第五話「秘書解任!」(脚本)
〇教室
佐々木隼人「それで、デートを途中で 抜け出してきたっていうわけか」
山中裕司「ううっ・・・騙された。 僕は、近藤さんに弄ばれたんだ」
佐々木隼人「そんなに落ち込むなって。 生徒会長と近藤さんがデキている噂は、 結構前からあったしな」
山中裕司「その噂は知ってる。 でも信じてなかったんだよ・・・」
そこにアズキがやって来る。
近藤アズキ「昨日、急にいなくなったのはどうして?」
山中裕司「僕の気持ちを踏みにじって、 バカにしていたんですね・・・」
近藤アズキ「何をぶつぶつ言っているの?」
山中裕司「もういいです! 僕はもう近藤さんのことが 好きじゃなくなりました!」
それを見てニヤリと笑うアズキ。
〇生徒会室
近藤アズキ「どういう形であれ、予定通りになりました」
近藤アズキ「私のことは好きじゃなくなったと、 言質を取っています」
近藤アズキ「生徒会長。 今こそ、彼の心に入り込むチャンスかと」
花巻大五郎 「でも・・・よく考えたんだけど、 それは卑怯じゃないかな。 人の弱みに付け込むみたいで」
近藤アズキ「またそんなことを・・・ どうしたんですか?」
近藤アズキ「普段のあなたは、 もっと漢気に溢れる方だったはずです」
近藤アズキ「なのに、あの男のことになると──」
花巻大五郎 「前から思ってたけど、君は目的のためには 手段を選ばないところがある」
花巻大五郎 「だから人の痛みが わからないんじゃないか?」
近藤アズキ「! そんなことはありません」
花巻大五郎 「それに・・・デートの時、 君と裕司くんは妙に仲良かった。 もしかしたら、君も裕司くんのことを──」
近藤アズキ「なっ! なんてことを」
花巻大五郎 「正直に言う。 僕は君を信用できなくなっているんだ」
そう言うと、立ち去ってしまう大五郎。
近藤アズキ「くっ! こうなったら・・・」
〇学校の昇降口
山中裕司「あれ? 僕の靴がない」
裕司がキョロキョロすると、
背後に大五郎が立っている。
山中裕司「せ、生徒会長!?」
花巻大五郎 「俺の下駄箱に入っていたんだ。お前のか?」
山中裕司「あ、はい・・・!」
花巻大五郎 「そ、その・・・いい靴、だな」
山中裕司「へ? あ、ありがとうございます!」
大五郎から靴を受け取ると、
そそくさと逃げ出していく裕司。
その様子を遠くから見ているアズキ。
近藤アズキ「惜しい・・・いい雰囲気だったのに」
〇学食
裕司がトレーを持って入ってくると、
多くの席が生徒で埋まっている。
山中裕司「お、ここは空いてる。ラッキー」
席に座ると、
正面に座る大五郎と目が合う。
山中裕司「せ、生徒会長!?」
花巻大五郎 「またお前か?」
山中裕司「あ、あの、なんで──」
花巻大五郎 「お前もランチセットBか・・・ 好みが、お、俺と同じなんだな」
山中裕司「僕、用事を思い出したので 教室で食べます。失礼します!」
トレーを持って立ち去っていく裕司。
それを見ると、席を埋めていた生徒たちが
ワラワラと立ち上がる。
花巻大五郎 「待て。どういうことか説明しろ」
生徒A「せ、生徒会長!? これは、その、 近藤さんに頼まれまして──」
花巻大五郎 「なるほど・・・やはりそういうことか」
〇生徒会室
裕司が恐る恐る入ってくると、
座っていたアズキが立ち上がる。
近藤アズキ「定刻通り来たわね」
山中裕司「近藤さん? 生徒会長は?」
近藤アズキ「もうすぐ来るわよ」
山中裕司「僕は生徒会長から呼び出されたから 来たんです。いったい何が──」
近藤アズキ「用を思い出したから私は行く」
山中裕司「待ってください!」
衝動的にアズキの手を掴む裕司。
近藤アズキ「離しなさい」
山中裕司「本当に、生徒会長が僕のことを 呼んだんですか?」
近藤アズキ「あ、当たり前でしょ」
山中裕司「リレーの時も、デートの時も、近藤さんの言われたままにすると、いつも生徒会長が出てきます。なぜですか?」
近藤アズキ「さあ、なんのことか」
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