ローリングソバットかましてやんよ

3ピースりょう

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〇駅のホーム
  彼にフラれた。
マイ「はあ・・・・・・」
マイ「まただよ・・・・・・」
  わたしは子どもの頃から、
  ずっと「いい子」でいた。
  両親はいつもケンカばかりしていて、
  わたしは「いい子」でいることにした。
  パパもママも、
  わたしが「いい子」じゃないと、
  またケンカになるんじゃないかと、
  ────
  いつもドキドキしていた。
  だから、わたしは
  ずっと「いい子」だった。
  でも、両親は離婚した。
  
  もっと私がいい子だったら良かったのかな?

〇電車の座席
  いつの間にか、
  わたしはずっと「いい子」を演じていた。
  それは、
  これまでの恋愛においてもそうだった。
  誰も、本当のわたしを知らない。
マイ「でも、本当のわたしってなんだろ?」
マイ「わたしがわたしじゃないみたい」
  わたしすら本当のわたしを理解していない。
  これまで付き合った彼氏も、
  最初は「いい子」のわたしを好きになってくれた。
  だけど、わたしが「いい子」を演じていることに気がついて、みんな嫌になるんだと思う。
  そして、私の前からいなくなった。
  でも、
  わたしは本当のわたしを
  見つけて欲しかった。
マイ「たけしがよく見てた動画・・・・・・」
  スマホの画面に、
  彼がよく見てた動画の
  関連動画があがってくる。
  
  わたしのスマホでよく見てたから・・・
マイ「あーあ、辛いな。 別れた彼氏の好きだったものを 思い出させられるなんて・・・・・・」

〇女性の部屋
  別れたばかりの彼が見ていた動画は、
  古いプロレスの動画。
  これまで見たことはなかったけど、
  なんとなく目が止まって、
  その動画を見ていた。

〇雷
マイ「す、すごい!!」
  虎のマスクを被った男が、
  華麗に宙を舞っていた。
  自由自在にリングを飛び回る姿に、
  つい目を奪われた。
  男は宙を舞い、
  くるりと体を翻し、
  強烈なキックを決める!
マイ「か、かっこいい!!」

〇女性の部屋
  男の名前はタイガーマスク。
  空中で横回転しながら蹴る
  その技は、
  ──────
  ローリングソバット!!
  その時、私は決意した。
マイ「ローリングソバットの使い手になろう!!」

〇トレーニングルーム
  変わらないといけないと思っていた。
  リングで華麗に舞う
  
  タイガーマスクの
  ローリングソバットが
  
  自分を変えてくれる
  ように思えた。
  それからというもの
  私はローリングソバットを
  磨きに磨いた。
マイ「いつも 心にローリングソバット!!」
  侍が刀を左の腰に携えるのと
  同様に、
  
  私はローリングソバットを。

〇駅のホーム
  それから私は変わった!
  痴漢にローリングソバット!!
マイ「うおりゃあああああ!!!!!」

〇異世界のオフィスフロア
  嫌味を言う上司に、
  ローリングソバット!!
マイ「やっかましいいいいいーーーー!!!!」

〇大衆居酒屋
  マナー違反の酔っ払いに、
  ローリングソバット!!
マイ「どっか行き晒せーーーーーー!!!!!!」

〇川沿いの公園
  世の中の憤りに
  ローリングソバット!!
  
  弱い自分の心に
  ローリングソバット!!
  そして・・・・・・
元彼たけし「久しぶり・・・ どした?マイ? 呼び出したりして・・・・・・」
マイ「ごめんね。急に。 でも、ケジメだから・・・・・・」
マイ「フゥゥゥ・・・・・・」
マイ「うぉりゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
元彼たけし「え!? うぉぉぉぉっ!!!! ぐふっ・・・・・・」

〇街中の道路
  私を振った彼にも
  かましてやった。
  
  ローリングソバットを。
  たけしに罪はないけど、
  過去の私に対するケジメだった。
マイ(もう怖いものはなくなった。 私には伝家の宝刀 ローリングソバットがあるもの)
  いざとなったら
  かましてやったらいい。

〇炎
  その後、
  空前のローリングソバットブームが
  到来。
  私は、
  ローリングソバットのカリスマ、
  伝説となった。

〇貴族の部屋
  ローリングソバット御殿に、
  ──────

〇コンサート会場
  ローリングソバットワールドツアー
  ──────

〇遊園地
  ローリングソバットテーマパーク
  ──────

〇雑踏
  ローリングソバットが
  全て手に入れさせてくれた。
  しかし、ある時、
  
  しつこく付きまとうファンに、
  ローリングソバットをかましてしまう。
  そのことが原因で、
  ローリングソバットの
  ブームは去り、
  ──────

〇コンサート会場
  私は表舞台から去るしかなかった。

〇海辺の街
  ぽっかり心に穴が
  あいたようだった。
  もう使うことはない
  ローリングソバット。
マイ(いい子だった私はもういない。 でも、 ローリングソバットな私も もういないのね・・・・・・)
マイ(本当の私は どこにもいないんだわ)

〇落下する隕石
  その時!!
  
  夕焼けの空を引き裂くように、
  燃えたぎる巨大隕石が飛来!!
マイ「まずい!!このままじゃ地球が!!」
ローリングソバット「マイ・・・」
ローリングソバット「僕は君といつもいるよ」
マイ「いるのね!私の中にあなたはいるのね!!」
マイ「フゥゥゥ・・・・・・」
マイ「うぉっっりゃぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」

〇テクスチャ3
  私の中に、
  ローリングソバットはいる。
  それは、
  もう私なんだ。
  だから、
  私はなんだってやれる。
  何にだってなれる。
  私が手に入れたものは、
  ローリングソバット。
  それは、
  本当の私なんだ。
  いつだって、
  ローリングソバットを
  かましてやんよ。

〇黒
  おわり

コメント

  • ローリングソバットは初めて知りました。ローリングソバットではじまり、ローリングソバットで終わり、また始まる予感。読んだだけでスッキリ爽快な気分になれるお話でした。

  • ローリングソバット!良いですね。プロレスはよく見ていました。迫力があり華麗な技でした。この技をマスターしたら人生変わってしまいます。

  • 何かを失って何かを得る、演じている自分もまた自分なはず、何かに理由を付けて自分を否定しがちな主人公に妙に同感しました。ローリングバット!いいですね。

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