ドクター・ギャンブル

YO-SUKE

第五話「殺人依頼(前編)」(脚本)

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〇カジノ
  草ケ部がディーラーの前に座り、
  その後ろで神谷と加賀見が見ている。
草ケ部雄大「笹岡の闇手術を成功させ、俺は六千万の 現金を手に入れることができた」
草ケ部雄大「闇カジノに三千万の借金を返しても、 俺の手元には三千万が残るはずだった」
草ケ部雄大「だがこの神谷という男が、 その金を使ってブラックジャックを やらないかと提案したのだ」
  草ケ部に配られたカードは、
  ハートのキングとクローバーの2。
草ケ部雄大(・・・ハートのキング)

〇黒背景
草ケ部雄大「ハートのキングと、クラブのクイーン?」
神谷琢磨 「そうです。その2枚が先生の手元に 来るように仕組んであります」
神谷琢磨 「そのどちらかが来たとき、先生が3枚目のカードを引けば、合計が必ず21になります」
草ケ部雄大「イカサマってことか?」
神谷琢磨 「ええ。もちろん、その2回以外は通常の ブラックジャックですが、2つの切り札が ある分、先生は有利なはずです」
神谷琢磨 「それにうちは特別で、掛け金を ゲーム開始時から何倍にも上乗せする 【ダブル】というルールがあります」
神谷琢磨 「ここぞというところで勝負すれば、 先生は一気に大勝することができますよ」

〇カジノ
草ケ部雄大(ダブルを使うのは、バーストの恐れがない 合計11以下の数字がセオリーだ)
草ケ部雄大(いま21になるためには9を引くしかない。 そんな都合のいいことがあるのか)
ディーラー「どうしますか?」
  草ケ部が台をトントンと叩く。
草ケ部雄大「HITだ・・・!」
  ディーラーがもう一枚のカードを配ると、
  スペードの9が出て来る。
草ケ部雄大(なっ・・・! 神谷の言った通りだ・・・!)
ディーラー「おめでとうございます」
  ディーラーが再びトランプを配る。
  すると、今度はクラブのクイーンと
  ハートの5が出て来る。
草ケ部雄大(クラブのクイーン! 連続で出やがった・・・!)
ディーラー「どうしますか?」
草ケ部雄大(もし神谷の言う通りなら、俺がHITを選べば、次は必ず6が出るということになる。 だがそんなこと本当に──)
  草ケ部が慌てて神谷のほうを見ると、
  神谷はニヤニヤと頷いている。
草ケ部雄大(どうする・・・! さっきは神谷の言う通り21になった。 なら今回も──)
ディーラー「お客様? どうしますか?」
草ケ部雄大(ここで大勝すれば、当分遊んで暮らせる 金が手に入る。それなら──)
草ケ部雄大「ダ、ダブルだ! ダブルにする!」
  草ケ部は持ちコインの全てをBETする。
  ディーラーが3枚目のカードを配る。
草ケ部雄大(ハートの7!? 合計22じゃないか!)
神谷琢磨 「あはは。見事なバーストになりました!」

〇カジノ
  草ケ部が憔悴しきった顔で項垂れている。
  それを見て、
  わざとらしく溜息をつく加賀見。
加賀見勝「先生も懲りないですねぇ。 ギャンブルで作った借金を返しに来て、 その金でギャンブルやるかなぁ」
草ケ部雄大「だまれ」
加賀見勝「これで先生の借金は一億円。 さすがに笑えない金額ですね」
草ケ部雄大「だまれ、だまれ、だまれ・・・! 俺は嵌められたんだ!」
  神谷が護衛の男たちを引き連れて来る。
神谷琢磨 「お静かに。 他のお客様に聞こえてしまいますので」
草ケ部雄大「この野郎っ・・・!」
  草ケ部が神谷に詰め寄ろうとすると、
  護衛の男たちに取り押さえられる。
草ケ部雄大「くっ・・・! 離せ!」
神谷琢磨 「面白いギャンブルだったでしょう? 私はVIPたちと先生がイカサマを 信じるかどうか賭けてたんですよ」
草ケ部雄大「なんだと・・・!」
神谷琢磨 「私は、先生がイカサマを信じる方に 賭けてました。おかげで大勝ですよ」
草ケ部雄大「貴様・・・!」
神谷琢磨 「でもねぇ、先生。先生が大負けしたのは、 あの一戦だけじゃないでしょう?」
神谷琢磨 「勝負を受けたことも含めて、 先生の自己責任だと思うんです」
草ケ部雄大「ふざけるな・・・!」
神谷琢磨 「まあ先生のお怒りもわかります」
神谷琢磨 「なので、僕としても、 もう一度チャンスはお与えしたいなと」
草ケ部雄大「チャンス・・・?」
神谷琢磨 「ええ。我々の依頼を受けてくれれば、 一億の借金はなかったことにしましょう」
草ケ部雄大「!」
神谷琢磨 「依頼内容は・・・ある男を殺すことです」
草ケ部雄大「! 人、殺す・・・? 正気か?」
神谷琢磨 「先生なら簡単ですよ」
草ケ部雄大「そんなわけあるか!!」
神谷琢磨 「先生にとっても殺す価値のある人間ですし 先生以上の適任もいないんですけどねぇ」
草ケ部雄大「・・・・・・?」

〇個別オフィス
高田「おー、草ケ部君。 急に呼び出して悪かったね」
草ケ部雄大「いえ、とんでもありません」
草ケ部雄大(くそ・・・まさか殺しのターゲットが この高田だったとは)
草ケ部雄大(だがそう簡単に殺しなんて──)
高田「こないだの笹岡大臣の手術を ねぎらおうと思ってね」
草ケ部雄大「いえ。あれくらい難しくありません」
高田「いやいや。僕は手術以上に、君がこっち側の人間だったことに安堵しているんだ」
草ケ部雄大「こっち側・・・?」
高田「金や権力のためなら、 人間を辞められるタイプだろう? 君も」

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