劇列伝桃太郎

栗スナ

第3部 自由の果てへ(脚本)

劇列伝桃太郎

栗スナ

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〇体育館の舞台
「ナレーター「えー・・・それでは第三幕です」」
「ナレーター「にくたろうといぬ、さる、キジはついに鬼ヶ島の前まで来ました」」
桃太郎「さて、どうやってあの島に行こうかな?」
キジ「おおーい!おやぶーん!てえへんだてえへんだー」
桃太郎「ん。どうしたキジ」
キジ「そ、それがよ、とんでもねえもんを見つけちまったんだ!」
さる「肉太郎。舟があったんだよ!浜の裏に!」
桃太郎「わかった、行こう 案内してくれ」
さる「承知!」
キジ「がってんだ!」
桃太郎「ザッ、ザッ、ザッ」
さる「ザッ、ザッ、ザッ」
キジ「バサ、バサ、バサ」
いぬ「わーん、こっちだわーん」
桃太郎「おおっ」
桃太郎「(箱だな・・・)」
キジ「な?親分!あっただろっ!」
キジ「箱舟が!」
桃太郎「そうだな(ただの箱がな)」
さる「中のドーナツを出せば 我らが乗れる!」
桃太郎「そうだな・・・」
桃太郎「(紙だけどな。濡れて沈むな  いや、その前に底が抜けそうだ)」
桃太郎「(道具係は何をやってるんだ)」
いぬ「親分・・・どうするわん」
桃太郎「(あなたまでその呼び方ですか)」
いぬ「(中のお菓子をどうにかしないとなー・・・)」
キジ「よし、さっそく中に入ろうぜ」
桃太郎「・・・・・・」
さる「このまま参るか」
桃太郎「(ドーナツはどうする・・・)」
桃太郎「(この上に入ったら服がつぶれたドーナツまみれになりそうだな・・・)」
桃太郎「(いや、それだけじゃない。食べ物を粗末に扱うな、とクレームが来そうだ)」
桃太郎「・・・」
キジ「・・・」
さる「ブルルッ・・・」
桃太郎「(まずい。客がざわめき始めた)」
いぬ「わ?わわわん?」
いぬ「ド、ドーナツだわん。ドーナツがあるわん」
いぬ「はい、どうぞ」
こうき「わー!!お菓子だー」
みずき「えー、いいなー!」
いぬ「はい、どうぞ」
みずき「わー、ありがとう!お姉さん」
いぬ「はい」
しゅん「ありがとうございます」
  ぼくも
  ぼくもー!
  わたしも
  あたし
  おれもおれも
  ぼくもー!
  あたしあたし
  ・・・
桃太郎「すげー。全部あげちゃった・・・」
さる「ブルルッ・・・」
いぬ「親分!船の中の掃除が終わりましたわん! 乗ってくださいわん!」
桃太郎「わかった。では船に乗るぞ!!」
桃太郎「ん・・・んぐっ・・・んんん・・・」
桃太郎「(ふう、入れた・・・)  乗れた・・・!」
いぬ「・・・」
桃太郎「(だがもうやばい。自分だけしか乗れるスペースがない・・・)」
いぬ「・・・」
キジ「次は俺が乗る!」
桃太郎「・・・」
桃太郎「ぐっ、うっぐっ、ぐうう、ぬう・・・」
キジ「ふう・・・入れた」
いぬ「次は私だわん」
桃太郎「(マジかぁ・・・これ紙なんですけど)」
いぬ「まずい・・・!」
桃太郎「(ですよね・・・)」
いぬ「(裂けちゃった・・・だから・・・破いたところに)」
いぬ「さりげなく乗るわん」
桃太郎「(・・・まあ後ろが裂けたが客に見えないのが幸いした)」
桃太郎「(笑われてた気もするが・・・)」
桃太郎「もうやばいな・・・」
さる「次は我の番か」
桃太郎「ええ!?」
桃太郎「(うわ・・・)」
桃太郎「うわ、無茶すんな」
桃太郎「・・・」
いぬ「・・・」
さる「やばっ」
桃太郎「いや、気づくの遅いから!」
桃太郎「(箱の後ろと左が裂けた・・・)」
桃太郎「(まあいいか、  ここは無理やり船出してしまえばいいか・・・)」
桃太郎「(客は子供だ。わからないさ)」
桃太郎「しゅっぱー---つ!!」
桃太郎「・・・」
桃太郎「しゅっぱーつ!」
桃太郎「(うう・・・今度こそ)」
桃太郎「しゅっぱーつ!」
桃太郎「(ううう・・・無理があったか・・・)」
いぬ「・・・万事休すね」
さる「もはや我らの旅もここまでか・・・無念・・・」
桃太郎「あ、山本さん??」
桃太郎「・・・・・・カッパさん!」
さる「ブルルッ(こわっ)」
山本「おやおや困っているようだね 私の背中に乗りなさい」
いぬ「山本さん、ナイスアイディア!」
桃太郎「(そうか!)」
桃太郎「ありがとうございます!ありがとうございます!」
いぬ「感謝します!感謝します!」
山本「山本「さてと腹ばいになるか・・・」」
「山本「遠慮なく乗りなさい」」
キジ「ではまず俺が乗る ダイブ!」
「山本「うぐっ・・・」」
さる「次は我の番だ ダイブ!」
いぬ「シシィやめなさい!あっ」
「山本「ぐわー!!」」
桃太郎「・・・・・・」
「山本「腰が、腰がー--!ごぼごぼ」」
「ナレーター「こうしてカッパの背中に乗って、にくたろうたちは鬼ヶ島に向かいました」」
「桃太郎(芸谷さんナイスフォロー!)」
「ナレーター「ええ・・・ここで10分の――いえ、40分の休憩をとります。しばらくお待ちください」」
  松下「山本さんを舞台裏に運ぶわん」
  桃太郎「こっち持ったよ」
  松下「シシィも持ちなさい」
  桃太郎「上げましょう。せーの」

〇体育館の舞台
  舞台裏・・・
いぬ「山本さん、しっかりしてわん」
桃太郎「私たちのために無理をしてくれて・・・すみません」
山本「ぐふううう・・・機転を利かせたつもりだったんだが・・・」
山本「腰が痛くてもう舞台に上がれるかどうか・・・」
プロデューサー「大丈夫かね・・・ほんとにもう。余計なことをするから」
山本「む! 余計とは何だ、私は一生懸命やったんだ。カッパの着ぐるみだって役に立ったじゃないか!」
プロデューサー「まあそうだけど・・・結果としてね・・・」
山本「まったく、何が言いたいんだね。これなら田中監督がいた時の方がよかったよ!」
プロデューサー「な、何だと!私じゃ不満だって言うのか」
山本「そうだよ。田中監督だったらアイディアを取り入れてうまく劇に組み込んでくれた!」
山本「今じゃ何でもダメだ」
いぬ「・・・」
宮本「そうだよん!あんなにナレーションが早かったらあたくしが生き生きとお芝居ができないじゃない!」
プロデューサー「うーむ・・・」
プロデューサー「私だって一生懸命やっている! 一年半前、監督がこの劇団を辞めたのはあなた方が自分勝手だったからだよ!」
プロデューサー「あなた方がめいめい勝手なことばかり!これじゃ いい芝居などできいないと辞めたんじゃないか」
山本「そんなことはない! あの人が辞めたのはあんたが道具やキャストを用意できず、演出にダメ出しばかりしたからじゃないのか」
宮本「監督さんだったら私たちをうまく使いこなしていたはずよーん」
プロデューサー「できるものか、こんなわがまま劇団!」
プロデューサー「心労で辞めたあの人の代わりに仕方なくプロデューサーの私が脚本や監督を務めてきたんだ!」
プロデューサー「こっちの苦労も知ってもらいたいね」
山本「嘘だ、あの人はいつも私たちの芝居を楽しんでいた!」
宮本「そうだよーん」
いぬ「まあまあ・・・皆さん落ち着いて」
プロデューサー「あんたも年に2回しか稽古に来ないくせに知ったような口で割り込まないでくれ!」
いぬ「す、すみません・・・」
プロデューサー「・・・」
山本「・・・」
さる「ヒン、ヒン、ヒヒヒヒヒヒン」
プロデューサー「・・・何を言っとるのかわからん」
いぬ「まあまあ皆さん落ち着いて、と言ってましたね」
プロデューサー「・・・」
山本「ほんとかね」
プロデューサー「とにかく・・・私も今日でここを辞めさせてもらう!」
芸谷「またやってる・・・」
プロデューサー「今度は本気だよ」
山本「・・・」
桃太郎「・・・」
さとる「なるほど、そういうことか」
桃太郎「さとる君!!いつ戻ったんだ」
プロデューサー「!!」
さとる「話は聞かせてもらった」
さとる「自由と統制の戦い・・・これは永遠のテーマだな」
さとる「自由すぎてもよくない 統制しすぎもよくない 2つをバランス良くか・・・難しいものだな」
桃太郎「さとる君・・・哲学者みたいだ」
さとる「俺も迷ったんだ。さるを演じるときこのパンツを脱ぐかどうか・・・ だが、最後は自由と統制の中間をゆくことにした・・・」
桃太郎「そうだったんだ・・・確かに今の君はバランスが取れているよ」
プロデューサー「いや、それ自由すぎだから 自由すぎの中で統制寄りの決断をしただけだよね」
さとる「・・・」
桃太郎「図星か・・・」
さとる「果たして本当にそうかな」
さとる「俺は服さがしの旅に出た。つまり少し着たほうがいいと決断したからだ」
さとる「そして今戻った・・・舞台裏も、街も。どこを探しも服は見つからなかった。どこにも自分の影はなかったんだ」
桃太郎「街に出たのか。よくご無事で」
桃太郎「つまり・・・?」
さとる「つまり俺はここにいる、それが分かったんだ。だから戻って来た」
プロデューサー「さっぱりわからん」
桃太郎「ああ、君は君だ。ここにいるのさ」
プロデューサー「わかるのか?今の話が!?」
さとる「ああ、ようやくわかったんだ。 街で警察に追われて、俺の居場所はここだ、 いや、ここに戻るしかないってことがな」
プロデューサー「いや、さるの役は別の者にもうやってもらっている。君はいらない」
さとる「なぬっ?いったい誰に・・・」
プロデューサー「馬だ。シシィだ」
さとる「う、馬?」
プロデューサー「あなたよりかふさわしいよ。役も途中で投げ出さないしね!」
さとる「な・・・」
いぬ「ごめんね~さとる君~ 今あなたの役をシシィがやってて鬼ヶ島まで行っちゃったから」
さとる「何だって・・・この猿飛軍団内、俺の役割はいずこ・・・」
いぬ「見学しててね」
さとる「いや、待ってくれ!何か、何かあるだろう」
いぬ「・・・」
さとる「せめてほかの役でも!!」
プロデューサー「ないね」
プロデューサー「やりたきゃ松の木の役でも勝手にやるんだね。私はもう知らん」
さとる「そ、そんな・・・くっ」
山本「な、なんだって!!??今なんと」
プロデューサー「松の木と言ったんだが?」
山本「おおおおおおおおおおおおおっ」
さとる「仕方ないか・・・では俺は木を演じよう」
山本「さとる君!わしの役と代わってくれ 頼む!」
さとる「え・・・いいですけど」
プロデューサー「だめだだめだ!そんなことしたら芝居がぶち壊しになるじゃないか!」
山本「いや、あんた辞めただろ! もういないも同然。そんな意見知らん」
プロデューサー「まだ辞めていない!今日は監督をしてから帰る」
山本「さっき辞めると言ったでしょ!」
プロデューサー「すぐとは言ってない!」
山本「さとる君、代わってくれるな。な?」
さとる「もちろんっす」
山本「やったね」
プロデューサー「何を言っている!! 私は認めんぞぉおおお」
山本「やっほー」
宮本「それはいいよーん。あたしも他の役で出よーんかしら?」
おじいさん「まだ出られますか 私も他の役をやります」
山本「いいとも~!! プロデューサーはもう辞めたからね。 私が代わりに許可するよ!」
プロデューサー「ぐぬぬぬ!」
桃太郎「やれやれ」
山本「もう腰の調子もよくなったし♪」
ロボコン会学生A「教授、頑張ってください」
ロボコン会学生B「一生懸命サポートさせていただきます」
山本「はっはっはっ。任せなさい」

〇体育館の舞台
こうき「舟に乗るところ面白かったね!」
みずき「ドーナツうれしかったー」
こうき「いきなり舞台から降りてきてくれるとは思わなかった」
みずき「あたしもあのときはびっくりした~!」
みずき「けど何か楽しい!」
こうき「カッパさん大丈夫かなー」
ミスターX「・・・」
みずき「大丈夫よ。演技でしょ」
こうき「そうかなー」
こうき「あれ」
みずき「あ」
みずき「今の大人の人、誰?」
こうき「さあ・・・?見たことないな 新しい先生かなー」
しゅん「ドーナツおいしかったー もうこの劇多少おかしくてもいいやー」
しゅん「うふふふ」
  続く

次のエピソード:第4部 玉がつなぎ合わさり数珠となる

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