逢いたくて770

山本律磨

二章(脚本)

逢いたくて770

山本律磨

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〇豪華な王宮
  『御子よ』
  『我が皇太子よ』
  『そなたは最早、女子ではない』
  『否、人ではない』
  『神だ』
姫「父上」
  『そなたの人生がこの国の未来そのもの』
  『そなたの徳がこの国の徳となる』
  『そなたの罰がこの国の罰となる』
  『積善を・・・積善を・・・積善を』

〇白
  『どこにいようとも、御仏はそなたを見ておるぞ』

〇荒廃した市街地
姫「これ、何を軽く引いておる」
姫「さあさ。遠慮なく受け取るがよいぞ」
竹芝「・・・なんの嫌がらせだ?呪いの供物か?」
姫「愚か者!唐帝国より渡りし、れっきとした果物である!」
竹芝「どう見てもトカゲの類だが。家族そろって騙されてるんじゃないか?」
姫「まあまあ、食してみよ。すっぱくて美味であるぞよ」
竹芝「こんなもの食ったら、口の中がズタズタになると思うが」
姫「あほう。切って皮をむいて、中身だけ食べるに決まっておろう」
姫「そなた、可愛らしいのう。むふふふふ」
竹芝(わけのわからん姫に懐かれてしまった)
竹芝(変人ばかりの平城京め。これだから都暮らしは面倒なんだ)
姫「その代わりといってはなんだが、こないだの歌をうたってたもれ」
竹芝「歌?」
姫「瓢箪がどうしたとかいう、あれじゃ」
姫「そなた、歌もうまいのう。むふふふふ」
竹芝「・・・」
竹芝「私は忙しいのだ。他の者に遊んでもらえ」
姫「つれないことを申すな。共に貧民を救済し徳をつもうではないか」
姫「さあみなもの!今日も我が手ずから煎じた薬で健康になるのじゃ!」
「ひゃあああ!お助けえええ!」
姫「うむ。元気でよろしい!」
「その薬、ちと分けてくれんかの~?」
姫「うむ。遠慮なく受け取るが・・・」
姫「・・・」
姫「見た所すこぶる健康そうなようだが・・・」
浮浪人「ひひひ。そうでもないの~」
浮浪人「こちらの賢者様の体調がすぐれねえんだ。あっちの荒れ寺でゆっくり診てくれよ」
姫「いや、色々忙しいので私はこれで・・・」
浮浪人「いいじゃねえかよ~慈悲深い姫さんよ~」
浮浪人「それとも見かけて差別するってのか?」
竹芝「貴様ら!なにをしておる!」
浮浪人「・・・」
浮浪人「何じゃ。ただの衛兵か」
浮浪人「衛士ごときが出しゃばるんじゃねえぞ」
浮浪人「我は大仏建立にも携わった優婆塞である」
浮浪人「我に刃向かうは御仏に刃向かうと思え!」
竹芝「クッ、仏法の都を笠にやりたい放題かよ」
浮浪人「さあ、存分に御仏と慈悲について語り合いましょうぞ」
浮浪人「まったりじっくりたっぷりと・・・」
姫「さ、下がりおろう。わ、我を誰と心得る」
竹芝「やめぬかケダモノめ!」
浮浪人「やかましいの~う。大概にせんと仏罰が下るぞ」
竹芝「仏が何様だ!」
姫「・・・え?」
竹芝「生憎田舎者ゆえ大唐帝国の教えがどれほどのものか知らんが」
竹芝「大仏など、もの言わぬ鉄の塊ではないか!人を救うのは人だ!仏の教えを広めるのも人だ!」
姫「・・・」
浮浪人「そうかい。ならば罰をくだすのも俺達人、ってことでいいよな」
竹芝「・・・!」
浮浪人「ひひひ。今さらブルっても遅いぜ」
浮浪人「お~い。こいつやっちまうぞ~」
浮浪人「・・・って、え?」
仲麻呂「斯様な下衆になにを手間取っておる?」
竹芝「も、申し訳ありません仲麻呂卿!」
浮浪人「・・・な、仲麻呂?」
浮浪人「太政大臣藤原仲麻呂だとおおおおッ!?」
仲麻呂「無知なる偽坊主めが。太師と呼べ」
浮浪人「ひいい~っ。助けてくれ~兄貴~」
浮浪人「・・・クッ」
仲麻呂「これは仏道を騙り聖なる平城京を穢す餓鬼である。疾く首を刎ねろ」
衛士「ははっ」
竹芝「た、太師様が斯様な貧民窟に何用で?」
仲麻呂「その方、衛士でありながら鎮護国家の象徴を鉄塊とは何事であるか」
竹芝「聞かれておいでで・・・申しわけございません」
仲麻呂「鉄塊は『撤回』せよ」
竹芝「・・・」
仲麻呂「・・・」
衛士「お見事!」
仲麻呂「よいか。我が国は大唐帝国に倣い、早急に徳を持った政を行わねばならん」
仲麻呂「観念と衝動に寄りすがった八百万の神々を捨て倫理と書物に裏付けられし仏道による新たなる律と令」
仲麻呂「つまりは積善。それが世界標準だ」
仲麻呂「天下万民の為、人を越え善行の権化となるべき次の帝が放蕩三昧とは最早看過できませぬぞ」
仲麻呂「阿倍内親王殿下」
竹芝「え?内親王って?」
竹芝「帝の・・・姫様」
姫「・・・」
  続く

次のエピソード:三章

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