狂おしいほど熱せられ

穂橋吾郎

第三話 過熱は止まず(脚本)

狂おしいほど熱せられ

穂橋吾郎

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〇豪華なリビングダイニング
西川 満「なんでだよ!」
西川 満「俺がトイレ行ってる間だけ手を放せば、それで済む話だろ!」
福地 理沙「だから、放したらまた一からやり直しなんだってば」
西川 満「やり直せばいいだろ!」
福地 理沙「いい加減にして!」
福地 理沙「坂本さんの迷惑も考えなよ!」
福地 理沙「今日だって、満が午前中に用事あるって言うから」
福地 理沙「わざわざ夜に時間ずらしてもらってるんだよ」
坂本 敏明「いえいえ、私は大丈夫ですから」
西川 満「ちくしょう、なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんないんだ・・・」
西川 満「すぐ戻る」
西川 満「変なことしたら承知しないからな」
福地 理沙「もう、トイレぐらい先に行っといてよ」
坂本 敏明「本当にお二人は仲が良いですね」
福地 理沙「ごめんなさい。幼稚な言い合いばっかりで」
坂本 敏明「喧嘩するほど仲が良いと言いますから」
福地 理沙「彼、普段は優しいんですよ」
福地 理沙「ただ、あたしのことになると見境が無くなっちゃって」
坂本 敏明「満さんのお気持ちも分かります」
坂本 敏明「理沙さんのように素敵な女性が恋人だったら、私もきっと心配になってしまいますから」
福地 理沙「えっ」
坂本 敏明「病気のことでご自身が一番辛いはずなのに、彼の気持ちも大事にされていて」
坂本 敏明「理沙さんは本当に優しい方です」
福地 理沙「いえ、そんな・・・」
  坂本は繋いだ理沙の手に、自身のもう一方の手を重ねた。
福地 理沙「あの、ちょっと!」
坂本 敏明「私は、もっと理沙さんと仲良くなりたいと思っています」
福地 理沙「・・・満が帰ってくるので」
  理沙は重ねられた坂本の手を押し戻した。
満の声「理沙ー、なんともないか!?」
満の声「今、手を洗ってるから、すぐ戻るぞ」
福地 理沙「な、なんともないよ、あるわけないじゃん!」
坂本 敏明「ふふふ、ホントに仲が良い」

〇オフィスのフロア
江藤 由紀「理沙、まだ残るの?」
福地 理沙「うん、今日中にこの資料だけまとめておきたいから」
江藤 由紀「そっか。体が慣れてきたからって、無理は禁物だよ」
江藤 由紀「じゃ、お先に」
福地 理沙「うん、お疲れ様」
福地 理沙(ふう・・・)
福地 理沙(とはいえ、やっぱり金曜日はしんどい)
福地 理沙(37℃って、常に頭がボーっとしてる感じなんだよな)
福地 理沙「ちょっとコーヒーでも・・・」
福地 理沙「えっ」
  椅子から立ち上がった理沙は突然めまいを感じ、体をよろめかせた。
福地 理沙(あれっ、なんだろ、うまく立てない)
  態勢を立て直そうとするが踏ん張りがきかず、その場に倒れてしまった。
福地 理沙(うっ、視界が暗く・・・)
福地 理沙「助けて・・・満・・・」
  そのまま理沙は意識を失った。

〇黒
???「・・・沙」
???「理沙」
???「理沙!」

〇病室
西川 満「理沙!」
福地 理沙「満・・・?」
西川 満「良かった、気が付いたか!」
福地 理沙「あたし、会社で倒れて、それで・・・」
西川 満「課長が救急車を呼んでくれたんだ」
西川 満「俺も連絡を受けて、すぐに飛んできた」
福地 理沙「そうだったの・・・」
医者「軽い貧血ですね。微熱状態が続いたことで、疲れが出たんでしょう」
医者「一日休んだら退院できますので」
西川 満「はい、ありがとうございます!」
西川 満「・・・理沙、あんまり心配させるなよ!」
西川 満「理沙が倒れたって聞いて、心臓が止まるかと思ったんだぞ」
福地 理沙「・・・ごめん」
西川 満「頼むから無理しないで、自分の体のことを第一に考えてくれ」
福地 理沙「・・・ねぇ、一つ相談なんだけど」
西川 満「なんだ、何でも言ってみろ」
福地 理沙「体温調整を週二回にできないかな?」
西川 満「は?」
福地 理沙「週一回だと、金曜日まで体がもたないの」
福地 理沙「もう一日、水曜日に体温を戻せれば──」
西川 満「ダメだ!」
福地 理沙「ど、どうして?」
西川 満「坂本と週二回も会うなんて、死んでもごめんだ!」
福地 理沙「あたしだけで会うから、満に負担は掛けないよ」
西川 満「それが一番ダメだろ!」
西川 満「お前は、俺の気持ちを全然考えてない・・・」
西川 満「少しは優しさを持ったらどうなんだよ!」
福地 理沙「ひどい・・・」
福地 理沙「あたしは満のことを十分考えて──」
西川 満「この話は終わり」
西川 満「飲み物買ってくるから、少し反省してな」
福地 理沙「・・・なんで分かってくれないの」
福地 理沙「もっと、あたしのことを信頼してよ」
坂本 敏明「あの、理沙さん」
福地 理沙「坂本さん、どうしてここに!?」
坂本 敏明「私にも病院から連絡がありましたので、 仕事終わりに駆け付けました」
福地 理沙「そうだったんですね」
福地 理沙「わざわざありがとうございます・・・」
坂本 敏明「理沙さん・・・」
坂本 敏明「水曜日の夜もうちに来てください」
福地 理沙「・・・今の話、聞いてたんですね」
坂本 敏明「すみません、盗み聞きするつもりは無かったのですが」
福地 理沙「無理ですよ、満が許しません」
坂本 敏明「もちろん、満さんには内緒で」
福地 理沙「そんな・・・」
福地 理沙「あたしに満を騙せって言うんですか!」
坂本 敏明「さっきの様子では、何を言っても納得してもらえないでしょう」
福地 理沙「無理です。彼とは同じ会社なんです」
福地 理沙「すぐにバレてしまいます」
坂本 敏明「会社で理沙さんに協力してくれそうな女性はいませんか?」
坂本 敏明「水曜日はその方と何か習い事を始めたことにすればいい」
坂本 敏明「満さんが探りを入れてきても」
坂本 敏明「協力者の方と口裏を合わせておけば、まずバレることは無いでしょう」
福地 理沙「でも、そんなの・・・」

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