第13章 吹き荒れる嵐(脚本)
〇寂れた村
仮面の戦士「・・・・・・」
仮面の戦士(ムーヴ村・・・ 6年前、魔物に滅ぼされた村・・・)
仮面の戦士(ここに来れば、失った記憶を取り戻せる気がして、何度か足を運んでいるが)
仮面の戦士「・・・なにも思い出せない」
仮面の戦士(自分の名前すらも・・・)
仮面の戦士「キープレートの野望・・・ 虹のきざはし・・・」
仮面の戦士(唯一覚えていたのは、自分の使命だけだ)
仮面の戦士「この使命を果たせば・・・ すべてを思い出すのだろうか」
仮面の戦士「村の共同墓地・・・」
仮面の戦士(妙に懐かしい・・・)
仮面の戦士(かつての知人が、ここに眠っているのだろうか・・・?)
仮面の戦士「・・・・・・」
〇謁見の間
ナギット・フォン・スペサルト「おまえは城に残れ 特別試験への参加は許さぬ」
ミモザ・クラリティ「・・・えっ!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ナギット様!」
デアネイ・フォン・スペサルト「どういうこと!? 父上、説明してください!」
ナギット・フォン・スペサルト「デアネイ おまえは下がれ」
デアネイ・フォン・スペサルト「父上!」
ナギット・フォン・スペサルト「プレーンのウーウァ王子の戴冠式まで半月もない」
ナギット・フォン・スペサルト「おまえが家出などするから、騎士や侍女たちが準備に追われているのだぞ」
ナギット・フォン・スペサルト「いずれ王になるのなら、臣下のことを思いやれ」
デアネイ・フォン・スペサルト「・・・っ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ナギット様! どういうおつもりですか!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「わたしを婚約者として支えるため、ミモザを同行させるようにと・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園長にそう要請したのはナギット様でしょう!」
ナギット・フォン・スペサルト「事情が変わったのだ それに、学園長の許可は得ている」
ミモザ・クラリティ「そんな・・・ どうして急に・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「シグバート王子 下がっていただこう」
シグバート・フォン・ブラッドショット「納得できる説明をしていただいておりません!」
ナギット・フォン・スペサルト「まずミモザに話す その後、ミモザからそなたたちに釈明させる」
ナギット・フォン・スペサルト「わたしを信用しないわけではあるまいな?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・・・・」
ミモザ・クラリティ「シグバート様・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・すまない、ミモザ」
〇ヨーロッパの街並み
ヴィオラ・コーディエ「・・・ミモザが!?」
研究員「学園長がそうおっしゃったの ミモザさんはスペサルタイト城に残るようにって」
ノエル・エンジェライト「・・・学園への帰還ではなく、城へ残るということは・・・」
ノエル・エンジェライト「ナギット王の意向でもあるということでしょうか」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル、行くよ! 王城はあっちだよな!?」
ノエル・エンジェライト「ええ」
研究員「あ、ふたりとも!」
研究員「ヴィオラさんはともかく、ノエルくんまで行っちゃった・・・」
研究員「学園長が言ったこと、ほんとなのかも・・・」
〇謁見の間
ミモザ・クラリティ「へ、陛下・・・」
ミモザ・クラリティ「・・・っ!」
ナギット・フォン・スペサルト「自分の立場をわきまえよ」
ナギット・フォン・スペサルト「婚約者のいる身でありながら、別の男と不貞行為を働いていたそうだな」
ミモザ・クラリティ「それは違います!」
ミモザ・クラリティ「ノ・・・ いえ、あの方は、わたしを心配してくださっただけで・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「・・・わたしは誰ととは言っていないが 特定の人物が思い浮かぶようだな?」
ミモザ・クラリティ「あっ・・・!」
〇巨大な城門
ヴィオラ・コーディエ「・・・だから! あたしたちはミモザに会いたいだけなんだって!」
スペサルト兵「陛下の命令ですから 姫様へのお目通りは叶いません」
ヴィオラ・コーディエ「・・・どうする? 魔法で脅すとか・・・?」
ノエル・エンジェライト「得策ではありません 待つしかないでしょう」
ヴィオラ・コーディエ「そうだ 学園長の手紙になにか書いてないかな?」
ノエル・エンジェライト「・・・読んでみます」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・ ・・・・・・」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル?」
ノエル・エンジェライト「闇精よ かの者に深淵の眠りを」
スペサルト兵「なっ・・・!?」
ヴィオラ・コーディエ「闇精術・・・!?」
ノエル・エンジェライト「眠らせただけです ぼくが使える闇精術はこの程度ですから」
ヴィオラ・コーディエ「ふーん 氷精術はあんなすげーのに・・・」
ヴィオラ・コーディエ「・・・じゃなくて! 今、得策じゃないって言ったばっかだろ!?」
ノエル・エンジェライト「事情が変わりました」
ノエル・エンジェライト「・・・スペサルト王の誤解を解かなければなりませんから」
ヴィオラ・コーディエ「誤解?」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル! どういうことなんだよ!?」
〇城の廊下
シグバート・フォン・ブラッドショット(学園長・・・ なぜこのタイミングでミモザを離脱させるんだ?)
シグバート・フォン・ブラッドショット(ミモザがオレたちと一緒にいると、なにか不都合があるのか?)
「誰かあの魔道士を止めろー!」
「魔法障壁を突破されたわ! もうダメよ!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「何事だ!?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエル!?」
ヴィオラ・コーディエ「ノエル! 待てって!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラ! これはいったい!?」
ヴィオラ・コーディエ「シグバート! ノエルが・・・!」
〇謁見の間
ナギット・フォン・スペサルト「キープレートめ 自分の養子は心配無用などとほざきおって」
ミモザ・クラリティ「・・・・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「何事だ? 妙に騒がしいな」
スペサルト兵「申し上げます! 学園の魔道士が城内に侵入しました!」
ナギット・フォン・スペサルト「なんだと!?」
スペサルト兵「魔法障壁が効かないのです! 手足を凍らされ、誰も手出しができず・・・」
ミモザ・クラリティ(まさか・・・ノエルさん!?)
ナギット・フォン・スペサルト「やむを得んな 少々痛めつけてでも・・・」
ミモザ・クラリティ「やめて!」
ミモザ・クラリティ「わたし・・・城に残ります すべて父上のおっしゃるとおりにします」
ミモザ・クラリティ「だから、彼に手を出さないで!」
ナギット・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「まあ、よかろう では侍女とともに奥宮殿へ行け」
ミモザ・クラリティ「はい・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「わたしはその魔道士のもとへ行く おまえはミモザの監視をせよ」
スペサルト兵「承知いたしました ですが、姫が脱走などなさるでしょうか?」
ナギット・フォン・スペサルト「脱走はしないだろうが ・・・誘拐はされかねないからな」
〇城の廊下
シグバート・フォン・ブラッドショット「ノエル! 止まれ!」
ヴィオラ・コーディエ「手紙になんて書いてあったんだよ!?」
ナギット・フォン・スペサルト「そこまでだ 学園長の養子よ」
ヴィオラ・コーディエ「オッサン、誰?」
シグバート・フォン・ブラッドショット「バカ! スペサルト王ナギット様だ!」
ヴィオラ・コーディエ「じゃあミモザとデアネイの・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・スペサルト王 養父の言ったことは誤解です」
ノエル・エンジェライト「感情を排するように言われているぼくが、特定の誰かに入れ込むことはありません」
ナギット・フォン・スペサルト「・・・・・・」
ナギット・フォン・スペサルト「城への侵入、兵士への攻撃 おまえたちの罪状は数えきれぬ」
ヴィオラ・コーディエ「あたしもかよ!?」
ナギット・フォン・スペサルト「・・・が、不問にしてもよい ミモザがここに残ることと引き換えにな」
ナギット・フォン・スペサルト「早々に去れ 娘の献身に感謝することだな」
ヴィオラ・コーディエ「なんだよ、あのオッサン! ミモザを探して連れ出しちゃえば・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「よせ! 下手をすればミモザやデアネイに害が及ぶぞ!」
ヴィオラ・コーディエ「うっ・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・とにかく、城を出よう おまえたち、投獄されたくないだろう」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・」
〇ヨーロッパの街並み
ヴィオラ・コーディエ「・・・で、学園長はなんて書いてたんだ?」
ノエル・エンジェライト「・・・・・・ ぼくが・・・その・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・ノエル おまえの気持ちは知っている」
シグバート・フォン・ブラッドショット「だから正直に言え 学園長はなんと言っているのだ」
ヴィオラ・コーディエ「・・・シグバート、気づいてたのか!?」
ヴィオラ・コーディエ「ノエルがミモザを好きって・・・ あっ」
シグバート・フォン・ブラッドショット「見ていればわかる」
ノエル・エンジェライト「・・・貴方がたまで・・・ そんなことを言うんですね・・・」
ヴィオラ・コーディエ「だって、そう見えるし」
シグバート・フォン・ブラッドショット「ヴィオラが気づくのにオレが気づかないはずがないだろう」
ヴィオラ・コーディエ「どういう意味だっ!」
ノエル・エンジェライト「・・・違います ぼくは・・・ただ・・・」
ノエル・エンジェライト「・・・いえ 真実よりも、他人からどう見えるかのほうが大事ですから・・・」
ヴィオラ・コーディエ「えっと・・・ノエル?」
ノエル・エンジェライト「態度を改めます すみませんでした、シグバートさん」
シグバート・フォン・ブラッドショット「いや、オレは・・・」
ノエル・エンジェライト「今後・・・ 貴方の婚約者に恋慕していないことを証明します・・・」
ヴィオラ・コーディエ「あいつ・・・ けっこうめんどくさい奴だな」
シグバート・フォン・ブラッドショット「プルウィルストーンを取得し、学園へ帰還したら・・・」
シグバート・フォン・ブラッドショット「学園長に、ミモザの再参加の許可を頼んでみよう」
ヴィオラ・コーディエ「・・・うん!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「そもそも学園長が許可したことだ 発言の責任は取っていただこう」
ヴィオラ・コーディエ「・・・あれ?」
〇可愛らしいホテルの一室
デアネイ・フォン・スペサルト「姉上のことが好きじゃないなら・・・ 婚約は解消して!」
シグバート・フォン・ブラッドショット「・・・くだらんな」
〇ヨーロッパの街並み
ヴィオラ・コーディエ(ノエルの気持ちを知ってたんなら・・・ なんでシグバートはあんなこと言ったんだ?)
「ヴィオラ! 早く来い」
「今日中にカナリーへ行き、明日にはポーラに向かうぞ」
ヴィオラ・コーディエ「う、うん!」
〇英国風の図書館
レオナ・フォン・プレーン「くっ・・・ と、届かない・・・」
キープレート学園長「お目当ての本はこれですか?」
レオナ・フォン・プレーン「学園長! ありがとうございます」
レオナ・フォン・プレーン「脚立が他の方に使われていたものですから 助かりましたわ」
キープレート学園長「薬草学の研究書ですね レオナくんは薬草研究に興味があるのですか?」
レオナ・フォン・プレーン「少し調べたいことがありますの」
キープレート学園長「そうでしたか 勤勉でよいことです」
キープレート学園長「では、わたしはもう行きますね」
レオナ・フォン・プレーン「ええ、ごきげんよう」
レオナ・フォン・プレーン「・・・・・・」
レオナ・フォン・プレーン(グランメル特有の毒草・・・ プレーンで栽培されるものとよく似ている)
レオナ・フォン・プレーン(兄上はやはり、母上のことを毒殺したのね)
レオナ・フォン・プレーン(和平を訴える母上が邪魔だったのだわ)
レオナ・フォン・プレーン(兄上の戴冠式の前に証拠を揃えなければ)
レオナ・フォン・プレーン(・・・ミモザへの手紙も書かなければ)
レオナ・フォン・プレーン(しばらくは直接会うこともできないでしょうし)
レオナ・フォン・プレーン(それにしても・・・)
レオナ・フォン・プレーン(なぜ学園長は、恋愛小説や恋愛心理学の本をあんなにたくさん持っていたのかしら?)
〇豪華な部屋
キープレート学園長「恋愛は人を狂わせる・・・か」
キープレート学園長(人ならざる身のあれに、こんな感情が芽生えるとは・・・)
キープレート学園長(ヴィオラたちがスペサルタイトを離れた隙に、ナギットのところへ行かねばな)
キープレート学園長(ノエルには釘を刺したが、万が一ということもある)
キープレート学園長(ミモザからの想いが消えれば・・・ ノエルも諦めるだろう)