第六話「殺人依頼(後編)」(脚本)
〇個別オフィス
高田「よし。今度、賭けゴルフでもしてみるか!? 笹岡大臣を呼んで、金を巻き上げよう。 あっはっは」
草ケ部雄大「その際は是非ご教授お願いします」
高田「ああ。今度も必ず私が──」
と言いかけて立ち上がると、
意識を失って卒倒する高田。
それを冷たい目で見下ろす草ケ部。
草ケ部雄大「今度はありませんよ。永遠に」
草ケ部雄大「計画はシンプルだ。高田の飲み物に 強い眠剤を導入し、意識を混濁させる」
草ケ部雄大「あとは緊急手術が必要なフリをして 美沙を呼び、オペ室に運んでしまえば、 事故死に見せかけて殺すのは簡単だ」
携帯を取り出し、美沙に電話をかける。
だが電話が繋がらない。
草ケ部雄大「・・・どうなってる? この時間には 出るように言ったはずなのに・・・!」
〇ナースセンター
草ケ部雄大「すまない。美沙・・・いや、 神田くんを探しているのだが──」
看護師たちは気まずそうに目を合わせる。
草ケ部雄大「どうかしたのか?」
看護師A「それが、神田さんは 無断欠勤しているんです」
草ケ部雄大「なんだと? 連絡はしたのか?」
看護師B「はい・・・ですが、 一昨日から連絡が取れなくて」
草ケ部雄大(どういうことだ・・・! 一昨日ということは俺と会った日だ)
草ケ部雄大(なんであいつが・・・ もしかして闇カジノの連中が──)
看護師A「先生、何かご存じですか?」
草ケ部雄大「うるさい! 俺が知るわけないだろ・・・!」
草ケ部は慌てて飛び出して行く。
〇大きい病院の廊下
額に脂汗を搔きながら、
小走りに歩く草ケ部。
草ケ部雄大(ちくしょう・・・! 何がどうなってやがる! あいつに何があった!?)
草ケ部雄大(高田はひとまず隠したが、 そう長くはごまかせない!)
草ケ部雄大(早くオペ室に運ばないと。 だが一人では・・・)
高田の教授室の前に加賀見が立っている。
草ケ部雄大「加賀見!? なぜここに──」
加賀見勝「これはこれは。草ケ部先生」
〇個別オフィス
草ケ部は加賀見を室内へ押し飛ばした。
草ケ部雄大「貴様・・・! 何してた!?」
加賀見勝「いやだなぁ。先生が大事なところでいなくなったりするから、部外者が来ないように見張っていたんじゃないですか」
加賀見はテーブル前の椅子を払いのける。
意識を失っている高田が倒れている。
草ケ部雄大「!」
加賀見勝「大事な勝負の途中で席を外すなんて、 先生らしくありません」
草ケ部雄大「お、お前は今回の計画に関係ないだろ! なぜここにいる? 何をどこまで知ってるんだ!?」
加賀見は高田のポケットから携帯を
取り出すと、着信履歴を見せる。
加賀見勝「これ・・・わかりますか? 先生のお抱えの 神田くん・・・でしたっけ? 彼女、先生を裏切ろうとしてたんですよ」
草ケ部雄大「嘘だ・・・!」
加賀見勝「だから、彼女は今日ここに 来れないようにしてあります」
草ケ部雄大「! 美沙に何かしたのか!?」
加賀見勝「さあ、どうでしょう。 それより先生、そんなに時間はありません」
加賀見勝「彼女の代わりに僕を利用してください。 協力しますよ」
草ケ部雄大「お前が!?」
加賀見勝「オペ室に入るなら、看護師よりも 僕の方が頼りがいはあるでしょう?」
草ケ部雄大(こいつ・・・いったい何を考えてやがる!)
草ケ部雄大(だが時間はない。 もう引き返すこともできない)
草ケ部雄大(ここでやらなきゃ 機を逸してしまう・・・!)
草ケ部雄大「よし・・・わかった。手伝ってくれ」
〇手術室
高田が横たわり、
草ケ部と加賀見がその前に立つ。
草ケ部雄大「・・・は、始めるぞ」
加賀見勝「お願いします」
震える手で、メスを握る草ケ部。
草ケ部雄大(くそっ・・・いざとなったら 手が震えてきやがった・・・!)
加賀見勝「さあ、先生。早く」
草ケ部雄大(簡単に言いやがって! これはオペじゃない・・・殺人なんだぞ!)
草ケ部雄大(たとえ相手が、 高田のようなクズ野郎だとしても)
草ケ部雄大「い・・・いまやる」
加賀見勝「どうぞ」
草ケ部雄大「俺が、こいつの息の根を──」
加賀見勝「ええ。 先生はそうしなくちゃいけないんです」
加賀見勝「もう逃げ道はないことくらい、 わかってるでしょう?」
草ケ部雄大(だが、だが・・・俺は──)
メスを置いてしまう草ケ部。
加賀見勝「先生」
草ケ部雄大「黙れ! やるって言ってるだろ! これは・・・殺人なんだ! 心の準備くらいさせろ!」
加賀見勝「でも時間がありませんよ」
草ケ部雄大「わかってる!」
加賀見勝「僕はとっくに準備できてます」
草ケ部雄大「お前と俺を一緒にするな! 殺すのは俺だ。お前はただそこで 突っ立てるだけだろうが!」
加賀見勝「あはは。今更何を言ってるんですか。 僕たちは運命共同体ですよ」
加賀見勝「いや、もっとはっきり言いましょうか。 僕たちは共犯なんですよ」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
!!!