リクガメのみそしる

こへへい

王子様を探して(side Q)(脚本)

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〇アクアリウム
  ウミガメのスープ。
  それは、ある問題の出題者に対して、「はい」か「いいえ」でしか答えられない質問を投げかけることで、
  問題の答えを導く、水平思考ゲームである。

〇古い図書室
  この男、凪カイトは、そんなウミガメのスープが大好きで、ウミガメのスープ部(通称ウミガメ部)を立ち上げた。
  この物語は、そんなカイトが、学校の些細な謎を解決する物語である。
  亀長老さん:
  カイトさんのスープ今回も最高によかったです。特にカメオが実は学生だったのは盲点でした
  カメニック:
  その前提さえわかれば結構早めに解けたんですが、なかなかその発想にはたどり着けなかった...
  ショッカー:
  難しかったです...皆さん猛者過ぎてすごい
  パソコン画面には、カイトが出題した問題への感想がつらつらと表示されていた。それをマジマジとカイトは眺めている。
凪カイト「ふむ、このレベルだと結構人を選ぶか。やっぱり難易度と知識の塩梅加減がなかなか難しいな」
凪カイト「着想を最近流行のライトノベルに変えてはみたが、うーん、やっぱり実体験の方が良い問題になり易いな」
瀬川桃子「カイト先輩!」
凪カイト「なんだ、桃子か。この騒ぎかたは、また相談事を持ってきたな?」
瀬川桃子「です!私もウミガメ部の一員ですから、ちゃんと仕事しますよ!」
凪カイト(ちょうどネタが欲しかったところだったんだ。生の人間の体験、それはウミガメ問題のネタにするのに一番だからな)
女子「し、失礼します」
瀬川桃子「彼女は北島ミミちゃん、どうしてもわからないことがあるからって相談してくれて」
凪カイト「ようこそ北島さん、今日も暑いね、冷たい麦茶でもどうぞ」
北島ミミ「ありがとうございます」
北島ミミ「ですが、本当に解決できるんですか?初対面でこんなこと言うのは申し訳ないのですが」
凪カイト「解決できる、という約束はできない。それに君が望む結末にたどり着くとも限らない」
凪カイト「だけど、必ず何かしらの進展があることは約束しよう」
凪カイト「それでもいいなら、聞かせてくれ」
北島ミミ「わ、わかりました」
凪カイト「で、どんな相談事なんだ?」
北島ミミ「その、恋愛相談、になるんですけど」
凪カイト(うわ、外れだ)
瀬川桃子「ちょっと先輩、露骨に嫌な顔しないでくださいよ!私も相談事を選べないんです!」
凪カイト(恋愛事って、ウミガメのスープの問題にするの難しいんだよなぁ)
凪カイト(というか、問題を解くカギが「AさんがBさんを好きで」というのって、僕的に納得できないんだよな)
凪カイト(痴情のもつれのトラブルなんて、コナン君とかに任せればいいんだけど、ウミガメ部で受け持った以上、ここで断ることはできない)
北島ミミ「あの、どうかしましたか?」
凪カイト「いや何でもないよ、本題に行こうか」
北島ミミ「はい。先週学校に行く途中、私貧血で倒れちゃったんですよ。でもそんな私を学校の保健室に運んでくれた人がいたんです」
北島ミミ「それが誰なのか、探してほしいんです」
凪カイト「人探し、か。了解した」
瀬川桃子「あ、先輩の目が変わった。ミミちゃん、これから先輩が質問いっぱいするから、それに対して『はい』か『いいえ』で答えてね」
北島ミミ「え、別に普通に答えますよ」
凪カイト「いやいい。これは僕のスタンスなんだ。気にしなくて大丈夫だ」
北島ミミ「は、はぁ」
凪カイト「それでは質問するよ」
凪カイト「Q1:君が目覚めたのは、自分の家か?」
北島ミミ「いいえ、保健室でした」
凪カイト「あああああああああ!!!」
北島ミミ「え!?何ですか!?」
瀬川桃子「ミミちゃんダメだって!ちゃんと『はい』か『いいえ』で答えてあげないと!」
凪カイト「「保健室」は自分で導きたかったのに...」
北島ミミ「あ、すみません」
北島ミミ(あれ、私相談に乗ってもらってるんだよね、大丈夫かなこの人で...?)
凪カイト「おほん、取り乱してすまない。続けようか」
凪カイト「Q2:運んだ人は男だったか?」
北島ミミ「はい、だと思います」
凪カイト(曖昧だな、ま、貧血で意識が朦朧としていたなら当然か)
凪カイト「Q3:君は電車通学か?」
北島ミミ「いいえ」
凪カイト「Q4:なら徒歩通学か?」
北島ミミ「はい、徒歩です」
凪カイト「Q5:ということは、学校から家が結構近い?徒歩5分圏内?」
瀬川桃子「・・・」
北島ミミ「・・・」
凪カイト「え、何だこの空気、どうかしたのか?」
瀬川桃子「先輩、相談にかこつけて後輩女子の住所特定しようとしてません?」
凪カイト「し、失敬な!必要な情報だと思ったから聞いただけだよ!」
凪カイト「別に言いたくなければ言わなくていいけど、せめて君の主観で、近いかどうか聞きたい」
北島ミミ「そうでしたか、近いですよ。この学校を選んだのも、家から近かったからという理由もありますし」
凪カイト「ありがとう」
凪カイト「っということは、徒歩圏内で倒れて、そこを助けてくれたということか。...ん?」
凪カイト「Q6:貧血で倒れて遅刻する、と言ったが、貧血が無ければ遅刻しなかったのか?」
北島ミミ「うぐ、」
瀬川桃子「うぐ?」
北島ミミ「もしかしたら遅刻しなかったかもしれないですね、貧血が恨めしいです・・・」
凪カイト「その反応は、貧血なくても遅刻する反応だな」
北島ミミ「あはは、実は朝ごはん食べずに急いで家出ました、お陰で髪もボサボサだったんですよ」
凪カイト「ってか、遅刻するぞって親に言われなかったのか?」
北島ミミ「親には言われなかったですね」
凪カイト(大事な娘が遅刻するってのに、親が起こさないとは。まぁ高校生ともなればほぼ大人だし、自己責任という放任主義なのかも)
凪カイト(・・・だが、ここまでの問答で引っかかったことがある)
凪カイト「Q7:そういえば、君は保健室の若林先生には聞いたのか?自分を運んだ人物が誰なのかって」
北島ミミ「先生に聞いたんだけど、先生も知らないって言うんです。私が起きてからそのことを聞こうとしていたらしくて」
凪カイト「若林先生も、知らない?」
凪カイト(そんなことあり得るのか?自分の仕事場に誰かが来たというのに)
瀬川桃子「それはおかしいね、よし!若林先生に聞いてみよう!」
凪カイト「ちょっと待て、先生が知っていて黙っている場合、何かしらの事情があって黙っているということだ」
凪カイト「そしてそれが分からなければ、多分若林先生も口を割らないだろう」
瀬川桃子「そですか・・・」
凪カイト(だが、進展はあった。保健室の若林先生の目を盗んで保健室のベッドに北島さんを寝かせるなんて、それは流石に不可能だ)
凪カイト(ならば、若林は運び人の正体を知っていて、あえて黙っているということだ。その上で考えるべきだ)
凪カイト(別の切り口から質問を考えるか・・・)
瀬川桃子「Q8:そういえば保健室って、校門を見ることができたんだっけ?」
凪カイト「ん?なんでそんなこと聞くんだよ」
瀬川桃子「もしかしたら北島さんが倒れた場所っていうのが校門前で、それを保健室越しで見た若林先生が運んできたのかもって思いまして」

〇中庭
凪カイト「確かにこんな感じで、保健室から校門を見ることはできるが、それができるなら、運んだのは自分だって言えばいいだろう」
凪カイト「でも若林先生が自分では運んでいないって言っているから詰まっているわけでだな、」
凪カイト「それに貧血なんだから、今すぐ運んで保健室のベッドとかに寝かせずに、その場で座り込んで具合が良くなるのを待っても・・・!」

〇古い図書室
瀬川桃子「どうかしました?先輩?」
凪カイト「Q9:北島さん、本当に貧血だったのか?」
北島ミミ「え、本当に貧血かと言われると、ちょっと自信ないです」
凪カイト「Q10:今まで貧血になったことは?」
北島ミミ「いいえ、ないです」
凪カイト(なら、あり得るか)
凪カイト「Q11:君が起きた時、その場に飲み物がなかった?スポーツドリンクとか」
北島ミミ「はい、ありました。アクエリアスが。でもなんでそれを」
凪カイト「北島さん、多分君は貧血になったんじゃない」
凪カイト「いやほぼ確実に、」
凪カイト「『熱中症』になっていたんだ」
瀬川桃子「でもですよ、熱中症か貧血かって、そんなに違いあります?」
凪カイト「重要だ。貧血の患者に対して、素人ができることって何だと思う?」
瀬川桃子「ええと、レバー食べさせたり?」
凪カイト「はぁ」
凪カイト「北島さんは、何をすべきだと思う?」
北島ミミ「私もわからないです」
凪カイト「ああ、僕もわからない」
瀬川桃子「ちょ、皆わからないんじゃないですか!なんで私だけ呆れられるんですか!」
凪カイト「だが、桃子。熱中症ならどうすべきだと思う?」
瀬川桃子「熱中症ですか?とりあえず日陰に行って、水分と塩分を十分に摂らせて、あとは濡れタオルとかで体を冷やしますね」
瀬川桃子「脇とか足の付け根だと血管が太いので、そこに濡れタオルを当てると効率よく体中を冷やすことができます!」
瀬川桃子「それくらいわかるんですからね!」
凪カイト「そ、これくらいなら常識的にわかる。何をすべきかわかれば、救急車を待つまでもない」
凪カイト「だが濡れタオルとか、水分とかがなく、それでいて保健室の見える校門前だったなら、どうする?」
瀬川桃子「ああ、それなら保健室行きますね。さっき言った処置があらかたできそうですし」
凪カイト「そ。やるべきことがわかるからこそ、救急車を待つべきではないと、考えたんだろうな」
凪カイト「ここまでの憶測から考えるに」
凪カイト「若林先生以外の誰かによって保健室に運ばれた。又は、校門前で若林に気づかれるようにした。そして保健室まで運ばれていったんだ」
凪カイト「Q12:そういえば、北島さんが倒れたのって、校門前?」
北島ミミ「いえ、まだそこまで行っていなかったです」
凪カイト「ふむ、だよな。となるとやっぱり誰かが北島さんを運んだのは間違いない」
凪カイト「そしてその誰かの存在が、若林先生に正体を黙らせている。または若林先生が言うべきではないと判断しているんだろう」
瀬川桃子「その誰かって、誰なんでしょう?」
凪カイト「そこでだ。 Q13:どのようにして運ばれたかは、覚えているか?」
北島ミミ「いえ、意識が朦朧としていたので、」
凪カイト「うーむ、流石にお姫様だっこは無条件で目立つしなぁ、」
瀬川桃子「何の話しているんですか?」
凪カイト「北島さんが運ばれたとして、結構目立つと思うんだよ。例えば、成人男性が女子高生を運ぶ絵を想像してみろ」
瀬川桃子「通報モノですね」
北島ミミ「え、私の王子様っておじさん!?」
凪カイト(王子様て、)
凪カイト「王子さんだろうがおじさんだろうが、結局通報される恐れがある。しかし通報されたならその旨が親や、若林先生に連絡が来るだろう」
凪カイト「そのうえで保護されるべきだ。しかし若林先生は知らぬ存ぜぬと主張している」
瀬川桃子「なら、やっぱり若林先生なんじゃ」
凪カイト「さっき言ったろ、それだと自分から名乗り出るはずだって」
瀬川桃子「先生も遅刻したとか、それを隠すために」
凪カイト「生徒の遅刻もそうだが、教師だって点呼や出席はあるだろう。それも生徒よりも早めにな」
凪カイト「北島さんと同じタイミングで遅刻したなら、もう隠すまでもなく遅刻だろ」
凪カイト(遅刻、何か、引っかかっているのがあったような)
凪カイト「それも、質問としてカウントしていないけれど、何の変哲もなく質問した内容で、結構大事な内容が・・・」
  『遅刻するぞって親に言われなかったのか?』
  『親には言われなかったですね』
凪カイト「Q14:家に、親はいたのか?」
北島ミミ「え?」
北島ミミ「居なかった、です。両親共働きで、特にその日は朝早かったらしいので」
凪カイト「Q15:そこに、親以外の人物はいたか、兄弟とか」
瀬川桃子「いやいや先輩、兄弟がいたとして、ミミちゃんは遅刻している時間に起きて学校に行くタイミングなんですよ?」
瀬川桃子「皆学校に行ってるにきまってるじゃないですか!ハハハハハ」
凪カイト(うぜぇ、)
北島ミミ「確か、弟がいました、創立記念日で休みだからと」
北島ミミ「それで、その弟に「遅刻するぞ」って言われました」
凪カイト(弟か、悪くないキャスティングだな)
凪カイト「よし、そろそろ若林先生に確認しに行こう。答え合わせだ」
瀬川桃子「え、でもわざわざ言わない理由も分かっていないのに?」
凪カイト「流石にその人間を言い当てられたら白状するだろ、オフィシャルじゃない場所でなら尚更な」
凪カイト(姉を姉の学校に担ぐなんてのは、思春期の男には、少し恥ずかしいよな)

〇保健室
  若林先生のいる保健室に行き事情を話すと、あっさりと白状してくれた。姉を運んだ弟の話を。
若林「それでね、弟君恥ずかしいっていうから、黙っててっていうのよ」
若林「可愛かったからつい言うとおりにしちゃったの。ごめんね。でもあれから大事なくて本当によかった。でももう遅刻しないようにね」
  若林先生曰く、真夏の朝は脱水しているので、真夏の朝は水分をよく摂ることを推奨しているのだという。
  朝ごはんを食べなかったことが裏目に出た結果、北島さんはより熱中症を引き起こしやすい状態だったとか。

〇古い図書室
凪カイト(さて、今回の問題がちゃんとウミガメのスープのネタとして使えるのかどうかだが、)
  問題
  女子高生が失神しているのを、誰かが助けてくれて、人知れず保健室に運んできてくれたようである。
  しかし保健室の先生に聞いても、それが誰だかわからないようだった。一体だれが運んできてくれたのだろうか?
  解説
  真夏。女子高生は遅刻しないために、朝ごはんを抜いて急いで家を出た。そのため登校中に熱中症で意識が朦朧とし、倒れてしまう。
  そこに駆け付けたのは、創立記念日で学校が休みだった女子高生の弟だった。
  他人でなく弟が運んでくれたお陰で、通報事案にならずに女子高生を保健室まで運ぶことができたのだが、
  弟は自分が姉を運んだのがこっ恥ずかしくて、保健室の先生に口止めしてもらっていた。
  だから保健室の先生は、運んでくれた人は知らないと主張したのだった。
  書き終えてから、液晶の文章を眺める。
凪カイト「うーん、ボツ」
  カイトは、×をクリックし、『保存しますか?』にいいえを選択したのだった。

次のエピソード:王子様を探して(side A)

コメント

  • タイトルが秀逸ですね😆
    ウミガメのスープ、最近知りました👍どんどん深みにハマって夢中になれますよね🙌

  • リクガメのみそしるの味、わたし気になります!
    (食べる側)

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