
カシマ刑事「マサシさん?」
ハナエ「ええ、私同様、ここの使用人です。先程のピアノ演奏、素敵だったでしょう?」
ハナエ「彼はシェフの資格を持っていて、 ここに来る前は、バーを経営していたらしいのです」
カシマ刑事「へえー多才ですね。 アナタは、いつからココで使用人を?」
ハナエ「私は三年前からですわ。 なので、お屋敷のことは 秘書のシホさんが、お詳しいでしょう」
ハナエ「あとは奥様でしょうか。 ヨウコ奥様は後妻で、5年前から 弟で会社の重役マサタカ様と共に、 お屋敷に住んでいらっしゃいます」
ハナエ「先の奥様は6年前に、ココで起きた火事で・・・ あぁ口が軽ぅございましたね。 すみません」
タクヤ「素直に話していただけて、 ありがたいです。 嘘をついても、わかりますからね・・・」
タクヤ「確かにアナタは一番犯行をするには適した場所にいました。 しかし、アナタにはご主人や執事を殺す動機がない。違いますか?」
ハナエ「動機・・・は、皆あるのかもしれません。ご主人様は目的のために手段を選ばない方で、時折、冷酷になられます」
ハナエ「少なくとも、私にも動機がないとは言えませんし これだけの財産を守るためですから、 仕方ないとも思いますが・・・」
ハナエ「でも、私はやってません。 ・・・私に動機がないって、どうして思われたんですか?」
タクヤ「アナタの手、です。 毒は細胞壁を壊すと言ったでしょう? アナタの手が、家事をしているには 綺麗すぎませんか?」
タクヤ「一年間もお仕事をしていて お茶を運ぶのも慣れていない。 また、その手でお茶を入れるなら、 強力な毒で必ず手が荒れるはず」
タクヤ「状況証拠として、 アナタが実際に行動に起こしたとは とても思えなくて」
タクヤ「ハナエさん、 アナタは本当に、 こちらの使用人ですか?」
ハナエ「・・・そうですか。 わかってしまうんですね。 調べたらいずれ わかるのでしょうから 私からお話します」
ハナエ「私は使用人ではありません。 実は私は、こちらのご主人の コウゾウ氏の実の娘なのです。」
ハナエ「ミドリさんとは母親の違う姉妹、ということです。 お父様はご存知ないでしょうけど・・・」
タクヤ「どういうことですか?」
ハナエ「私の母親は・・・」
〇豪華な部屋
カシマ刑事「次の方、どうぞ。」
マサシ「マサシです。 ココの使用人をしています」
カシマ刑事「いつから、こちらで働いているのですか?」
マサシ「5年前からです。 ここが火事で壊され、建て直されてすぐに、使用人の募集があったので」
マサシ「ココのご主人様が、 僕の店の常連サンだったのです。 その縁で使用人として 雇ってもらいました」
カシマ刑事「屋敷の火事について なにかご存知ですか?」
マサシ「火事については、よくわかりません。 来る前の話ですから」
マサシ「ただ僕が聞いた話では、 ご主人の弟と先の奥様が 火事に巻き込まれて 亡くなったと聞いています」
カシマ刑事「事件の時は何をしていましたか?」
マサシ「みんなと大広間にいて、 ご主人に言われて 僕がピアノの演奏をしていました。 その前は料理などの準備をしていました」
カシマ刑事「ピアノが相当お上手なようですね。 何か、なされていたんですか?」
マサシ「ピアノは幼少期より習い 音楽の道に進むには難しく、 自分の店でピアノ演奏を売りに バーを開いていました」
マサシ「昔、自分のバーを経営していたんですが、資金繰りが悪化して、 店を畳んでしまいました。 残念でなりません」
マサシ「恥ずかしい話ですが、まだ今も 店の時の借金がありましてね・・・ またいずれ、お金を貯めたら 店を開こうと思っています」
カシマ刑事「そうですか。 ご主人のことは、どう思われていましたか?」
マサシ「厳しい人ですが、ちゃんと筋の通る事を言っているので、嫌いではないです。 あんなことになり、驚いています 僕には恩人ですし」
マサシ「ほとんど一文無しの僕を住み込みで働かせてくれて、こんな素敵な、ピアノまで弾かせてくれるのですから」
タクヤ「そうですか、ありがとうございます。」
マサシ「あぁ、そういえば、 気になることがひとつだけ・・・」
〇豪華な部屋
タクヤ「次の方、どうぞ。」
マサタカ「マサタカです。 金城グループ執行役員です。 グループ会長のコウゾウ氏の 妻ヨウコの弟でもあります」
マサタカ「姉と一緒に、屋敷に住んでいます」
カシマ刑事「御姉弟で仲が良いのですねぇ」
マサタカ「えぇ、両親を早くに亡くし 姉ひとり僕をここまで、立派にしてくれました。姉は僕の誇りです」
カシマ刑事「そうですか、あなたにとって いいお姉さんなのですね」
マサタカ「はい。 気が強い性格ですが、 僕には、とても優しいし そんな姉が大好きなのです」
タクヤ「事件の時はどうしていましたか?」
マサタカ「みんなと一緒にフロアで 乾杯していましたよ。 僕はキッチンにも行ってないし、お茶のポットにも触れていないし」
マサタカ「なので、僕がお茶に毒を入れるのは、 ほとんど不可能だと思いますが?」
カシマ刑事「屋敷で起きたという火事について なにかご存ですか?」
マサタカ「僕が来たのは、姉が結婚してからなのです5年前ですね。 ご主人はボクのことも弟として可愛がってくれました」
マサタカ「それに会社のことなら分かりますが、 この屋敷のことは、あまり知りません。 秘書のシホさんの方がご存知なのでは?」
マサタカ「あの方は 先代会長が存命の頃から いらっしゃるそうですから ああ見えて、いったい何歳なのか 想像つきませんが・・・」
カシマ刑事「コウゾウ氏については どう思っていますか?」
マサタカ「会長はやり手で 時には強引な手も使いますし それ故に恨みも買うことが多いのでしょう」
マサタカ「でも僕たち姉弟にとっては恩人なので、恨むようなことはないですね。」
マサタカ「ただ、コウゾウ氏は、いつも仕事で忙しくて、屋敷を留守にすることが多く、姉が寂しい思いをしています」
マサタカ「それで買い物を沢山してしまうんです。 無理もありません。 姉にとっては、それが一番の心の安定なのでしょうから」
マサタカ「ワタシが話せることは、それくらいでしょうか」
タクヤ「そうですか、ありがとうございます」
〇豪華な部屋
タクヤ「はい、次の方どうぞ。」
シホ「コウゾウ氏の秘書をしております、シホと申します」
カシマ刑事「皆さんにも聞いているのですが、 事件の時は、何をしてましたか?」
シホ「ワタシはコウゾウ氏のそばでずっと、 お誕生会の準備をしておりました。 ミドリ様へのプレゼントなどの準備がありましたから」
タクヤ「コウゾウ氏は、とてもミドリさんを可愛がってらっしゃいますよね」
シホ「ええ。 でも先の奥様が亡くなられてからの話です。 その前は、先の奥様もミドリ様も 大変辛い思いをされていたと思います」
タクヤ「どういうことですか?」
シホ「先の奥様はミドリ様が産まれてから留守がちなコウゾウ氏と仲がお悪くなり 離れで暮らすようになっておりましたわ」
シホ「コウゾウ氏はミドリ様をお好きだったのかもしれませんが、先の奥様がミドリ様に会わせないようにしてたので・・・」
シホ「そこに、後妻のヨウコがやってきたのです! ヨウコはコウゾウ氏を後ろ盾に 先の奥様やミドリさんを 虐げておりました」
シホ「ワタシやジュウザブロウは 見かねて「おやめください」と 何度止めに入ったことか・・・」
タクヤ「そうですか。 それはお辛かったでしょうねぇ」
シホ「ええ、ですからワタクシは ヨウコ様が何かしたのではと 今でも思っているのです・・・」
シホ「6年前の火事の件でもそうですが・・・」
カシマ刑事「火事について ご存知のことはありますか?」
シホ「警察の見解では、 コウゾウ氏の双子の弟様が ご自身に悲観して屋敷に火をつけ、奥様が巻き添えになった、というお話でした。」
タクヤ「コウゾウ氏に双子の弟さんがいたのですか!?」
シホ「ええ。 何か事件を起こしたらしく、離れの奥の部屋で密かに暮らしていたようです。 その事は一部のものしか知りませんでした」
シホ「たぶんヨウコさんも 知らなかったのでは、ないでしょうか?」
シホ「ワタクシがちょうど留守の出来事で、 ジュウザブロウが屋敷に残っていたのですが、巻き添えになったようで」
シホ「それもあって 度々体調を崩すようになったのです。 今回は毒を盛られたんですって? 災難だわ・・・」
タクヤ「誰かに狙われているのでしょうかね」
シホ「ええ、ですから次に狙われるとしたら ワタクシなのではと思っているのです。 刑事さん、ワタクシを守ってくださいませ」
シホ「あと、ワタクシには一人娘がおりまして・・・ その子のことも気がかりです。 狙われていたら、どうしましょう・・・」
〇豪華な部屋
タクヤ「マサシさん? 気になること、とは?」
マサシ「前日に、ヨウコ奥様とコウゾウ氏が部屋で大喧嘩しているのを、 僕が通りがかり聞いてしまったもので・・・」
マサシ「「あの娘ばかりをかわいがって!あんな子に使わせるお金なんか、ありませんからね!」 「金はお前のものではない!出ていけ!」」
マサシ「だったかな・・・?」
マサシ「まぁ、たぶんミドリさんばかりを可愛がるコウゾウ氏を、ヨウコさんが責める内容だったと思いますね」
マサシ「しかも誕生日パーティの前日でしたし」
タクヤ「そうですか。 奥様のことでなにかご存知のことがあれば教えてください」
マサシ「元々奥様もバーのようなお店で働いていたようですし、僕のようにお店で知り合ったのではないのか、と思いますね」
マサシ「僕のようにお金に困っていたところを助けられた・・・のかもしれません」
マサシ「ここに来るまで、弟さんと二人暮らしだったそうですし、その弟さんを立派な大学に入れて卒業するまで働いてたくらいで、」
マサシ「ああ見えて、割と苦労したみたいですよ」
カシマ刑事「そうでしたか。 ありがとうございます」
〇豪華な部屋
カシマ刑事「次の方、どうぞ!」
ヨウコ「金城グループ会長、 コウゾウの妻、ヨウコですわ」
ヨウコ「5年前にこちらに嫁いで来ましたの。 それから、この屋敷で過ごしておりますわ」
カシマ刑事「事件の時は どうしていましたか?」
ヨウコ「ワタクシ、皆さんと一緒に ミドリさんの誕生日パーティに 参加しておりましたの。 まさか、こんな事が起きて怖いですわ」
タクヤ「パーティは大変なことになりましたね。 ミドリさんについては、どう思われてますか?」
ヨウコ「ミドリさんは先の奥様の娘で、 ワタシの娘ではありませんが、 娘同様に暮らしておりますわ。 コウゾウ氏が可愛がっていますし」
ヨウコ「もうすぐ、春に卒業したら 大企業グループの御曹司に 嫁ぐのが決まっておりますもの」
タクヤ「そうなのですか。 お若くしてもう結婚が決まっているのですね!」
ヨウコ「ええ、ですから コウゾウも寂しがるかもしれませんね。 ワタシがお慰めいたしませんと・・・」
タクヤ「このお屋敷で起きた火事について、何かご存知のことはありますか?」
ヨウコ「そんな昔のことも聞くんですの!? 今回の事件とは関係ない気がするのですが?」
カシマ刑事「皆さんにお聞きしています。 事件の真相を明らかにするための、 大切な捜査活動ですので」
ヨウコ「そう、刑事さんがそう言われるのでしたら、仕方ありませんわね」
ヨウコ「確かに、現場に居合わせましたわ。ワタシが気づいたときには、もうお屋敷は火の海でしたの。 思い出すと怖くてトラウマになって」
ヨウコ「その場から逃げるのに必死で、 他はあまり覚えてません」
ヨウコ「ワタシにそれを思い出させるなんて 酷い人たち・・・」
タクヤ「それは、すみませんでした。 知らなかったもので・・・ お辛かったんですね」
ヨウコ「わかっていただけたのなら、いいわ。 二度とその話はしないで頂戴。 ワタシも二度は話さないわ」
タクヤ「事件の前日など、何か変わったことはありましたか?」
ヨウコ「いいえ特には変わったことはないわ」
タクヤ「前日にコウゾウ氏と言い争いをしていた、 とのお話しを聞いていますが・・・」
ヨウコ「どなたかしら! そんなことを言うのは! 先の取り調べを受けた誰かね! 後で叱らなくちゃ!」
カシマ刑事「いや噂を聞いた、というだけですよ。 単なる噂です・・・」
ヨウコ「確かに少しコウゾウと口論になりましたけど、日常茶飯事ですもの。 対話がないより、言い合えるのも仲の良い証拠ですわ!」
タクヤ「そうですよね、話し合いはした方が僕も良いと思いますよ」
ヨウコ「アナタは意外とお話のわかる方ね。今度、ワタシのお部屋にいらっしゃい、とっておきのお茶をご馳走するわ!」
タクヤ「ありがとうございます、ハハ・・・ でも、最愛の弟さんもいらっしゃいますでしょ?遠慮しておきます」
ヨウコ「あぁ弟? 気にしなくていいわ。 弟はワタシの言う事なら何でも聞いてくれるもの。優しい子でしょ?」
ヨウコ「あの子は小さかったから覚えてないと思うけど、私達は血が繋がっていないの。 ワタシは母の連れ子、弟は父の連れ子だから」
ヨウコ「その時、ワタシが7歳で弟が3歳だったかしら。 父と母は事故で亡くなって 保護施設で過ごし 働いてから弟を引き取った」
ヨウコ「それからは二人で暮らしてた。 そうしてたら働き先に、 コウゾウ氏がやってきたんだわ」
ヨウコ「コウゾウ氏は先の奥様のことで 悩んでいらしたの。 先の奥様は、グループ総帥のお嬢様だったから政略結婚だったのね」
ヨウコ「お金持ち同士だし 愛がなくても結婚はできるのよ ミドリさんだって、コウゾウ氏の子どもかわからない、みたいな話でしたもの」
カシマ刑事「ふぅむ。 初耳ですな」
ヨウコ「コウゾウ氏より先に 付き合っていた人がいた、 という話だったみたい。 先の奥様は、その人と別れさせられ、結婚したという」
ヨウコ「ですからワタシは、 本当にコウゾウ氏を愛しているし、コウゾウ氏も私を愛してくれている・・・と思っておりますわ」
ヨウコ「どんなに口論になっても・・・ね」
タクヤ「コウゾウ氏を愛しているのですね」
ヨウコ「ええ」
〇豪華な部屋
ハナエ「私の母は・・・」
ハナエ「母の名は「ヨウコ」 母が18歳の時に産まれました。 DNA鑑定で、コウゾウ氏とヨウコの 親子だと証明されてます」
タクヤ「ええ!?」
ハナエ「産まれてすぐに、 コウゾウ氏の秘書シホさんに 預けられました。 ワタシはシホさんに育てられたのです」
ハナエ「母は昼夜問わず働いてたようですし まだ若かったので・・・」
タクヤ「そうでしたか」
ハナエ「シホさんは、母がヨウコだと知り、 酷い目に遭わないかと心配して 育ててくれていました。 今でもワタシは実の母が怖いです」
ハナエ「シホさんは子どもが授からない体質だと言っておりました。 それ故にワタシを育てられるのは嬉しいと仰ってくださいました」
ハナエ「それに、シホさんはコウゾウ氏から 養育費を受け取っていましたので 生活に不自由することはありませんでした」
ハナエ「ただワタシは、ミドリさんとは違って 親子関係を秘密にしているのは 辛かったです。 なぜワタシは父に愛されないのだと・・・」
〇豪華な部屋
タクヤ「では、次の方どうぞ。」
ミドリ「お願いします」
ミドリ「コウゾウの娘、ミドリです」
カシマ刑事「お誕生日会が大変なことになりましたね・・・」
ミドリ「はい。 お誕生日のプレゼント、 すごく嬉しかった・・・」
ミドリ「お父様がくれたウササン、 ワタシが昔から欲しいと言っていたものだったのです。 それを覚えてくれていたのが嬉しくて・・・」
ミドリ「えーん」
ギュッ
カシマ刑事「たしか、十数年前にブームになりませんでしたっけ? そのウサギさん」
タクヤ「ええ、みんな欲しがってましたね。 姪っ子もそうでした」
ミドリ「そう、アカリちゃんも大好きって言ってた!」
タクヤ「姪のアカリの同級生なんですよね、ミドリさん」
カシマ刑事「そうでしたか」
ミドリ「ミドリね、春になったら 知り合いの人と結婚しないといけないの。 お父様とお母様が決めたことで」
ミドリ「なので、今も無いようなものだけど 自由がなくなる前に あと少しの自由を楽しんでいます」
タクヤ「そうですか・・・ お若いのに大変なのですね」
ミドリ「なので、父は誰かに狙われているし あまりパーティを盛大にして欲しくはなかったのですが プレゼントは、とても嬉しかったです」
ミドリ「ウササン大事にします・・・」
〇豪華な部屋
カシマ刑事「さて、最後は・・・」
アカリ「ジャーン! 美少女探偵☆アカリちゃんでーす!」
ヤスヒロ「と、その助手! 天才探偵ヤスヒロも、いるよ!」
カシマ刑事「まったく、君たちねぇ・・・ 遊んでるんじゃないんだから・・・」
アカリ「お仕事してきたよ! ほら〜☆ちゃんと証拠を探して きたんだからね♡」
アカリ「スマホで撮ってきた〜 事件現場!と各個人の部屋! あと、アルバム借りてきたし〜 優秀でしょ?」
カシマ刑事「君たちどうやって・・・ 入れない部屋もあっただろう?」
アカリ「だってミドリちゃんと お友達だもん♡ねー♡」
ヤスヒロ「間取り図もあるよ、わからなかったら 聞いてくれたら答えるよ。 でも形が変なんだよね ここに部屋があってもいいんだけどなぁ」
ヤスヒロ「隠し部屋とかありそうじゃん!」
タクヤ「さすが君たちは優秀だね! えらいえらい。」
タクヤ「ふむ、火事が起きる前の写真も あるようだね」
アカリ「あれ? ミドリちゃんのお父さんが 二人いるよ!」
カシマ刑事「どうやら双子の兄弟だったらしいんだ。 火事で亡くなったとか」
タクヤ「カシマ刑事は 誰が犯人だと思います?」
カシマ刑事「うーん、 毒を茶に入れるのは ハナエかマサシが怪しいが、 あの会場では 誰でも入れられるよな・・・」
カシマ刑事「動機から考えると 疎んでた先妻を消したかったのは 後妻のヨウコとコウゾウ、 ということになるんだよなぁ・・・」
カシマ刑事「それを知っていて 先妻の復讐で、とか。 または、金のトラブルで コウゾウを消したい奴か」
カシマ刑事「俺の見解は、そんなもんかな」
タクヤ「アカリちゃん達はどう思う?」
アカリ「ん〜わかんない。 けど、毒で殺そうとするのって 力の弱い人なんじゃないかと アカリちゃんは思いま〜す♡」
ヤスヒロ「でた!アカリのプロファイリング!」
〇教会の中
ガチャ
マサシ「ここの鍵だったのか! 全部探してやっとわかったよ! 宝物庫だと思ってたんだか。 宝物庫の鍵はどこにあったんだろうな」
マサシ「なぁ、そう思うだろ?」
マサシ「いずれは、 この家を相続するだろう女子と 結婚して家督を継いでやる! なんてな」
マサシ「一生遊んで暮らせるぜ!」
マサシ「さて、 ココも金目のものは、 結構ありそうだし 少し頂いていくか・・・」
ドン
マサシ「ウッ な、なんで・・・」
「屋敷を荒そうとするやつは、
必ず天罰を喰らうのさ・・・」
〇教会の中
カシマ刑事「それで、朝に来たら マサシさんが倒れていた、と」
ハナエ「そうです・・・ それで皆さんを呼んだら ジュウザブロウさんが来てくれて グスン」
ジュウザブロウ「もう、事切れていたのです」
カシマ刑事「そうでしたか。 推定時刻は昨晩の夜、でしょうね」
ジュウザブロウ「普段、礼拝所は主人が鍵を開け締めするので持っているのですが、 昨日は何故か、 彼が鍵を持っていたのですよ」
ジュウザブロウ「主人がいないので 礼拝所は締めていたはずなのですが・・・ 主人の部屋に入って鍵を持ち出した? ということかもしれません」
カシマ刑事「鍵泥棒か・・・」
ジュウザブロウ「このお屋敷には 「鍵を持つものが当主」という しきたりがありまして・・・」
ジュウザブロウ「亡くなった人に、 こういうことを言うのも なんですが、泥棒をするなんて 天罰かもしれませんね」
ハナエ「優しかったマサシさんが、 なぜそんなこと・・・」
シホ「優しかった?というのも演技かもしれませんよ。 彼はホストのように、 プレイボーイで有名だったらしいのですから」
ハナエ「シホ・・・さん」
シホ「そう、優しそうに見えて・・・ 騙されてはいけませんわ。 アナタの他にも・・・」
ハナエ「やめてください。 聞きたくありません・・・」
タクヤ「後頭部を鈍器のようなもので 傷を受けたあとがありますね。 なぜマサシさんは 襲われたのだと思います?」
ハナエ「私には心当たりがありません・・・」
ジュウザブロウ「やはり泥棒だったから・・・ でしょうか」
カシマ刑事「泥棒でしたら 仲間割れの可能性もありますね。 これだけ近距離での攻撃ですし」
シホ「顔見知り・・・かもしれないということですか?」
カシマ刑事「その可能性は高いと思います」
マサタカ「話を聞いて来てみれば・・・ 皆さんお揃いで」
マサタカ「あぁ、姉は気分が悪いとかで 部屋で寝ています。 かわりに僕が来ました」
マサタカ「マサシさんは、お気の毒に。 なぜ礼拝所に来たんでしょうね? なにか懺悔でも、するつもりだったんでしょうか」
タクヤ「懺悔ですか?」
マサタカ「そう、コウゾウ氏は ジブンの宗教組織を持っていまして、 教祖としても、活動していたんですよ」
マサタカ「これらの冊子を見たことがあるでしょう? ここは、その教会です。 倒れてから閉鎖してましたが・・・」
マサタカ「身分関係なく、教祖に罪を懺悔し赦されることで、全てが救われる、という教義です。 素晴らしいでしょ?」
カシマ刑事「は、はぁ・・・」
マサタカ「まぁ、というわけで こちらにいる方は みんなコウゾウ様のモノ、と言っても過言ではないわけで」
マサタカ「彼も赦しをこうひとり、 というわけなのでしょう。 僕はあとから来たので 客観的に見れますが・・・」
マサタカ「僕が崇拝するのは 姉ただ一人なので・・・」
タクヤ「彼は、 許されなかったのですかね・・・」
〇教会の中
ハナエ「ワタシは決して 父には愛されない・・・」
ハナエ「そして誰にも愛されない・・・ 優しかったマサシさんもいない うぅ・・・」
カツンカツン
シホ「ハナエさん」
ハナエ「シホさん。 どうしてここに・・・」
シホ「本当に懺悔しないといけないのは ワタクシですわ」
シホ「ハナエさんを利用して この屋敷の財産を 手に入れようとしていたのは ワタクシなのですから」
シホ「それを、感づいていたのかしらね。 あなたは私のことを「お母様」とは 一度も呼んでくれなかったわ」
ハナエ「いいえ、そうではないんです」
ハナエ「呼べなかったのは、シホさんに 迷惑をかけたくなかったからです。 本当のお母様でもないのに 良くしていただいて」
シホ「迷惑?とんでもない。 ワタクシはもっと、娘として 甘えてほしかったのよ・・・」
シホ「ワタクシはあなたを 愛しているのよ・・・ どうしたらわかって いただけるのかしら」
ハナエ「ごめんなさい、 お母様・・・ ありがとうございます」
シホ「他人行儀なのは 治らないのね ウフフフ」
ハナエ「グスン すみません・・・お母様」
〇教会の中
カツンカツンカツン
ヨウコ「・・・」
ヨウコ「みんな私のことを 「金のための結婚だ」というの。 ワタシは本当に コウゾウさんを愛していたのに・・・」
ヨウコ「どうして私の愛する人は 誰も振り向いてくれないの・・・」
バターン
マサタカ「姉さん! 僕がいるじゃないか! どうして僕じゃ駄目なんだ! 僕がずっと、ついてるから!」
ヨウコ「マサタカ・・・ アナタは本当に優しいのね・・・」
マサタカ「姉さん・・・」
ヨウコ「姉さんは、寂しいと 死んじゃうのよ・・・」
マサタカ「僕がついてるから・・・ ずっと」
〇教会の中
タクヤ「・・・」
カツーンカツーン
タクヤ「まさか犯人は・・・ あなただったとはね。 双子の弟さん?」
カツーンカツーン
コウゾウ「神よ、今こそ真実を話そう」
コウゾウ「ワタシの本当の名前は コウゾウではない、 弟のユウゾウだ!」
コウゾウ「ワタシはあの事件の日、 「自分で毒を飲んだ」 演技をしていただけでしたがね」
タクヤ「・・・」
コウゾウ「ワタシは出来の悪い息子だった。 親からは疎まれ、 出来のいい双子の兄ばかり 可愛がられていた」
コウゾウ「そんなときワタシは罪を犯した。 自転車でスピード違反、 交通事故を起こして 相手方が亡くなってしまったのだ」
コウゾウ「それらの記事や噂も、 親は全てを金で解決してくれた。 なかったことになっていた。 ワタシは心底怖かった」
コウゾウ「金で「あることが、ないコトになる」のが 現実に起こりうるのだと知った。 金があれば何でもできる、を 証明してしまったのだ」
コウゾウ「警察から戻ってきた後、両親や兄は家督に傷がつくからと 屋敷の中の隠し部屋に ワタシは幽閉されていた」
コウゾウ「食事は支給され、 部屋に風呂もトイレもあり、 外に出る以外は不自由しなかったが、」
コウゾウ「人と接触することは許されない。 部屋に残された本だけが 唯一のワタシの世界だったのだ」
コウゾウ「私は金が全ての世界を恨み 金の世界と疎遠な暮らしをしていた。 実際には金の援助をされた訳だから 疎遠とは言えないがね」
コウゾウ「そのあと両親の勧めで、 兄は富豪の娘と結婚(見合い)した。 両親を交通事故で亡くし、 兄は家督を継いだ」
コウゾウ「新しい妻は、私という弟がいることさえ、知らない。興味もないかもしれない。 彼らもまた金の為の結婚だからだ」
コウゾウ「屋敷に火をつけられた際に、 幽閉された部屋の壁が壊れ 運良く外に出られ、 兄と遭遇し、 兄を殺して私は入れ替わったのだ」
コウゾウ「火事の真相は、 兄が屋敷の離れに住まう 疎ましい先妻を殺害、」
コウゾウ「ベッドで寝ていた幼子ミドリと共に 妻の死体を焼くために、 兄が屋敷に火をつけ 全員殺すつもりだった」
コウゾウ「金の亡者どもをな・・・」
コウゾウ「しかし後妻は先に逃げ、 当時の使用人も火事に巻きこまれた」
コウゾウ「逃げる兄に気づいた弟のワタシが 兄を捕まえ、その場で殺害、 ソックリな私が兄に成り代わり、 火の海でミドリを救い外に出た」
コウゾウ「その後は、ご存知の通り・・・」
コウゾウ「私が兄にすり替わった理由は 過ちの過去を消すため。 兄の輝かしい経歴を自分のものにするため」
コウゾウ「弟にはない家督の継承権を得るため。 姪のミドリを手に入れ、この手で守るため」
コウゾウ「私の背中には大きな火傷の跡、 ミドリには微かに火傷の痕があるはずだ」
コウゾウ「家を建て替えたときに、 秘密の部屋と 脱出用の出口と 教会、宝物庫を作った」
コウゾウ「私のプライベートルーム、 ミドリと過ごすための部屋。 もしものときの脱出用。 ミドリへ全て財産を託した部屋」
コウゾウ「それらを全て、 誕生日の日に託したのだ。 私は死ななければならなかった。 ミドリが嫁に行ってしまうから」
コウゾウ「家督をミドリに継がせ、 この屋敷に留めるために・・・ ワタシと一緒に過ごすために」
コウゾウ「ミドリに伝えてくれないか? あのぬいぐるみの中にあるものを。 あの子は何も知らない」
コウゾウ「私はまた幽閉されてもいい ミドリと一緒にいられるのなら・・・」
カシマ刑事「さぁ、行こうか・・・」
コウゾウ「ミドリをくれぐれも頼む・・・ 幸せにしてやってくれ・・・」
〇教会の中
タクヤ「あなたは 全てを知っていたんですね? 知っていて、私に助けを求めた・・・」
ミドリ「屋敷の奥に開かずの間があることは 知っていました。 そこには入らないようにと 注意されていたからです」
ミドリ「ある時、おもちゃが転がって 開かずの間まで来てしまい、 偶然、壁に隙間を見つけたのです ワタシだけが通れる小さな穴でした」
ミドリ「その部屋の中には ユウゾウ叔父様がいらっしゃいました。 お父様の弟です」
ミドリ「私は家の者に隠れて、 度々ユウゾウさんの部屋に訪れては、 一緒に遊んでもらいました。 それは寂しい私の唯一の楽しみでした」
ミドリ「お父様にそっくりですし・・・」
タクヤ「プレゼントの中身は いつ気づいたのですか?」
ミドリ「最初からです。 だって、ないはずの縫い目がありましたし 抱きしめると硬いんですもの」
ミドリ「なぜお父様ではなく、 叔父様だと、わかったのかって?」
ミドリ「それは、 ユウゾウさんの右手には、お父様にはない「ホクロ」があるのです。 私しか知らないでしょう?」
ミドリ「火事の時のことは覚えています。 手にホクロがあり、すぐに叔父だと わかりました 叔父様が助けてくれたと・・・」
ミドリ「叔父がお父様のフリをしているのも わかっていました。 でも知らないフリを私もしていたのです」
ミドリ「ユウゾウさんは、誕生日会で、 私に大切なプレゼントを くれました」
ミドリ「ウササンの背中に 閉じられた跡があるのを 見つけてしまいました。 中には「鍵」が入っていたのです」
ミドリ「「秘密の部屋の鍵」と 「宝物庫の鍵」と「緊急脱出用の鍵」でした」
ミドリ「全ての鍵を持つのは、 この屋敷の当主だけです。 盗まれたのは「礼拝所の鍵」だったのでしょう?」
ミドリ「そして脱出用の鍵。 宝物庫を狙う人たちから 守るために作られた鍵。」
ミドリ「宝物庫は、侵入者がわかると 自動的に毒ガスを出すトラップが 仕掛けられているのです」
ミドリ「なので解除の鍵を持たないものは、宝物庫に足を踏み入れることもできません」
タクヤ「事前の調査で 行方不明になった人の話は 聞いたことありますね。 そういうことでしたか・・・」
ミドリ「ミドリは、春になったら結婚するのです。 ユウゾウ叔父様と・・・」
ミドリ「二人で幸せになるの」
タクヤ「それは・・・」
ミドリ「だから邪魔しないで!」
ヤスヒロ「ミドリさん・・・」
アカリ「ミドリちゃん・・・」
ジュウザブロウ「ミドリ様は我々がお守りします! これからはこちらの当主ですから」
タクヤ「よろしく頼みます!」
アカリ「ミドリちゃん・・・ ずっと友達だからね!」
ヤスヒロ「幸せになれよ!」
タクヤ「サヨウナラ」
ミドリ「ありがとう、サヨウナラ みんな元気でね」
アカリ「サヨウナラ・・・」
ミドリ(ワタシ・・・待ってるわ叔父様)
圧倒的なボリューム感❗️推理ドラマを観ているようでした☺️
普段ミステリーはあまり読まないのですが、初心者な私でも理解できて楽しめました🙌
お屋敷に幽閉された双子の片割れとか入れ替わりとか、血縁の複雑さとか、江戸川乱歩や横溝正史っぽいレトロでダークな設定がすごく好みです。最初はミドリちゃんの狂言かと疑っていたけど、当たらずとも遠からずでした。ドラマか映画で見てみたい。
このミステリードラマのような作品は、隠し事や陰謀がたくさんあり、一瞬たりとも目が離せない面白さがありました!登場人物たちの探偵のような行動は、この作品に一層深みを与えています。ストーリーは緻密に作られており、飽きることがありません。そして、登場人物たちの魅力的なキャラクターが、物語をより引き立たせています。この作品は、ミステリー好きな人にはぜひ読んでもらいたい一冊です。