エピソード7 パパ活の真相(脚本)
〇洋館の一室
八神 暁「桐ケ谷さんが失踪・・・っすか?」
安曇 巌「さっき、山下に様子を見に行かせたんだが、もぬけの空だったみたいだ」
八神 暁「あの・・・中で・・・ってことはないっすよね?」
安曇 巌「山下が近所に聞き込みをしたら、朝早く出て行ったのを見た人間がいたらしい」
八神 暁「そうっすか・・・」
暁が立ち上がり、背広の上着を手に取る。
八神 暁「ちょっと出てきます」
安曇 巌「まさか、探しに行くわけじゃねーだろうな?」
八神 暁「・・・行かないっす。っていうより行けないっす」
八神 暁「桐ケ谷さんの行きそうな場所なんて知らないっすから」
安曇 巌「・・・ふん。頭は冷えてるみたいだな」
八神 暁「ずっと気になってたことを確かめに行ってきます」
安曇 巌「ま、気が済むまでやってこい」
八神 暁「はいっす」
〇新橋駅前
速足で歩く暁。
八神 暁「・・・・・・」
〇新橋駅前
女子生徒A「ちょっと! それ、言わないようにって言われてるでしょ!」
女子生徒B「あ、そうだった」
〇新橋駅前
八神 暁(・・・やっぱり、引っかかる)
〇学校の部室
元宮 春樹「そ、そんな・・・。桐ケ谷が・・・」
八神 暁「・・・・・・」
元宮 春樹「私はてっきり・・・。こんなことなら、あのとき、母親に調べるように言えば・・・」
八神 暁「すいません。このことはまだ、秘密でお願いしたいっす」
元宮 春樹「・・・そ、それは、はい・・・。わかりました」
八神 暁「それより、お聞きしたいことがあるんすけど」
元宮 春樹「なんでしょう?」
八神 暁「由衣香さんがパパ活をしていたって噂は知ってますか?」
元宮 春樹「・・・ああ、そのことですか」
八神 暁「やっぱり、知ってたんすね」
元宮 春樹「ええ。まあ」
八神 暁「なら、なぜ、由衣香さんはなんの処分も受けてないんっすか?」
元宮 春樹「・・・・・・」
八神 暁「パパ活なんて、退学、良くて停学じゃないっすか?」
八神 暁「なのに由衣香さんは何の処分も受けているようには見えなかったっす」
元宮 春樹「・・・最初から説明します」
元宮 春樹「桐ケ谷が援交・・・パパ活しているという噂はすぐに教師の耳にも入りました」
元宮 春樹「私たちはすぐに真偽を聞くために、桐ケ谷を呼び出しました」
八神 暁「・・・」
元宮 春樹「そのとき、桐ケ谷と一緒に、男性が学校に来たんです」
八神 暁「・・・誰です?」
元宮 春樹「噂の相手です」
八神 暁「ええ! パパ活の相手が学校に来たんすか?」
元宮 春樹「それは間違いでした」
八神 暁「間違い? 何がっすか?」
元宮 春樹「父親だったんです」
八神 暁「・・・え?」
元宮 春樹「つまり、桐ケ谷はパパ活をしていたのではなく、父親に会っていたというわけです」
八神 暁「・・・父親?」
八神 暁(そうか! それなら、ずっと感じていた違和感にも説明がつく)
八神 暁(周りの人たちや写真の印象じゃ、パパ活なんかしなさそうな子だもんな)
八神 暁(やっぱり、由衣香さんはパパ活をしてなかったんだな)
八神 暁(・・・なんて言ったら、いわさんに怒鳴られるな。刑事は疑うことが仕事だって)
八神 暁「・・・学校側はそれを信じたんすか?」
元宮 春樹「もちろん、その言葉だけで信じたわけではありません」
元宮 春樹「その男性はこれを出してきました」
春樹がペラリと一枚の紙を出した。
八神 暁「これは・・・DNA鑑定書?」
元宮 春樹「はい。そこに書いてある通り、その男性と桐ケ谷は親子関係だったというわけです」
八神 暁「・・・これが偽造という可能性は?」
元宮 春樹「そんな形跡は見当たりません」
八神 暁「確かにそうっすけど、鵜呑みにするのもどうかと・・・」
元宮 春樹「・・・なるほど」
元宮 春樹「刑事は疑うことが仕事・・・ですか」
八神 暁「え、ええ、まあ・・・」
元宮 春樹「刑事さん。教師は信じることが仕事なんです」
元宮 春樹「それに、刑事さんも職業柄、わかると思いますが・・・」
元宮 春樹「嘘を付いている人間というのは何となくわかるものです」
八神 暁「まあ・・・確かに」
元宮 春樹「それに、私は桐ケ谷が1年の時から担任をやっています」
元宮 春樹「あいつがパパ活をやっている、なんてことの方が信じられない」
八神 暁「・・・・・・」
元宮 春樹「父親に会っていた、という方がよっぽどしっくりきます」
八神 暁(それは俺も完全に同意だ。けど・・・)
八神 暁「一つ、腑に落ちないことがあるっす」
元宮 春樹「なんです?」
八神 暁「なぜ、桐ケ谷さん・・・母親に確認しなかったんすか?」
八神 暁「桐ケ谷さんは由衣香さんが男性に会っていたことを知らなかったっす」
八神 暁「つまり、学校側は桐ケ谷さんに確認を取っていない」
八神 暁「父親かどうかは、桐ケ谷さんに確認を取れば簡単に済む話っすよね?」
元宮 春樹「・・・刑事さんは子供は?」
八神 暁「へ? いや、結婚もしてないっす」
元宮 春樹「それならわからないでしょうね」
元宮 春樹「子供に会えない辛さというものが」
八神 暁「・・・・・・」
元宮 春樹「男性は言っていました。桐ケ谷と17年間、ずっと会えなかったと」
八神 暁「17年?」
元宮 春樹「裁判で親権を取られてからは会わせてくれなかったそうです。桐ケ谷が生まれてから一度も」
元宮 春樹「母親の了承を取ろうとすれば、また会えなくなる・・・」
元宮 春樹「それだけは何としてでも避けたいと言っていました」
八神 暁「だから、桐ケ谷さんに確認を取ることができなかったんすね?」
元宮 春樹「はい」
八神 暁「なるほどっす」
八神 暁「それで、もう一つの疑問も解消されたっす」
元宮 春樹「・・・?」
八神 暁「おかしいと思ったんすよね」
八神 暁「由衣香さんが父親と会っているのなら、生徒たちにそう言えばいい」
八神 暁「けど、それを言うわけにはいかない。桐ケ谷さんの耳に入ったらヤバいっすから」
八神 暁「だから、この話自体、するのを禁止にした、ってわけっすね」
元宮 春樹「完全に噂を止められないとは思ってました」
元宮 春樹「ですが、父親だと噂が流れるよりはマシだと、桐ケ谷たちと話し合って決めたんです」
元宮 春樹「桐ケ谷の友達なら、あいつがパパ活なんてしてないことはわかるはずですし」
八神 暁「貴重なお話、ありがとうございました」
暁が立ち上がり、部屋から出ようとして、立ち止まる。
八神 暁「あ、最後にもう一つ」
八神 暁「由衣香さんの父親の名前は聞いてますか?」
元宮 春樹「確か、霧山と名乗ってました」
八神 暁「ありがとうございました」
暁が部屋から出ていく。
〇漫画家の仕事部屋
八神 暁「戻ったっす」
安曇 巌「おう。母親の戸籍データ、届いてるぞ」
八神 暁「マジっすか! いわさんにしては珍しく、仕事早いっすね」
安曇 巌「珍しいは余計だ」
八神 暁「だって、いつもは頼むより、自分でやったほうが早いくらいじゃないっすか」
安曇 巌「・・・合理的なんだよ、俺は」
安曇 巌「自分でやらなくていいことは、やらない主義なんだよ」
八神 暁「さてと」
暁がパソコンを立ち上げる。
八神 暁「・・・すんません、桐ケ谷さん。個人情報、見せてもらうっす」
マウスを操作して、データを見る。
八神 暁「・・・えっと、桐ケ谷さんの元夫は・・・」
八神 暁「・・・え?」
終わり



これまで一番引っかかっていた「パパ活」の真相が明らかになりスッキリです。と同時に、その父親の正体や事件との関係性についての謎を新たに示された感じです。謎が尽きない展開ですね!