みがわり♡ぽえむ

香久乃このみ

秘密のお役目(脚本)

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〇名門校の校門(看板の文字無し)

〇おしゃれな廊下
女子生徒「ねぇ、『うそつきフィアンセ』読んだ?」
女子生徒「読んだ読んだ! 更新が待ち遠しいよね」
女子生徒「手元に持っておきたくて、 書籍版買っちゃった」
女子生徒「私はコミックス派! 夢守ぽえむ先生の作品、いいよね!」
  現役女子高生作家、夢守ぽえむ。
  代表作『うそつきフィアンセ』
  最近、 学内はこの話題で持ちきりだ。
  共感できる主人公、
  理想のイケメン、
  心震わせる繊細な心理描写、
  そして、甘酸っぱい恋模様。
  私たち年頃の少女の恋愛の理想が
  その作品には詰まっているらしい
鷹峰小百合(くだらない)
  世界経済の一端を担う大企業の
  社長の娘として生まれた私に
  甘い恋を夢見るいとまなどない。
  どうせ、
  鷹峰グループの利益に繋がる相手との
  お見合い結婚ルート一択なのだから。
鷹峰小百合「あなたたち」
「鷹峰さん!」
鷹峰小百合「先生に見つからないようにね。 学業に関係ないものは没収されますよ」
女子生徒「あっ、はい!」
女子生徒「気を付けます!」

〇屋根の上

〇高級一戸建て

〇シックな玄関
鷹峰小百合「ただいま戻りました」
鷹峰恵里佳「お帰りなさい、小百合。 お父様が部屋でお待ちですよ」
鷹峰恵里佳「大切なお話があるそうです」
鷹峰小百合「お父様が?」
鷹峰小百合(お見合いの日取りでも 決まったのでしょうか)

〇書斎
鷹峰小百合「お父様、お呼びでしょうか」
鷹峰宗一郎「お帰り小百合」
鷹峰宗一郎「早速だが次の日曜、 お前に出てほしいイベントがある」
鷹峰小百合「イベント?」
鷹峰小百合(お見合いではありませんでしたか)
  それならばこれまでも、
  幾度か父の代理を務めたことがある。
鷹峰小百合「イベントとは、一体どのような」
鷹峰宗一郎「うむ、ライトノベル作家 夢守ぽえむのサイン会に出てほしい」
鷹峰宗一郎「夢守ぽえむとして」
  なんて?
鷹峰小百合「聞き間違いでしょうか」
鷹峰小百合「今私に、作家の夢守ぽえむとして サイン会に出ろとおっしゃいました?」
鷹峰宗一郎「言った」
鷹峰小百合「どういうことでしょうか」
鷹峰宗一郎「夢守ぽえむは、私だ」
鷹峰小百合「・・・・・・」
鷹峰小百合「ご説明を」
鷹峰宗一郎「わかった」

〇豪華な社長室
  知っての通り、私は鷹峰家の
  入り婿として今の地位を得た。
  その立場に恥ずかしくない業績を
  上げてきたと自負をしている。

〇綺麗な港町
  従業員のため、会社のため、
  そして世界経済のため、
  私は尽力してきた。

〇東京全景
  だがストレスが限界値に達したある日、
  ふと思った。
  私が私のために、何かする時間があっても
  いいのではないかと。

〇書斎
  そして心赴くまま
  魂の導くままに小説を書いた。
  夢守ぽえむを名乗って。
鷹峰宗一郎「結果、バズって書籍化された」
鷹峰小百合「・・・・・・」
  死に物狂いで書籍化目指す
  全国の人間に謝れ。
鷹峰小百合「夢守ぽえむは、 現役女子高校生作家という 触れ込みですが」
鷹峰宗一郎「自由にものを書くため、 私は自由の象徴をまとった」
鷹峰小百合「それが『女子高生』と」
鷹峰宗一郎「そうだ」
鷹峰小百合「女子高生なめないでください」
鷹峰宗一郎「すまない」
鷹峰小百合「そのお役目、お断りいたします」
鷹峰小百合「お父様はこの機会に 正体を明かすべきです」
鷹峰宗一郎「そうはいかん」
鷹峰宗一郎「私は鷹峰グループの代表取締役だ」
鷹峰宗一郎「夢守ぽえむという立場は、 周囲に親しみを与えるかもしれん」
鷹峰宗一郎「だがそれは、 時に侮られる遠因となるだろう」
鷹峰宗一郎「従業員200万人以上を抱える 企業のトップが、 うかつな振る舞いをしてはならない」
鷹峰宗一郎「私は厳めしく隙のない存在として にらみを利かせなくてはならんのだ」
鷹峰宗一郎「あと、ネット炎上怖い」
鷹峰小百合「それが本心ですね」
鷹峰宗一郎「そういうわけだ、小百合」
鷹峰宗一郎「鷹峰グループの従業員200万人を 路頭に迷わせぬためにも、」
鷹峰宗一郎「お前には『夢守ぽえむ』に なってもらわねばならん!」
鷹峰小百合「お父様・・・」
鷹峰恵里佳「あなた、今の話は本当ですの?」
鷹峰宗一郎「恵里佳、聞いていたのか」
鷹峰恵里佳「・・・・・・」
鷹峰恵里佳「この鷹峰恵里佳の夫が 『夢守ぽえむ』・・・!」
鷹峰小百合(お母様・・・!)
鷹峰恵里佳「初めまして、 えりりん@ユウくんの部屋の壁になる です」
鷹峰宗一郎「! えりりんさん!?」
鷹峰小百合(え)
鷹峰宗一郎「あ、いつもSNSで熱のこもった感想を ありがとうございます」
鷹峰宗一郎「初めまして、でゅふ」
  夫婦ですよね?
鷹峰恵里佳「大ファンです、ふひっ。 夢守先生、握手してください」
鷹峰宗一郎「は、はい。なんか緊張しますね」
  連れ添って20年ですよね?
鷹峰小百合「お母様、 お父様のファンだったのですか」
鷹峰恵里佳「違います、 夢守ぽえむ神のファンです」
鷹峰小百合(神)
鷹峰宗一郎「まさか、SNSでやり取りしていた えりりんさんが恵里佳だったとは」

〇SNSの画面
  夢守ぽえむ:
  更新したぽえん♪
  みんな読んでほしいぽえん♪
  えりりん@ユウくんの部屋の壁になる:
  待ってました!
  はぁ、今日も寿命が延びる!
  夢守ぽえむ:
  えりりんさん、いつも素早い反応
  ありがとぽえん♪
  えりりん@ユウくんの部屋の壁になる:
  こんな素敵な物語を
  生み出してくれたことに感謝です!
  夢守ぽえむ:
  嬉しいぽえん♪

〇書斎
鷹峰小百合「『ぽえん♪』?」
鷹峰宗一郎「夢守ぽえむの口癖だ」
鷹峰宗一郎「私の内なる女子高生が漏れ出てしまった」
鷹峰小百合「女子高生は そのような物言いいたしません」
鷹峰宗一郎「そうか」
鷹峰恵里佳「小百合、まさかとは思いますが」
鷹峰恵里佳「『うそつきフィアンセ』を 読んでいないのですか?」
鷹峰小百合「え? えぇ」
鷹峰恵里佳「なんてこと。 乙女のバイブルですよ」
鷹峰小百合(おとめのばいぶる)
鷹峰恵里佳「小百合、夢守ぽえむ神のためにも 一肌脱ぎなさい」
鷹峰小百合「お母様はそれでよいのですか?」
鷹峰小百合「応援していた作家の正体が これなんですよ!」
  ↑これ
鷹峰恵里佳「推しのプライベートに 別の顔があったとしても、」
鷹峰恵里佳「ファンはただ信じて推すのみ」
鷹峰小百合「お母様・・・」
鷹峰宗一郎「あぁ、サイン会の時には語尾に必ず 『ぽえん♪』をつけるように」
鷹峰宗一郎「そう言うキャラ設定だ」
鷹峰小百合「なんてことしてくれたんですか」

〇商業ビル

〇本屋
鷹峰小百合(嘘でしょ・・・)
鷹峰小百合(変装はお母様の指示を受けた スタイリストの手によるものだけど)
夢守ぽえむ(小百合)(これがお母様のイメージする 夢守ぽえむの姿なのですか!)
担当「夢守先生、今日はファンの皆さんに 会えるの楽しみですね!」
夢守ぽえむ(小百合)「は、はい、 楽しみ、ぽ、ぽえん・・・」
担当「外見ました? すごい行列できてますよ!」
担当「整理券のために朝の3時から 並んだファンもいるんですって」
夢守ぽえむ(小百合)「びっくり、ぽえん」
担当「夢守先生、初めて直接お会いしましたが、 こんな可愛い方だったんですね!」
担当「今日は頑張るぽえん♪」
夢守ぽえむ(小百合)「が、頑張るぽえん♪」
  お父様、恨みます!!
  なぜこのようなキッツいキャラ付けを
  なさったのですか!!
担当「夢守先生、開場です」
担当「きっとあの先頭の方が、 3時から並ばれてた方ですね」
担当「整理券番号一番の方、どうぞ」
鷹峰恵里佳「夢守先生、 えりりん@ユウくんの部屋の壁になる、 です!」
鷹峰恵里佳「今日はお会いできてうれしいです!」
夢守ぽえむ(小百合)「・・・・・・」
夢守ぽえむ(小百合)「お母様、何しにいらしたんですか?」
鷹峰恵里佳「シッ、お黙りなさい。 今日はSNSのお友達と来ているのだから」
鷹峰恵里佳「それにしても、ふふ、今のあなたの姿」
鷹峰恵里佳「まさに思い描いていた夢守ぽえむ神、 良き・・・ふひっ」
夢守ぽえむ(小百合)「・・・・・・」
夢守ぽえむ(小百合)「サインはどこにするぽえん?」
鷹峰恵里佳「あ、この新刊のここにお願いします!」
鷹峰恵里佳「ありがとうございます!」
  なぜ目に涙・・・!
担当「次の方―」
ファン「いつも楽しく 読ませていただいています!」
ファン「これ、差し入れです!」
夢守ぽえむ(小百合)「あ、ありがとぽえん♪」
ファン「えりりんさん、待っててくださいね!」
ファン「あとで『うそフィア』語り みんなでしましょ!」
鷹峰恵里佳「待ってますね、 うらがえしパンツ二世さん」
  ハンドルネーム!?
女子生徒「は、初めまして」
女子生徒「いつも応援しています」
夢守ぽえむ(小百合)(この子たち、前に廊下で会った・・・)
夢守ぽえむ(小百合)「は、初めましてぽえん」
女子生徒「ん? あれ?」
夢守ぽえむ(小百合)「ど、どうかしました、ぽえん?」
女子生徒「いえ、学校の有名な方に ちょっと似ている気がして」
女子生徒「鷹峰さんって言って憧れの方なんですが」
夢守ぽえむ(小百合)(バレないよう 普段と違う振る舞いをしなくては!)
夢守ぽえむ(小百合)「そ、そんな方と似てるなんて 嬉しいぽえん♪」
女子生徒「あは、 夢守先生の方がやっぱり素敵です」
女子生徒「笑顔が天使!」
夢守ぽえむ(小百合)「きゃっはー、ありがとぽえん♪♪」
  いっそ死なせて

〇高級一戸建て

〇シックな玄関
  今日は疲れた、主に精神的に

〇シックなリビング
鷹峰宗一郎「小百合、ご苦労だった」
鷹峰小百合「金輪際このような真似はいたしません」
鷹峰宗一郎「そうもいかなくなった」
鷹峰小百合「は?」
鷹峰宗一郎「今日のサイン会の様子が、 SNSで拡散されてな」
鷹峰宗一郎「全国の書店から依頼が殺到している」
鷹峰小百合「嘘でしょう」
鷹峰恵里佳「小百合」
鷹峰小百合「お母様」
鷹峰恵里佳「やり抜きなさい」
鷹峰恵里佳「我らが同士、 全ての夢守ぽえむファンの 夢と理想を守るために!」
鷹峰宗一郎「鷹峰グループ従業員200万人の 明日のためにも」
「家族一丸となって、この秘密を守り抜く!」
鷹峰小百合「お父様、お母様・・・」

〇高級一戸建て
鷹峰小百合「いい加減になさってください!!」
  みがわり♡ぽえむ  ──おわり──

コメント

  • とんでもねぇお父さんとお母さんや……( ゚д゚)
    主人公には申し訳ないですが発想も台詞回しも面白くて、今後の展開が気になるぽえん( ´ ▽ ` )

  • お父さんっ!お母さんっ!🤣🤣🤣
    小百合ちゃんが不憫ではありますが、ぽえむ先生のキャラをしっかり演じてて順応性高いな、と思いました。
    お父さんのセリフひとつひとつも秀逸で、冷徹で威厳のある感じとのギャップに爆笑でした🤣お母さんのSNSの名前もサイコーでした😂面白かったー😆

  • 小百合の表情が変わらないツッコミいいですね😄
    そして夫婦のSNS、万が一自分だったら心理的ダメージが大きすぎます🤣

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