願いと希望(後編)(脚本)
〇研究機関の会議室
若宮はづき「わからない‥わからないです‥」
多聞沿十郎「わかるはずだよ、若宮はづき この世界、この希望の無い世界で、君が多くの人々の救いとなり、安らぎとなるんだ」
若宮はづき「希望の無い‥」
多聞沿十郎「そうだ、今のこの世界に何の希望があるというんだ?」
若宮はづき「‥‥」
多聞沿十郎「滅びの始まった世界では、人はただ朽ちていく事しか出来ない‥だとしたらそれを苦しめず終わらせてあげるべきだと思わないかね?」
〇黒背景
白崎文月(しらさきふづき)「はづきちゃん、ちゃんと向き合って、そして見極めて来て」
〇研究機関の会議室
若宮はづき「(そうだ‥見極めるんだ‥)」
若宮はづき「希望は‥無いんですか‥」
多聞沿十郎「うん?何だね?」
若宮はづき「希望です」
多聞沿十郎「希望‥そうだな、滅びが決まっている以上、出来る限り静かに、皆が穏やかに最後を迎えられるように‥」
若宮はづき「それは‥希望じゃない」
多聞沿十郎「希望じゃないとは、どういう意味だね?」
若宮はづき「それは‥ただの絶望です」
多聞沿十郎「なるほど‥だとしたら、君はどうできると言うんだ?このまま滅んでいくこの世界に、君は何をしようと言うんだ?」
若宮はづき「‥あなたは、いざなぐといざなむ、これを使える人は特別の者のように言った‥ だけど、ホントはみんな使えるんですよ」
多聞沿十郎「‥どういうことかね?」
若宮はづき「人を癒し、命を救うことが出来るいざなぐ、苦痛を与え、やがて殺める事に至るいざなむ、でもこれって‥」
若宮はづき「人が誰しも行っている事じゃないですか?」
多聞沿十郎「‥‥」
若宮はづき「使ってみてわかったんです、善意で誰かを癒し、悪意で誰かを責める、それがいざなぐといざなむ」
若宮はづき「特別な事じゃない、 誰もが出来る事なんです」
多聞沿十郎「‥そうか」
若宮はづき「瑠璃沢さんは、何かのきっかけで人類全体が除去されるように体の中のプログラムが変更されたと言っていました、だとしたら‥」
若宮はづき「同じように何かのきっかけで、また変われるかもしれない」
多聞沿十郎「‥‥」
若宮はづき「誰もがいざなぐといざなむを内に秘めている、だとしたら人って誰もが特別で‥ 諦めなければ、誰もが自分の指導者になれるんです」
多聞沿十郎「‥私たちも可能性は探った、 だが不可能だと判断したんだ」
若宮はづき「それでも‥それでも、私は諦めたくない、希望を‥持っていたい」
多聞沿十郎「‥そうか‥決裂というわけか」
若宮はづき「私は‥私の希望で行く先を選びます」
多聞沿十郎「ふむ‥さっきも言ったが、君の能力は稀有だ、私達の仲間に加わってくれれば、これ以上のない頼もしさだ‥」
多聞沿十郎「だが、私達と共にしないと言うならば、これほど面倒な事は無い」
若宮はづき「‥‥」
多聞沿十郎「君には先ほど両方を手を触れずに行える稀な存在だと話した‥が、それはあくまで両方という意味だ」
若宮はづき「‥どういう意味です?」
多聞沿十郎「片方なら、君以外にもいるんだよ 私を含めたここにいる全員がいざなむを行える‥しかも手を触れずにな」
若宮はづき「‥何を言ってるんですか?」
多聞沿十郎「少し苦痛を感じるだろうが、大丈夫 私達を受け入れるまでの辛抱だよ」
若宮はづき「私を‥どうするんですか?」
多聞沿十郎「本来、いざなむ同士はお互いに干渉し消し合うのが常だが、より強力ないざなむならば、干渉を打ち消し、相手を凌駕する」
若宮はづき「私に、いざなむを‥」
多聞沿十郎「私を含めた7人で同時に行う‥ 何、君の考えを改めてほしいまでだ ほんの少しの我慢だよ」
若宮はづき「もし‥あなた達の思い通りにならなかったら?」
多聞沿十郎「そんな悲しい事は考えたくないが‥ まあ、大丈夫、人を苦痛で考えを改めるものだ、古今東西の拷問の歴史がそれを物語っている」
若宮はづき「‥‥」
多聞沿十郎「改めて聞こう、若宮はづき 私達に加わってもらえるだろうか?」
若宮はづき「私は‥私の願いと希望で生きていきます!」
多聞沿十郎「‥そうか、残念だ」
〇研究機関の会議室
若宮はづき「あっ、うわぁー!」
多聞沿十郎「考えを改めるんだ、若宮はづき!」
若宮はづき「うわぁー!うーー!」
多聞沿十郎「無理をするな!壊れてしまうぞ!」
若宮はづき「私は‥私の‥うわぁぁぁ」
〇黒背景
高梨奏絵「はづ‥き‥ごめんね‥はづき‥」
瑠璃沢(るりさわ)「希望を‥‥」
〇研究機関の会議室
若宮はづき「ううう」
若宮はづき「私は‥私の‥」
多聞沿十郎「無駄だよ、いざなむ同士はより強いほうが‥」
長津「ぐはぁ」
多聞沿十郎「何、どういうことだ、なぜ私達が‥」
ロフコフ「うがぁぁぁ」
若宮はづき「いざなむ手は負の感情、強い強い負の願い、だとしたら‥」
万丈「うわぁーいやぁー!」
若宮はづき「それはより強い言葉、残酷な言葉、様々な絶望を謳う言葉なら、あなた達の負を上回る負なら‥」
手邑木「ぐふぁぁぁ」
焔「うぐぁ‥この女‥ぐぁぁ」
多聞沿十郎「そうか‥それほどだったか‥」
魯「ぐふぅ‥ふふ、見誤ったわね‥多聞‥ ぐわぁ‥」
〇研究機関の会議室
多聞沿十郎「ぐぅ‥‥こちらを‥七賢全員を上回るほどのいざなむとはな‥」
若宮はづき「‥‥ぐぅ!」
多聞沿十郎「わかっているのか、若宮はづき‥ そこまでのいざなむをして‥そこまで強い負を発して‥お前もまともでいられるわけが無い事を!」
若宮はづき「ぐぅ‥かまわ‥ない‥」
多聞沿十郎「なん‥だと‥ぐはぁ」
若宮はづき「もしそれで‥全て終わるのなら‥ 私ごと‥あなた達を‥」
多聞沿十郎「ぐふぁぁ」
若宮はづき「ぐぅぅぅ‥許せない‥許せない‥」
多聞沿十郎「お前‥ぐぁぁ」
若宮はづき「消えろ!いなくなれ!何もかも! あなた達も!‥私も!‥‥‥無くなれ!!!」
多聞沿十郎「ぐぅぅぅ‥‥」
若宮はづき「ぐぅぅぅ‥」
〇黒背景
調整人・綴木(つづるぎ)「若宮!若宮はづき!やめろ!もういい!」
〇研究機関の会議室
調整人・綴木(つづるぎ)「もうやめろ! お前が壊れるぞ!」
若宮はづき「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ‥ 綴木‥さん」
調整人・綴木(つづるぎ)「もういい、あとはこれでやる」
若宮はづき「はぁ、はぁ‥ これは‥」
多聞沿十郎「ぐふぁ‥お前は‥綴木」
調整人・綴木(つづるぎ)「久しぶりだな、七賢の代表‥」
多聞沿十郎「‥何の‥ようだ‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「贈り物だよ」
多聞沿十郎「贈り物‥だと?」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ、千寿からのな」
多聞沿十郎「千寿だと‥あの女‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「じゃあな いくぞ、若宮はづき」
若宮はづき「‥はい」
多聞沿十郎「‥これは?」
〇研究機関の会議室
多聞沿十郎「これは‥何だ?」
「ぐはぁ!」
「ぐふぁぁ!」
〇血しぶき
「ぐぅぅぅ‥」
「わぁぁぁ!」
「うぐぅぅぅぅ‥」
〇流れる血
「ぶはぁ‥‥」
〇研究機関の会議室
多聞沿十郎「これは‥何なの‥ぐふぁ!」
〇大きい研究施設
調整人・綴木(つづるぎ)「ここまで来れば‥」
若宮はづき「綴木、さっきのあれって‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ、千寿から預かった」
若宮はづき「千寿さん‥ じゃあ、あれを使ったんですか‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「そういうことだな‥効果のほどはどうなのか俺は知らんが、千寿の口ぶりだとかなりの物らしい」
若宮はづき「そうですか‥ 千寿さん、助けてくれたんですね」
調整人・綴木(つづるぎ)「結果としてそういうことだな」
若宮はづき「‥そういえば昨日、文月さんと会いました」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ、聞いている 俺は止めたんだがな」
若宮はづき「止めた?」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ、まだやつらの監視が厳しいから、お前に会うのは待った方がいいと言ったんだが、どうしてもとな‥」
若宮はづき「そうなんだ‥ でも、文月さんの言葉があったから、 決心がついたんです‥助けられたんです」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥そうか」
若宮はづき「はい‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「若宮はづき、これからどうする?」
若宮はづき「これから?」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ、お前はもう自由だ 行きたいところに行けばいい」
若宮はづき「行きたいところ‥あの‥」
調整人・綴木(つづるぎ)「なんだ?」
若宮はづき「千寿さんの‥千寿さんのところに連れて行ってください!」
調整人・綴木(つづるぎ)「千寿か‥わかった」
調整人・綴木(つづるぎ)「乗れ」
若宮はづき「はい!」
〇高層ビル
調整人・綴木(つづるぎ)「着いたぞ」
若宮はづき「はい、ありがとうございます」
〇高層ビルのエントランス
宇津木「若宮さん、ご無事で」
若宮はづき「はい、ご心配かけました! それで、千寿さんにお礼を言いたくて」
宇津木「そうですか、でしたらご案内いたします」
調整人・綴木(つづるぎ)「俺はここで待ってる」
若宮はづき「わかりました 行ってきます」
宇津木「では、こちらへ」
若宮はづき「はい」
〇貴族の応接間
宇津木「千寿様、若宮さんをご案内しました」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ありがとう、宇津木 ちょっと席を外してくれる?」
宇津木「はい、かしこまりました」
若宮はづき「宇津木さん、ありがとうございました」
宇津木「いえ、では失礼致します」
若宮はづき「あの‥助けてくれて、ありがとうございます」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、助けたね‥そうなったのね」
若宮はづき「えっ?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「あの小箱ね、あの施設にいる仕組みの連中全員に向けて呪いをかけたのよ」
若宮はづき「それは‥どういう意味ですか?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「だから、もしあなたがあの連中に加わってたら‥」
若宮はづき「‥私も呪われていた‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「そういうこと まあ、どうなる事かと思っていたけど‥ なるほどね」
若宮はづき「‥でも、もしそうだったら‥ それで終われるんだったら‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「でも、そうならなかった まあ、瑠璃沢が選んだだけあるわね」
若宮はづき「‥千寿さん、私が連中に加わらないとわかってたんじゃ?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ‥どうかしらね でも、そうね、たぶん‥ね」
若宮はづき「‥ありがとうございます、千寿さん」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「‥ねえ、若宮さん?」
若宮はづき「はい?」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「瑠璃沢は‥救われたと思う?」
若宮はづき「‥はい そうだと思います」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「‥どうして?」
若宮はづき「瑠璃沢さんは、あの方の想いは、 もう私の一部なので‥ 私が生きているから‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、そういう事‥ そうね、そうかもしれないわね‥」
若宮はづき「はい‥ それじゃ私はこれで!」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ええ」
若宮はづき「お元気で、千寿さん!」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「ふふふ、あなたもね」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「瑠璃沢‥」
千寿千穂呂(せんじゅちほろ)「これで助けたことになったのかな‥」
〇高層ビル
調整人・綴木(つづるぎ)「これからどうする?」
若宮はづき「もうひとつ行かないといけない場所があるんで、そこに行きます」
調整人・綴木(つづるぎ)「そうか、なら送るが」
若宮はづき「いえ、大丈夫です そこには一人で行った方がいいと思うので」
調整人・綴木(つづるぎ)「そうか‥わかった」
若宮はづき「綴木さん 本当に色々、ありがとうございました」
調整人・綴木(つづるぎ)「礼はいい 早く行け」
若宮はづき「ふふふ、はい! 文月さんをよろしくお願いします!」
調整人・綴木(つづるぎ)「なっ!」
若宮はづき「それじゃ!」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥‥」
白崎文月(しらさきふづき)「行っちゃったね、あの子」
調整人・綴木(つづるぎ)「ああ‥引き留めなくてよかったのか? 俺たちの側に来てもらった方が‥」
白崎文月(しらさきふづき)「大丈夫‥もしそうなれば、きっとあの子から来てくれる」
調整人・綴木(つづるぎ)「そうか‥そうだな」
白崎文月(しらさきふづき)「でもねー、せっかくあんた以外の話し相手が出来るいいチャンスだったのに、それは残念かなー」
調整人・綴木(つづるぎ)「‥悪かったな、俺だけで」
白崎文月(しらさきふづき)「ふふふ、まあ、いいわ もうちょっとだけ我慢してあげるわ」
調整人・綴木(つづるぎ)「ふん、必ず会えるさ あいつとは、またな」
白崎文月(しらさきふづき)「そうね‥きっと会えるわね」
〇ゆるやかな坂道
若宮はづき「確か、この先‥」
〇屋敷の門
若宮はづき「ここだ! ‥あれ?」
召使い 鴫野「お待ちしてましたよ、若宮さん」
若宮はづき「鴫野さん? えっ?でもどうして‥?」
召使い 鴫野「何と言うか、何となくね、ふふふ 旦那様のところへご案内しますよ」
若宮はづき「どうしてそれを?」
召使い 鴫野「それもね‥」
若宮はづき「ふふふ、何となくですか?」
召使い 鴫野「ふふふ、さあ、いらっしゃい」
若宮はづき「はい」
〇屋敷の書斎
召使い 鴫野「旦那様、若宮さんをお連れしました」
炭屋四十(すみやしじゅう)「おお、そうか」
若宮はづき「お久しぶりです、炭屋さん」
炭屋四十(すみやしじゅう)「うむ‥だが、久しぶりというほどでもないがな‥」
若宮はづき「あっ!そういえば、そうだ」
召使い 鴫野「ふふふ、じゃあ、私はこれで ごゆっくり、若宮さん」
若宮はづき「はい」
若宮はづき「あの‥炭屋さん」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ‥だいたいは聞いている」
若宮はづき「弟さんに‥お会いしました」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか‥あいつはどうなった?」
若宮はづき「‥それは‥たぶん」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥そうか」
若宮はづき「すいません‥私、私‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「かまわんさ、双子の兄弟とは言え、ほとんどあった事は無い‥それに、あいつの考えに同意できた事も少ないのでな」
若宮はづき「‥幼いころに養子に出されたと言われていました」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ‥炭屋家の家督は私に、そして炭屋の血を引く者を多聞に‥炭屋と多聞はこの世の政や奉祀など様々な事柄を担って来た‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「だから、多聞に行ったからと言って、決して私に劣るという訳では無いのだがな‥」
若宮はづき「どういう意味ですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「あいつにとっては大きな壁だったようだ」
若宮はづき「炭屋さんが、あの人の壁?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「私というよりも、炭屋の家が、自分が選ばれなかった事が、自分で決められない運命にだろうな」
若宮はづき「自分で決められない運命‥ですか」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ‥だからかもしれんな、あそこまでのめり込んだのも‥」
若宮はづき「のめり込んだ‥ あの仕組みに関わる事にですか?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、あいつがそこまでしてあの仕組みに心血を注いでいた理由は、もしかしたらそうかもしれん‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「だが、今思えば‥一度でも腹を割って話してみればよかった‥」
若宮はづき「炭屋さん‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「私の方から歩み寄れば‥あるいは違った結果になったかも知れんな‥」
若宮はづき「‥‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥ふふふ、すまんな 湿っぽい話になってしまって」
若宮はづき「‥いえ」
炭屋四十(すみやしじゅう)「これからどうする?」
若宮はづき「今はまだ‥何も考えられなくて‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「どうするにしても、仕組みの連中はまた現れる‥ここまで手をかけて君を目覚めさせたんだ、そう簡単に諦めるとも思えん」
若宮はづき「‥そうなんでしょうか」
炭屋四十(すみやしじゅう)「どうだ、もし良ければ 私の元にいたらどうかな?」
若宮はづき「炭屋さんのところに?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、ここにいるとなれば、連中もうかつに手出しは出来んだろう それに鴫野さんから学ぶことも多いだろうしな」
若宮はづき「‥‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「それに、私の事もある‥」
若宮はづき「炭屋さんの?」
炭屋四十(すみやしじゅう)「私が後どれだけこの世界にいられるか‥ その後にどうするか‥ その時に君にいてもらえると助かるのだがな」
若宮はづき「炭屋さん‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「どうだ、悪い話では無いと思うが?」
若宮はづき「ありがとうございます、炭屋さん‥ でも‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか‥ まあ、君ならそうするだろう」
若宮はづき「‥もう少し、この世の中を見て見たいんです」
炭屋四十(すみやしじゅう)「この世の中‥か」
若宮はづき「この10日と少しで、私には世界がまったく違うものになってしまった‥ そしてこれからどうなるのか‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「‥‥」
若宮はづき「私には何ができるのか、もう少し挑んでみたいんです」
炭屋四十(すみやしじゅう)「なるほど‥挑むか」
若宮はづき「はい、希望を持って‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「そうか‥わかった」
若宮はづき「すいません、せっかく私の事を思ってお誘いしてくれたのに‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「なに、かまわんよ それに君の希望と挑みがどこに向かうのか、それも興味があるしな」
若宮はづき「炭屋さん‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「もし何かあったらいつでもここに来なさい、君の背を押してあげるよ」
若宮はづき「ありがとうございます、炭屋さん」
炭屋四十(すみやしじゅう)「さて、この世界がどうなるのか‥ 希望が持てるのか‥」
若宮はづき「わかりません だけど、それでも‥」
炭屋四十(すみやしじゅう)「ああ、行っておいで」
若宮はづき「はい!」
〇黒背景
‥一年後
〇渋谷駅前
エピローグへ‥