ストレンジャー・ダディ 〜メビウスの絆〜

松田エルナ

最終話 メビウスの絆(脚本)

ストレンジャー・ダディ 〜メビウスの絆〜

松田エルナ

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〇黒
  ・・・

〇古いアパートの部屋
  よう・・・た

〇街中の公園
  イオ・・・ねえ

〇黒

〇近未来の病室
  ・・・!!
白衣の女性「院長先生!!」
白衣の女性「目を覚まされましたよ!!」

〇近未来の病室
絢斗「ここ・・・は?」
???「よう」
絢斗「だ、誰だ・・・?」
絢斗「そうだ、遥太は・・・!!」
絢斗「ぐっ・・・!!」
白衣の男「まあ、無理すんなよ」
白衣の男「あんた、1か月も寝てたんだぜ」
白衣の男「まったく・・・」
白衣の男「寝坊グセは親子でそっくりだな」
絢斗「・・・」
絢斗「・・・お、お前!!」
絢斗「まさか・・・」

〇田舎の学校

〇古書店

〇近未来の病室
絢斗「カオル・・・なのか?」
絢斗「その姿は・・・」
カオル「不思議なもんだな」
カオル「今や俺の方があんたより老けてるとはよ」
絢斗「・・・!!」
絢斗「おい、つまり今は・・・」
カオル「ああ、今年は・・・」

〇未来の都会
  西暦2050年さ

〇おしゃれな教室

〇近未来の病室
絢斗「・・・」
絢斗(遥太・・・)
絢斗(俺を元の時代に・・・)
絢斗「そうだ、遥太・・・!?」
絢斗「遥太はどこだっ!?」
絢斗「イオ姉ちゃんは・・・っ!!」
カオル「あいつらは・・・」
カオル「『あの夜』から行方不明だ」

〇古書店

〇近未来の病室
絢斗「・・・」
絢斗「そん・・・な」
カオル「1か月前・・・」
カオル「俺はあんたが路上に 倒れているところを保護した」
カオル「ゲロまみれになってな」
カオル「見つかったのは・・・」
カオル「あんた一人だけだった」
絢斗「・・・」
カオル「あんたを俺に託したのは・・・」
カオル「遥太のやつだ」
絢斗「・・・え?」

〇名門校の校門(看板の文字無し)
  『あの夜』のことだ
  俺はあいつから手紙を受け取った

〇黒
  その手紙にはあんたが30年後・・・
  つまり、今年のあの時間あの場所に
  現れることが正確に書かれていた
  そして・・・
  カオル──
  突然のことでごめん
  訳がわからず混乱してると思う
  でも・・・
  カオルにしか頼めないことなんだ
  僕はもう・・・
  そこにはいないかもしれないから
  あっくんのこと・・・
  よろしく頼んだよ

〇近未来の病室
絢斗「遥太・・・」
絢斗「・・・」
絢斗「俺は・・・!!」
絢斗「くそっ・・・!!!」
絢斗「こんな・・・不条理・・・っ!!」
絢斗「遥太とイオ姉ちゃんを 見殺しにして・・・!!」
絢斗「自分だけ・・・助けられて」
絢斗「結局、何も・・・!!」
絢斗「何も・・・」
絢斗「できなかったのか・・・」
カオル「・・・」
カオル「それは・・・」
カオル「それは違うと思うぜ」
絢斗「・・・え?」
白衣の女性「院長先生!」
白衣の女性「こちらの患者さん、 覚醒後の精密検査を」
カオル「ああ、頼むよ」
カオル「・・・ゆっくり考えてみるんだな」
絢斗「・・・」
カオル「治療費は遥太のやつに免じて まけといてやるよ」
白衣の女性「ちょっと、院長先生! 勝手に!」
白衣の女性「また奥様・・・理事長に叱られますよ!!」
カオル「お~おっかねえ姐さん女房だぜ」
絢斗「・・・」

〇SHIBUYA SKY
カオル「・・・」

〇土手

〇SHIBUYA SKY
カオル「遥太・・・」

〇黒
  カオル・・・
  最後に伝えておきたい
  「ガラじゃない」とか
  「こんな不良が」とか・・・
  自分でいろいろ言ってたけど
  そんなことない
  カオルは本当はそんなに
  強い人じゃないから・・・
  弱い人の痛みがよくわかるんだって・・・
  僕は知ってる
  カオルなら・・・
  きっと立派なお医者さんになれるよ

〇SHIBUYA SKY
カオル「まったく・・・」
カオル「厄介な息子を育ててくれたもんだぜ」
カオル「おかげで・・・」

〇空
  自分に・・・
  嘘がつけなくなっちまったよ

〇黒
  追伸──
  さっちゃん・・・
  ああ見えて年下好きだから
  カオル、頑張って!!

〇SHIBUYA SKY
カオル「いつも一言余計なんだよ・・・お前ぇは」
???「□&○%$■☆♭*!!!!!」
カオル「やっべ・・・」
カオル「噂をすれば・・・だな」
カオル「おお、おっかねえ」

〇黒

〇未来の都会

〇未来の店
  科学者 蒼井ユウト
  ここに眠る
絢斗「・・・」

〇池のほとり
絢斗「蒼井先生・・・」
絢斗「あんたに申し訳が立たない」
絢斗「命がけで託してもらった遥太を・・・」
絢斗「俺は・・・!」
???「・・・」
???「あの・・・」
絢斗「・・・?」
若い男「時任・・・絢斗さん?」
絢斗「あ、ああ・・・ 誰だ?」
若い男「まさか・・・!! 本当にいらっしゃるとは」
絢斗「な、なんの話だ・・・?」
若い男「失敬・・・これです」
配達員「郵便の配達に参りました」
絢斗「手紙・・・?」
配達員「紙の郵便物ってだけで 今時珍しいですが・・・」
配達員「いえね、これ、なんと・・・」
配達員「40年前・・・」
配達員「2010年に投函された手紙でね」
絢斗「2010年・・・?」
配達員「配達指定が40年後の今日この場所って 言うんで・・・」
配達員「さすがにイタズラだろうと当時から 言われてたみたいなんですが・・・」
配達員「まさか本当に・・・」
配達員「えっと、差出人は・・・連名で」

〇黒
  『遥太・イオ』さん

〇池のほとり
絢斗「・・・」
絢斗「なん・・・だと?」
配達員「それじゃ、俺はこれで」
絢斗「・・・」
絢斗「遥太・・・イオ・・・?」
絢斗「2010年から・・・?」
絢斗「どういう・・・ことだ?」

〇黒
  時任 絢斗殿──
  初めましてと言うべきか・・・
  はたまた「久しぶり」と言うべきか
  私は・・・
  蒼井ユウト
  老いぼれた一人の科学者だ

〇池のほとり
絢斗「・・・!!」
絢斗「蒼井先生・・・!?」
絢斗「なんで・・・どういう・・・」

〇黒
  私はいま・・・
  ある人との再会を心待ちにしている
  敬愛する『先生』・・・
  そして──
  最愛の『父』との
  そう、私は・・・
  『アオイユウト(aoiyuto)』
  遥太(youta)でもあり・・・
  同時にイオ(io)でもあるのだ

〇池のほとり
絢斗「・・・」
絢斗「な・・・にを?」

〇おしゃれな教室
  あの夜・・・
  『私たち』は二人で
  時空間境界場に飛び込んだ

〇水の中
  そう・・・
  二人分の肉体を原子分解して・・・な
  だが、あなたのマシンの飛ばせる
  許容量は人間一人分・・・
  しかし・・・
  私たち二人の精神と肉体は・・・
  原子分解と時空転移の過程で
  構成情報が奇跡的に融合し・・・
  二つの肉体が生まれた
  しかし、過去に飛べたのは一体のみ・・・
  それが・・・
  私というわけだ
  外見こそ男性の遥太に近いが・・・
  頭脳はイオの鋭さを引き継いだようだ

〇炎
  残った片割れの抜け殻は
  あの現場に残り・・・
  イオの遺体として処理されたのだろう

〇池のほとり
絢斗「な・・・」

〇路面電車
  『私たち』がたどり着いたのは
  1950年・・・
  激動の時代だ
  自分が遥太であり、イオでもある・・・
  それしか分からない状態で目覚め・・・
  私たちはひどく困惑していた
  自分たちがどこから来た何者なのか
  やっと思い出したのは
  晩年になってからだ

〇研究所の中
  しかし、若いころから・・・
  己がやるべきことだけは
  何故かはっきりしていたよ
  『あの理論』を完成させて後世に・・・
  大切な『だれか』に伝えることだと

〇黒
  そう・・・
  『先生』・・・
  そして『父さん』・・・
  『あっくん』、あなたへ──

〇街中の公園
鳴海 イオ(なるみ イオ)「これを書いた蒼井って先生ね・・・」
鳴海 イオ(なるみ イオ)「最後まで批判に負けず、 主張を貫き通したんだって」
  後世に何か大事なことを伝えるため・・・

〇池のほとり
絢斗「・・・」
絢斗「遥太・・・」
絢斗「イオ姉ちゃん・・・!!」
絢斗「クソッ・・・!!」
絢斗「そんな・・・!!!」

〇黒
  ──次にあなたが言う言葉が予想できるよ
  『不条理』・・・

〇池のほとり
絢斗「・・・!!」

〇黒
  私たちのこの人生が
  不条理だと思うかね?
  私たちは・・・
  幸せだった

〇研究所の中
  私たちは人生をかけて・・・
  ついに完成させることができたのだ

〇古書店
  最も尊敬し・・・

〇田舎の学校
  最も認めてほしかった・・・

〇研究所の中
  あなたへ贈る・・・
  この『不条理の否定』を・・・

〇平屋の一戸建て
  それによって私たちは
  あなたと出会い・・・

〇古書店
  人生を共にすることができ・・・

〇おしゃれな教室
  そして、命さえ救われたのだ

〇水の中
  この物語がどこから
  始まっていたのか・・・
  僕たちにはわからない
  しかし、いま僕たちは
  充足感に包まれ・・・
  幸福に満ちた思いで
  こうして筆をとっている
  願わくば・・・
  あなたのこれからの人生にも
  幸福があらんことを
  ──最愛の『孫』、遥太の帰りと・・・
  『先生』──そして・・・
  私の不思議な父さん・・・
  『あっくん』との懐かしい再会を待ちながら
  ──2010年10月・・・遥太・イオ

〇池のほとり
絢斗「・・・」
絢斗「あ・・・」
絢斗「う・・・あ・・・」
絢斗「遥太・・・」
絢斗「イオ姉ちゃん・・・」

〇古書店

〇空

〇黒

〇田舎の学校
絢斗「蒼井ユウトの孫・・・だと?」
遥太(ようた)「黙っててごめん・・・」
遥太(ようた)「でも、僕にとってはそんなの関係ない、 ただの優しいじいちゃんだから・・・」
遥太(ようた)「あっくんにだけは・・・」
遥太(ようた)「じいちゃんのこと 悪く思わないでほしかったんだ」
絢斗「何を言ってる!!」
遥太(ようた)「・・・!!」
絢斗「蒼井ユウトは世界一偉大な科学者だ」
絢斗「俺はよく知ってる」
遥太(ようた)「え?」
絢斗「悪く思うどころか、誇りに思うよ」
絢斗「その忘れ形見・・・ お前を託されたことをな」
遥太(ようた)「へへへ・・・」
絢斗「・・・」
遥太(ようた)「あっくん・・・?」
絢斗「遥太!!」
遥太(ようた)「え!?なに?」
絢斗「今度からは俺を信じて何でも話せ」
絢斗「お前は一人じゃない」
絢斗「子どもなら子どもらしく頼れ」
絢斗「その・・・」
絢斗「『父親』をな」
遥太(ようた)「・・・」
遥太(ようた)「うん!!」
遥太(ようた)(やっぱり・・・)
遥太(ようた)(あっくんはかっこいいや・・・!!)
遥太(ようた)(僕も大きくなったら じいちゃんや・・・)
遥太(ようた)(そして、あっくんみたいな かっこいい科学者になってやるんだ!)
絢斗「・・・?」
絢斗「どうした、遥太?」
遥太(ようた)「ううん、なんでもない!」
絢斗「そうか・・・」
絢斗「さあ・・・帰ろうか」
  俺たちの家に

〇黒
  脚本・演出
  松田エルナ
  スペシャルサンクス
  
  読者のみなさま
  TapNovel関係各位
  ストレンジャー・ダディ ~メビウスの絆~
  〜THE END〜

コメント

  • うううううっっっぐ!!!!!(´;ω;`)3話連続で泣かされております!!!!!しかも最終回圧巻でした!!!!!!!(´;ω;`)ううううっっっ・・・・・・

    とっても感動しております・・・

    正に、メビウスの絆です・・・・・・(´;ω;`)
    素晴らしいお話でした!!ありがとうございました!!

  • 完結おめでとうございます!
    一気読みさせていただきました!
    ななな、なるほどーそれでメビウス!
    震えました!!😆
    カオルくんがまさかここまで重要人物になるとは思っていませんでした。
    そしてお相手も…w
    とても全12話とは思えない内容と質量で、大変感服いたしました!

  • 第一話の火事のシーンで感じたゾクゾク感、伏線が回収される最終回でも同じような感動を覚えました、大満足です!完結おめでとうございます!

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