劇列伝桃太郎

栗スナ

第4部 玉がつなぎ合わさり数珠となる(脚本)

劇列伝桃太郎

栗スナ

今すぐ読む

劇列伝桃太郎
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇体育館の舞台
「ナレーター「ついに鬼ヶ島へ到着したにくたろうたち。さあどうなる」」
「ナレーター「始まり始まり~」」
松の木「(さあ、私の出番だ。松になりきり気配を消すぞ・・・)」
松の木「・・・」
桃太郎「ここが鬼ヶ島か・・・」
桃太郎「油断するな。オニが隠れているかもしれないぞ」
桃太郎「うっ・・・ (山本さん木の着ぐるみなかったのかよ・・・このままか・・・)」
松の木「・・・」
桃太郎「(何か無言の威圧感がすごいな。まあいいや・・・)」
キジ「親分、向こうから何か来るぜ」
赤オニ「ニーハオ」
赤オニ「チーファンラマ?」
桃太郎「あれはオニだ!」
桃太郎「う。まずい・・・客はまだオニに見えないのか、あれが」
赤オニ「ん?どうしたみんな。俺は赤オニだぞ」
松の木「(まだ客の目が慣れてきていないんだろうな。演技でオニに見せるしかあるまい・・・)」
松の木「(私のようにな)」
こうき「オニ?何で・・・?さっきのへんしつ者がまた・・・」
みずき「オニに見えなーい!」
松の木「(やはりな・・・あの演技と気配では依然さとるのまま・・・)」
こうき「おかしーよー」
赤オニ「さっきはパンツ、今はふんどしだろう。違うか?」
みずき「同じ人だ!同じ白だもん!」
赤オニ「なるほど。そう来たか・・・」
松の木「(さあ、さとる君どう切り抜ける・・・ふっふっふっ)」
赤オニ「実は私の正体はさっきの猿飛と申す忍者だ!」
赤オニ「正体を隠して肉太郎に近づいたのだが、小僧、よくぞ私の正体を見破ったな!」
こうき「そうだったのか!僕わかった、すごいだろ!!」
赤オニ「ふっ。見事だ小僧」
みずき「すごーい!こうき君」
松の木「(とっさに忍者を持ち出して切り抜けたか。さすがアドリブ王のさとる・・・)」
松の木「(これで自分が切り抜けただけでなく、客に喜びを与え双方を利した  さすが3年間セリフを覚えられないだけのことはある)」
桃太郎「(ああ。また芝居の内容が変わってしまったか・・・)」
赤オニ「肉太郎。今戻った。再び仲間に加えてくれ」
桃太郎「わかった。今度は服を取りに戻るなんて言うなよ」
赤オニ「ああ。わかってる。約束だ!」
いぬ「わんわんわん!」
桃太郎「む。何か来たぞ」
赤オニ「ハロー。初めまして。私はアメリカから来ました。オニです、よろしくお願いします」
赤オニ「ここは立ち入り禁止です。出ていけ」
桃太郎「オ、オニだ」
キジ「親分!どうするっ」
桃太郎「うーん(こんなの台本にないぞ・・・) 戦うしかあるまい」
キジ「親分。にんじん構えた姿かっこいいですぜ」
桃太郎「刀だ。キジ」
キジ「すいやせん。ついうっかり!てへぺろ!」
赤オニ「試合をしますかー?」
桃太郎「します」
こうき「あー---っ 同じ人だー--っ。さっきのおじいさんだよーっ」
赤オニ「OH!」
みずき「ほんとだー!!Tシャツ着て最初に出てた人だー」
赤オニ「NOー!」
こうき「にんじんをどうするつもりー--?」
赤オニ「ど、どうするんだろう」
桃太郎「・・・」
桃太郎「こうします!」
桃太郎「おじいさん。 はい!このにんじんお返しします」
赤オニ「OH・・・家で食べるものがなくて料理に困りました アリガト」
桃太郎「だからここまで追いかけてきたんですね!!」
赤オニ「その通り!!」
こうき「何だそうだったのかぁ」
松の木「(見事だ。やはりこの劇団はアドリブに優れているな・・・)」
松の木「(桃太郎もさすが。  まあ私には遠く及ばんが・・・)」
こうき「ところでさっきから黙っているあの白い服の人は何?」
松の木「・・・」
松の木「(え?まさか私のこと?)」
松の木「(バカな!?気配を消していたはず)」
こうき「ずっと黙っているなんておかしいよ。おじいさんは誰なのっ」
松の木「くっ・・・いや、あのー」
松の木「つまり、その・・・ あーうー」
松の木「これには深いわけがー あーうー」
松の木「わしはそのうーつまりぃー あーうー あーうー あーうー あーうー あーうー あーうー あーうー あーうー (以下同文)」
桃太郎「やばいっ。松の木がしゃべって しどろもどろになっている」
赤オニ「あ、もしかして」
桃太郎「ん?」
赤オニ「オニではないか」
桃太郎「(よし、ここはさとる君に合わせよう)」
桃太郎「まさか あなたはあとをつけていたのか」
松の木「(ううう・・・私はやらん、オニの役などやらんぞ!松の木をやるんだ)」
松の木「いったい何の話ですか。私は松の木ですよ」
桃太郎「いや、本当はオニでしょう!」
松の木「木です」
赤オニ「木がしゃべるなどおかしいではないか」
松の木「木の精霊です。今テレパシーをあなたの心に送っています。話をしているように聞こえるんでしょう」
赤オニ「思いっきり声がするぞ。嘘つきだ」
赤オニ「やはりオニに違いない」
松の木「ぐうう」
桃太郎「(頑固な人だ)」
松の木「松の木でーす。頭は松ぼっくりでーす」
赤オニ「角だろう」
松の木「とげとげでーす。松のとげでーす」
桃太郎「猿飛。ちょっとプロデューサー呼んできて」
松の木「え」
赤オニ「承知した」
桃太郎「・・・」
プロデューサー「何だね」
桃太郎「これは松のとげとげですか オニの角ですか」
プロデューサー「角だな」
プロデューサー「へへへ」
松の木「ぐっ」
桃太郎「だそうです。やはりオニだな!」
松の木「ぐうう!正体がばれてしまったか」
さる「やはりそうか」
桃太郎「(ん・・・何かおかしいな。また軽いめまいが・・・)」
桃太郎「(そういえば舞台裏にいた時も気分が悪くなったんだが・・・)」
松の木「(ん?桃太郎さんの顔色がおかしいな)」
松の木「(あ、思い出した。そういえば栄養ドリンクに薬を盛ったんだった!)」
松の木「(ちょうどいい。ここでその効果を使うか) ふふふ 分身の術!!」
桃太郎「(くらくらする・・・)」
桃太郎「あ。山本さんが三つに分かれた!」
おにA「ふふふ」
おにC「どうだ」
おにB「肉太郎。本物のわしがどれかわかるまい」
赤オニ「さっきから何を言ってるんだ?」
いぬ「何か二人とも自分の世界に入っちゃってません??」
赤オニ「日本語難しいな。早口で聞き取れない」
おにC「(ん・・・あ、そうか。 桃太郎さんにだけ薬を盛ったから他の人には分身の術が見えていないんだ!!!)」
おにC「(全員に薬を盛るべきだった。 この山本、千慮の一失!)」
桃太郎「くう、本体がどこにいるかはバレバレなんだが、三人に見える!」
おにC「(う・・・やばい。客席の子供たちが釈然としない顔をしている!!)」
おにC「・・・・・・ (うう、どうすればどうすればいい)」
おにC「(何か妙案はないものか・・・)」
おにC「(まずい、まずいな・・・)」
赤オニ「(困っているようだな。ではさっき旅に出た時に修得した忍術をここで披露するか)」
赤オニ「ふっふっふっ。何を隠そう、実は俺もオニだ!」
こうき「えー、何だよ この話ー 複雑でもうわかんないよー」
こうき「さっきはへんしつ者でさっきはオニ、そしてまたへんしつ者に戻って、またオニー?」
みずき「あたしもわかんない」
赤オニ「たしかに・・・」
赤オニ「だがこの技を見るがよい。これでわかるはずだ 俺はいろいろな変装できるのだ!」
赤オニ「へんげ!」
みずき「すごーい!! オニが二人だー!!」
おにC「(え・・・まじですごいんですけど)」
おにA「ふっふっふっ」
こうき「すごいマジック!!」
おにC「どうだ、肉太郎。本物の私はどっちかな。ふっふっふっ」
桃太郎「どっちだ、どっちなんだ」
「ナレーター「その時、肉太郎の心の中で声がしました。 それは懐かしいおばあさんの声でした」」
宮本「肉太郎や 肉太郎や」
宮本「右だよーん」
桃太郎「わかったぞ」
桃太郎「そっちだな!」
桃太郎「めーーーーーん!! にんじんないから手でチョップー!!」
おにC「ぐあー なぜわしが本物だと分かったー 演技力かー」
桃太郎「これで一件落着!!」
桃太郎「・・・」
おにA「・・・」
桃太郎「(そういえばもう一人オニいたんだよね。忘れてた・・・)」
おにA「(俺もオニだから。  本物も何もないんだけどな・・・)」
おにA「オ、オニの大将がやられたぞー に、逃げろー!」
赤オニ「OH!」
桃太郎「(いや、別にあなたは逃げなくても・・・。  お前も本当はオニだったんかーい!)」
桃太郎「一件落着!」
「ナレーター「こうして肉太郎たちはオニを倒しました」」
「ナレーター「そして鬼ヶ島にあった宝物を、村へ持って帰りました」」
桃太郎「ただいまー。今帰ったよ」
宮本「お帰り。肉太郎」
おじいさん「OH!」
桃太郎「友達を紹介するよ 犬とさるとキジだ。一緒に鬼ヶ島へ行った仲間なんだ」
いぬ「犬だわんだふる」
キジ「キジでやんす。犬はケンとも読みますが、俺の鳴き声はケーンです」
さる「我はさるじゃ。ここで舞台を去る」
  こうして肉太郎とおじいさんとおばあさん、そして犬、さる、キジは宝物とともにいつまでも幸せに暮らしましたとさ
  おしまい
「ナレーター「劇はこれで終了です。今日は最後まで見てくれてありがとうございました」」

〇体育館の舞台
こうき「終わっちゃったー」
みずき「いい話だった」
こうき「何か分からないところもあったけどね」
みずき「最後のダジャレがよかった」
こうき「あのオニの変身のシーンはかっこよかったなー」
しゅん「ドーナツがおいしかったのですべてよし」

〇体育館の舞台
  舞台裏では・・・
さとる「ふう。やっと服が見つかった」
山本「一時はどうなることかと思ったよ けど無事に終われてよかった」
山本「このロボットもよく動いてくれた!」
さとる「そのロボット何用なんですか」
山本「ハーバリウム型ロボットだ 観賞用だよ」
桃太郎「お疲れ様です!」
山本「おやおや、主人公のご帰還だよ ヒューヒュー、いい演技だったぞ!」
さとる「ほんと。機転を利かせててさ」
桃太郎「さとる君もね」
さとる「へへへ!」
芸谷「みなさん、お疲れ様~」
桃太郎「ああ、芸谷さん。ナレーションでアドリブのフォローありがとうございました、ほんとにいろいろ助かりましたよ」
山本「あれは神技ですね。はっはっはつ」
芸谷「なーに、いつものことよ。任せなさい!あははっ」
いぬ「わわわ~ん♪」
山本「お疲れ様~。松下さん。ドーナツをあげたとこはほんと驚いちゃった~」
いぬ「まさにあたしのおかげでーす。ふふふ」
さる「ヒヒン」
おじいさん「よしよし」
おじいさん「これあげます」
さる「ヒヒン♪」
山本「シシィ。ご苦労さん」
ロボコン会学生B「教授、お疲れ様です。見事な舞台でした」
ロボコン会学生C「ほんとにお疲れさまでした・・・」
山本「いやあ、スピーカーからのロボットの吹き替え。見事だったよ君」
ロボコン会学生B「ありがとうございます。光栄です」
山本「うっほっほっうほー」
宮本「目立ててよかったー」
プロデューサー「・・・」
プロデューサー「・・・」
山本「・・・」
山本「どうだね。まだ辞めるつもりかね」
プロデューサー「そうだな・・・どうしようかね・・・」
山本「ふふふ」
プロデューサー「ふふふ」
プロデューサー「ま、いつものことだからな・・・別に辞めるほどのことでもないかな」
山本「そうだよ、いつものことじゃないか」
宮本「どうぞ、これからもお手柔らかにね」
山本「そうそう。かたいんだよね」
プロデューサー「いや、それはあんたらがめちゃくちゃやるからだよ」
ロボコン会学生A「教授、お客さんがお見えです」
ミスターX「こんにちは」
山本「あ」
プロデューサー「え」
ミスターX「久しぶりですね」
山本「田中さん!」
プロデューサー「監督じゃないですか!」
ミスターX「私のことを覚えていてくれましたか・・・」
山本「そりゃあ忘れませんよ」
プロデューサー「でもどうして・・・心配したんですよ 一年以上前、急に辞めると言って姿を消して・・・」
ミスターX「すみません。あの時は少し思うところがあって、劇団を離れたんですよ」
プロデューサー「やはり・・・みんなの身勝手さが・・・」
山本「やはり・・・プロデューサーの否定的意見が・・・」
ミスターX「いえ。どちらでもありませんよ ちょっと離れたところでみんなの舞台を見てみたかったんですよ」
プロデューサー「?」
山本「・・・」
ミスターX「この劇団はいつもアイディアが豊富でアドリブがうまい人が多い けど放っておくとバラバラ」
ミスターX「けど本番では客と一体となり成功させてしまうことが多い。個性が際立っても不思議とうまくいってる劇団なんです」
山本「・・・」
ミスターX「それでね、私がいなくなったらどうなるんだろう、と思いましてね。 うまくまとまるのだろうかと・・・」
ミスターX「それで離れて様子を見ることにしたんですよ」
ミスターX「私はいつも後ろでみんなの舞台を見ていました」
ミスターX「・・・この一年半見事にやり切りましたね。素晴らしかったです」
ミスターX「私がいなくても皆さんはまとまれる人たちなんだなってことが分かりました。やはり皆さんはすごいですね」
ミスターX「後ろで見ていた私としてはうれしくもあり、どこか悔しくもありました」
プロデューサー「何て自分勝手な人だ。大変だったんですよ」
ミスターX「すみません、あなたにはご迷惑をおかけしました・・・」
ミスターX「もう一度私にここで監督をやらせてもらえないでしょうか」
山本「えっ」
プロデューサー「・・・」
ミスターX「またみんなと劇をつくりたいです」
プロデューサー「そういうことなら私も肩の荷が下りますね・・・」
さとる「監督。また戻ってきてくれてうれしいっす。また楽しく稽古しましょう」
宮本「監督さんのおかげであたくしは個性を集団内で伸ばして生きてこられました」
宮本「戻ってきてくれてうれしいです!」
ミスターX「ありがとう、さとる君、宮本さん」
桃太郎「急展開だなー うちらの劇みたいだ」
桃太郎「まあよかった・・・」
ミスターX「そう言っていただけるとうれしいです」
いぬ「お会いするのは四度目ですね」
ミスターX「松下さん稽古来ないもんね」
いぬ「うん・・・」
ミスターX「今日のあなたの対応力、並々ならぬものがあります 今後はぜひ練習にももっと来ていただけませんか。あなたの力が必要です」
いぬ「ぽかーん・・・」
いぬ「あ、はい。私でよければ・・・」
芸谷「おひさしぶりじゃーん、田中監督!」
ミスターX「相変わらずですね いつもながらの台本なしのアドリブ対応ナレーションは素晴らしいの一言に尽きます」
ミスターX「ただ、みんなとっさの対応力がすごいんですがそれ以外の演技力はもう少し稽古をしていただかないとね」
いぬ「ははは」
芸谷「ほんとよね アドリブ9割だもんね」
さとる「だって台本漢字多くて、覚えられないっすよ もっと簡単なセリフにしてくださいよ」
おじいさん「わたしも 日本語難しくて」
ミスターX「相変わらずですね ははは」
プロデューサー「監督。三か月後にまた公演があるんですが」
ミスターX「ほう。そうですか ではそれまでに練習をしましょうね」
ミスターX「次の劇は何をやるのですか」
プロデューサー「まだ決まっていません」
ミスターX「ではみんなで決めましょうか」
プロデューサー「・・・」
おじいさん「OK またローニンの役やりたいです」
宮本「あたしはエンジェルか、精霊がいい そしてマイクで挿入歌を歌いたいわ」
さとる「俺はかっこいい悪役がいいな。翼がはえててセリフは「ぎゃーす」のみ」
桃太郎「私は何でもいいです。主役であれば」
芸谷「実はたまにはナレーター以外もやりたいんですけど?」
さる「我も我も」
ミスターX「わかりました みんなの意見を考慮して作りましょう!! また最高のアドリブコメディにしましょうね」
  劇団「ザックリトン」
  市民劇にはめずらしいアドリブを多用した演劇で観客と一体となった舞台をする
  舞台では歌、エフェクト、奇術、客との会話などが盛り込まれ、本筋とは違う劇をやる結果になることが多い
  9割のアドリブを使用し、成功率は7割を超えるという
  だが、いまだ業界では実力を認められていない集団である
  あなたの街にも彼らがやって来るかもしれない
  そのときはよろしく・・・
  終幕
  キャスト
  
  肉太郎:桃太郎
  
  猿飛、猿、オニ:さとる
  犬:松下
  
  さる:シシィ
  
  キジ:蛇型ロボ・クネリータ、ハーバリウム型ロボ・びんぞう、戦車ロボ・バース
  宮本:宮本
  
  おじいさん、オニ:ジョー
  オニの大将、松の木:山本
  
  ナレーター:芸谷
  鬼ヶ島:戦車ロボ・バース
  
  カッパ:山本
  スペシャルサンクス:ロボコン研究会の皆さん、ザワメキ幼稚園の皆さん
  スタッフ
  
  プロデューサー:唸多
  
  監督、脚本:唸多
  上演:市民劇サークル劇団ザックリトン
  団長:田中
  制作:栗スナプロダクション
  完

成分キーワード

ページTOPへ