きたのみ!

ましまる

第十話・芋市塩車(脚本)

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〇オフィスのフロア
同僚さん「この前さ、長野県に行ってきたんだけど、 ホント「名物に旨い物なし」だった・・・」
ミチル「えー、長野県って美味しいものが たくさんありますよ!」
ミチル「一体、何を食べたのですか?」
同僚さん「蜂の子と、イナゴと、ざざ虫ってヤツ!」
同僚さん「もー、見た目から無理だった・・・」
ミチル「それって、単に虫が苦手なだけですよね」
ミチル「長野県って、定番の「おやき」をはじめ 戸隠そば、駒ケ根ソースカツ丼、 野沢菜など、美味しい食べ物だらけですよ」
同僚さん「えー、どれも食べてない・・・」
ミチル「基本的に、名物は旨い物ばっかりですよ!」
ミチル「そもそもなんですが、 虫嫌いなのに虫を勧められるって、」
ミチル「食事をセッティングした人に、 嫌われていたんじゃないですか?」
同僚さん「・・・・・・・・・」
  「名物は旨い物ばっかり」と言うミチル
  もちろん、北海道名物グルメのほとんどは
  彼女の大好物

〇飲み屋街
  しかし、彼女にも苦手な「名物」があった
  「それ」が本当に口に合わないのか、
  本日は確認してみることに。
  
  (・・・・・・という酒呑みの口実)

〇大衆居酒屋(物無し)
ミチル「今日のお酒は・・・」
ミチル「スッキリ麦焼酎のロック!」
ミチル「単体でも美味しいけど、 癖の強い食べ物と喧嘩しないのも魅力的!」
  そして、件の「名物」が・・・
居酒屋の大将「はいお待たせ~」
居酒屋の大将「自家製塩辛のじゃがバターね」
ミチル「うわ、美味しそう! とってもイイ匂い!」
ミチル「これまでの苦手だったヤツは、 生臭いアルコール臭が立ち昇っていたけど」
ミチル「これは匂いだけで、絶対美味しいと確信! いただきまーす」
ミチル「うわー、美味しいー!」
ミチル「塩辛の旨味とバターの旨味が合わさっての 強烈なコクと味わい、 それをジャガイモが全て受け止めて、」
ミチル「口の中が幸せー!!」
ミチル「そして、様々な旨味が賑やかな口内へ 流し込まれる・・・」
ミチル「んースッキリ!」
ミチル「塩辛とじゃがバターの組み合わせって これまでは全く理解できなかったけど これは納得の相性!」
ミチル「これなら、北海道名物とされるのも納得!」
ミチル「私が今まで食べてたのは一体何だったの? あの、口の中にイヤな風味が残るアレは?」
居酒屋の大将「お姉さん、ずいぶんと美味しそうな顔して 見ていて嬉しくなるね~」
ミチル「はい、今まで食べた塩辛じゃがバターで 一番美味しいですからっ」
ミチル「何か特別な工程でもあるのですか?」
居酒屋の大将「いや、何にも ふかしたジャガイモの上に、 バターとイカの塩辛を乗せただけだよ」
ミチル「えー、これまでのは、 生臭くて食べられなかったのに・・・」
居酒屋の大将「あー、それは塩辛に問題があったんだろね」
居酒屋の大将「質の悪い塩辛は、温められると 嫌な臭いがしてくるモンだからね~」
ミチル「なるほどー、納得です!」
居酒屋の大将「生臭いのって、下処理の工程で ちゃんと「水抜き」してないからだろうね」
ミチル「「水抜き」?」
居酒屋の大将「そう「水抜き」ね。 最初にイカの身や肝に塩をたっぷりまぶし 余分な水分を抜いてあげるの」
居酒屋の大将「ここで水分をちゃんと抜かないと、 生臭い塩辛ができちゃうって訳ね」
居酒屋の大将「その身と肝を和えて塩を加えたものを 熟成させると塩辛になるんだよ」
ミチル「へー、そういった工程なんですねー!」
居酒屋の大将「でもさ、昨今の減塩ブームで、 「塩漬け」でなく「アルコール漬け」が 多くなってきてるんだよね」
ミチル「アルコール臭い塩辛、多いですよね」
居酒屋の大将「そう、調味液で味付けしたアルコールに イカの切身をぶち込んだだけのヤツね」
居酒屋の大将「塩辛の風味調整や保存目的でアルコールを 多少加えるのは理解できるけど、 保存最優先で味は二の次ってのもあるから」
居酒屋の大将「それだと、イカの熟成が進まないから イカの身を食べても味がスカスカなんだよ」
居酒屋の大将「しかも、加熱したらアルコール臭くてね」
ミチル「あー、全て繋がりました!」
ミチル「下処理で「水抜き」していないイカの身を アルコール漬けにした塩辛、」
ミチル「それがジャガイモの上で温められたから、 生臭くてアルコール臭かったんですね!」
居酒屋の大将「そうそう、ちゃんとした塩辛は、 温めても変な臭いがしないんだよ」
居酒屋の大将「むしろ、加熱したほうが旨味が出てきて 美味しくなるから」
ミチル「え、ホントですか!?」
居酒屋の大将「バーナーで炙ったら、香ばしさが加わって また違った味わいになるしね」
居酒屋の大将「他にも、炒め物に入れてあげると 旨味と塩味が他の具材に移って美味しいよ」
ミチル「えー、食べてみたいです!」
居酒屋の大将「炙りと炒め、どっちがいい?」
ミチル「どっちも!」
居酒屋の大将「あいよっ! ちょっと待っててね~」
ミチル「うわー、何かワクワクしてきたっ!」
ミチル「その前に、この絶品の塩辛じゃがバターを 熱々のうちに食べちゃいますか!」
ミチル「美味しかったー!」
ミチル「さあて、塩辛の第二ラウンド!」
ミチル「スミマセーン! 麦焼酎のロック、お代わりー!」
  昔からある身近な存在の塩辛、
  その工程と味の秘訣を知ったミチル、
  この夜は、お店の塩辛が無くなるまで
  食べ続けたとか・・・

次のエピソード:第十一話・腕白分明

コメント

  • いいですね〜!!本場じゃがと塩辛!!🤤✨
    焼酎で食べたい〜!!✨
    北海道って全部美味しそう…食のおいしいが詰まってますよね💕💕うんちくも楽くて、いつも🤔✨な顔して観てます!いつもミチルちゃんがニコニコ食べてるの癒されます〜🥰

  • 塩辛の掘り下げ楽しかったです。
    冒頭部分の流れで虫喰いのお話しになるのかと焦りました。(北海道に食虫の歴史があるのか知りませんが)
    やはり活きの良い自家製の塩辛は間違い無いですが、瓶詰めはウニもイクラも当たり外れがありますね。
    芋の種類によっても味が変わるのは納得です。日本酒、麦、芋焼酎!合うな〜!!

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