パラドックスをぶった斬れ!

咲村まひる

1.パラ研へようこそ:前編(脚本)

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〇大学の広場
乾 幹太(おかしい・・・おかしいぞ・・・)
乾 幹太(他の人はひっきりなしに勧誘を受けているのに、僕には誰も話しかけてこない・・・)
乾 幹太(僕が見るからに根暗だからか? そうなのか!?)
乾 幹太(そっちから話しかけてくれさえすれば、 僕だってそれなりに対応するのに・・・)
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太(なぜだ・・・なぜなんだ・・・)
乾 幹太(僕はそれほどまでに、声をかけづらいオーラを発しているのか!?)
乾 幹太(大学入学を機に、サークルでも入って変わろうと思ったのに・・・)
  トントン
乾 幹太(ん?)
乾 幹太(なんか今、後ろから肩を叩かれたような・・・)
乾 幹太(僕にもとうとう来たのか!?)
乾 幹太「は、はいっ!?」
  勇気を出して振り返って見ると・・・
???「・・・・・・」
乾 幹太(──な、仲間だ。絶対この人仲間だよ!!)
???「・・・・・・」
乾 幹太(ほらっ、自分から肩を叩いてきたはずなのに何も言わない・・・!)
乾 幹太「な、な、なにか用ですかっ?」
???「――あなた、素質があるわ」
乾 幹太「え? そ、素質って・・・」
???「誰からも勧誘されずに、ガッカリしていた」
???「だからといって、自分から声をかけることはできない」
???「つまりあなたは根暗で引っ込み思案で 口下手」
乾 幹太「ううっ」
乾 幹太(図星すぎて、何も言い返せない・・・)
???「でもそういう人って、頭のなかでは普通の人以上にいろいろ考えている」
???「その思考能力が欲しいの」
???「私と一緒に来て」
乾 幹太「は・・・?」
乾 幹太(なんだこのチラシ・・・ 『パラ研メンバー募集中』?)
乾 幹太(パラ研? パラパラ研究会? パラダイス研究会?)
乾 幹太(パラグラム研究会? ・・・いや、もしかしてパラノイア研究会!?)
乾 幹太(なんにせよ、この女性は関わったらなんかヤバそうだ・・・)
乾 幹太「す、すみません、僕はちょっと・・・」
???「そう言うと思って、ひとつ賭けを用意しておいたの」
乾 幹太「は?」
???「私がこれから、あなたが今考えていることを当てるわ」
???「成功したら入ってちょうだい」
乾 幹太「え・・・」
乾 幹太(僕が考えていることを、当てる?)
乾 幹太(そんなの、テレパシストでもない限り無理だ・・・)
乾 幹太(つまりこの『パラなんちゃら』はそれ関係!?)
乾 幹太「・・・・・・わかりました」
乾 幹太(どうせ当たりっこないし、大丈夫だろ)
???「・・・・・・」
???「なんか怪しいからパラ研に入りたくない」
???「あなたは今、そう思っている」
乾 幹太(思いっきり当たってるぅぅぅううう!!)
乾 幹太(い、いや待て、僕がそれを肯定しなければ、当たったことにはならない!)
乾 幹太「残念ですね、僕はむしろパラ研に入りたいと思って──」
???「じゃあ入ってもらうわね。解決」
乾 幹太「あ、あれっ!?」
乾 幹太(もしかして、嵌められた!?)
乾 幹太「ず、ずるいですよっ」
乾 幹太「これじゃあ絶対に入らないといけない流れに・・・」
???「そっか、あなたの判断はそうなのね」
???「じゃあ、ハイ」
乾 幹太(容赦なく入部届を差し出してきた!)
???「受け取るまで、追いかけるわよ」
???「早く名前書いて」
乾 幹太(怖いっ、マジで怖いんですけど!?)
  僕は仕方なく、本当に仕方なく名前を書いた。
???「乾幹太(いぬい・かんた)ね」
???「まぎらわしいから、幹太って呼ぶわよ」
乾 幹太(いきなり名前呼び!?)
乾 幹太(しかも「まぎらわしい」ってなんだ?)
???「じゃあ部室に案内するからついてきて」
???「他のメンバーも紹介するわ」
乾 幹太「は、はい・・・」

〇古い大学
乾 幹太(部室ってどこにあるんだろ・・・)
???「・・・・・・」
乾 幹太「・・・・・・」
乾 幹太(どんなサークルかも確認せずに決めちゃって、早まったかな・・・)
乾 幹太(で、でも一応勧誘してもらえたのは確かだしっ)
乾 幹太(他にもちゃんとメンバーがいるみたいだから、結果オーライか・・・?)
???「――入部届っていう人質をもらったから言うけど」
???「さっきの話、ちゃんと断る余地もあったのよ」
乾 幹太「えっ!? そ、それってどういう・・・」
???「・・・・・・」
乾 幹太(って、教えてくれないんかーいっ)
乾 幹太(とりあえず部室に行くしかないのか・・・)

〇学校の部室
???「連れてきたわよ、新入部員」
???「え、マジで? すごいじゃんレン子」
???「一体どういう屁理屈で騙したんスか!?」
乾 幹太(部室にいたのは2人か。よかった、あまり大所帯じゃなさそう・・・)
乾 幹太(そうだよな、この人も僕と同類説が正しいなら、こうなるよな)
乾 幹太(他のメンバーが、まったく根暗そうじゃないのは意外だけど・・・)
レン子「なにしてるの幹太、早く入ってきて」
乾 幹太「あ、は、はい」
???「お、いきなり名前呼びとは、さっそく仲よくなったのか?」
レン子「飼い主は黙ってて」
???「ズルいっス! あたしも下の名前で呼んで欲しいっス!」
レン子「あなたの本名、知らないし」
乾 幹太「は、はは、は・・・」
乾 幹太(3人の関係性がよくわからん!)
レン子「はい、じゃあ自己紹介しよう」
???「お、部長っぽいじゃん」
レン子「もっと部長らしくしろって言ったのは、あんたでしょ」
???「そりゃごもっともで」
???「じゃあ俺からな」
???「俺は石橋仁(いしばし・じん)。3年だ」
石橋 仁「レン子とはガキの頃からの腐れ縁で、今じゃ『飼い主』なんて呼ばれてる」
石橋 仁「彼氏とかじゃねーから、間違っても誤解すんなよ!」
レン子「はい次」
???「あたしはギャル子っス~」
ギャル子「2年生で~、レンちゃんのファンやってます★」
レン子「最後は私ね」
レン子「パラドックス研究会、部長の犬飼レン子(いぬかい・れんこ)。7年生」
犬飼 レン子「ちなみに、レン子の『レ』は『レ点』の『レ』よ」
乾 幹太(ってドヤ顔で言われても全然わからん!)
  後編へつづく

次のエピソード:2.パラ研へようこそ:後編

コメント

  • 面白いです🤣
    断る余地...うーん...
    「入るかどうか一度考えさせてほしい」かなぁ...私もよく断る口実で使うので💦

  • 論理学ネタ、大好きです!
    大学生の時、こんなサークルがあったら入りたかったですね。幹太くんがウラヤマシイです。そんな私は、バックに新興宗教か反社会的組織がくっついているサークルからしか勧誘されませんでした( ;∀;)

  • 断る余地・・面白そうだけど入部はしたくない!と答えたら良かったのかなあ。レン子の強引さにそれほど違和感を感じなかった私は、つい入部してしまいそうです。

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