探偵と助手の出会い(脚本)
〇貴族の応接間
サンダルフォン「おい!いつまで調べるつもりだよ」
コウタロウ「事件が解決するまでだよ」
サンダルフォン「ったく・・・・・・勘弁してくれよ。警察が来るの明日の朝なんだろ?」
コウタロウ「だから寝てていいって」
サンダルフォン「んなわけに行くかよ。一応まだ容疑者だぞ?お前は」
コウタロウ「いっそ交代制でもいいぞ」
サンダルフォン「それだけはごめんだ。残り2人は女じゃねぇか。・・・一応殺人犯の可能性があるオメーと2人きりにできるか」
コウタロウ「お優しいことで」
サンダルフォン「大体、さっきから調べてばっかだけど、なんかわかったのか?」
コウタロウ「うーん。これと言ったものはないな」
コウタロウ(そう。せっかく魔法痕を探知できる「裁判の眼」を手に入れたのに、現場には魔法痕がなかった。しかし・・・犯人は予想できる)
コウタロウ(まず状況を整理すると、あの部屋は窓ガラスが付いていた。が、その全てが内側から割れていた)
コウタロウ(割った理由は強盗犯による殺人に見せるため。要するに部外者である俺に罪を被せる気だったんだろう)
コウタロウ(まぁ、そのせいで遺体もびしょ濡れだったわけだが。・・・しかし妙だ)
コウタロウ(遺体は、やけに背中が濡れていた──)
コウタロウ(濡れていたといえばもう一つ気になることがある。入り口側がやけに濡れていた。水たまりができるほどに)
コウタロウ(おそらく密室トリックの謎は濡れた扉側の床と、あれさえ見つければなんとかわかりそうなんだが・・・証拠が薄い)
コウタロウ(これならサンダルフォンや他の人間にも犯行が可能だ。しかし、有力候補になるのはやはり、いいや、的を絞るにはまだあれがないと)
サンダルフォン「なにぶつぶつ言ってるんだ?」
コウタロウ「ああ、悪い。一旦考えをまとめてたんだ」
サンダルフォン「なんだよ・・・容疑者の検討もつかないのか?」
コウタロウ「いや、それはついてるよ」
サンダルフォン「マジかよ!誰だ?」
コウタロウ「それは言えない。確かに“あの子”が怪しいのは間違いないが、証拠が薄すぎる」
サンダルフォン「・・・さっき冷凍室を調べていたのと何か関係あるのか?」
コウタロウ「察しがいいな。その通り。ヒントは氷だよ」
サンダルフォン「氷か・・・確かにワインなどに入れる氷が全部無くなってたが・・・」
コウタロウ「死体の背中が濡れていたのは、その氷のせいだと思う」
サンダルフォン「氷?死体が倒れていた背中側に氷を敷き詰めたってのか?」
コウタロウ「そう。そうやって死体を冷やすと、死亡推定時刻を遅らせることができるんだよ」
サンダルフォン「へー・・・食材の鮮度を保つ的な意味か?」
コウタロウ「ま、まぁそういうことだよ。・・・例えはなんだか不謹慎だけど」
コウタロウ「・・・おそらく実際の犯行時刻は事件発覚より7〜8時間前。氷のトリックで死体を冷やした後、同じく氷で密室を作った」
サンダルフォン「ってことは・・・犯人はアイシスか?」
コウタロウ「そうとは限らない。魔法痕の問題がある」
サンダルフォン「ああ、そうか・・・確か魔法痕は俺がお前に言われてやった雷魔法しかなかったのか」
コウタロウ「ああ。だがアイシスさんが容疑者候補から外れたわけじゃなかった。・・・冷凍室を見るまではな」
サンダルフォン「そうか、冷凍室から氷を持ち出し、それを密室や遺体のトリックに使ったわけだな」
コウタロウ「もしくは、そう思わせるために氷を破棄したのか。まぁその場合はどこか外に捨てられてるだろうから、もう見つからないけど」
サンダルフォン「つまりは、容疑者はフレアと・・・お、俺かぁ!?」
コウタロウ「俺の推理が正しければね」
サンダルフォン「お、俺は違うからな!ちなみにフレアも・・・多分違う!」
コウタロウ「安心しろ。氷魔法を使わなかっただけで、アイシスさんの容疑が完全に拭えたわけじゃない・・・それに・・・」
コウタロウ(そう・・・何か見落としてるんだ。このトリックを成立するためにはもう一つ、大きなポイントがある)
コウタロウ(それはおそらく、事件の後、犯人が持ち去ったもの。密室トリックを成立するために、犯人が見せた大きな隙・・・)
コウタロウ(それはおそらく・・・この屋敷の中に・・・)
アルト「・・・・・・死ね」
コウタロウ「いてっ!」
サンダルフォン「あ、アルトちゃん?!どうしてここに!」
アルト「うるさい・・・こいつが殺人犯なんでしょ?!なんで自由にしておくのよ!・・・こいつが・・・こいつがお父さんを!!」
コウタロウ「・・・っ!いってー・・・・・・」
サンダルフォン「お、おい。大丈夫か?」
コウタロウ「あたりどころが良かったのか、脳震盪も起きてないよ。意識もはっきりしてる・・・ちょっとフラッとくるけど」
サンダルフォン「いや、でっけータンコブできてるけど・・・」
コウタロウ「ま、タンコブは頭部外傷のうち軽度で内出血の場合だからな。むしろできない方が怖いこともある」
アルト「くそっ!さっさと死ね!このクズ!」
コウタロウ「・・・君、確かエインズさんの娘さんだったよね。そうか・・・お父さんのこと大好きだったんだね」
アルト「うるさい!あんなやつ大っ嫌いだ!いっつも理屈ばっかり捏ねて研究バカで!元の世界に戻ることしか考えてない!!」
アルト「私の誕生日なんか昨日まで忘れてたくらいのどうしようもないクソ親父!あんなやつ死んで良かった!せいせいする!!」
アルト「・・・そう・・・死んで当然なんだよ・・・なのに・・・」
アルト「なんでこんなに悔しいんだよ・・・。もうわけわかんない・・・頭の中ぐちゃぐちゃになってんだよ」
コウタロウ「アルトちゃん・・・お父さんのこと、好きだったんだね」
アルト「大っ嫌いだ・・・あんなクソ親父・・・ぐすっ・・・」
サンダルフォン「アルトちゃん・・・今の君に何を言ってもダメかもしれないけど・・・エインズさんはアルトちゃんのことを誰よりも愛していたよ」
アルト「嘘だっ!」
サンダルフォン「嘘じゃないさ・・・今回の誕生日パーティーだって、エインズさんが計画したものだ。しかも何ヶ月も前に・・・」
アルト「え?」
サンダルフォン「だが・・・エインズさんは、最近急激に物忘れがひどくなった・・・彼はその症状を「アルツハイマー」と言っていた」
サンダルフォン「だが、この世界ではアルツハイマーという病気もなければ、その発見すらされていない・・・」
コウタロウ(無理もないだろう。アルツハイマーは俺がいた世界で1906年に報告された病気だ)
コウタロウ(この世界は、推測するに中世くらいと見て間違いない。魔法が発展しているところを見ると、完全に同一視はできないが・・・)
コウタロウ「エインズさんは、ただ研究をしていたようには見えない。少なくとも自分が元の世界に戻るために動いていたわけじゃないと思う」
アルト「何を根拠に・・・」
サンダルフォン「・・・そう。お前の言う通りだ」
アルト「・・・え?」
コウタロウ「エインズさんはこの世界のことを「この異世界と、現実世界は、表裏一体」
コウタロウ「少なくとも私にとっては死後の世界」と文献に残していた──らしい。サンダルフォンが言うには」
サンダルフォン「つまり、エインズさんが元の世界に戻る方法は最初からなかったんだ」
サンダルフォン「・・・あの人がこの世界にやってきたのは50年も前らしいからな。当時18歳。もはや、あの人がいた世界に戻っても仕方ないしな」
コウタロウ「しかし・・・異世界人の中には、死せず魂だけ異世界に飛ばされるケースも存在する。その場合、現実世界では植物人間状態となる」
コウタロウ「まぁ、難しいことを省けば、現実世界に戻る体があれば現実世界に戻る方法があるかもしてない。その研究資料が大量にあった」
サンダルフォン「・・・そう・・・あの人はアイシスのために研究を続けてたんだ」
コウタロウ「そうか──アイシスさんが・・・転生者だったのか」
サンダルフォン「そうだ・・・あいつは、転生してから元の世界に帰ることばかり考えていた。どうも、通学途中で急に意識を失ったらしくてな」
サンダルフォン「自分がなぜ死んだのかすらわからないらしい」
コウタロウ「つまり・・・アイシスさんを現実世界に戻すために、研究に没頭していたわけだな」
アルト「じゃあ・・・私は・・・」
サンダルフォン「ああ・・・間違いなく、愛されていたんだよ・・・」
アルト「うぅ・・・ぐすっ・・・お父さん」
コウタロウ「アルトちゃん・・・俺は・・・君のお父さんの仇を討つよ」
アルト「でも・・・私・・・」
コウタロウ「・・・君のおかげだ・・・君が最後のピースを持ってきてくれたおかげで、全ての謎は解けた」
サンダルフォン「え!? お、おい。最後のピースって・・・まさか・・・」
コウタロウ「間違いない・・・犯人はあの人だ」
〇貴族の応接間
フレア「あーあ。やっぱあんまり眠れなかったわ・・・」
アイシス「結局警察は到着せず、あいつは野放しになったままだしね」
アルト「おはよう。フレアさん。アイシスさん」
フレア「ああ、アルトちゃん。おはよう」
アイシス「昨日は大丈夫だった?ちゃんと眠れた?」
アルト「ええ、わりと眠れました」
フレア「フレアちゃんはしっかり者ね・・・」
アイシス「本当だわ。さすがあの人の娘ね」
コウタロウ「おはようございます」
フレア「──って、え!?なんでアンタ一人なのよ」
コウタロウ「僕が徹夜してたら、サンダルフォンさんが眠たいから一人で捜査しろって、客室で寝てしまいまして」
フレア「・・・あのバカ!監視の意味ないじゃない!」
ぐあああああああぁぁぁぁ!!!
アイシス「な、なに?!今の悲鳴!!」
フレア「アンタ・・・やっぱサンダルフォンに何かしたんじゃないの!?」
コウタロウ「なにもしてませんよ!と、とにかくいきましょう!事件現場の物置きです!」
〇黒背景
フレア「え?鍵が閉まってる!」
アイシス「そんな・・・」
アルト「鍵は私が持ってるわ!」
〇地下室(血の跡あり)
フレア「サンダルフォン!大丈・・・・・・ぶ?」
サンダルフォン「よう!フレア。そんなに俺のこと心配してくれたのか?」
フレア「アンタねぇ・・・」
アイシス「冗談にしても趣味が悪いわ!」
サンダルフォン「わりぃわりぃ。・・・だが、これで証明されたな」
アイシス「は?」
コウタロウ「そう、これが密室のトリック。そして・・・本当の事件発覚時の現場というわけだ」
コウタロウ「そしてこのトリックが可能性だったのは・・・たった一人」
コウタロウ「犯人は・・・アンタだよ!アイシスさん!」
アイシス「え・・・・・・?!わ、私?」
フレア「アイシスが犯人って・・・どうして!?アイシスはエインズさんを一番尊敬しているのよ!?」
コウタロウ「そう・・・正直動機はわからない。だが、集めた証拠は全てアイシスさん。あなたが犯人だと示している」
アイシス「いいわ。何を根拠に言ってるのか。教えてもらいましょうか」
コウタロウ「しらばっくれんな。この現場を見た瞬間、アンタは焦ったはずだ」
アイシス「うっ!」
コウタロウ「まず・・・アンタはこの屋敷でエインズさんと俺を出迎えた。エインズさんのローブを洗濯場に持っていったのはアンタだろう?」
アイシス「・・・・・・」
コウタロウ「屋敷に招き入れたアンタは、エインズさんに毛布でも持ってくるよう頼まれたのもアンタだろうな」
アイシス「何を言って・・・」
コウタロウ「だが、毛布といっしょにアンタは氷を用意した。事前に作っておいた死体を冷やすための氷と、エインズさんを殺すための氷のナイフ」
サンダルフォン「そういえば、凶器は見つかってなかったな。死体を冷やす氷と一緒に溶けたのか・・・・・・」
コウタロウ「そういうこと。氷を事前に作っておけば、魔法痕も残らないからな」
コウタロウ「そしてエインズさんを背中から刺したアンタは、窓ガラスを割った。理由は氷を誤魔化すためだ」
コウタロウ「あの日は大雨が降っていた。俺が目を覚ました時には止んでいたが、ほとんど嵐だ」
アイシス「──アンタが割ったんでしょ?」
コウタロウ「それはない。部屋に侵入するためなら、わざわざ全ての窓ガラスを破る必要性はない。つまり、空き巣の犯行ですらないわけだ」
コウタロウ「死体を冷やし、死後硬直を遅らせる仕掛けを作ったアンタは、こいつを用意した」
アルト「え?それ・・・昨日アンタを殴った木の棒じゃない」
フレア「ええ!?殴った!?」
コウタロウ「ま、まぁその話は置いといて・・・ともかく、こいつが最大の証拠なんだ」
コウタロウ「この木の棒。アルトちゃんはどこで拾ったの?」
アルト「ゴミ捨て場にあったのを適当に拾ってきただけよ」
コウタロウ「そう・・・アンタにとっては最大の不運だったな。アイシスさん」
アイシス「な・・・なんのこと?」
コウタロウ「これにはくっきりと・・・魔法痕が残ってる!!」
アイシス「なっ!なんでわかんのよ!!」
コウタロウ「裁判の眼・・・どうやらこれが俺の能力見たいでね。魔法痕を探知できる能力らしい」
アイシス「なんですって!」
コウタロウ「そう、密室トリックは氷の棒と、この木の棒が仕掛け」
コウタロウ「角ラッチ鍵の仕掛けは至って単純。鍵が回ると、金属棒がスライドし、鍵が閉まるってものだ」
コウタロウ「しかし、案外これが密室を作るのには大変でな。単純に木の棒を当てるだけでは、力が足りず、鍵が閉まりきれない」
コウタロウ「命中率を上げるためのレールに、重量を上げるためのハンマー」
コウタロウ「そこまで精巧な仕掛けを用意することは冷凍室の設備だけじゃ無理だ」
コウタロウ「だから・・・木の棒のみにその仕掛けを仕組んだんだ。後からこっそり回収できるようにな」
サンダルフォン「アイシスは、氷の魔法が得意だった。妙に複雑な仕掛けを作ったこともあったよな。氷のギアなんか使って」
コウタロウ「その証拠が見つかってしまえば、犯人がバレてしまう。そこでアンタは別の犯人を仕立て上げた。まぁ俺の無実は証明されたけどな」
コウタロウ「そして・・・エインズさんの娘によって・・・最大の証拠が現場に戻ってきた!!」
コウタロウ「アンタは親子の絆を侮ったんだよ!!」
アイシス「・・・・・・」
サンダルフォン「・・・アイシス。俺だってまだ半信半疑だ。証拠は十分なのに・・・お前の心がわからねぇ」
アイシス「・・・・・・」
フレア「アイシス・・・お願い。違うなら違うって言って」
サンダルフォン「元の世界に戻りたかったんじゃねぇのか・・・なぁ!お前が殺す理由なんて」
アイシス「元の世界・・・?うふふ。そんなのもうどうでもいいのよ」
アイシス「私には・・・エインズ様が全てなの」
フレア「あ・・・アイシス・・・?」
アイシス「エインズ様は・・・私の全てだった・・・。彼の愛が欲しい・・・全てを支配してしまいたい・・・」
サンダルフォン「ぐっ・・・」
フレア「そ・・・それならどうして・・・」
アイシス「わからないの?ああ、そうか。あなた達は「アルツハイマー」をよく知らないのね」
コウタロウ「やはり、それが動機か」
アイシス「うふふ・・・そう。アルツハイマー型認知症は、不治の病らしいわ」
コウタロウ(その根本的な治療法は、現実世界でも判明していない)
コウタロウ(エインズさんが研究に没頭していた理由は、自身がアルツハイマーに脳を蝕まれるまえに、彼女を元の世界に帰したかったから)
アイシス「このままでは、あの人は何もかもを忘れていく・・・自分の身内すら、まともにわからなくなる」
サンダルフォン「そ、そんな病気があるのか?」
コウタロウ「・・・アルツハイマーは脳組織の萎縮によるものだからな。80歳を超えた老婆が、妄想や物忘れが起きやすいのと一緒さ」
アイシス「そんなの耐えられるわけないでしょ!」
アイシス「だから・・・そうなる前に殺してあげたの」
アイシス「私を愛してくれるうちに、氷の中で眠らせてあげたかった!」
コウタロウ「・・・違うだろ」
アイシス「何が違うというの?」
コウタロウ「エインズさんは、あなたには惚れてなかったはずだ。妻や娘のことを愛していた」
アイシス「うふふ・・・そう・・・あの人は恋心が愚直だから」
アイシス「運命の人が現れても、年齢が離れてしまうことはある。だからあの人には私の全てをあげたの・・・なのに・・・」
アイシス「あの人は一度も私に振り向いてくれなかった!愛してくれなかった!」
アイシス「そして・・・その姿が、愛おしかった・・・あんなババァに渡してやるものか!そう思った」
フレア「く・・・狂ってるわ!」
アイシス「そう・・・愛って狂おしいものなの・・・愛して愛して愛してその屍すら愛おしい!!」
アイシス「あの女にそれができる!?いいえ、私だから愛せる・・・愛って・・・こういうものでしょ?」
アルト「・・・・・・違う」
アイシス「あなたみたいなお子様にはわからないわよ」
アルト「お父さんは、仕事ばっかで、家庭を顧みない最低な男だった」
アルト「だけど、お母さんはずっとお父さんを愛していた!研究に没頭するお父さんを一番近くで優しく見ていた!」
サンダルフォン「愛っつーのは、見て感じるもんでも、語るもんでもねーよ。ただ与えるもんだ。テメェは、エインズさんに求めるばっかじゃねーか」
フレア「そう・・・美術品を眺めているだけの上っ面な愛情よ。そんなの愛じゃない。ただのおぞましい独占欲よ!」
アイシス「ふふふ・・・理解されなくてもいいわ」
アイシス「どうせみんなここで死ぬんだから!」
サンダルフォン「しまっ──!!」
フレア「いつのまに、体が氷漬けに!」
アイシス「あは・・・あははは!!」
アイシス「美術品・・・そう、そうだわ!!そうなればいい!!」
アイシス「みんなエインズ様と一緒に氷の中で眠らせてあげる!!美しい氷像になればいい!!」
フレア「アイシス・・・うっ!なんて力・・・炎が出せな・・・!!」
〇黒背景
「俺は、魔術師でも預言者でもねーけどよ」
〇地下室(血の跡あり)
アイシス「がはっ──!!」
コウタロウ「異常者の行動くらいは、簡単に推理(よげん)できんだよ・・・」
サンダルフォン「あいつが行動する前に動いてたのか?」
フレア「見事なストレート・・・容赦なしね。それも何かの能力なの?」
コウタロウ「言ったろ、俺は預言者でもなんでもない・・・。ただ・・・見知らぬ命の恩人を殺したコイツをぶん殴りたかっただけさ」
「コイツが・・・」
アルト「コイツがお父さんを・・・」
アルトちゃんは、誰も止める間もなく、ナイフを懐から取り出した
アルト「うわあああああぁぁぁぁ!!」
コウタロウ「っ!」
コウタロウ(危なかった・・・なんとか手で受け止められた)
アルト「っ!!はなせ!!この女がお父さんを・・・お父さんをぉ!!」
コウタロウ「殺しちゃだめだ!!」
アルト「うるさい!!こんなクズ生かしておいちゃダメだ!!殺してやる!!」
コウタロウ「君が殺せばお父さんが悲しむ!!」
アルト「うっ・・・うぅぅ・・・!!」
コウタロウ「だから、キミだけは誰も殺しちゃダメなんだ。復讐は・・・警察に任せよう。キミが手を汚しちゃダメだ!!」
アルト「う・・・あぁ・・・うあああああぁぁぁん!!」
〇黒背景
「──それが、先生との最初の出会いっす」
「あれから、私は何事も前向きに生きようと考え、当時ハマってた恋愛小説の主人公のように、性格を変えた」
「先生のように強くなれるかは・・・わかんないっすけどね」
〇ヨーロッパの街並み
リンド「こぉらぁ!!いつになったら家賃払うんだい!!」
コウタロウ「すすす、すみません!!来月には必ず!!」
サンダルフォン「なんだ?あいつまた家賃払わなかったのか・・・」
フレア「呆れた・・・。エインズさんの事件の時のかっこよさはどこへいったのやら・・・」
アルト「すみませんっす・・・うちの先生が」
フレア「アルトちゃんが謝る必要がどこにあるのよ。ってか謝るべきはあの先生でしょ」
サンダルフォン「アルトちゃん・・・変わったな」
アルト「まぁ、あの先生が教えてくれたっすから」
サンダルフォン「あいつが?」
アルト「先生は自分が疑われてたのに、絶対諦めなかった。最後まで立ち向かった」
アルト「だから私も、辛い時でも前向きに生きようって・・・そう思えたっす」
サンダルフォン「・・・そっか。それがいいよ」
フレア「うん。それに・・・今のアルトちゃんの方がかわいいよ」
アルト「えへへ・・・ありがとうっす」
サンダルフォン「しっかし・・・あのバカを見習うってのは、正直感心していいものかね」
アルト「はは・・・その点は同感っす」