ブラック過ぎる温泉レジャー施設

郷羽 路

中半(脚本)

ブラック過ぎる温泉レジャー施設

郷羽 路

今すぐ読む

ブラック過ぎる温泉レジャー施設
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇温泉旅館
  ここは昔から続く由緒ある温泉旅館。
  今までは、旦那様と女将さんが当主で
  旅館を切り盛りしていました。
  しかし、旦那様が『交通事故』により
  病院でしばらく『長期入院』・・・
  女将さんも、夫の付き添いで『長期不在』・・・
  二人の甥にあたるシゲちゃんこと
  『信繁(のぶしげ)』が、
  『料理人』でありながら、『当主代理』として、1ヶ月頑張ってきたのだが・・・
  お二人の御子息の『三つ子』たちが帰ってきて、大変な事になってしまった!
  旅館繁栄を願って名付けられた、
  かつての『三英傑』の名を持つ三つ子
  『信長(のぶなが)』、『秀吉(ひでよし)』、『家康(いえやす)』・・・
  しかし信長は『ヤクザ』、秀吉は『ホスト』、家康は『バーテンダー』といった
  『旅館経営』とかけ離れた職業だから、
  絶対波乱が起こるに決まっている!

〇畳敷きの大広間
  ──朝、従業員全員緊急招集。
信長「さて、俺達が当主となったからには、 経営方針を色々変更させてもらうぜ」
信長「まず、この旅館そのものが古すぎる!」
信長「なので、旅館を改築することにした!」
  古いもなにもこの旅館は昔からの伝統
  じゃないか?
  お客様だって、全く来ない訳じゃない!
  繁忙期だってあるぞ!
信長「たが、帳簿を見れば年間収益は全く上がってないようだが?」
信長「中には、客が全く入らずに赤字になった月がいくつかある」
  (((それを言われると反論できない)))
秀吉「そこでオレたちは考えた・・・」
秀吉「客を増やすために、外観を変えようと 思ってナ」
秀吉「これなら、若いコや、外人さんたちも 来てくれるだろう?」
  なんだこりゃ?
  こんな面妖なモノ、温泉街に合うわけないだろ!
秀吉「都会じゃこういうのは普通だよ?」
家康「もちろん逆に、洋食が苦手な人だっている」
家康「なので、『分館』は今まで通りにして」
家康「『本館』そのものを改築する」
家康「そうすれば、ニーズに合うお客様が増えていくと考えています」
  しかし、そんな金どこにあるんだ?
  まさか、従業員の給料を減らす気じゃないのか・・・?
信長「安心しろ、俺達はそこまで鬼じゃねぇ」
信長「金ならここにある」
  !!!???
信長「俺の職業知っているよな? これでも『金融会社』の『重役』だぜ?」
信長「金の工面なぞいくらでもつく」
  (((『闇金融』の『ヤクザ』・・・!)))
秀吉「従って『本館』は工事の為しばらく休業!」
秀吉「『本館』にいるお客様には『分館』に移動してもらう」
秀吉「お客様にはオレが『サービス』しておく」
秀吉「オレは『サービス』にはうるさい男だ」
  (((『ホスト』の『サービス』・・・?)))
家康「新しい洋食メニューについては、 僕にお任せ下さい」
家康「『飲食店』経営の知識があります」
  (((バーテンが料理するのか?)))
  それ、女将さんは了承しているのか?
信長「おう、金見せたら気絶するくらい 喜んでいたぜ」
秀吉「心臓発作起こしかけたけど、今はゆっくり 休んでいるよ」
家康「一応病院で検査入院しているよ」
  (((ショックで失神したんだろ!)))
  (((しかも、何気に『殺人未遂』・・・)))

〇温泉旅館
  本館が壊されることとなり、しばらくは、
  この分館で営業する事になった。
  幸い、本館のお客様は『笑顔』で分館に
  移動してきたらしい。
  いったい何をしたんだ、秀吉・・・?

〇ラブホテル
  数ヶ月後・・・
  『本館』が完成し、私と先輩は今日から
  ここで働くこととなる。
  ちなみに、シゲちゃんは『分館』の経営を任されている。
先輩「ねぇ、これ『ラブホ』じゃないの?」
木葉「一応『温泉ホテル』という話だけど・・・」

〇ホテルのエントランス
木葉「中はこんなに豪華・・・」
先輩「私たち、『場違い』じゃない?」
「あー、君たち違う違う!」
木葉「秀吉?」
秀吉「おいおい、『執事長』と呼んでくれ」
秀吉「それは、『分館』の衣装だろ? サッサとコレに着替えたまえよ」
(こ、これって・・・)
(なんでメイド服~!?)
秀吉「おおっ?いいじゃん二人共!」
木葉「なんでこんなの着なきゃいけないのよ?」
秀吉「洋風の建物には『執事とメイド』が、 必須だろ?」
先輩「・・・あの私たち、一応成人しているので」
先輩「年齢的に厳しいと思いますよ?」
秀吉「大丈夫!旅館の中でも君たちがとびきり キレイだよ?」
秀吉「なにせ、このオレが本館のメイドを厳選 したからな」
秀吉「選ばれなかった『醜女』は、分館止まり ということさ」
(女の敵め!)
秀吉「ほーら、スマイルスマイル」
秀吉「お客様が来たら 『お帰りなさいませ、ご主人様』だからな」
秀吉「言い方間違えるなよ?」

〇ホテルのエントランス
「お帰りなさいませ、ご主人様!」
  おう、荷物運んどいてくれよ
「かしこまりました、ご主人様!」
客「おーい、マッサージ頼む!」
木葉「承知しました、ご主人様」
秀吉「ルームサービス頼むよ」

〇ホテルの部屋
木葉「お食事をお持ちしました、ご主人様」
客「あっメイドさん、魔法かけてくれよ」
木葉「・・・魔法?」
客「ほら、『美味しくなーれ、美味しくなーれ』とか言ってハート飛ばすのヤツ!」
木葉「あー、そちらの魔法ですね」
木葉「美味しくなーれ、美味しくなーれ」
客「よし、いい画が撮れたぞ!」
木葉「・・・ご主人様、メイドの撮影は 禁止ですよ?」
客「あっ大丈夫!撮ったのは料理だから!」
木葉「・・・・・・」

〇ホテルのエントランス
木葉「ご予約のご主人様は、終わりですよね?」
先輩「ほぼセクハラでしょ、この義務・・・」
「はい、お疲れさま!」
家康「夕方からは、僕のお店に回ってくれ」
木葉「家康・・・まだメイドを続けないとダメなの?」
家康「大丈夫!メイドは日中だけだから!」
(良かった・・・)

〇シックなバー
  しかし・・・
(騙された!!)
  ・・・私達は閉店時間まで、この格好で給仕していた。
  ちなみに家康はそのままバーテン、
  秀吉はホストに戻って接客していた・・・

〇露天風呂
先輩「ハァ、疲れたわ・・・」
木葉「本当に・・・」
先輩「ていうか何?あの業務、完全にセクハラでしょ!」
先輩「メイドにチャイナ! コスプレホテルかってーの!」
木葉「でも客層が増えているのですよね?」
先輩「客層が増えても、従業員の数は増えないわよ!」
先輩「人を雇うにせよ、絶対こんなブラック企業には来ないって!」
木葉「・・・しばらく様子を見ましょう」
木葉「問題が発覚すれば、あの三つ子はタダじゃ済まないはず」
先輩「木葉、アテがあるの?」
木葉「はい、確証はないですが・・・・・・」

〇温泉旅館
  ──数週間後。
  就業後の寮への帰り道。
先輩「ハァ、やっぱりこの格好が落ち着くわぁ」
先輩「とてもじゃないけど、メイドやチャイナで外歩けないわ・・・」
木葉「この服は、旅館のトレードマークですものね」
先輩「忙しくて分館には寄ってないけど、どうなってるんだろ?」
木葉「シゲちゃん所は大丈夫かな?」
  馬鹿野郎がっ!!

〇旅館の受付
信長「テメェ、今までこんな安価で営業していたのか?儲けにならないだろ!」
信繁「昔から、同じ値段だ!ここには常連客も来る!」
信繁「おまけに勝手に、食材の粗悪品まで輸入しやがって・・・!」
信繁「そんな法外な値段で食事を提供できる訳ないだろ!」
信長「食材は安く仕入れ高く売るは常識だ!」
信長「粗悪品とか言っているが、単にお前の料理の腕が悪いだけだろ?」
信繁「貴様・・・!」
木葉「ちょっとやめなさいよ!」
木葉「こんな所で大声出して・・・ 信長、営業妨害したい訳?」
信長「チッ・・・」
信長「シゲ、お前の給与から不足分差っ引いておくからな!」
木葉「シゲちゃん、大丈夫?」
信繁「木葉、悪い・・・」
信繁「見苦しい所見せて・・・」
木葉「ねぇ、シゲちゃん」
木葉「ここ辞めて、他の所で働かない?」
木葉「あいつら、余りにも横暴すぎる」
先輩「私も・・・こんなブラックな旅館は耐えられないわ」
信繁「言いたいことはわかります」
信繁「でもここは『おじさん』の旅館だから」
信繁「俺がしっかり守らないといけない」
木葉「でも、あの三馬鹿がいるかぎり、旅館は 悪くなる一方よ」
信繁「・・・実はおじさんの意識が戻ったんだ」
「本当!?」
信繁「今日連絡が入ったんだ」
信繁「明日にでも旅館に乗り込んでやるって!」
信繁「あの三人はまだ知らない」
木葉「良かったー」
先輩「旦那様がお戻りになれば、旅館も安泰ね!」
信長「・・・そうはさせるかよ」

〇豪華な社長室
  ──本館、三つ子の自室。
信長「どうやら、親父が退院するらしい」
秀吉「おいおい、マジかよ!?」
家康「この状態を見られたら、絶対追い出されるね」
秀吉「信長、弁護士いるんだろ?なんとかならないのか?」
信長「裁判になる前に、追い出されるのが先だ」
家康「お袋一人ならなんとかなるけど」
家康「親父は思い通りにならないからな」
秀吉「冗談じゃねぇぜ!楽に金儲けができると 思ったのによ!」
家康「流石に都会に戻る訳にはいかないよ?」
家康「二人は、不正にお金を横領しているしね」
秀吉「テメェだって、恐喝で賄賂受け取っているだろうが!」
信長「兄弟で揉めるな! 全員同じ穴のムジナだろうがよ!」
信長「『あん時』は失敗したが、次は確実に息の根を止めねぇとな・・・」
秀吉「『あん時』?」
家康「まさかとは思っていたけど」
家康「親父の『交通事故』って・・・」
信長「それ以上聞くのは野暮だ」
信長「俺には、『ソレ』の専門家が付いている」
信長「お前らは、安心して営業を続けてろ・・・」

次のエピソード:後半

成分キーワード

ページTOPへ