突然任せられても困ります!(脚本)
〇森の中の駅
夏江(田舎に移り住んでからどれくらい経っただろう・・・)
夏江(都会が嫌になって、こちらに移り住んだ・・・)
夏江(その時の同期が、わざわざやってくる。理由は何なんだろう?)
1両の電車が入ってきた。
自然豊かな景色に、違和感があるスーツ姿の一人の男性が降りてきた。
夏江「おーい!!」
夏江は手を振って呼びかける。
夏江(こんな田舎まできてスーツ姿って、ほんと「ど」のつく真面目な同期だと思う)
鉄男「夏江さん。お久しぶりです」
夏江(ど真面目な同期は全然変わってない)
夏江(同期入社して、年齢も一緒のはずなのにずっと敬語だ)
夏江(そして、屈託のない笑顔で向かってくる見た目も変わっていない)
夏江「長かったでしょ」
鉄男「そうですね。田舎の1両の電車はもう少し短い車両だと思っていました」
夏江(私は、唖然とした)
夏江「そこじゃなくて、時間よ。時間。ここまで大変だったでしょ」
鉄男「時間ですね。大変失礼いたしました」
夏江(深々とお辞儀をして、また笑顔で私をみているけど、ふざけているのか、何なのか、本当に掴めないなぁ・・・)
鉄男「時間は短く感じました。資料を読むことに集中していましたから」
夏江「あんたは、前から名前と同じぐらい頭が硬いわよね」
鉄男「かたい?そうですか。人並みの頭蓋骨だと思いますよ」
夏江「その固いじゃなくて、鉄男っていう名前と同じくらい、考え方が鉄みたいに固いってこと」
鉄男「そうですか。一応、社内では企画通っていますよ」
夏江(鉄男はずっと笑顔だ。ちょっとは嫌な顔でもすればいいのに、と思う。 そう、鉄男はずっと笑顔なんだ)
夏江「立ち話もなんだし、近くの喫茶店に行く?」
鉄男「そうですね。お願いします」
駅を一緒に出て、夏江は自分の車に鉄男を乗せて、近くの喫茶店に向かった。
〇トラックのシート
喫茶店の駐車場に車を停めて、一息つく。
夏江「はい、降りて」
だが、鉄男は降りるそぶりを全く見せず、自分のビジネスバッグから書類を取り出した。
夏江(今、気づいた。なぜ、鉄男は手袋をしているのだろう?)
鉄男「すみません。この書類を見て欲しいんです」
夏江(実は、内心ちょっとドキドキしていた)
夏江(私は結婚もしていないし、付き合っている人もいない)
夏江(そんな時に、鉄男から、直接会って話をしたいと連絡がきたんだ)
夏江(もしかして、そういうこと?とか、少し考えたりもしていた)
夏江(まさか、いきなりの婚姻届とかってなわけないよね!?)
夏江「う、うん」
そこには、「特別措置許可証」と大きな文字で書かれており、右上には「警察庁・警備局・公安特別課」と書かれていた。
夏江「け、警察って!?」
鉄男「夏江さんと同じで、前の会社を辞めさせてもらって、今は警察に勤めているんです」
夏江(私はすぐに理解できなかった)
夏江(気持ちをなんとか落ち着かせて、その書類を読もうとするけど、うーん、落ち着かない。警察って何!?)
鉄男は左手の手袋をとって、左手首を掴み、クルクルと回して左手を取り外した!!
夏江「えっ!?」
夏江(思いもしないことがあると、そこまで人は声が出ないことを、この瞬間に、心の片隅で感じていた・・・)
鉄男「驚かないでくださいね・・・」
鉄男「実は私、両腕を失くしてしまって、義手なんですよ」
夏江(鉄男はずっと笑っている)
夏江(それが段々と不気味になってきた・・・)
夏江(そして、渡された書類を読もうとしても、お腹の内臓がぐちゃぐちゃにされたみたいに気持ちが乱れていて、読み進められなかった)
鉄男「要点は2つです」
鉄男「まず、一つは強制的に私と一緒に来てもらいます」
鉄男「それを内閣総理大臣から許可をもらっていますよ、というのが、その渡した書類です」
夏江「な、ないかく!?」
鉄男「日本の警察組織のトップは内閣総理大臣ですから」
鉄男「もう一点は、夏江さんの力が必要で、協力して欲しい、ということです!!」
鉄男「私はもちろん、日本全体に関わることで必要なんです」
鉄男「夏江さんの底抜けの明るさが、もう一つのピースなんです」
夏江(私のことを褒めてくれているのだろうか・・・)
夏江(それとも単なる仕事として言っているのだろうか・・・)
夏江(鉄男の表情からは読み取れないし、気持ちも内臓がよじれたぐらいに、ぐちゃぐちゃのままだ・・・)
鉄男「夏江さん、失礼します」
鉄男は自分の顔を、夏江の顔にゆっくりと近づけていく──
夏江(えっ、この流れでキスとかしちゃうの!?)
鉄男はギリギリまで顔を近づけてから、すぐに、筒状になっている左手首を夏江の口に密着させた。
夏江は、段々とうつろな状態となり、寝てしまった──
鉄男は左手を元に戻して、耳に指をあてて、通信を始めた──
鉄男「課長、聞こえますか?」
課長(声のみ)「あぁ、聞こえている」
鉄男「課長の仰った通りに行動し、うまくすべてが終わりました」
課長(声のみ)「よくやった」
課長(声のみ)「夏江は恋愛のことで悩んでいることはリサーチ済みだったからな」
課長(声のみ)「だからこそ、お前に行かせた」
課長(声のみ)「さっ、夏江を連れて帰ってこい」
課長(声のみ)「日本の大きな課題を解決するに向けた貴重な人材だ」
鉄男「わかりました。夏江の車ですぐに向かいます」
この状況だと彼女がパニック起こしても仕方ないですよね。
想定外のことばかり起きて、たぶん飲み込めないんだと思います。
私も読んでてびっくりしましたから!
確かにこの状況なら色々と感情が動いて文章とか読めなさそう…。
気になるのは一体どれだけ重要な事件?に彼女の力が必要なのだろう…。
この後のストーリーがとても気になります。一般女性と警察がどんな関係を持っているのか。これからの日本はどうなってしまうのか。気になる❣️