ブラック過ぎる温泉レジャー施設

郷羽 路

後半(脚本)

ブラック過ぎる温泉レジャー施設

郷羽 路

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〇温泉旅館
  ここは由緒ある温泉旅館。
  今現在はこの『分館』がその伝統を守っています。
  皆様覚えているでしょうか?

〇温泉旅館
  かつての『本館』は、こんな建物でしたが
  あの三馬鹿息子が勝手に改造して・・・

〇ラブホテル
  こんな馬鹿げた建物にしてしまった!
  表向きは『温泉レジャー施設』となっているけど

〇温泉街
  この温泉街には似合わない建物だ。
  お客様は増えたらしいけど、
  マナーが悪い人達も増えたので、
  付近住民は不満を持っていた!

〇ホテルのエントランス
木葉「お帰りなさいませ、ご主人様」
  かつての旅館で、『仲居』をしていた私は
  今日も馬鹿げた建物で、馬鹿げた格好して営業していた・・・
「木葉(このは)!?」
信繁「その格好・・・」
木葉「し、シゲちゃん!?」
信繁「『本館』でメイドしているとは、聞いていたけど・・・」
  彼は、あの三馬鹿息子の従兄弟で
  『分館』の経営を任されてる
  シゲちゃんこと信繁(のぶしげ)。
  一応、私の『彼氏』ではあるけど・・・
木葉「最悪・・・」
木葉「シゲちゃんにこんな姿見られるなんて・・・」
信繁「あっ!?いやいや!」
信繁「俺は普通に可愛いと思うぞ!?」
木葉「気持ちだけ受け取っておくね」
信繁「木葉を辱めやがって・・・」
信繁「もうメイドはやめろ!着替えてこい!」
「何言ってんの?」
秀吉「木葉はウチの専属メイドだよ」
秀吉「木葉がいなくなったら、たくさんのご主人様が困りますよ?」
  秀吉(ひでよし)。
  三馬鹿もとい三つ子の次男。
  『ホスト』の経験を活かし、日中の間は『執事』として営業している。
信繁「じゃあ、俺もご主人様だ」
秀吉「なっ!?」
木葉「シゲちゃん!?」
信繁「これで今日一日木葉をレンタルする」
信繁「文句はないな?」
秀吉「チッ、まあいいだろ」
秀吉「身内と云えど、チップさえ貰えば客だ」
秀吉「好きにしろ」
信繁「木葉、行くぞ」
木葉「は、はい!」
家康「秀吉いいの?木葉いなくて?」
  三男、家康(いえやす)。
  『バーテンダー』の能力を活かし、『飲食店(?)』を経営している。
秀吉「大金貰ったしな、一日くらいいいだろ?」
家康「ではこの前のツケ代として、全額貰うよ」
秀吉「オイコラ待て!それはオレの金だ!」

〇旅館の和室
  ──従業員寮、木葉の自室。
木葉「シゲちゃん、お待たせ」
信繁「ごめんな、木葉」
信繁「恋人を金で買うようなマネして・・・」
木葉「あ、別に気にしてないよ?」
木葉「それにしてもあの大金どうしたの?」
信繁「ああ、おじさんの病院代をおろしてきたんだよ」
信繁「何かあるといけないから、余分にとな」
木葉「それ、大丈夫なの?お金は・・・」
信繁「ざっと『給料三ヶ月分』といったところか」
木葉「それって・・・」
信繁「とりあえず、病院行こう」
信繁「一応まだ預金あるし」

〇田舎の総合病院
木葉「旦那様はここで入院していたのね」
信繁「今は意識を取り戻して、ケガも完治しているそうだ」
信繁「後は退院手続きすればいい」
木葉「良かった」
「果たしてそう上手くいくかな?」
「信長!」
  三つ子の長男、信長(のぶなが)。
  見ての通り、柄の悪い『ヤクザ』。
信長「俺の聞いた話だと、親父は『死んだ』ことになっているぜ?」
信繁「勝手に殺すな!」
信繁「おじさんは今日退院するんだよ!」
信長(ふん、病室行ったら驚くだろうな)
信長(なにせ、『ソレ』の専門家がいるからな)

〇豪華な社長室
  ──深夜遅く、三つ子の自室。
  ──では、昼までに父親を『殺せ』と言うんですか?
信長「ああ、俺が病室に行くのは怪しまれる」
信長「『闇医者』であるアンタなら可能だろ?」
  ・・・解りました
  なるべく自然な状態で『始末』しましょう
信長「ああ、報酬は弾むぜ」

〇田舎の病院の病室
  ──個人病室。
木葉「誰もいないね」
木葉「シゲちゃん、病室間違えた?」
信繁「あれ?そんなはずないけど・・・」
信長「だから言ったろ?親父は『死んだ』って」
信長「今頃『霊安室』に安置されているはずだぜ」
  ほう、『誰』が『霊安室』に安置されているって・・・?
信長「だから、親父が・・・」
  この馬鹿者がぁー!!
信長「いってぇなぁ・・・何しやがる!?」
「ほう、『吾輩』の声を忘れたか・・・?」
旦那様「この馬鹿息子が!」
信長「親父!?」
信長「だって、アンタ死んだはず・・・」
旦那様「もう一発食らうか?」
女将「信長!母さん、情けないわよ」
女将「『馬鹿な子ほど可愛い』とは云うけれど」
女将「『殺人』を企てる愚息はいらないわ!」
信長「お袋、それはどういう・・・」
警察「信長さんだね?」
警察「数多の詐欺容疑ならびに公金横領容疑」
警察「加えて殺人未遂の容疑で逮捕します」
信長「なっ!サツだと!?」
信長「どういうことだ!?」
信繁「お前、俺達が再会した日覚えているか?」
信長「あん!?」

〇神社の石段

〇田舎の病院の病室
信長「それがどうした?」
木葉「あの日、信長が『手付金』だってばら撒いたお金を警察に届けたの」
信長「なっ!?」
木葉「紙切れ同然にばら撒いたお金を」
木葉「受け取りたくもなかったし、まして神社に 奉納するのは罰当たりだし」
信繁「お前がまともな職に就いてないのは、 知っているからな」
信繁「念の為、そのお金を警察に届けたんだよ」
信繁「あの時見た車のナンバーも教えてな」
信繁「そしたら案の定、銀行で不正に取引された金らしいな」
木葉「銀行は紙幣番号を記録しているしね」
信長「・・・余計なことを」
信繁「それで、お前はしばらく警察にマークされていたのさ」
信繁「調べれば調べる程、お前の犯罪が明るみになったらしい」
木葉「弟二人もそれに加担、さらに別の犯罪も 明るみに出たの」
信繁「加えて最後は、おじさんの『殺人依頼』」
信繁「既にお前の周辺を調べていた警察が」
信繁「ずっとおじさんの警護してくれていた」
信繁「お前が依頼した『闇医者』、警察に捕まり全てを自供したって連絡が来た」
信長「チィィ!」
旦那様「あの時、吾輩をはねたあの赤い車はお前のだったそうだな」
旦那様「意識が戻った後、警察に事情聴取されて 車のことを話した」
旦那様「ナンバーは覚えてないが、趣味の悪い車の形はしっかり覚えていたぞ?」
信長「くっ・・・」
女将「もう言い逃れはできませんよ」
女将「お巡りさん、後は頼みます」
警察「さぁ、署まで来てもらおう!」
信長「イテテ!わかったから離せっ!」

〇ラブホテル
  ──その頃の本館。
  容疑者二人を確保、署に連行します
秀吉「イテテ、離せよ!オレは悪くない!」
秀吉「全部信長がやったことだ!」
家康「往生際が悪いよ、秀吉」
家康「逆らえば、公務執行妨害で罪が増える」
秀吉「お前も同罪だろうが!」
先輩「なになに?一体全体どうなっているの?」

〇畳敷きの大広間
  後日、従業員緊急招集。
旦那様「皆、吾輩が留守の間ご苦労だった」
女将「この度は、私共夫婦の教育がなってない ばかりに」
女将「皆様には多大な迷惑をお掛けしました」
旦那様「本来であれば、我々夫婦は辞職せねばならぬ身・・・」
旦那様「しかし、愚息共の後始末をするのも 親の務め」
旦那様「なので、旅館が落ち着くまでの間は」
旦那様「我々が当主を務めよう」
旦那様「そして、旅館が落ち着いた頃に・・・」
旦那様「甥の信繁に跡目を譲ることとする!」
女将「信繁、来なさい」
信繁「はい!」
旦那様「信繁は分家筋だが、我々がいない間、 ずっと旅館を支えてくれた!」
旦那様「信繁とは、『養子縁組』をしたので」
旦那様「正式に跡目が譲渡されるだろう」
旦那様「皆、異存はないな?」

〇温泉旅館
  こうして、シゲちゃんは正式に旅館の
  『後継者』となった・・・

〇ラブホテル
  あのいかがわしい本館は壊されることと
  なった。
  幸い温泉は分館のほうにあるので、業務に支障はなかった。

〇温泉旅館
  本館の後始末が済んだので、お二人は
  これを機に『隠居』。
  シゲちゃんが正式に『若旦那』となった

〇神社の本殿
信繁「木葉、俺と結婚してくれ・・・!」
信繁「妻として、若女将として、俺の傍にいてくれ!」
木葉「・・・はい」
  私はシゲちゃんと入籍した。

〇温泉旅館
  それから十数年・・・
  シゲちゃんは、『旅館当主』と『料理人』をしっかり両立させています。
  私は『仲居』しつつ、『若女将』としての務めを果たしています。
  子供も恵まれ、幸せな毎日を送っています。
  先輩は数年前に寿退社。
  時々家族連れで、旅館に泊まりに来ています。
  隠居の身ではありますが、お二人も時々
  仕事を手伝ってくれます。
  最も心配だったあの三つ子はというと・・・

〇温泉街
「いらっしゃいませ!!」
信長「本日はこの『焼き討ち団子』がオススメです」
秀吉「いや、この『お猿さん団子』がオススメですよ、奥さん!」
家康「『江戸将軍団子』がおいしいですよ?」
「・・・!!」
  黄団子おじさーん、『焼き討ち団子』二つちょーだい!
信長「はい、まいど!」
  茶団子さん、『将軍団子』ひとつ!
家康「ありがとうございます!」
  赤ザルさん、『お猿さん団子』みっつ!
秀吉「赤ザルじゃなくて『赤団子』ですよー?」
  パッと見わかりませんが、この三人は
  あの『三つ子』です。

〇法廷
  数々の『余罪』で起訴された三人。
  秀吉、家康にはそれぞれ『懲役10年』、
  信長は『殺人未遂』の余罪で『懲役12年』が言い渡された。

〇温泉街
  『懲役10年』以上の実刑に懲りたのか、
  仮出所後日の三人はすっかり大人しくなった。
  本来なら勘当されている身だが、旦那様の計らいで
  近所の和菓子職人に、弟子入りさせた。
  坊主頭になり、『かつての三英傑の再来』と呼ばれた三つ子は
  『カラフル団子ブラザーズ』として
  この温泉街の『名物ゆるキャラ』になりつつあった。

〇温泉街
息子「おじちゃーん!団子10個ずつちょーだい!」
「ヘイ!まいど坊ちゃん!」
木葉「みんなのお団子、旅館でも評判いいからね」
息子「ママ、団子ブラザーズのおじちゃんって」
息子「どっちが一番上なの?」
信長「そりゃ当然、長男の黄団子の信長だよ!」
家康「いや、かわいい末っ子の茶団子の家康だよ?」
秀吉「間が一番と云うだろ?次男の赤団子、秀吉に決まっているじゃないか」
信繁「どっちも同じじゃないか」
息子「パパ!」
信長「なんだとシゲ!やんのかコラ!?」
信繁「お宅の団子の取引、打ち切るぞ?」
信長「そ、それだけは御勘弁を!」
  昔は色々ありましたが、今ではすっかり
  三つ子ともなかよしです。

〇旅館の受付
木葉「当旅館にようこそおいでくださいました」
木葉「若女将の木葉と申します」
  旅先でこちらに来られたら、
  是非この旅館に泊まりに来てください。
  従業員一同、心を込めてお世話させていただきます。
  お・わ・り❤

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