うつし世はゆめ

深山瀬怜

1-1「三兄妹の日常」(脚本)

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〇雑踏
  第1話「三兄妹の日常」

〇おしゃれなリビングダイニング
市来榛斗「こら、紅羽。 お前また人工血液パック残して・・・」
市来紅羽「だってこれ美味しくないんだもん」
市来榛斗「だからって飲まなかったら動けなくなるでしょーが」
市来紅羽「えーだって本当にマズいんだってこれ ちょっと榛兄飲んでみてよ」
市来榛斗「いや俺、人間だし・・・」
市来紅羽「もうちょっと企業努力ってものをさぁ」
市来紅羽「某ペットフードの会社は全ての猫を幸せにするために美味しいご飯を作ってるんだよ?」
市来紅羽「だったら全ての吸血鬼を幸せにする美味しい人工血液パック開発する会社があってもいいじゃん」
市来榛斗「いいけど紅羽、今、自分と猫を同列に並べたぞ・・・」
市来紅羽「何言ってんの 猫は人間より上だし、吸血鬼は猫と仲良しよ」
市来榛斗「言ってることがめちゃくちゃだ・・・」
市来碧都「はいはい、もうすぐ出かける時間なんだから揉めない」
市来紅羽「だって榛兄が・・・」
市来碧都「榛兄は紅羽のこと心配して言ってるんだから」
市来碧都「人工血液、美味しくないのはわかるけど、ちょっとだけでいいから飲もう?」
市来紅羽「碧兄がそう言うなら・・・ちょっとだけ」
市来榛斗「えー・・・なんか碧都のときだけ素直じゃない?」
市来紅羽「だってなんかムカつくんだもん榛兄」
市来榛斗「理不尽だ・・・この妹、理不尽・・・!」
市来榛斗「反抗期かなぁ・・・」
市来碧都「なんか榛兄、年頃の娘に悩まされるお父さんみたいになってるよ」
市来榛斗「やだよ、こんなおっきい子供がいる年齢じゃないもん」
市来碧都「兄貴まで駄々っ子みたいになってきてるよ・・・」
市来碧都「ところで、そろそろ準備しないと遅れるよ」
市来紅羽「あ、待って これ飲むから」
市来榛斗「おー、ちゃんと飲んだ。えらいえらい」
市来紅羽「そういう子供扱いが嫌っていつも言ってるじゃん」
市来紅羽「にしてもこれ本当にマズいんだけど、何とかならないの?」
市来榛斗「そもそも俺、血を美味しいと思ったことないからなぁ」
市来紅羽「いや別に血もそんなに美味しくないけど」
市来榛斗「美味しくないんだ・・・」
市来紅羽「まあ、美味しかったら全部飲んじゃうからね」
市来紅羽「人間と共存できるように味覚が進化? 退化? してるらしいよ」
市来紅羽「ペペロンチーノとかの方が美味しい」
市来榛斗「新時代の吸血鬼、吸血鬼とは思えないこと言うよね」

〇雑踏
  時は令和。
  科学の時代に、かつて人間を脅かした怪異は消え去ったかのように見えた。
  しかし彼らは人間の領域を侵さずに、ひっそりと穏やかに生きることを選んでいた。
  結果として怪異は人に馴染み、人のすぐそばで、少しだけ人と違う生活を送るようになっている。
  その生活に適応した新時代の吸血鬼は、純血の吸血鬼であっても、かつての弱点のほとんどを克服した。
  十字架もにんにくももはや弱点ではない。
  太陽の下を歩くこともできる。
  そんな時代に、人間とダンピール、吸血鬼が三人で暮らす家があった。
  血のつながりがないながらも共に暮らす三人は、夜の世界で生きている。

〇学校の廊下
市来紅羽「夜の学校って不気味だよね」
市来榛斗「吸血鬼がそれ言う?」
市来紅羽「怪物とかならいいけど幽霊は苦手」
市来榛斗「だいたい一緒じゃない?」
市来紅羽「いや全然違うから!」
市来碧都「まあ確かにちょっと違うかな」
市来碧都「ところで紅羽。何か変な気配とかは感じる?」
市来紅羽「この奥かな。どうする?」
市来榛斗「しばらく出方を窺って・・・」
市来紅羽「それだと一生出てこなくない? やっぱり先制攻撃でしょ」
市来榛斗「わー待って! 全然準備してないんだから!」
怪物「くっくっく・・・ ノコノコ現れるとは愚かな人間め」
市来紅羽「私、人間じゃないけどね」
市来紅羽「え、やっちゃっていい?」
市来榛斗「紅羽がやると賠償で稼ぎが減るから駄目」
市来紅羽「えー・・・」
市来榛斗「ここは俺が」
市来紅羽「最近私暴れ足りないんだけどー!」
市来碧都「はいはい、紅羽は下がってようねー」
怪物「誰から死ぬか決めたのか?」
市来榛斗「待っててくれたあたり優しいが・・・お前がこの学校の生徒を連れ去り、生命力を吸っていることはわかっている」
市来榛斗「多少なら問題ないが、看過できないレベルになってしまった」
市来榛斗「そういうわけで、ここから消えてもらおう」
怪物「ぐ、ぐわぁぁああ・・・!!!」
市来榛斗「これでよし、と」
市来紅羽「全員で来るまでもない雑魚だったね・・・」
市来碧都「でもあまり強くても困るし、ね?」
市来榛斗「これでそこそこお金もらえるんだからいいの」
市来榛斗「留守番させるとその分もらえるお金が減るんだよ」
市来紅羽「実際は榛兄の一撃で終わったのに、3人分もらうんだ・・・」
市来榛斗「世の中そういうもんなんです」
市来榛斗「もらえるお金減っちゃったら、食卓が寂しいことになるんだよ?」
市来榛斗「紅羽とか、人工血液パックだけで生活してもらうことになるから」
市来紅羽「・・・それは嫌だな」
市来榛斗「でしょ? そういうわけで、あの怪物は3人で力を倒したってことにしよう」
市来碧都「りょーかい。じゃあ無事にやっつけたことだし、帰ろうか」

〇雑踏
  人間と怪異の共生。
  兄妹はその平穏を破る存在を狩ることを生業としていた。
  依頼が来れば怪物を倒し、その報酬と昼間の仕事で得た収入で生活する。
  それが3人の日常だった。
  けれどこの日常を手に入れるまでは、様々な事件があったのだった──。

次のエピソード:1-2「悪魔と吸血鬼」

コメント

  • 私の拙い作品に初のグッドボタンありがとうございます❤️
    😭何しろ始めたばかりで右も左も分からないので💧(大汗)

  • お兄ちゃん、報酬のもらい方めちゃくちゃちゃっかりしてて笑いました笑
    貰えるものを貰うのは大事ですからね!!!
    お食事が血液オンリーにならないためにもしっかり稼いでほしい…←
    みんな種族が違いながらも仲良しきょうだいでほっこりしました(´∀`*)

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