Message In A Bullet(脚本)
〇白
ミカド「臣民に告ぐ」
ミカド「決起せよ」
ミカド「漆身呑炭を解き」
ミカド「聖戦に加われ」
〇荒廃した市街地
呼びかけに応えた者たちにより──
〇荒廃した教会
各地でテロが──
〇渋谷の雑踏
『東側』への報復を求める声は
日に日に高まっています──
〇血まみれの部屋
政府は、暴力による私的制裁を抑制──
〇黒
「どこに隠れやがった!」
「ブチ殺せ!」
〇村に続くトンネル
〇大樹の下
くもり「はぁ・・・はぁ・・・」
風 (ふう)「ん?」
くもり「ひっ」
風 (ふう)「キミは・・・」
風 (ふう)「!」
くもり「あぁ・・・」
風 (ふう)「こっちへ!」
くもり「──!」
〇廃倉庫
〇西洋風の部屋
風 (ふう)「さてと」
くもり「・・・」
風 (ふう)「これあげる」
くもり「え?」
風 (ふう)「キミ、東の人でしょ?」
風 (ふう)「大丈夫だよ」
風 (ふう)「僕の家で匿ってあげるから」
くもり「・・・」
風 (ふう)「さ、食べなよ」
風 (ふう)「新鮮なうちに」
くもり「・・・」
風 (ふう)「・・・」
風 (ふう)「泣くほど美味しい?」
くもり「ん・・・」
風 (ふう)「キミ、名前は?」
くもり「くもり」
風 (ふう)「ヘンな名前〜」
くもり「ッ!?」
〇大樹の下
〇外国の駅のホーム
くもり「ふーちゃん」
くもり「また、いつか会えるかな?」
風 (ふう)「平和になれば──」
風 (ふう)「きっと会えるよ」
くもり「私のこと、忘れない?」
風 (ふう)「うん」
風 (ふう)「白髪に赤い目! 覚えたッ」
くもり「白髪ちゃうわ!」
くもり「プラチナっていうの!」
風 (ふう)「ブラちら?」
くもり「プラチナ!」
風 (ふう)「ブラちら!?」
くもり「ブラちら!」
くもり「はっ」
風 (ふう)「あははっ」
くもり「こいつ・・・」
風 (ふう)「はい」
くもり「あっ」
風 (ふう)「思い出すよ」
〇大樹の下
〇大樹の下
〇大樹の下
〇黒
〇基地の広場(瓦礫あり)
督戦兵「一歩も下がるな!」
督戦兵「退くものは撃ち殺す!!」
私は──
ッ!?
「立ち止まるな!」
くっ──!
〇基地の広場(瓦礫あり)
???「先にいけ!」
兵士「すまん!」
兵士「クソが! やつら、EMPなんか使いやがって!」
???「ダメか」
???「ぐっ!」
???「・・・ッ!」
〇大樹の下
〇黒
「くもり──」
〇基地の広場(瓦礫あり)
くもり「えっ」
風 (ふう)「くもり・・・なのか?」
くもり「え・・・ぁ・・・」
くもり「ぁぁ──」
くもり「ふー・・・ちゃん・・・」
〇兵器の倉庫
リャオ「それでは〜」
ユナ「くもりの生還と──」
リャオ「休戦を祝って──」
「かんぱーいっ!」
くもり「かんぱい〜」
リャオ「お水です・・・」
ユナ「ごめんね、 気の利いたものがなくて・・・」
くもり「いーよ」
くもり「ありがとう、2人とも」
リャオ「さて!」
リャオ「そろそろいっちゃう〜?」
くもり「?」
ユナ「休戦って聞いてからは──」
ユナ「みんな同じようなこと話しててね」
リャオ「戦争が終わったら、 したいことー!」
リャオ「はいっ くもりん!」
くもり「えっ!?」
くもり「いや、ちょっ・・・」
リャオ「うんうん、 なるほど・・・」
リャオ「わかる。 わかるよ、くもりん」
リャオ「同じこと考えてるから!」
くもり「ん?」
リャオ「戦争が終わったら・・・」
くもり「ら〜?」
リャオ「エロいことしたいッ!(女の子と)」
リャオ「もぉーう・・・」
リャオ「めっっちゃしたぁぁあーぁいぃぅッ!!」
くもり「ユナは?」
ユナ「私は・・・」
ユナ「大学に通って医学を修めたいな」
ユナ「看護兵の経験も活かしたいんだ」
くもり「そっか」
くもり「立派だな、ユナは」
リャオ「ユナ先生かぁ・・・エロそう」
ユナ「くもりは?」
くもり「あ・・・」
くもり「私は・・・」
くもり「あっ、ごめん!」
くもり「一応まだ配置についてないと」
くもり「それじゃっ」
リャオ「くもりん・・・」
ユナ「・・・」
〇荒れたホテルの一室
正直、戸惑っている
戦争が終わる
急にそんな──
くもり「あっ」
くもり「きてるな」
これは
レターショット
弾頭に収納されているのは
くもり「ふーちゃん・・・」
〇基地の広場(瓦礫あり)
〇黒
〇基地の広場(瓦礫あり)
くもり「信号弾」
くもり「撤退か・・・」
風 (ふう)「待って!」
くもり「・・・」
風 (ふう)「くもり」
風 (ふう)「行っちゃダメだ」
くもり「え?」
風 (ふう)「きみと戦いたくない」
くもり「ふーちゃん」
風 (ふう)「こんな形だけど」
風 (ふう)「また、きみに会えた」
くもり「・・・」
風 (ふう)「話したいことがたくさんあるんだ」
風 (ふう)「だから・・・」
くもり「ダメ──」
くもり「捕虜になることはできない」
くもり「それをしたら、 仲間が処刑されるの」
風 (ふう)「そんな・・・」
くもり「私、ふーちゃんに会えてよかっ──」
くもり「・・・」
くもり「ふーちゃんは、死なないでね」
くもり「・・・さよなら」
〇基地の広場(瓦礫あり)
くもり「!?」
風 (ふう)「敵は殺す」
くもり「ふーちゃん!?」
風 (ふう)「ごめん、冗談だよ」
くもり「?」
風 (ふう)「これを撃った」
風 (ふう)「レターショットだよ」
くもり「えっと」
くもり「伝令用の・・・」
風 (ふう)「言ったろ?」
風 (ふう)「話したいんだ」
風 (ふう)「無線はオシャカだけど、これなら・・・」
くもり「まさか」
風 (ふう)「うん」
風 (ふう)「狙撃銃で文通だ──」
風 (ふう)「内緒でね」
くもり「ふふっ」
くもり「バレたら」
くもり「銃殺刑だよ」
〇荒れたホテルの一室
くもり「よし、書けた」
私は銃を構えると
彼のいる場所を狙い
くもり「ふふっ」
返事が待ち遠しい
くもり「・・・」
くもり「戦争が終わったら・・・か」
くもり「私は──」
〇宮殿の門
〇謁見の間
ミカド「して」
ミカド「調印までいかほどの猶予か?」
タツモト「西側は、72時間以内にサインをと」
ミカド「タツモト」
タツモト「はっ」
ミカド「朕は国家である」
タツモト「いかにも」
ミカド「ゆえに」
ミカド「戦争は勝って終わらねばならん」
タツモト「・・・」
ミカド「だが、 朕は後世──」
ミカド「仁君として名を残すことにした」
タツモト「・・・」
ミカド「タツモト」
ミカド「あとは任せる」
ミカド「よいな?」
タツモト「承知仕りました」
ミカド「ふふっ」
〇城の会議室
タツモト「・・・」
タツモト「中部戦線全部隊に通達せよ──」
武官「御意」
〇基地の広場
〇荒れたホテルの一室
くもり「あっ」
くもり「きたきた」
くもり「・・・」
くもり「だーからっ!」
くもり「プラチナいうてるやろ!」
くもり「ブラちら、ブラちらって・・・」
くもり「なんも変わってないな〜」
くもり「私は──」
くもり「変わっ・・・」
くもり「・・・って・・・」
そうだ
〇血しぶき
もう、私は──
〇荒廃した市街地
〇荒廃した街
〇黒
〇黒
立派な
人殺しだ
くもり「ッ!」
くもり「だって」
くもり「あいつらが・・・」
くもり「西の奴らが先に──」
〇島国の部屋
くもりの母「くもり、逃げるのよ!」
くもり「お母さん・・・」
暴徒「うはっ、女いんじゃーん」
くもりの母「はやくっ!」
くもり「あぁ・・・」
くもりの母「ッ!」
暴徒「ってぇな!」
暴徒「お前らもこいよ!」
暴徒「おっ、ロリ発見〜」
暴徒「ブチ犯すわー」
くもり「──!!」
「ッ!」
くもりの母「あぁぁっ──!!」
〇黒
くもり「お母さん・・・」
くもり「私は──」
〇王宮の入口
ミカド「戦え」
ミカド「それこそが弔いぞ」
「万歳ッ!」
「万歳ッ!」
くもり「万歳──!」
〇手
くもり「そうだ」
くもり「間違ってない」
くもり「西の奴らは殺す──」
くもり「ころ・・・」
くもり「す・・・」
くもり「・・・」
くもり「ぁ・・・」
〇大樹の下
〇荒れたホテルの一室
くもり「ふーちゃん」
くもり「・・・」
私にはもう、自分すら見えなくて
くもり「ふーちゃん・・・」
お願い
どうか
どうか
くもり「私を、見つけて──」
〇黒
私は──
〇中庭
戦って
殺して
〇基地の倉庫
最期は
殺されて
〇大樹の下
それで
いいと思ってた
〇黒
でも
いまは
〇荒れたホテルの一室
くもり「・・・」
くもり「あっ」
〇丘の上
くもり「半分こ」
風 (ふう)「いつも頭の方くれるよね」
くもり「?」
風 (ふう)「好きなの?」
風 (ふう)「下半身」
くもり「あんこ多い方あげたの!」
風 (ふう)「え?」
くもり「え? ってなんだよ」
〇荒れたホテルの一室
くもり「・・・」
くもり「バカ」
くもり「他にもっと・・・ないの?」
でも
くもり「ふーちゃん、きっとモテへんやろな」
ありがとう
くもり「ふふっ」
くもり「無駄な絵のうまさ」
私はまだ
笑うことができる
くもり「・・・」
この返事は
くもり「会って渡そう」
リャオ「くもりん!」
リャオ「ユナが!」
〇ビルの地下通路
「そんなの、従えません!」
〇兵器の倉庫
くもり「ユナ、よせ!」
〇兵器の倉庫
ユナ「休戦はっ──」
〇兵器の倉庫
督戦兵「総員」
督戦兵「戦闘配置──」
〇巨大研究所
〇武器庫
風 (ふう)「これじゃなくて」
風 (ふう)「いつか本物の花を」
風 (ふう)「僕にできるかな」
風 (ふう)「つい照れ隠しで──」
〇黒
〇大樹の下
〇大樹の下
〇西洋風の受付
歴史的瞬間です──
いま、調印文書が交わされました
〇基地の広場(瓦礫あり)
報道記者「最後の戦場となった、中部戦線よりお伝えします」
報道記者「休戦に不満を抱く軍指導部の命令で」
報道記者「東軍は総攻撃を敢行し」
報道記者「全滅──」
兵士「まだ危険ですから、下がって!」
〇大樹の下
〇基地の広場(瓦礫あり)
風 (ふう)「くもり」
風 (ふう)「僕は諦めないよ」
風 (ふう)「絶対」
風 (ふう)「に・・・」
風 (ふう)「えっ」
風 (ふう)「いや、違う」
風 (ふう)「違う・・・」
風 (ふう)「・・・」
〇黒
涙が出ています・・・
凄く心が揺さぶられるお話でした・・・
最後悲しさを予感させるお話ですが、手紙を受け取ったくもりが、どうか自分を見つけられますようにと思いました。
素晴らしい作品でした。ありがとうございました。(´;ω;`)
「オート機能OFF推奨」
あまり見ないタグと思いつつ、自動を切って読み進めましたが……読後、実感しています。
セリフと状況の一つ一つを噛み締めて読む物語でした。
途中くもりの口から関西弁が出て、
「もしや日本の分割統治計画を題材に?」と想像を掻き立てられるなども。
そしてレターショット。殺伐とした戦場で、僅かな日常を感じられ……素敵な作品でした。
短いストーリーの中で濃密なお話でした。戦争という哀しい現実の前で生きる男女の切なさ、言葉運びもとても心地よく最後の余韻も素晴らしいものでした。ブラちらという言葉遊びも、作者のこだわりが見えてとても良かったです。