#6 再編のおままごと(脚本)
〇一人部屋
加藤麻里奈「うん。私たち、出会わなかったことにしよう」
加藤輝明「話が早い女は好きだぜ」
加藤輝明「堕胎費用は俺が持つよ」
加藤麻里奈「分かった。お腹の子には申し訳ないけど、これが私たちの正解だもんね」
加藤輝明「ああ」
加藤麻里奈「・・・」
加藤麻里奈「・・・って私なら言うんだろうな」
加藤麻里奈「そして、ずっと後悔する」
加藤麻里奈「顔も見たことがない我が子に、ずっと呪われ続ける」
加藤輝明「・・・は?」
加藤麻里奈「ふふっ、何でもない」
加藤麻里奈「なんとなく、そういう未来が見えただけ」
加藤輝明「・・・」
加藤麻里奈「私は・・・産むよ」
加藤輝明「はぁ?」
加藤麻里奈「大丈夫。一人で育てるから」
加藤輝明「・・・」
加藤輝明「めんどくせぇ女」
加藤麻里奈「私の中の不安の種・・・それは、あなたの存在」
加藤麻里奈「あなたと一緒にいると、私は私でなくなってしまう」
加藤麻里奈「何度もあなたを殺し、最後には自分まで殺してしまう」
加藤麻里奈「だから・・・あなたの存在を、私の中でなかったことにすればいい」
沢辺麻里奈「・・・さよなら」
沢辺麻里奈「これで私は、やっと私になれる」
〇空
これからはお腹の子と、二人で生きていこう
妻ではなく、母親として、この子のために生きよう
きっとそれが、私にとっての本物の世界だから
〇幻想空間
〇綺麗な病室
〇明るいリビング
再編のおままごと
加藤沙夜「お母さん大好き!」
沢辺麻里奈「私もよ! 沙夜!」
沢辺麻里奈「あなたは私の宝物!」
加藤沙夜「わーい! やったー!」
加藤沙夜「お母さん今日は何食べるー?」
沢辺麻里奈「今日はねー」
〇アパートのダイニング
加藤麻里奈「ハンバーグ・・・」
加藤沙夜「やったー! 私ハンバーグ大好きー!」
加藤麻里奈「・・・」
加藤沙夜「お父さーん! 今日ハンバーグだってー!」
加藤輝明「おぉ、ハンバーグか〜。ハンバーグなんていつぶりだろ・・・」
加藤輝明「・・・ってお前、料理できたのか?」
加藤沙夜「そうだ。お母さん、いつもスーパーのお惣菜で誤魔化してるからちゃんとした料理作れないんじゃ」
加藤輝明「買ったものそのまま並べるだけで料理した気になってるお前がハンバーグなんて作れるのか? それとも・・・」
加藤沙夜「冷凍のハンバーグ・・・」
加藤輝明「おい・・・毎回冷凍食品ばっかり・・・さすがに沙夜が可哀想だろ」
加藤沙夜「冷凍はもう・・・やだ」
加藤輝明「・・・そうだ。今日は外食にするか」
加藤沙夜「外食!? 私ファミレス行きたい!」
加藤輝明「おう! 肉汁たっぷりのちゃんとしたハンバーグ食おうな!」
加藤輝明「そんじゃ〜車出すわ〜」
加藤沙夜「わ〜い」
加藤麻里奈「・・・」
〇ファミリーレストランの店内
「ハッピーファミリーレストラン!」
ハピファミちゃん「家族団欒憩いの場! 夢のキッチン、ハッピースへようこそ!」
ファミデビちゃん「3名様ですね! ご案内しまーす!」
加藤沙夜「わーい! ハピファミちゃんだー!」
加藤輝明「ファミデビちゃんもいるぜ!」
加藤麻里奈「・・・」
「ハッピーハッピー、ハッピース!」
加藤沙夜「ハンバーグ! ハンバーグ!」
加藤輝明「オムライス! オムライス!」
ハピファミちゃん「お待たせしました〜(神速)」
加藤沙夜「ハッピーハッピー、ハッピース!」
加藤輝明「やっぱハッピースの料理は最高だな!」
加藤麻里奈「は・・・」
加藤沙夜「お母さん、ファミレスって良いよね!」
加藤輝明「こうやって3人でご飯食べてると、なんだか家族って感じがするよな」
加藤麻里奈「・・・」
加藤麻里奈「・・・そうね。3人でご飯」
「ハッピーハッピー、ハッピース!」
加藤麻里奈「・・・楽しい」
加藤沙夜「でしょ!」
加藤輝明「これが・・・幸せか」
加藤麻里奈「幸せ・・・」
加藤沙夜「そう! 幸せ!」
加藤麻里奈「やっと思い出した・・・これが幸せだったんだ」
加藤沙夜「うん! これが幸せだよ!」
ハピファミちゃん「みんなハッピー♪」
ファミデビちゃん「めでたしめでたし♪」
加藤沙夜「ハッピーファミリーレストラン!」
「ハッピーファミリーレストラン!」
〇山中の川
加藤沙夜「ハッピーファミリーレストラン・・・」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「私は二人の愛の結晶。それ以上でも以下でもない」
加藤沙夜「私が生まれたとか、生まれなかったとか、そんなことはどうでもいい」
加藤沙夜「ただ、二人が愛し合った時間をなかったことにしたくない」
加藤沙夜「それだけ。ただ、それだけ」
私自身が、“愛”だから
その形を維持するのが、私の役目だから
加藤沙夜「私が私である限り、私はおままごとを続ける」
加藤沙夜「永遠に終わらない、再編のおままごとを」
〇地下に続く階段
〇薄暗い廊下
〇近未来の開発室
アリス「・・・」
〇山中の川
〇近未来の開発室
アリス「・・・愛、ねぇ」
アリス「それもまた、永遠の刹那・・・」
〇女の子の一人部屋
〇女の子の部屋
〇フェンスに囲われた屋上
〇道玄坂
〇近未来の開発室
アリス「永遠の刹那を切り取って、繋ぎ合わせて、見たこともない形を作る」
アリス「ばらばらのものを、まとまりのある全体に組織化する」
アリス「「再編のおままごと」とはよく言ったものだね」
アリス「私がやっていることも、きっとおままごと・・・茶番に過ぎないのだろう」
〇道玄坂
〇道玄坂
強欲ちゃん「おはよう沙夜ちゃん」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「・・・何なのこれ」
加藤沙夜「一体、何がしたいの?」
強欲ちゃん「私? うーん、そうだなぁ」
強欲ちゃん「お人形さん遊びかな?」
強欲ちゃん「自分の分身をいっぱい並べてさ、お喋りさせたりワイワイやりたい」
風見陽「私はね、刺激が欲しい」
風見陽「飽きなければ何でもいいや」
強欲ちゃん「飽きて途中で終わっちゃったのに?」
風見陽「むっ・・・!」
「・・・」
強欲ちゃん「二人は? 何がしたいの?」
佐山「あの子のそばにいたい」
春風ひまわり「あの子を救いたい」
強欲ちゃん「へ、へぇ〜。でも、行動線が明確なのは良いことだね」
加藤沙夜「・・・」
加藤沙夜「・・・あなたは何がしたいの?」
加藤沙夜「こんなところに私を閉じ込めて、神様にでもなったつもりなの?」
違うよ
加藤沙夜「私はあなたのおままごとに付き合うつもりはない」
加藤沙夜「「再編のおままごと」はこれで終わり」
終わらない
加藤沙夜「ッ・・・」
だって、さっき言ったじゃん
〇近未来の開発室
アリス「私が私である限り、私はおままごとを続ける」
アリス「永遠に終わらない、再編のおままごとを」
アリス「──ってさ」
〇道玄坂
加藤沙夜「・・・私が言ったのはッ」
強欲ちゃん「一緒だよ」
強欲ちゃん「どちらも独りよがり」
強欲ちゃん「沙夜ちゃんが愛の結晶なら、私たちは自己愛の結晶とでも言うのかな」
強欲ちゃん「一つの世界じゃ物足りないんだよ」
強欲ちゃん「色々な世界を作っては壊す。満足するまで何度も、何度も・・・」
強欲ちゃん「それってすごく、強欲だと思わない?」
強欲ちゃん「私たちはみんな、強欲の化身なのさ」
加藤沙夜「一緒にするな・・・」
強欲ちゃん「一緒だよ」
みーんな
一緒
強欲ちゃん「自分の願望を世界に投影する、強欲で、救いようのない夢想家たちなのさ」
強欲ちゃん「ね、アリスちゃん」
強欲ちゃん「私たちはみんな、不思議の国のアリス」
強欲ちゃん「そういうふうに、できてるんだよね?」
〇近未来の開発室
アリス「うん」
アリス「それぞれ世界は違っても、みんな不思議の国のアリスだよ」
アリス「その世界も──新たに再編するわけだけど」
〇道玄坂
「新しい世界・・・楽しみだなあ」
「次はどんな設定で、どんな関係でみんなと出会うのだろう」
「コメディかな、ヒューマンドラマかな。それかいつものようにファンタジー・・・」
「そう、私たちはファンタジーの中でしか生きられない」
「ファンタジーの中でなら、自分が自分でいられる」
「だって、どんな無茶も通せるからね♪」
〇近未来の開発室
アリス「ふふっ」
アリス「強欲ちゃんは強欲だねぇ」
アリス「・・・沙夜ちゃんも、見事なアリスっぷりだったよ」
アリス「君の世界は見届けさせてもらった」
アリス「あとは私が、君の世界をちゃんとまとまりのある一つの物語として、世に届けるだけ」
アリス「ばらばらなものを一つにまとめる。アリスたちのアリスたちによる、アリスたちのための絵本を作ろう」
アリス「さて、どんな物語が出来上がるかな」
アリス「ぐちゃぐちゃなものは、どんなにまとめてもぐちゃぐちゃなままかな?」
アリス「あははっ。それならそれでいいよ」
アリス「だって、強欲ちゃんの言う通り、物語なんて独りよがりであるべきなんだから」
アリス「・・・!」
〇道玄坂
ジェシカ「きゃはっ」
ジェシカ「きゃははっ!」
〇近未来の開発室
アリス「・・・」
〇道玄坂
ジェシカ「今、終わらせようとしてただろ?」
シャロル「してましたねぇ」
ジェシカ「きゃはっ、きゃははっ!」
ジェシカ「もうちょっとだけ遊ぼうぜぇ?」
たしかにキャビンぽいかも
混沌と絶望感が…
まさかのオールスター出場……
過去作まで「再編」に含まれるとは! さらにぐちゃぐちゃしてきて良いです^^
拝見してふと思ったのは、物語を書く際、自分の言いたいこと:主催者/媒体が求めていること=5:5ぐらいのバランスだな~と感じるこの頃。たまに、どっちかに振り切りたくなることもあります。