文化的な暮らしのすゝめ(脚本)
〇黒
〇宇宙戦艦の甲板
???「ついに人口が10億を切った」
???「我々が生殖能力を失って以降、」
???「”培養転送”によって種を維持して来たが」
???「もはや限界は近い」
???「学び、変わるべき時だ」
???「君に託そう」
???「反重力モニターを渡す」
???「記録した映像を送ってくれ」
???「功績は必ず後世まで伝わるだろう」
???「頼む」
???「我々の未来を──」
〇黒
〇屋根の上
〇白いバスルーム
〇安アパートの台所
〇散らかった居間
「──ッぁあ~~いっ!!」
???「うぃ~・・・」
???「あぁ~」
???「ビールと結婚したい」
???「閲覧数は・・・」
???「今月増えね~なぁ~」
???「う~」
???「仕方ない・・・」
???「また町会長の家に花火でも撃ち込むかぁ」
???「あん?」
???「今日は耳鳴りまで早──」
〇黒背景
〇散らかった居間
空き家があって助かった
宇宙船の結合を開始します
カムフラージュに使わせてもらおう
ん?
なっ!?
住人がいたのか・・・
ペッタンコだ・・・
仕方ない
騒ぎになる前に、
転送しよう
〇黒背景
う・・・
何だ・・・
体が軽いな?
〇近未来の開発室
???「コンディションはどうだい?」
???「すまなかったね」
???「空き家に宇宙船を隠そうとしたんだ」
???「まさか生体スキャンが キミを”ゴミ”と認識するとは」
???「赤ちゃん浮いとる・・・」
???「あぁ──」
???「反重力モニターで吊っているのさ」
???「しゃ、」
???「しゃ?」
???「喋っとるーッ!!」
???「うるさいヤツだな」
〇黒
〇広い畳部屋
???「正気か!?腐れ外道め!!」
腐れ外道「うるせー!侵略者め!!」
???「乳幼児だぞ!? 予備の”培養体”なんだ!」
腐れ外道「知らねーよッ!」
???「やめろォ!」
「ポップなBGMにのせて殴りかかるなァ!」
〇美しい草原
しばらくお待ちください
〇広い畳部屋
「はぁ、はぁ、」
???「むしろ感謝されるべきだ・・・」
???「キミの“培養体”は 僕が使う予定だったんだぞ」
腐れ外道「っざけんな・・・」
腐れ外道「突然ミンチにされて」
腐れ外道「親から継いだマイホーム サイバーにリフォームされて」
腐れ外道「しかもこの身体じゃ──」
腐れ外道「酒が買えねーだろがァ!!」
???「アルコールなんか毒素だろ!」
腐れ外道「返せーッ!アタシの独身ライフ!!」
???「人格破綻者め・・・」
???「母星を救うべく 遥か遠い星まで来てみれば──」
腐れ外道「ちょい待て」
???「何だ・・・?」
〇仮想空間
???「・・・」
腐れ外道「よし話せ!」
???「ブッ飛ばすぞォ!キサマァ!!」
腐れ外道「閲覧稼げそうだろがァ!!」
〇美しい草原
しばらくお待ちください
〇仮想空間
???「はぁ、はぁ、」
ミスミ「僕は『ミスミ』」
ミスミ「この星には”文化”を学びに来た」
ミスミ「我々はキミ達と 非常に文明の近い人間だが」
ミスミ「繁栄の手段が異なっている」
ミスミ「我々には”寿命”がない」
ミスミ「自身のクローンをストックし」
ミスミ「肉体の老化に合わせ」
ミスミ「脳のデータを移す事で 人生を継ぎ足している」
腐れ外道「スマホの買い替えみてー」
ミスミ「なので基本的には死なないのだが」
ミスミ「絶滅の危機なんだ」
腐れ外道「はぁ?」
ミスミ「300年前から人口が減り始めた」
ミスミ「原因は・・・」
ミスミ「自殺だ」
ミスミ「寿命を延ばさない人が増えた」
ミスミ「みな一様に こう言うんだ・・・」
ミスミ「『なんかもういいかな』って」
腐れ外道「病んでんじゃね・・・」
〇映画館の入場口
〇映画館の座席
〇インターネットカフェ
〇ゲームセンター
〇商業ビル
「なるほど」
ミスミ「興味深い文化だ」
腐れ外道「何なんお前ら」
ミスミ「我々の文明は自己完結で成立している」
ミスミ「クローンさえあれば 最低限の社会性で充分だからな」
ミスミ「他者との関与が前提となる」
ミスミ「”娯楽”なんて文化はない」
腐れ外道「つまんな・・・」
ミスミ「何を言う」
ミスミ「格差も戦争もない」
ミスミ「平和な社会だ」
腐れ外道「でも映画もゲームもないんだろ?」
ミスミ「誰も作らないからな」
ミスミ「『面白くする』なんて発想がない」
腐れ外道「お前ら」
腐れ外道「イカれてんな」
〇線路沿いの道
ミスミ「キミの名前は?」
メグリ「『メグリ』」
メグリ「藤美メグリ」
ミスミ「そうか」
メグリ「お前いつ出てくの?」
ミスミ「出て行くのはキミだろ」
ミスミ「あそこは僕の宇宙船だ」
メグリ「法律上はアタシの土地だ」
ミスミ「この星のルールなぞ知らん」
「・・・」
「はぁ、はぁ、」
メグリ「なら取引だ」
メグリ「配信でお前の“里親”を探す」
ミスミ「里親?」
メグリ「ついでに見つかるまで」
メグリ「”勉強”は手伝ってやる」
ミスミ「ほう」
メグリ「ネタになるしな」
ミスミ「いいだろう」
ミスミ「ちなみに──」
ミスミ「里親とは何だ」
メグリ「保護者だよ」
メグリ「家族、ファミリー、わかるか?」
ミスミ「・・・」
ミスミ「それはどういう文化だ」
〇屋根の上
〇屋根の上
〇ボロい家の玄関
〇川沿いの公園
メグリ「よし」
メグリ「働け」
ミスミ「ど直球で外道だな!?」
メグリ「ガキは嫌いなんだ」
メグリ「自分の生活費くらい自分で稼ぐべきだろ!」
ミスミ「主張自体は真っ当なだけに悪質だ」
メグリ「この星では」
メグリ「皆が興味ある動画にはお金が貰える」
ミスミ「地獄絵図だが?」
メグリ「人の不幸は金になる」
ミスミ「速やかに裁かれろ」
メグリ「だが」
メグリ「それも今日まで」
メグリ「お前で荒稼ぎする」
メグリ「この星の人間は子供が好きなんだ」
メグリ「子供か猫の動画見せれば簡単に喜ぶ」
ミスミ「とりあえず」
ミスミ「発言が秒速で矛盾する キミの異常性はよく理解できた」
〇動物園の入口
〇ゴリラの飼育エリア
〇遊園地の広場
〇メリーゴーランド
〇ジェットコースター
〇観覧車の乗り場
〇川に架かる橋
メグリ「笑え──ッ!!」
メグリ「愛嬌ッ!サービス精神ッ!」
ミスミ「知るか」
メグリ「閲覧伸びねぇだろ!」
ミスミ「普通に働いたらどうだ?」
メグリ「アタシが社会に適応出来ると思うなッ!」
ミスミ「どのベクトルからキレてるんだ」
メグリ「仕方ねぇ・・・」
メグリ「こっからバンジーさせるか」
メグリ「なんか」
メグリ「橋の下から聞き覚えのある音すんな」
〇川沿いの道
メグリ「そんな事ある?」
ミスミ「そりゃ僕が来てるしな」
〇川に架かる橋の下
???「おや」
???「まさか君達は──」
〇宇宙船の部屋
アオバ「私はアオバ」
アオバ「研究で来たのだが墜落してしまって」
アオバ「修理するにも部品がね」
ミスミ「ジェネレータか?」
メグリ「うちの使えんじゃね?」
ミスミ「僕が帰れなくなるだろ」
メグリ「まとめて出てけよ」
「言い方」
ミスミ「まぁ帰りに乗せてもいいが」
メグリ「丁度良いや、アオバの世話になれよ」
ミスミ「ふざけるな!」
ミスミ「橋の下なんか動物と同じだろ!」
「言い方」
アオバ「目処がつくだけ有難いよ」
「何か返礼を、」
ミスミ「気にするな」
メグリ「ホームレスの癖に見栄張んなよ」
ミスミ「キミって奴は・・・」
アオバ「こんなものしかないが」
アオバ「この星の人によく貰うんだが」
アオバ「理解が出来なくて」
アオバ「私は”お金”の文化を研究に来たんだ」
ミスミ「物々交換の社会なのか?」
アオバ「等価交換は万物の摂理では?」
メグリ「悪魔が言うヤツ」
メグリ「とりあえず」
メグリ「ウチ来ていいよ」
ミスミ「キミって奴は・・・」
〇ライブハウスの入口
〇ナイトクラブ
メグリ「なぁなぁアオバ!ビール注文しろ!」
アオバ「お酒は駄目でしょう」
メグリ「チッ、知ってんのかよ」
ミスミ「知らなかったら飲むつもりだったのか」
ミスミ「何か始まるのか?」
アオバ「何やらショーのようですね」
メグリ「コンカフェだったのか」
〇ライブハウスのステージ
アオバ「可憐な女性だね」
メグリ「『タマコ』だとよ」
メグリ「アイドルって文化だよ」
ミスミ「何かの教祖か?」
メグリ「まぁそんなもん」
アオバ「なるほど信仰の対象・・・!」
アオバ「だからお金には”紙”があるのか」
メグリ「御札じゃねぇわ」
メグリ「全っ然、歌わねーなアイツ」
「えぇっ!?」
ミスミ「異常な身体能力だな」
メグリ「アイツ・・・宇宙人だろ」
アオバ「どうやら骨や内臓で 楽器のように演奏しているようだ」
ミスミ「”言語”の文化がない種か」
メグリ「いい加減にしろよ・・・」
アオバ「・・・美しい」
「はぁ!?」
〇ナイトクラブ
アオバ「素晴らしいステージだった」
メグリ「アオバ?」
メグリ「なぁアオバ?」
ミスミ「彼はどうしたんだ?」
メグリ「”距離感をはき違える”という病だ」
ミスミ「意味がわからん」
〇劇場の楽屋
アオバ「失礼」
アオバ「貴女に感動しました」
アオバ「是非お返しがしたい」
アオバ「受け取ってくれ」
「うぉおお~いッ!!」
メグリ「お前いま、エグいぐらいゲスいぞ!」
メグリ「ほらみろ!なんかビビってる音出てる!」
アオバ「申し訳ない!悪気はなくて!」
アオバ「おぉ許して頂けますか」
メグリ「面倒臭ぇ体質だな」
メグリ「あ?」
アオバ「え?」
「ガハッ!」
メグリ「えっ!?ちょ──」
メグリ「いだだだだッ!!」
アオバ「子供好きなようだね」
メグリ「いやアタシじゃなくて!」
メグリ「面倒見て欲しいのはアイツ──」
メグリ「どこいった?」
〇ナイトクラブ
アオバ「誘拐・・・」
メグリ「丁度いい」
メグリ「引き取ってくれたわ」
アオバ「本気か?」
メグリ「だってそうだろ」
メグリ「宇宙船もやるよ」
アオバ「宇宙船は」
アオバ「ミスミ氏の物だ」
アオバ「自由に出来る物ではない」
アオバ「彼を助けよう」
メグリ「ふーん」
「好きにしな」
アオバ「協力してくれたら」
アオバ「今後の生活を支えよう」
メグリ「マジで?」
アオバ「お金を集めたいのだろ?」
メグリ「まぁね」
アオバ「私には犯人の探し方が分からない」
メグリ「映ってんじゃね」
「濃いな!!」
〇雑踏
〇都会のカフェ
アオバ「どうやって探すんだ?」
メグリ「探すのは──」
メグリ「”アタシ”じゃねぇ」
〇SNSの画面
助けて下さい!
弟が拐われました!
情報提供お願いします!
アオバ「通信技術で不特定多数に・・・!」
アオバ「不味いぞ、メグリ氏!」
アオバ「信用されていない!」
アオバ「これでは──」
メグリ「アタシを──」
メグリ「誰だと思ってんだッ!」
メグリ「──キタ!」
メグリ「いくぞ!お前らァ──ッ!!」
アオバ「恐ろしい文化だ・・・」
〇廃工場
〇荒れた倉庫
ミスミ「身代金の要求は愚策だ」
ミスミ「大半は受け渡しで捕まる」
Vシネ中学生「凄ぇアドバイスくれる」
イチゼロ分け「何か恥ずかしくなってきた」
世紀末ニット「バカ野郎!赤ん坊の言う事──」
田所善明24歳3人兄弟の末っ子で家が貧乏「アニキ大変だ!」
オラァァアアアッ!!
ミスミ「メグリ・・・」
世紀末ニット「ガキだけで何が」
アオバ「”保護者”同伴だが?」
世紀末ニット「クソがぁ」
世紀末ニット「ハッ、お前が人質になるか?」
メグリ「嫌な予感すんな・・・」
〇廃工場
〇東京全景
〇線路沿いの道
「自分で”浮け”って」
ミスミ「母星へ送る映像をチェックしている」
ミスミ「まぁ飲めよ」
メグリ「これは酒じゃねぇ」
アオバ「本当に姉弟のようだね」
メグリ「勘弁しろよ」
メグリ「うるせぇ、音波兵器が」
メグリ「どのスタンスでその曲が流れてんだ」
アオバ「タマコさんは”歌”を学びに来たらしいよ」
ミスミ「何もかも吹っ飛んだが?」
メグリ「どいつもこいつも・・・何でこの星に」
アオバ「この星は”文化財”なんだよ」
メグリ「はぁ?」
ミスミ「最初に言っただろう」
ミスミ「我々はクローンを保持する種だと」
メグリ「だから?」
ミスミ「この星は」
ミスミ「1000年前に我々のクローンが移住し」
ミスミ「文明を保存した星だ」
ミスミ「”家族”という文化はよく分からないが」
ミスミ「”血縁者”という意味ならキミもそうかもな」
メグリ「冗談だろ・・・」
アオバ「ミスミ氏の星は」
アオバ「銀河で有名だよ」
アオバ「名前は──」
〇地球
”地球”
〇地球
よ、ようやく未読アノベ作品読もうと思ったら、とんだ作品に手を出してしまった……
そうだったスチル数の異様さ😅
他の皆さんのコメントにもありますが「文化が滅んだ地球」良いですねぇ😊
あくまでちょっとやそっとで仲良くならないメグリにミスミが、両さんと部長でしょうか?
Dickinsonの自由さ・暴れっぷりを堪能しました👏
情報が多い!突っ込みどころも多い!そして最後に「えっ」ってなったやん!読了6分とか絶対嘘だろTapNovel!体感30分くらい在っだぞ!深夜アニメ観てるのかな?って思ったわ!
……てことで、✕2.0でも楽しめる内容だと思います。設定は王道のSFコメディでした。
ミスミのキャラがいいですね〜たまにはクズな中年女性の姿に戻って欲しい😊
宇宙人かと思ったら滅びようとしていたのは地球だった…オチで一気に視点が入れ代わり、緊迫感が走りましたね。