初恋バックアップ!

オカリ

WhoEverLoved,ThatLovedNot at FirstSight?(脚本)

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〇古書店
  まことの恋愛とは全て一目惚れだ
  クリストファー・マーロウ

〇駅のホーム

〇電車の中
  誰か
  誰か──
私の王子様「次で降りましょうか」
痴漢魔「テメェ!」
痴漢魔「うぐっ」
私の王子様「さて‥‥」
私の王子様「キミ!」
私の王子様「怖い思いをさせたね」
私の王子様「警察には僕が突き出しておく」
私の王子様「もう、大丈夫だよ」

〇キラキラ
  この日、運命に出会った
  どんなに苦しくても
  困った人を見過ごせない
  お人好しの王子様に──
パパ「ん?」
パパ「待ってくれ、久美」
久美「なに、良いとこなんだけど」

〇狭い畳部屋
パパ「確認だが‥‥」
パパ「帰りの電車に痴漢がいた」
久美「うん」
パパ「で、それを助けたナイスガイもいた」
パパ「そこまではいい」
パパ「問題は」

〇電車の中
パパ「この子、誰だ?」
久美「え?知らないけど」
パパ「‥‥」
パパ「久美はどこにいたんだ?」
久美「もう少し前で〜」
久美「ストップストップ!」
久美「ここでしたー!」

〇狭い畳部屋
パパ「‥」
パパ「そこかー」
久美「なに?」
パパ「いや、うん」
パパ「娘の無事に安堵している」
パパ「それはそれとして」

〇電車の中
パパ「運命の人、遠くないか?」
パパ「この子が運命感じるのは 然るべき話だが‥‥」
久美「傍観者だって惚れてイイじゃん!」
パパ「う〜む」
久美「惚れた理由はコレだけじゃないよ」
久美「王子様、あの一瞬で 4人も救ったんだから!」

〇狭い畳部屋
パパ「4人だと?」
久美「パパ、思い出して」
久美「あの電車はピンク頭以外に‥‥」

〇電車の中
  座りたい老婆
  道に迷った外国人
  親とはぐれた少年
  3人も「困った人」がいたんだよ!
パパ「まさか!?」
久美「ご明察ぅ!」
  席を立った彼は──
  老婆に席を譲ると同時に!
  スペイン語で道を教えて!
  幼子をあやしながら!
  痴漢を制圧した!
久美「カッコよすぎでしょ! 惚れない方がどうかしてるぜ!」

〇狭い畳部屋
パパ「人助けのマルチタスク!? スゴいな王子様!」
パパ「結婚前提のお付き合いも パパ許しちゃいそう!」
久美「でしょ〜!」
久美「‥‥」
久美「でも、ムリだよね」
久美「パパの言った通りだ」

〇電車の中
  運命を感じるべきは
  ピンク頭の方
  私じゃない

〇狭い畳部屋
パパ「それは言葉のあやで‥‥」
久美「ううん、それだけじゃない」
久美「私、王子様をずっと目で追ってたの」

〇線路沿いの道
  そしたら彼ね
  急に抱きつくあざとい幼馴染や
  時と場所を弁えないアホお嬢様に

〇綺麗な一戸建て
  家の中でも
  「お嫁さんになる!」とほざく義妹や
  居候の分際で色目使う留学生がいてさ

〇綺麗な一戸建て
  もうね
  苦しくて
  苦しくて
  誰かの王子様になる位なら
  いっそひと思いに──

〇狭い畳部屋
パパ「久美」
パパ「泣くほどショックだったのか」
パパ「でも尾行で住所特定は やり過ぎだよ?」
パパ「とりあえずBGM止めなさい」
パパ「あと最後のヒモや包丁なに?」
久美「運命の赤い糸‥‥かな」
パパ「実際に結ぶタイプなんだ」
パパ「パパ、狂気に満ちた花嫁衣装はヤダよ」
久美「大袈裟だなぁ」
久美「恋に一生懸命なだけだよ!」
パパ「‥‥」

〇ハート
  マズイな
  久美は控えめに見えて
  その実、マグマのような娘だ
  このままじゃ血を見ることになる

〇狭い畳部屋
パパ(暴走前に身内が止めねば)
パパ(それに)
パパ(愛娘の初恋だ)
パパ(成就させてやりたい!)
パパ「久美、安心なさい」
久美「パパ?」
パパ「久美にはパパが‥‥イヤ」
パパ「パパたちがいる!」
パパ「カモン! 狂気の発明家、ママ!」
ママ「呼んだかね?マイダーリン!」
パパ「カモン! 愛しの息子、康太!」
康太「バカデカいウンコ出た」
康太「超スッキリ!」
パパ「久美よ」
「我ら、恋のお助け隊!」
ママ「我が娘の」
康太「姉ちゃんの」
パパ「久美の」
「恋を全力で応援す──」
久美「いらない」
久美「やめてやめて 首突っ込まないで」
パパ「なにぃ!?」
パパ「家族の助けを拒むのか!?」
久美「そもそもさ」
久美「アドバイスできるほど恋愛経験ある?」
パパ「失敬な!何を根拠に!?」
久美「だってパパとママ 見合い婚って聞いたし」
久美「パパ、40歳まで童貞だったんでしょ?」
パパ「ッ!!!?」
パパ「その話、誰から──」
久美「おばあちゃん」
パパ「あのクソババアッ!!!」
ママ「血圧上がるぞ、マイダーリン」
久美「ママも頼りないしな〜」
久美「ねぇ、ママの初恋ってどんなの?」
ママ「初恋の相手か?」
ママ「普通に円周率だな」
久美「普通に‥‥円周率?」

〇教室の教壇
  小学生の頃
  円周率πが3より大きいことを示せ
  この問題に出会った
  証明は何通りかあって
  例えば内接する正八角形の周が──
久美「もういいよ、ママ」
ママ「そうか?」
ママ「そうかぁ」

〇狭い畳部屋
久美「で、最後は康太だけど」
久美「アンタ恋したことあんの?」
康太「あ、あるぜ!」
康太「アレは1年前」
康太「秘密基地を作りに裏山へ──」
久美(もうダメそう)

〇山並み
  1年前

〇山中の川

〇森の中の小屋
謎のお姉さん「ダメ、抑えられない」
謎のお姉さん「人型に戻らないと研究所に見つか──」
謎のお姉さん「誰ッ!?」
康太「康太だけど」
康太「オネーサンこそ誰だよ 俺の秘密基地だぞ!?」
謎のお姉さん「‥‥ゴメンよ、少年」
謎のお姉さん「傷が深くてね 修復に3日かかる」
謎のお姉さん「それまで‥‥ダメ、かな?」
康太「べ、別にイイけど」
謎のお姉さん「アリガト」
謎のお姉さん「少年は優しいね」
康太「優しくねーし 普通だし‥‥」
謎のお姉さん「照れてる?」
康太「照れてねーし!」

〇狭い畳部屋
康太「‥‥って感じだけど」
康太「コレって恋かな?」
久美「‥‥‥」
久美「思いのほかガチじゃん」
久美「10才にしては濃い人生送ってるなぁ」
久美「でもハッキリした パパ達に恋のアシストはムリ」
久美「頼れるのは己のみ!」
久美「まず赤い糸を用意して‥‥」
パパ「ふっ」
パパ「ふっふっふ」
久美「パパ?」
パパ「確かにパパは恋愛弱者だ」
パパ「だが!」
パパ「小説、映画、漫画にドラマ」
パパ「理想の恋愛なら知り尽くしている!」
久美「小説に漫画って‥‥作り物じゃん」
パパ「ガッカリには早いぞ」
パパ「パパの考えた最強恋愛プラン」
パパ「『オモシレー女作戦』を聞いてからだ!」
久美(名前が既にダメそう)

〇渋谷のスクランブル交差点
  作戦はこうだ
  まずヤンキーを用意する
  久美が絡まれる
  もちろん王子様の近くでね
  悲鳴をあげた所で‥‥
  王子様登場!
久美「パパ」
久美「コレが作戦?」
  ああ
  彼は困っている人を
  見過ごせない性格だろう?
  不良に絡まれる女子高生、
  最たる例だと思うが‥‥
久美「パパ!」
久美「続けて?」
  助けてもらったんだ
  当然感謝する
  その時こう言いなさい
  『お礼に一発ギャグしますね』
久美「‥‥」
久美「なんで?」
久美「王子様きっと」
久美「ってなるよ?」
  滑って良いんだ
  むしろ‥‥
  滑った方がいい!
  発想の転換だ
  あえてダダ滑りギャグを披露
  彼はきっと苦笑い
  久美は照れながらこう言いなさい
  『ごめん、失敗しちゃった』
  『センス磨いて出直します』
  『連絡先‥‥教えてくれますか?』

〇狭い畳部屋
パパ「会う口実と手段を同時に取る」
パパ「ただの感謝は没個性 インパクトで一気にオトす!」
久美「す、凄いよパパ!」
パパ「行くぞ!」
  オモシレー女作戦
  状況開始!

〇SHIBUYA109

〇高架下
  姉ちゃんの勘が当たった
  標的発見だ!
  でも──
パパ「なにぃ!?」
パパ「ゴミ拾いしつつギックリ腰を 救助中、だと!?」
パパ「すぐ向かう!」
久美「パパ?」
パパ「マズイぞ、既に人助けを 2つもしている!」
パパ「はやく仕掛けねば!」
久美「私も──」
ママ「待てーい」
久美「ママ?」
ママ「コレを託す」
ママ「プランBだ 間に合って良かった」
ママ「隙を見て彼に飲ませなさい」
ママ「理性がトんで性の獣になる 効果は実証済みだ」
久美「ママ‥‥」
久美「──待って 実証済みって誰に?」
ママ「10年ほど前、私に使った」
ママ「倦怠期のスパイス代わりにね」
ママ「その時授かったのが──」
久美「あ、もう結構です」
久美「行ってくる!」
ママ「頑張れ、我が娘」

〇渋谷のスクランブル交差点

〇SHIBUYA109
康太「パパ、こっち!」
パパ「状況は?」
康太「あそこ!」
パパ「人助けのデュアルタスクか まだ空きがある!」
康太「いや、マズイぜパパ!」
  近くに段差で苦しむババアが!
パパ「くっ、ならば」
パパ「康太!」
康太「ガッテン承知!」
康太「先にババアを助けるぜ!」
パパ「よし、抑えた!」
パパ「王子は──」
パパ「気づいてない!」
久美「追いついた〜」
久美「あっ!?」
久美「王子様ぁ❤︎」
パパ「トリップは後だ やるぞ!」
久美「了解!」

〇SHIBUYA109
ヤンキー(パパ)「ヘイ」
パパ(ヤンキーのすがた)「カワイイ顔だな!」
久美「え゛」
パパ(ヤンキーのすがた)「‥‥」
パパ(ヤンキーのすがた)「久美、怖がって!」
久美「あ、パパか クオリティたっか」
久美「ヤンキーってかヤーサン寄りだけど」
久美「ん、ゴホンッ」
久美「声裏返っちゃった‥‥」
パパ(ヤンキーのすがた)「結果オーライ、王子が気づいた」
パパ(ヤンキーのすがた)「続行だ!」
パパ(ヤンキーのすがた)「食事どう!?」
パパ(ヤンキーのすがた)「寿司食うか!?」
???「あの」
???「その子、泣いてますよね」
「キタッ!」
イケメンポリス「署までご同行願えますか?」
「本職が来ちゃったー!」
久美「どうしよ!?」
パパ(ヤンキーのすがた)「久美、逃げろ」
パパ(ヤンキーのすがた)「今なら自然に王子へ駆け寄れる!」
久美「お、おたすけ〜!」
パパ(ヤンキーのすがた)「さて」
パパ(ヤンキーのすがた)「パパはこれまでか──」

〇SHIBUYA109
久美「助けて下さ〜い」
私の王子様「大丈夫?」
久美「王子様」
私の王子様「王子?」
久美「あ、いや」
久美「ア──」
久美「緊張して声が‥‥」
私の王子様「元気そうだね」
私の王子様「それに」
私の王子様「警察が対応したようだ」
私の王子様「不審者に気をつけて!」
久美「あっ」
久美「まだ何も──」

〇高架下

〇SHIBUYA109
久美「プランB!」
久美「王子様ァ!」
  私からの
久美「──お礼です」

〇SHIBUYA109
久美「王子様‥‥?」
久美「おうじひゃま!?」
久美「お目覚めに──」

〇SHIBUYA109
パパ(ヤンキーのすがた)「還暦前に説教は堪える‥‥」
パパ(ヤンキーのすがた)「久美は成功しただろうか」
???「やめろ!」
私の王子様「大声で怒鳴り散らす まるで見せしめだ」
私の王子様「権力行使の度を超えている!」
イケメンポリス「ぐっ」
イケメンポリス「以後気をつけるように!」
パパ(ヤンキーのすがた)「キミは──」
私の王子様「大丈夫かい、お兄さん」
パパ(ヤンキーのすがた)「お兄さん!?」
私の王子様「無事で良かった」
私の王子様「さ、帰ろう 僕の家に」
パパ(ヤンキーのすがた)「ヒッ」
久美「そういえば──」

〇高架下
久美「実証済みって誰に?」
ママ「10年ほど前、私に使った」
ママ「倦怠期のスパイス代わりにね」

〇SHIBUYA109
久美「あの媚薬ってまさか」
ママ「すまん」
ママ「パパに惚れ直す薬だった」
ママ「考えてみれば、自分に使う 媚薬というのも妙だったな」
ママ「やー失敗失敗!」
久美「‥‥」
パパ(ヤンキーのすがた)「私は妻子持ちだぞ!」
私の王子様「その程度、愛の前では無力!」
パパ(ヤンキーのすがた)「くっ──」
久美「‥‥」
久美「コレはコレでアリ、かな」
  オモシレー女作戦
  成功?

〇線路沿いの道
康太(もう帰っていいかなぁ)

コメント

  • これはいいドタバタっぷり😂
    逆再生とかBGM停止とかパパのヤンキー体がガチとか、TapNovelの機能を活かしつつ随分色んな変化球で攻めてきますねぇ🤣 弟の初恋の相手、別作品で活躍してそうなポテンシャル…笑
    家族がガッチリ絡むチームワーク感がいいですね!外からのアクシデントの他、家族間連携の成功/失敗でも笑いを作りやすそう
    王子様の常軌を逸した有能っぷり等、ネタになる要素が多くて良きでした👍

  • 長男と異形のお姉さんの3日間の話が気になります……💘

    長女の狂愛にヤバさを感じたはずなのに、父・母へのツッコミにまともそうに見えてしまう😅
    お母さんの発明の失敗が、ちゃんと伏線はられているとこにやられました

  • あっ、主人公そっちぃ!🤣
    主人公セルフ演出にも笑いました。
    BGM自分でかけてたんかいっ!!

    王子のいく先に助け人あり…w

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