空白のひとコマ

遠藤彰一

エピソード13(脚本)

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遠藤彰一

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  午前4時19分──

〇漫画家の仕事部屋
宮本義和「先生が盗作したんだ。僕の話を。 断りもなしに」
小田正人「嘘だ。先生がそんなことするはずない」
宮本義和「木嶋真也という男は、画は上手いけど、ストーリーを考えることがとにかく苦手なんだ」
小田正人「先生が、俺と一緒・・・」
長谷川清香「・・・・・・」
小田正人「でも、『報い人』は先生の自伝じゃないですか」
小田正人「だったら、今回のヒットは自分の力で──」
宮本義和「君なんでしょ? 清香ちゃん。 ストーリーを書いたの」
小田正人「えっ!?」
長谷川清香「・・・・・・」
宮本義和「自伝とは言え、脚色は必要だ。 あれだけの話を先生が作れるとは思えない」
石黒理「そうなの? 長谷川さん」
長谷川清香「・・・・・・」
小田正人「清香さん。本当のことを教えてください」
長谷川清香「・・・そうですけど」
小田正人「そんな・・・」
小田正人「じゃあ、先生は人の作品でデビューして、人の書いた話でヒットしたってことですか?」
長谷川清香「宮本さん。 だからと言って、お金を取るなんて犯罪です」
宮本義和「恐喝なんかじゃない!」
宮本義和「僕には原作者として原稿料や印税をもらう権利がある」
小田正人「・・・嘘だ。 先生にかぎってそんな・・・」
石黒理「なぜ黙ってたんだ」
宮本義和「先生が誰にも言わないでくれって土下座してきたからですよ」
小田正人「そんな・・・じゃあ、『報い人』の打ち切りは清香さんのせい?」
長谷川清香「なんでそうなるんですか」
小田正人「だって、終盤は明らかにストーリーのクオリティ落ちてるじゃないですか」
長谷川清香「・・・・・・」
宮本義和「別れたんでしょ」
小田正人「!!」
宮本義和「それで、途中から先生一人で描くようになった」
宮本義和「そんなとこでしょ?」
長谷川清香「・・・・・・」
宮本義和「どちらにせよ、ストーリーの品質が落ちたのは清香ちゃんが原因だね」
長谷川清香「止めてください。 別れたのは先生が原因なんですから」
宮本義和「その原因ってのは何?」
長谷川清香「そんなのどうでもいいじゃないですか」
石黒理「いや、重要だよ」
長谷川清香「・・・・・・」
小田正人「先生は、清香さんと別れたショックで自殺を?」
長谷川清香「違います。それは関係ないです」
宮本義和「そうとは言い切れないよ」
長谷川清香「言い切れます」
長谷川清香「先生の悩みの種は、漫画家を辞めるかどうかということだったんですから」
小田正人「でも、その原因は漫画が打ち切りになったからなんですよね?」
宮本義和「じゃあ、お金は関係ないね。 僕のせいじゃない」
石黒理「私のせいでもない」
石黒理「打ち切りの原因は長谷川さんが原作を降りたからだろう」
長谷川清香「私のせいではありません!」
宮本義和「いや、清香ちゃんだよ」
石黒理「ああ、そうだ。長谷川さんのせいだね」
長谷川清香「違います!」
「違わない!」
小田正人「まあまあ、みんな。落ち着いて」

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