母を肯定できなくてー宗教2世の記録ー

咲良綾

ep4.どん底(鬱発症)(脚本)

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咲良綾

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〇女の子の一人部屋
坂下明菜「もう、お昼・・・」
  寝ている時間がだんだん増えている。
  遅くまで寝ていたのに、夜は早々に眠くなる。

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下明菜「う・・・」
  ご飯も食べる力が出ない。
  食べないと死ぬから、なんとか少し食べてる。
  この苦痛が1日3回、毎日だなんて・・・
  おいしいと思えるって、
  幸せで恵まれたことだったんだ

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下百合子「漢方薬も、あまり効果がなさそう?」
坂下明菜「うん・・・」
  色々な病院で何度も検査をしたけど、
  体の不調は何も出ない。
  鍼灸、整体、漢方、色々試した。
  あと思い当たるのは・・・心因性。
坂下明菜「心療内科はどうかな」
坂下百合子「そうね」

〇病院の診察室
坂下明菜「だるくてまともに生活できないのに、 検査では何も出なくて」
精神科医「不眠はありますか?」
坂下明菜「いえ・・・眠れます」
精神科医「死にたくなることは?」
坂下明菜「いえ、そんなことは・・・」
精神科医「あのね。ここにはもっとひどい人がたくさん来るんですよ。あなたはたいしたことありません」
坂下明菜「えっ・・・」
精神科医「薬を出すほどではなさそうです。 落ち込むことは誰でもありますよ」
坂下明菜「そう・・・ですか・・・・・・」
  じゃあ、何?
  これは、わたしの甘え?

〇通学路
坂下明菜「・・・はぁ、はぁ、」
坂下明菜「息が苦しい」
坂下百合子「ゆっくりでいいよ」
坂下明菜「一件だけ・・・伝道したら、帰っていいかな」
坂下百合子「そうね。時間は短くても、神は明ちゃんの努力を見てくださっているわ」
坂下明菜「ありがとう・・・」
  でも、こんな症状が出るのは
  伝道活動のときだけだ。
  ・・・体が拒否してる?

〇白いバスルーム
  ・・・もう、体重が40キロ切りそう。
  貧相でノースリーブが着られなくなった。
  痩せすぎても魅力がないんだな・・・

〇女の子の一人部屋
  ・・・どうしたらいいの?
  治療できるような病名が見つからない。
  自分がどうしたいかもわからない。
  もう考えるのも億劫になってきた。
  このまま活動低下して死ぬの・・・?

〇おしゃれなリビングダイニング
坂下百合子「血液検査をして、その人に必要な栄養素のサプリを処方してもらえるんですって」
坂下明菜「サプリ・・・?まあ、栄養は足りてなさそうだから、いいかも」

〇おしゃれなリビングダイニング
  プロテインの粉と牛乳を混ぜて・・・
  これなら咀嚼もないし、
  さほど体力使わずに摂取できるな

〇女の子の一人部屋
  サプリとプロテインのおかげか、
  体力が少し戻った。
  栄養って大事だな・・・
  ちょっとずつ、ご飯もおいしくなってきた。
  ありがとう、食欲。
  おいしいは人生を輝かせる!
  頭が回るようになってきたから、
  現状を整理しなきゃ
  主な不調は朝起きられないこと、集会や奉仕で気が遠くなったり息苦しくなったりすること。
  アルバイトでは普通に働ける。
  疲れたり苦しくなったりしない。
  この不調は、宗教活動が原因・・・?
  この前読んだ本に、自分の気持ちを書き出してみるってあったな。
  開拓奉仕に復帰したい
  奉仕が好きになりたい
  ちゃんと個人研究できるようになりたい
  集会で寝ないようにしたい
坂下明菜「・・・」
  あれ?
坂下明菜「・・・なんか、苦しいかも」
  書いた紙の文字が、嘘くさい。
  見たくない、つらい。
坂下明菜「これ・・・本当に、わたしの気持ち?」
  探ろうとしても、鍵がかかって進めない。
坂下明菜「そうだ、好きなもの。 わたし、好きなものはたくさんあったはず」
坂下明菜「・・・漫画・・・」
坂下明菜「・・・これ、わたし好きだったよね?」
  よくわからない。
  読めるけど、心がシーンとしてる。
  麻酔が効いているような感覚。
  わたしは温度がわからなくなったまま、熱湯に浸かって火傷していたのかも。
  慣れたんじゃなかった。
  心が耐えられず体と剥離しただけ。

〇黒
  感動を失った心に一年ほど試行錯誤していたが、ある日の発表が運命を変えた。

〇講義室
長老「協会の出版物をデータ化した、ライブラリーCD-ROMの日本語版が用意されました」
坂下明菜「!」
  パソコンで、出版物が見られる?
  ・・・パソコンを買える!?

〇白い校舎
  わたしは高校時代、情報処理科で
  プログラミングの勉強をしていた。
  元来、工夫したプログラムで成果を得る作業に興味があり、パソコンが好きだった。

〇講義室
坂下明菜(今までインターネットの危険性を警告されてばかりで、パソコンを買う雰囲気じゃなかった)
坂下明菜(でも、パソコン購入のお墨付きが出た)
坂下明菜(パソコンが買える・・・! 久しぶりにワクワクする!)

〇女の子の一人部屋
  ほどなく、ノートパソコンを購入した。
坂下明菜「パソコンだー!」
坂下明菜「ライブラリーをインストールして・・・ 資料を広げずにこれ一台で割当が作れるな」
坂下明菜「メールや調べ物は必要だよね。 月8時間だけインターネット契約しよう」
坂下明菜「インターネットって、どういうのがあるのかな」
  これが、わたしの救世主になる。

次のエピソード:ep5.ネット友達(別コミュニティの救い)

コメント

  • 私も怪我で医者に誤診されました。検査も必要ないと。
    食い下がって検査お願いしたら嫌な態度され、逆に怒られました。症状が検査で判明してからは、何の処置もされずに専門医へ丸投げ(笑)紹介された専門医と看護師さんが怒ってくれたのが救いでした。
    今回は、お母さんが咲良さんをとても心配してくれていますね。吹き出物の件にしても、神様が全部治してくれるという考えではなくて良かった。

  • パソコンで本当に世界への窓が開いた感じですね。
    「おいしく食べよう」が信条の綾りんにこんなに食事がつらい期間があったなんて、と思うと、あの信条がとても大切なものだと感じます。

  • おお、ついにインターネットの世界に…!
    子供の頃からを思うと長かったですね😭

    ああいう対応の医者っていますよねー!
    心の中ではぶん殴ってますけどね!

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