ぼくらの就職活動日記

大杉たま

エピソード2(脚本)

ぼくらの就職活動日記

大杉たま

今すぐ読む

ぼくらの就職活動日記
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇野球場
戸川仁「レディース&ジェントルメンな就活生諸君、大変長らくお待たせしました!」
戸川仁「私、今年度の選考会の司会を務めさせていただきます、戸川と申します。以後お見知り置きを」
戸川仁「さて、まずは諸君。説明会への参加おめでとう。君たちはこの時点で、すでにかなりのラッキーヒューマンだ」
戸川仁「今年度の説明会への参加者は五万人。 その軽く6倍の学生たちがエントリーし、参加票抽選を受けた」
戸川仁「そして大半は落ちていった・・・」
戸川仁「君たちの後ろには、説明会に来られなかった何人もの無念の就活生がいることを、肝に銘じておいてくれたまえ!」

〇野球場の座席
若山柿之介「ラッキー、おらだち、ラッキーだか?」
真田紅音「きみ、ホントに何も知らないのか。 てか、どうやってここに来た」
若山柿之介「おら、東京さ来るのも何年ぶりでよ」
若山柿之介「右も左もわかんねぐて・・・」
若山柿之介「とりあえず働きてぇって気持ちはあっだから、一番ピカピカなビルさ入ってぇ「ここで働きてぇ、社長さ会わせでくれ!」って」
真田紅音「冗談だろ」
若山柿之介「ホントだで。したら、偉そうなオッサンがおら見て笑っててよ、これさくれた」
真田紅音「う、嘘だろ・・・」
真田紅音「いや、でも確かにきみ、嘘はついていない」
真田紅音「でも信じられない。僕なんかこの参加票を手に入れるために、一体何人の友達を金で雇ってアカウント作らせ——」
若山柿之介「ん、なんだべあれ!」

〇野球場
  アリーナの天井から、巨大なプロジェクターが降りてくる。
戸川仁「さて、君たちの興味がこの後のアレにあることは重々承知している」
戸川仁「だが、形式上説明会という体は守らなくてはいけない」
戸川仁「なにせこの選考会の説明会の様子は——」

〇黒
  全国に、動画配信されているからね
  初めてエリートピア選考会を見る人にも
  分かりやすいものでなくてはいけない

〇野球場
戸川仁「それじゃ、しばしお付き合いを!」

〇野球場の座席
  ドームの通路から人々の一団が次々に現れ、行進を始める。
若山柿之介「おもっちょいのー! よぐわかんねけど、お祭りみたいだべ!」
真田紅音「しー、静かにしろって。 みんなそんなテンションじゃないんだよ」
若山柿之介「こんだけ大きけりゃ、どんだけの畑さ耕してんだべな」
真田紅音「いや、は?」
若山柿之介「え、大企業っつーのは、大地主みたいなもんだべ。土地とか、いっぱい持ってんだべ?」
真田紅音「・・・きみは、過去からタイムスリップしてきたのか?」
若山柿之介「タイムスリップってなんだべ?」
真田紅音「・・・はぁ」
真田紅音「エリートピアは広告代理店だよ」
若山柿之介「広告代理店?」
真田紅音「そう。でもそんじょそこらの広告代理店とは訳が違う」
真田紅音「圧倒的なブランド力と支配力を持った、世界最大の広告代理店だ」

〇野球場
  アリーナの立体映像に移される、エリートピア社の事業や業績。
真田紅音「従来の代理店は、広告を出したい広告主と、広告を載せたいメディアを繋ぐ役割しか担ってなかった」
若山柿之介「山でイノシシさ仕留めて、それを村の市場まで運ぶみでなもんか?」
真田紅音「・・・それで理解できてるなら、それでいい」
真田紅音「とにかく、それが従来までの代理店の仕事だった」
真田紅音「でもエリートピアは代理でありながら、テレビ局を買収して、メディアの開発と放映までを担う、コングロマリットになったんだ」

〇野球場の座席
若山柿之介「こんぐろまりっと、懐かしいべ 小さい頃よく一緒に遊んだべ」
真田紅音「・・・一体なにと勘違いしてるんだ」
真田紅音「エリートピアは代理店業だけじゃなく、テレビ、ネット動画など、様々な広告掲載メディアを独自に保有するようになっていった」
若山柿之介「おら、パソコンとかすまふおとかさわったことねーがら、よくわかんねけど」
真田紅音「・・・なんで君はここにいるんだ」
真田紅音「ともかく、こうしてエリートピアは圧倒的なブランド力とメディア開発での覇権を手に入れ、名実ともに日本一、いや世界一の大企業になったんだ!!」
  華やかなライトアップと歓声と共に、行進していた集団が去っていく。
若山柿之介「おおお、よぐわがんね!」
  パチパチパチパチ
「!」
「アカンわ、おもろい」
藤原一茶「なんや、自分ら漫才コンビかなんかなん?」

次のエピソード:エピソード3

成分キーワード

ページTOPへ