ストレンジャー・ダディ 〜メビウスの絆〜

松田エルナ

第11話 マイ・ストレンジャー・ダディ(脚本)

ストレンジャー・ダディ 〜メビウスの絆〜

松田エルナ

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〇学校の廊下
「『俺たち』は──!!」
「この不条理を否定する!!!」
ノイマン所長「ふっ・・・」
ノイマン所長「血は繋がってないとはいえ・・・」
ノイマン所長「その聞き分けのなさは 『父親』ゆずりのようだな」
ノイマン所長「キミのような子どもを 相手に心が痛むが・・・」
ノイマン所長「目障りだ」
遥太(ようた)「あぐっ・・・!!」
絢斗「遥太あぁっ!!!!」
遥太(ようた)「大丈夫・・・っ!! かすっただけ!!」
ノイマン所長「いまのは警告だ」
ノイマン所長「大人しく彼女を差し出さないと・・・」
ノイマン所長「まず息子に死んでもらう」
絢斗「遥太!!!」
絢斗「イオ姉ちゃんを連れて逃げろ!!」
遥太(ようた)「う・・・うん!!」
ノイマン所長「・・・」
絢斗「・・・!!」
ノイマン所長「外したか」
ノイマン所長「まあいい」
ノイマン所長「下の階には念入りに 火を放っておいたからな」
ノイマン所長「どのみち逃げられんよ」
絢斗「くそっ・・・!!」
ノイマン所長「さあ、Mr.トキトウ」
ノイマン所長「正直キミのことは好かんが その天才的な頭脳は買ってるんだ」
ノイマン所長「一緒に元の時代に戻って・・・」
ノイマン所長「『未来』に飛ぶ技術を 完成させようじゃないか」
絢斗「『未来』・・・?」
ノイマン所長「そう・・・」
ノイマン所長「キミの生み出した 『イオ・システム』・・・」
絢斗「俺のマシンに勝手に イオ姉ちゃんの名前を・・・!?」
絢斗「ここまでしておいて・・・ 趣味の悪さに反吐が出る!!」
ノイマン所長「私なりの彼女への敬意だよ ・・・何とでも言え」
ノイマン所長「キミのマシンは・・・」
ノイマン所長「その完成時点を起点とした 『過去にしか飛べない』」
ノイマン所長「つまり、2040年以前しか・・・ね」
絢斗「当たり前だ・・・」
絢斗「俺はイオ姉ちゃんを助けるために あのマシンを作ったんだからな」
ノイマン所長「しかし・・・」
ノイマン所長「私は『未来』に用があるんだ」
絢斗「・・・?」
ノイマン所長「ぐ・・・!ガハッ・・・!!」
絢斗「あんた、その血・・・!!」
ノイマン所長「もう助かりようのない病状でね」
ノイマン所長「あと数か月の命らしい」
絢斗「・・・!!」

〇大樹の下
  私には・・・
  6歳になる一人娘がいてね
絢斗「・・・?」
  歳をくってから出来た子だから
  可愛くてしょうがなくてね
  まだ幼い彼女が
  何を目にして、何を吸収して・・・
  どんな素敵な女性に育っていくのか・・・

〇学校の廊下
ノイマン所長「私のこの命では見届けることは叶わない」
ノイマン所長「死ぬ前に一目だけでも・・・」
ノイマン所長「成長した彼女の姿を見たい」
ノイマン所長「それだけ・・・それだけなんだ」
絢斗「・・・」
絢斗「だからと言って許されると・・・!!」
ノイマン所長「そのために・・・」
ノイマン所長「2010年の蒼井先生にも協力してもらった」
絢斗「なん・・・だと?」

〇魔法陣のある研究室
  キミのイオ・システムの原理と
  照らし合わせれば・・・
  蒼井レポートはそれをほぼ完全に
  言い当てていた
  完璧すぎる・・・
  あれで終わりのはずがない
  私は確信した

〇学校の廊下
ノイマン所長「彼が世に公表していなかった・・・」
ノイマン所長「『第2の』蒼井レポートがあるとね」
絢斗「な・・・!?」
ノイマン所長「実際・・・その予想は当たっていたよ」
ノイマン所長「時間軸上を自由に行き来できる 完璧な理論・・・!!」
ノイマン所長「これで、あの子の待つ未来でさえも・・・」
絢斗「・・・!!」
絢斗「おい・・・まさか」
絢斗「蒼井先生も貴様が・・・」

〇狭い畳部屋

〇平屋の一戸建て
  私の痕跡が残らないよう・・・
  火を放って『処分』しておいた

〇学校の廊下
ノイマン所長「おかげでこの2020年にも 直接たどり着く技術を得られた」
ノイマン所長「あとはキミと共に『未来』へ飛ぶ 技術を完成させるだけだ」
ノイマン所長「彼の『協力』にも報いなければな」
絢斗「き・・・」
絢斗「キ・・・サマぁぁぁ!!!!」
絢斗「お前のせいで・・・!!」
絢斗「蒼井先生が!!」
絢斗「遥太が・・・!!」
絢斗「10年間どんな思いをしてきたか・・・!!」
ノイマン所長「・・・」
ノイマン所長「すべてを『片付け』・・・」
ノイマン所長「キミと私で蒼井先生の理論の 完璧な実現を成し遂げようじゃないか」
ノイマン所長「それが一番の供養だとは思わんかね」
ノイマン所長「そのためには、まず・・・」
ノイマン所長「幼いキミが『オリジナル』を 生み出すきっかけを与えなければ」
ノイマン所長「・・・彼女には死んでもらう」
ノイマン所長「さあ、そこをどいてくれないか」
絢斗「断る・・・」
ノイマン所長「Mr.トキトウ・・・」
ノイマン所長「私も彼女を殺したくて殺すんじゃない」
ノイマン所長「しかし、私は愛娘のためなら・・・」
ノイマン所長「地獄にも堕ちる覚悟だ」
ノイマン所長「10年間親子ごっこをしてきた キミなら多少わかるだろう?」
絢斗「・・・」
ノイマン所長「さあ、そこを・・・!」
絢斗「ああ、わかるさ・・・」
ノイマン所長「・・・?」

〇狭い畳部屋
  親っていうのは・・・

〇校長室
  子どものこととなると
  向こう見ずで、愚かで・・・

〇田舎の学校
  まったく不合理極まりない生き物だ
  でも、きっとそれが親の『愛』って
  やつなんだと・・・

〇古書店
  10年間かけて・・・
  遥太から教えてもらったよ

〇学校の廊下
ノイマン所長「・・・」
絢斗「そう、親ってのは子どものためなら どんなことでもする・・・」
絢斗「たとえば・・・」
絢斗「こんなこととかな!!」
ノイマン所長「な・・・!?」
絢斗「これだな!?」
ノイマン所長「おい、やめないか!!」
絢斗「時空間境界場生成ポート、アクティブ!!」

〇学校の廊下
ノイマン所長「キミもただではすまないんだぞ・・・!!」
ノイマン所長「人間二人で境界場に飛び込んだら どんなことになるか・・・!!」
ノイマン所長「我々は5次元の狭間を 永遠に彷徨うことになるぞ!!?」
絢斗「言ったはずだ どんなことでもすると!!」
ノイマン所長「くっ!! この・・・!!」
「ぐあああぁぁぁ!!!」

〇黒背景
  遥太・・・
  お前のマシンでイオ姉ちゃんを
  どこか安全な座標に送り・・・
  あとはお前一人なら・・・
  ここから脱出できるはずだ!!
  遥太・・・
  あとは頼んだぞ

〇古書店

〇学校の廊下
???「パパ!!!」
絢斗「ぐっ・・・!!」
絢斗「お、お前・・・!?」
ノイマン所長「だ、誰だ!?」
ノイマン所長「キミ・・・は」
エーファ「・・・」
ノイマン所長「エーファ・・・なのか?」
エーファ「久しぶり、パパ」
絢斗「な・・・娘って・・・」
ノイマン所長「な、なぜここに・・・」
ノイマン所長「いや、そんなことはいい」
ノイマン所長「こんなに大きく・・・」
ノイマン所長「ママに似て綺麗になったな」
エーファ「やっと会えた・・・パパ」
ノイマン所長「さあ、私のエーファ・・・」
ノイマン所長「その可愛い顔をもっと近くで見せてくれ」
エーファ「・・・」
エーファ「アヤトさん」
絢斗「・・・!!」
エーファ「私たち親子の問題に 巻き込んでしまい・・・」
エーファ「アヤトさんたちには 謝罪の言葉もありません」
絢斗「・・・」
エーファ「せめてもの償いに・・・これを」
絢斗「これは・・・キミが飛んできたマシン!?」
エーファ「私には・・・もう必要ありませんから」
絢斗「なにを・・・」
エーファ「パパ・・・」
エーファ「もうどこへも行かないでね」
ノイマン所長「ああ・・・ もう離れるものか」
エーファ「パパ・・・大好きだよ」
ノイマン所長「な・・・!?」
ノイマン所長「やめるんだ、エーファ!! キミまで・・・!!」
エーファ「これで・・・ずっと一緒ですよ」
ノイマン所長「エーファ・・・すまない エーファ・・・」
絢斗「っ・・・!!!」
絢斗「エーファっ!!!」
絢斗「そんな・・・」
絢斗「クソクソクソっっ!!!」
絢斗「こんな・・・ こんな不条理が・・・!!!」
絢斗「・・・」
絢斗「これ以上の不条理は・・・許さん!!」

〇明るい廊下
絢斗「遥太!!イオ姉ちゃん!!!」
絢斗「どこだっ!!?」
絢斗「クソっ!! もう火が・・・!!」

〇おしゃれな教室
絢斗「遥太・・・!! イオ姉ちゃん!!」
遥太(ようた)「父さん!!」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「あっ・・・く・・・」
遥太(ようた)「無事だったんだね」
絢斗「遥太!! 早く逃げ・・・」
絢斗「・・・遥太?」
遥太(ようた)「ははっ・・・ごめん」
遥太(ようた)「脚、撃たれたみたい 力が入らないや・・・」
絢斗(その脚じゃ・・・)
絢斗(この4階から飛び降りて 脱出することは・・・)
絢斗(窓の外ももう火の海か・・・)
絢斗(マシンで飛ぶにしても この場にあるのは2人分だけ・・・)
絢斗「・・・」
絢斗「クソクソクソっ!!!」
遥太(ようた)「あっくん・・・ それ、エーファからもらったんだね」
遥太(ようた)「彼女からも全部聞いたよ」
遥太(ようた)「それで・・・元の時代に帰れるね」
絢斗「お前たちを置いて そんなことできるわけ・・・!!」
遥太(ようた)「僕らは・・・大丈夫だからさ」
絢斗「・・・」
絢斗(そうか・・・!!)
絢斗(たとえ『事実』が変えられなくても・・・)
絢斗(焼け跡に『身元不明の遺体』が 一つ残っていれば・・・)
絢斗「・・・」
絢斗「遥太、これを受け取れ!! お前たちで・・・」
遥太(ようた)「ダメだ、父さん!!!」
絢斗「・・・!!」
遥太(ようた)「あっくんが何考えてるか、わかるよ」
遥太(ようた)「そうやってまた自分だけ 犠牲にしようとしてさ」
絢斗「・・・」
遥太(ようた)「僕らの身代わりに父さんが死ぬなんて」
遥太(ようた)「それこそ・・・不条理だよ」
絢斗「遥太・・・」
遥太(ようた)「僕らは二人一緒に飛ぶ!!」
絢斗「な・・・!!?」
絢斗「そんなことしたら・・・」
絢斗「二人分の構成情報が 干渉してどうなるか・・・!!」
遥太(ようた)「あっくん、僕らは行くよ」
遥太(ようた)「あっくんもすぐに飛んで!!」
遥太(ようた)「そのエーファのマシンは セッティング済みだから!!」
絢斗「おい、遥太!! 待て・・・」
遥太(ようた)「あっくん・・・」
遥太(ようた)「頑固で、不器用で・・・」
遥太(ようた)「何者なのか、どこから来たのか・・・」
遥太(ようた)「全然わかんなくてさ・・・」
遥太(ようた)「でも、世界に一人しかいない・・・」

〇古書店
  僕の、不思議な・・・
  お父さん

〇おしゃれな教室
遥太(ようた)「10年間・・・」
遥太(ようた)「僕の父さんでいてくれて・・・」
  ありがとう
絢斗「・・・」
絢斗「う・・・」

〇空
「うあああぁぁぁぁ!!!!!」

〇お嬢様学校

〇空

次のエピソード:最終話 メビウスの絆

コメント

  • タイトル回収回ってカッコよくって憧れる…構成力が無いと作れない😭

    最終回の大団円を期待して待ちます!

  • なんとも切なく重いタイトル回収! そして最終回もタイトル回収パート2だけでなく、飛んだ彼らの行方、カオルへの手紙、怒涛の回収ラッシュになりそうで、今から楽しみです^^
    すべての不条理を否定し、ハッピーエンドになってほしいですが、果たして…!

  • 我が子の成長をひと目見たい、それだけのわがままな理由ですが、親ってそれほど子供が大切なんですよね。ノイマン親子の結末に、その後の絢斗の想いも重なり、思わずほろっときてしまいました。そして絢斗なら自分を犠牲にすることも想定済な遥太にまた成長を感じました。
    遥太とイオはどうなっちゃうのでしょうか? カオルくん助けに来ないですかね? 色々考えてしまいます……。最終話、とても楽しみです!

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